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終幕の攻防編
総力戦
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「第二次大陸戦争」も終盤に向かっていた
皇帝ベルフの拡大戦略と侵攻、これまで見事と言えた戦略の衰え、対して反ベルフへの大陸各国への連動と集う人と国、この潮流を変えるのは如何な手段が必要であったのか
その手を知っている者は少ない。だが、その者にはそれを行う、立場が与えられていなかった不幸である、大陸戦争、明けて七年目の初月の終わりの始まりである
南フラウベルトのエルメイアと西、銀の国マリアは一定の両国安定状態に至り、また、南と西、南西での陸路の繋がりから一度直截面談を行いましょう、と中間点と言える
南西地域王都クリシュナでの国家間会議を行った、南と西と南西の最高責任者が一同に集まれる場所でもあり、やってもよかろうとも相互に同意して集まることになる
「ようやく直接、会えましたね」
「うむ、やはり顔を会わせて話すほうが良いな」
シューウォーザーはこの光景に感慨と時代が変わったな、という複雑な感情をもった何しろ大陸連合の「盟主と副盟主」が双方若い女性である
だが、一つも偉そうではない、この様な場で無ければ、貴族のお嬢様同士の友達にしか見えない
どの様な話合いになるかも決まっていないのだが、一応の事としてクリシュナの軍の大会議場が充てられ、集まった三軍責任者らが巨大な円卓を囲んでの会談となった
其々分かれて席に座り、マリアだけ円卓の上に抱えていた猫を乗せた、一同はそれが不思議だったのか「?」という顔をしていた
そこを見計らってマリアが
「北から送られた渡しを付ける者じゃ」と言ってのけて
「聞こえておるか?アレクシア殿」と猫に向かって言い
テーブルで丸くなった猫が顔だけ向けて
「もちろんですわ」としゃべって返した、これには一同ひっくり返る程驚いた。
もちろんマリアは半分いたずらでわざわざ猫を持ってきた。その反応を見てマリアは「ククク」と笑っていた、無論そんな事は百も承知であったアレクシア=猫は
「‥私の使い魔をいたずらの道具にするのは止めてくれませんか?」と言った為、一同も事態が飲み込めた
「これが!?」「使い魔?初めて見た‥」
「北の獅子の国、総軍、軍師、兼宮廷魔術士で、並びに政治面を取り仕切っておるアレクシア殿じゃ」
マリアが紹介したが、まだ、肩を震わせて笑っていた
「な、なるほど‥この場に居なくても話せるという訳ですか‥」
正直猫に向かって挨拶するのもオカシイだろうと思ったがそういう事情ならと
「は、始めまして、聖女エルメイアです」と自己紹介をする
「アレクシアです、まあ、私、飛べますので、直接行けなくは無いのですがマリア様が「来るな」と言われましたので‥」
「マリア様‥」と一同に呆れらてジロッと見られたが、マリア自身は全く意に介さない
「くくく‥御主らのあの反応‥くくく」とずっと笑ってた
一頻り笑った後満足したのか、スッとまじめな表情を作ってから
「さて、聖女の要望あっての会談ではあるが。この様な場はこれからそう何度もある訳では無い、故に、せっかくなので大陸戦略について話し合いの場、ともしたいと思う」
といきなりまじめに切り替えた
「ご尤もですな。大陸連合としての体勢、応対の準備も整いつつありますが、我々としても具体的な戦略がまだであり、両盟主様の見識も拝見したいと思います」
シューウォーザーが言った通り、具体的な策はこれからであり両盟主から方針決定があるのと無いのでは動きも変わる
「うむ、そうしたい所だが、まだ、メルトの代表者が来ておらん、故、しばし自由意見の出し場としよう」
無論、東代表で政務、外交官、大御所付き軍師という立場であるマリーであるが、このの様な場にあっても朝だけに思いっきり遅刻していた
「東は隣接地がありませんからね、ある程度はしかたないでしょう」
「では」とまず基本的な事としてシューウォーザーは
「全体兵力としても、拮抗していると言って良い現状ですが、それ以上に人材は上回って居ります、今後の向こうの戦略次第ですが基本的に守っても攻めても、問題は少ないと思います」
「更なる軍備の増強を図りつつも、でしょうか」
「その辺りは既に北がいち早く展開しておる、終戦間もないが更に「人」の数と質の向上は図られておる」
「はい、我が王は北伐開戦前からそれを続けております。また、兵力自体も増強しても財政面が潤っている為続けても問題ありません。また、これまで戦争が無かっただけに周辺国家の軍力も劣化しておらず北は北だけでも反転攻勢が可能な状況にあります」
「ほう‥流石、というべきか‥」
「ただ、残念ながら「ルート」が中央街道しかありませんし、抜けてもベルフ本国周辺に繋がる為、少々こちらからというのは無理があります」
「たしかに‥」
「故に、マリア様から、西中立街道からの攻勢というのが妥当ですが。」
とアレクシア=猫が言いかけた所で会議室にマリーが訪れる
「遅れました、申し訳ありません」とそそくさと空いた席に進む
「いや、構わんよ、遠路であるからにはやむをえん」
実際は単なる寝坊だが、そうフォローされたのでホホホと誤魔化して座った
「で、どの様な話に?」
「まだ各国の状況を披露しているだけじゃ、メルトは軍備や周囲状況はどうだ?」
「ええ、兵力は単身で一万「武」の者も揃っております。更に兵力自体も志願、学園卒業者中心に増えております、教育システムが確立されておりますので、ただ、東地域、という全体での話しとなると、メルト以外がそれほど強国ではありません」
「また、現在対しているのが向こうの大軍将のガレスという事になりますので進軍して破るという状況でもなく、隣接地が連合としては北しかありませんので」
「そうじゃな、そもそもメルト側が天然の要塞じゃし、攻める意味が薄い有利な条件を捨てるのも馬鹿らしいからの。何かするとしたら誘引策となるが、相手がガレスと成ると、ヘタな挑発は無理じゃろうな、しかも、北は兵も将も揃いすぎくらい多いからの」
「まあ、相手がガレスでも、うちのダンナのジェイド‥いえ、軍将なら正面から打ち抜けなくもありませんけど」
「?!」
といきなりマリアが声を挙げて立ち上がった
「ジェイドじゃと?!「あの」ジェイド=ホロウッドか!?」
「は?、はい、ご存知でしたか?」
一同「?」だったが、マリアは無理やり落ち着いて座った
「あいつ、メルトにおったのか、しかもダンナじゃと?‥」
「お知り合いですか?」
「うむ、昔うちの国の武芸会に参加して、いきなり優勝した奴じゃある約束があってのう‥‥」
「そうでしたか」
「音信不通だからどっかでのたれ死んだかと思っていたが、メルトに雇われとったか」
「雇われたというか、私が武芸の教師として招いて、そこでエリザベートの東軍に攻められたのでメルトを捨てるという判断はしなかった、そのままなし崩しな感じですね」
「ふーむ‥、ま、それは後で聞こう、話を止めてすまんかった」
「いえ」
「これで全方位の責任者が揃いましたが改めて全体戦略を話したいと思いますが」
「そうですな」
「とは言え、わらわも今の所、これと言った明確な「策」がある訳ではない、と言うより、もう少し時間を稼ぎたいのもある」
「と、言うと?」
「うむ、南戦から北伐に掛けて、どうも妙に皇帝の戦略ミスが目立つからじゃ」
「そうですわね、自ら戦力分断を行っていますし、基本的な事が抜け落ちているようにも見えます。ソレ前も戦力分断はして居りましたが、兵の多さと速攻で勝ってきましたが、今の状況にあって同じ事をするというのも間違いだと思います」
「左様じゃ、消極的ながら、向こうのミスを更に待ちたいというのも一つある」
「更に重ねてくれれば、ですが」
「うむ、そこで、策というより、基本方針のような物があるにはある」
「お聞きしたいですね」
「これまで通り、各国軍備を増強しつつ防備主体、向こうの焦りを突いて、尚且つ嫌がらせの攻めを続け、敵の疲弊と判断の誤りを更に誘発させたい」
「南でシャーロットやカリス軍がやった削り作戦ですか」
「うむ、ただ、個々の状況判断がより一層必要になるが」
「うーむ」とマリアの言を聞いて一同は各々考えていた
まず最初にアレクシア=猫が同意する
「奇策をかける「余地」も「必要」もたしかにありませんね、大規模な何かが発生するまで只管向こうを追い込むのは正しいと思います、自然と瓦解する可能性も出てきますし。更に工夫するなら、向こうの人材の「数」を更に圧迫したいと思います」
「うむ、せっかく包囲戦略に成ったのだからのう」
「はい、多方面からの突きで、更に向こうの将を分断しつつ戦うのが良いのですが、ただ」
「そうね、実際それが出来る「地域」の問題ね、現状マリア様の西、かしら」
「後は我ら北から対峙しているベルフの北軍への嫌がらせ、ですかね」
「メルトとガレス東軍は戦力が拮抗しているし、勝ち負けは兎も角痛いですし、こちらの南地域もまだ、クルベルに6千で防備以上は厳しくあります」
「うむ、故に、圧迫戦略と共に「時間稼ぎ」を続けてもう少し状況の変化を待ちたいという事じゃ」
「妥当ですな。」
「そこで、先ほど指摘のあった通り、主に攻めはわらわが行う、後は奪取したトレバーからじゃな。ただ、兵は余るのだが、やはり将が厳しい、付ける軍師もおらん」
「では、獅子の国から人材、北連合から兵、というのはどうでしょう」
「頼めるか?」
「はい、私はアリオスを止めねばなりませんから、動けませんので、主軍補佐のハンナがおりますのでそれを、将や武芸者も数人は派遣できるでしょう」
「うむ、有り難い、ただ、向こうは西南にシャーロットやエリザベートがおる、武芸ならそれとあわせられる者、戦術でもシャーロットに好きにやらせないくらいのが欲しいのう」
「それはやってみないと‥、まあ、武芸や指揮、武装なら問題無いのですが」
「そうじゃな、ま、ぶち抜いて勝つ訳でもないしな、そこまで贅沢は言えんか」
「うーん‥じゃあ、うちのダンナか私が行きましょうか?」
「ほ、ほんとか!」
「え、ええ、ハッキリ言ってこっちは守勢一本のが効率がいいですし、どっちかメルトに残ればガレスが出ても止められると思うので」
「え?!え?、マルガレーテさんって武芸も!?」
「え、一応、そもそも魔法剣士ですし」
「しかし、相手は八将じゃぞ!?」
「うーん、ダンナがエリザベートよりちょっと上くらいだからたぶんあたしでもいけるでしょう」
「エ、エリザベートより上?!?」
「どういうレベルなんじゃ二人は‥」
「あ、エヘー‥」
まあ、それはそうでしょうね、とアレクシア=猫も思った。そもそも人間じゃないんだし
その「ダンナ」もドラゴンスレイヤーである、人間の最高到達点に居るのは明白だ、まあ、人の事は言えないのだが
「まあ、兎に角よろしく頼む、基本方針も全体の展開待ちの、小中戦闘の繰り返しになる、また、不足する部分も「国家の拘り」を捨てて何でも相談、要請せよ」
「了解しました」
「とりあえず、全方面で「渡し」を付けてあるので、即応が可能じゃろう」
「あ、そうだ、皆さんこれを、伝心のイヤリングです」とマリーが例の「エンチャントイヤリング」をバラバラと10個ほど、テーブルに置いた
そこでまた、マリアが立ち上がる
「伝心じゃと!!!ももも貰っていいのか!!!」
「え、ええ、ど、どうぞ‥」
(マリア様‥また‥)と どこかで見たような光景の再現にエルメイアは呟いた
全部強奪する勢いだったが流石にマリアは自重して其々の責任者と分配した
「ああああ」と泣きそうだったが
そこで一同の顔合わせと、とりあえずの基本戦略が決定され其々解散となった
ただ、援護派兵と人員だが、メルトはジェイドが出される事になる「文武」となればマリーのが適任だが、前線で活躍するのを渋った為である
「何で俺なんだ‥」
「あたしが目立っても困るでしょうに、色々追求されたらやだもん」と言って決定された
銀の国でも「人材不足」の解消の為、先年からグラムの娘となったバレンテイア、実子のクルツらが共同で色々当ったり、見出したりもしたのだが。兎角武芸の者が少なく、お国柄か政治官の類だけ偏って増える
それ自体、まあ、有り難い事ではあるが。現状、マリアが居る限りその面で不足する事が無いのが困り者である、何しろ、銀の国200年に一度の政治的駿才の名君である、代わりが必要な訳はないのだ
ただ、バレンティアが主軍に加わった事、指導力がフリットに劣らぬ名士である事。女性としては「異常な強さ」優雅で美しく優しい人である為、弟子やある種「同姓ファン」の様な物は大量に増えたのだが
そこから育成となると何年か後の話なら兎も角、即、直ぐに使える戦力にするのは無茶であり、割りと時間が掛かるのである、それでも「これは?!」という即戦力の名士は1人だけ出た
フランチェスカ=ランペールという20歳の女性、元々軍属の一騎士で、下級貴族の出である、どこがどう極めて凄いという事もないのだが兎に角バランスが良い
適正を図る為にバレンティアは色々な武器を持たせてみたのだが、剣を振るっても、槍を持たせても、盾を持たせても劣りが無いという万能型で指揮も学もという非常に珍しいタイプである
その時点でも指揮は中隊、数百ならソツなくこなし武でも、「鍛えればフリットに並ぶかしら?」という能力があった為主軍での一部隊を任せた。判断に優れて、命令を厳守する為、軍の中では非常に使い易い
無い者、出ない者をねだっても仕方ないので。マリアは元々多い兵を志願中心に増強もしていた
更に、北から齎されたマニュアルから、運べる大型機械弓や対人投石、大型輸送、重装備兵も創設
元々国家財政が豊か過ぎるくらいである為その辺りの兵装の増強に一切問題は無かった故である
また、「戦略家でもあり戦術家でもある」マリアにとって「戦場での打つ手」が多いに越したことはないのである
大陸連合会談から一週間後には最速でメルトからジェイドが銀の国に来援する
マリーは転移でジェイドを運んで
「じゃよろしくね」とさっさと帰った。また、マリアに捕まると仕事が増えるし帰れないからだ
正直ジェイドも気が進まない、やはり彼も過去にマリアに捕まった経験がある、だが、国家間の戦略の一環、と言われれば拒否も出来ないのだ
もちろん、銀の国の謁見の間でマリアに飛び付かれて、木に捕まる動物状態になった
「おぬし~終わったら戻ると言ったじゃろ~なんで連絡くれんのじゃ~」と、グチグチ言い続けられた
「ああ、話す話す、とりあえず降りろ!」とマリアを引き剥がして床に置いた
「まあ、いいじゃろう、さっさと話せ」と玉座に戻って何時もの片肘頬杖足を組んで座った
その後、長い話ではあるが、旅でメルトに辿り着いた事、竜と出会えた事
戦って引き分けた事、竜は戦いの後他の大陸に旅立った事、マリーにその為の武器を依頼して作成してもらい、その後のベルフとの戦い、結婚の事を「マリーがその竜である事を隠して」アレンジを加え全て話した
その場にいた近習含め、あまりの事に驚いて居たがマリアは感慨深そうにしていた
「そうじゃったか‥わらわの「男」に出来んかったのは残念じゃが、まあ、あのマリー殿では仕方ないのう、それに、あの時のわらわの「目利き」が間違っていなかったのも嬉しい事じゃ」
「まあ、いいじゃないか、また、会えたんだし」
「しっかし、ここまでの剣士になるとはのう‥まさかドラゴンスレイヤーとは‥」
「実際はお情けの引き分けだがな、向こうは飛ばなかったし、武器自体も、マリー、クルスト製の魔法剣がなきゃボロクソ負けだったろうし」
と背中に担いだ武器を見せた
「むぅ‥」とマリアは再び玉座を降りてそれをシゲシゲと見る
「これが、現時点で最強の武器、という事になるかのう‥、しかし御主にしか使えんなこりゃ」
「見た目はな、だが実際は普通の人間でも持てる」
「ほほー、そういうエンチャント処理か」
「そうだ」
どうやらそっちに興味が移ったらしい
「せっかくじゃし、グラム辺りと試合してみるか?」と無茶を言うが「流石に竜剣士とは無理ですが‥」とグラムに即、拒否された
「兎に角、ベルフの連中と連戦になる、頼むぞ」
「ああ、最善は尽くすよ」
一方で「人材の輩出」という点では、北の獅子の国とメルトが郡を抜いて優れていた、北はロランの人事選抜眼が異常であり「個」の目立った人材があふれ
東は育成その物がマニュアル化されている効率性があり「平均的に高い」人材が排出されている
更に一方で人材強国で「あった」ベルフは、皇帝の様々な面での衰えにより、その影は潜めたが。ここでも代わりとして支えたシャーロット=バルテルスがその面を補った
父の友人の子であって、生徒の1人でもある「ラファエル」に遊撃軍として1千与え領土中央付近に置き
自分が家の主となった際、商売の取引で様々な面でパートナーを務めた豪商の「ベッツ」という中年紳士から「裏」の渡りを付けて貰い「裏社会」からも人を探した
あらゆる面からフル稼働して「国の劣化」を防ぎ止めたが、シャーロットと言えど、個人でどこまでも出来る訳では無い点、更に、皇帝そのものからの信望が厚い訳でないという所から後の話だが崩れていく事になる
そして、大陸連合側、マリアらの戦略方針からかけられる
「多重戦闘」への対処である
まず、銀の国に北から人が到着する
本国の防衛を担当していた近衛軍のニコライ=カールトンを長として補佐にハンナ
軍その物は2千だが再編して遠距離武器、投石、機械弓を揃えて、もしもの事態に自由参戦軍として後詰にクルツに1千の弓騎馬を与え出撃
トレバー砦からもキャシーらが混成軍二千で出撃してスエズの最西前線ロンデルへ向かう
更にキャシーの後ろからグラムが4千率いてトレバー砦回りに後に張り付く様に動く
まず、マリアは間にある、独立自治区の長に領土通過の許可を取り、北回りルートからニコライが徹底して遠距離によるロンデルへの仕掛けを行う
キャシーのラバスト軍は南から回って正面決戦、グラムは南街道の「千年草原」の分かれ道に陣取りスエズ側からの援軍を跳ね返す役目を受けた
更にマリアは直属軍五千を率いてデルタ砦に向かい北回りのベルフ援軍も封鎖
ロンデル自体防衛軍は三千と少ない訳ではないが、それ故、遠距離主体の包囲戦を誣いた
ここは囲まれると逃げのルートが無く孤立死しかねない為、シャーロットが自らスエズを出て援軍に向かい、ギリギリのタイミングで。ロンデル南街道別れ道での封鎖を防止したが、シャーロット自体軍は3千であり、南連合軍だけでも、グラムとキャシーと合わせて六千と倍である
戦って撃退する状況で無く、止む無くロンデルの軍だけでも生かそうと、城からの撤退を指示して自らはグラム、キャシーの軍と決戦して味方がロンデルの南街道へ出るまでの時間を稼ぐ
劣勢な上、相手も並の将でない、更に街道分かれ道を取られるわけにもいかないという極めて厳しい状況であるが
ジャスリンと自分の騎馬隊を交互左右から突撃して敵を止めつつ、重装突破兵を中央防御に当てて、一歩も下がらず丸一日稼いだ後
城から出た味方の防衛軍と合流して味方をスエズへの道、東に少しずつ逃がす策をとったが、それを容易に許してくれる相手でも無い
銀の国の「宿将グラム」である
グラムは敵が交差する瞬間を狙って自ら最前線指揮で前進突撃、陣形が交差する所に突撃を敢行され、崩れかかるがシャーロット自ら部隊を指揮し突撃に突撃を合わせ返して足止めする
その隙に陣形を再編させ全軍反転攻勢の姿勢を見せるが、形だけの事とグラムに見抜かれ前線で打ち返される
「ならば直接落とすのみ!」とシャーロットとグラムが直接前線対決、激しい打ち合いになるが、グラムもシャーロットも「武」に置いても名人
両者一歩も譲らぬ半ば一騎打ち状態になるが、10分の打ち合いの後個人戦はほんの僅かグラムに傾く
グラムは兎に角「隙」が無い、壁を撃っているような錯覚を覚える程の「守将」である年齢、経験、頑強さ、それらから差が出る
グラムは徹底して防御迎撃、そこから、合わせた剣を防御しながらも強く返して、相手のバランスを崩し、相手を圧迫する
いかにシャーロットと言えど「女性」である、この「力の防御返し」で一撃一撃ごとに疲労と肉体ダメージが蓄積される一方「向こう」は長剣を片手で振り回す頑強な武者
「なんという、力の防御将‥」
初めて当ったグラムの強さに驚いた、この相手には「長期戦」を挑んではいけなかったのだ。
だが、状況がそれを許さない、向こうの特徴が分かっても、味方の再編まで支えないといけないのである、しかし、シャーロットにも対応する物があった
数歩馬を下げつつ、槍を捨てて、剣と盾に換装して「防ぎ」にかかったそれは功を相して、更に10分稼いだ
シャーロットには「どの武器で戦っても名人」という特徴と武器があった、知に置いてもそうだが、シャーロットは偏りが極端に少ない所謂「万能将」であった為である
そこで味方が立ち直り、前線の打ち合いを個人戦から集団戦に少しづつ移行して、この個人・部隊戦を打ち切った後、味方を収集して後退迎撃を展開する
グラムも「これ以上は無理だな」と見切って、近接から半撤退の相手に弓での削りという遠距離に切り替えて敵をいくばか削った後両軍後退した
連合側はロンデルを奪取、そのまま占領軍としてニコライらが滞在防衛しグラムは本国へ撤収、キャシーらもトレバー砦へ後退
地形条件から、ニコライらの北軍二千でも防衛には十分と考えたトレバー砦とロンデルの位置からも敵が攻め返してきても二正面作戦を展開出来る故である
その為「あえて最速での奪取」を行った
そもそもベルフがここを再奪取しても先の戦闘の様に寧ろ維持、防衛が厳しいのである
マリア軍自体はこの時点で総軍二万を超えており、出そうと思えば出せるのだがなるべく北軍から兵を出す戦略を取った
10日後にリッカートから援護軍1500の来援と共にそのままロンデルに合流させクルツも引かせる
デルタのマリア直属軍はロンデルの奪取を受け、やはり一戦もせず撤退して終えたが
ここでマリア直属軍は本国でなく、トレバー砦の最北の領土線に滞在施設の建設を行う、大軍でのデルタ牽制を行ったのはクロスランドからの援軍の封鎖が一つと、この「中立街道」監視施設の建設がもう一つの目的である
言わば、トレバー、ロンデルの両地域の更に後詰を確立させるためと。ここを更に「連合合同地」としてどの方面連合軍が滞在しても良いように開放した
何れの事だが「連合側」の兵と人の移動、各国独自の戦争参加を、各個の判断で自由にさせる目的がある
連合側はロンデルの奪取した事により、またも「ベルフの領土」が奪取される事態となった
「ま、そりゃそうでしょうね‥」
「西と南、もう西前線と言っていいか、ここに兵力を集めて防ぐしかないな」
森街の維持を命じられ動けなくなったアリオスとロベールは
アリオスの司令部の会議室でそう言った
「打てる手が無いですからねぇ」
「そもそもシャーロットに掛かる負担がでか過ぎる。それでも何れ崩れる」
「ご尤もです」
「お前ならどうする?」
「さあ‥スエズとクロスランドまで引いて防備ですかねぇ。そこで向こうの前線の距離を長くして分断戦とか」
「後は防備で上手く立ち回って削っていくしかないな」
「まあ、我々が北を放棄して戻って防衛に加わるのがいいんですが」
「だろうな、何故こっちだけ戦力分断を自らやる必要があるのか」
「向こうの兵力を圧倒的に上回るなら各方面同時に押せばいいんですけどね」
「戦争5,6年目まではそれで行っていたからな」
「ええ、強引に見えますが、こっちが攻めている間は。同時に向こうも削れますし、まあ、物量作戦ですね」
「立ち直る機会を与えず削り倒せば良かったからな、カリス王子のやり口を続ければいいだけだ」
「はい、ま、何があってもマリアに挑んではいけなかった。つまる所はそれですよ」
「やはりお前もそう思うか」
「ええ、ま、済んだ事を言ってもしかたないですが」
「現時点ならどうする?」
「うーん、やるとしたら‥ですが、南を全力で落とす、ですかね、ガレスさんと包囲戦が出来ますし数の上では南は少なめですから」
「その後南西、東、西、だな」
「全く持って同感です、やりやすい所から戦略条件を整えながら落とせばいいだけです」
「それはいいとして、防備だが」
「はぁ、アルベルトさんが戻りましたので、数は5,6千防備に回るでしょう」
「それも逆な気がするが‥」
「はい‥アルベルトさんを北で専守、私とロベールさんが戻るが妥当でしょうね」
「そもそも、北等攻める意味も維持する意味もないからな、囮に置いておけばいい、そもそもアイツは守りならどうにかする」
「ご尤もで‥」
「と、言っても、勝手に動く訳にもいかんからな我らは「将」だからな」
「まあ、いいでしょう、西のお手並み拝見という事で‥」
「珍しく消極的だな」
「いえ、具申はしてますけどね、却下されてるだけで‥」
「そうか、ならしかたないな」
「とりあえずの方針ですが、北から嫌がらせの攻めがあるかもしれないので」
「ああ、それは俺がやる、向こうも全軍反撃するほど暇じゃないだろう、そもそも俺個人としても、チカという武芸者と手合わせできるからな」
「楽しみがあっていいですね」
「状況を嘆いてもしかたないからな」
そこでロベールは席を立って解散となった。ただ、アリオスとしても「ただ」傍観している訳にもいかなかった
「キョウカさん、イリアさん」
「はい?」
「ここはさしてやる事が無いので中央に戻っていていいですよ」
「けど‥」
「向こう、連合側の動きを見ていてくれませんか?後、姫百合さんを軍と共に西前線で活かしてください、指揮は委任、もしくはシャーロットさんに、ここに置いても遊兵になるだけです」
「成程‥」
「アリオスさんが1人になりますが‥」
「女人隊が居るので大丈夫ですよ、それにいざ戦争になっても前に出るつもりもないですし、ま、ロベールさんが居ますからね」
「ご命令とあらば‥」
と、アリオスは手持ちの配下からも中央へ戻す、現状ではそれが「出来る事」であった
皇帝ベルフの拡大戦略と侵攻、これまで見事と言えた戦略の衰え、対して反ベルフへの大陸各国への連動と集う人と国、この潮流を変えるのは如何な手段が必要であったのか
その手を知っている者は少ない。だが、その者にはそれを行う、立場が与えられていなかった不幸である、大陸戦争、明けて七年目の初月の終わりの始まりである
南フラウベルトのエルメイアと西、銀の国マリアは一定の両国安定状態に至り、また、南と西、南西での陸路の繋がりから一度直截面談を行いましょう、と中間点と言える
南西地域王都クリシュナでの国家間会議を行った、南と西と南西の最高責任者が一同に集まれる場所でもあり、やってもよかろうとも相互に同意して集まることになる
「ようやく直接、会えましたね」
「うむ、やはり顔を会わせて話すほうが良いな」
シューウォーザーはこの光景に感慨と時代が変わったな、という複雑な感情をもった何しろ大陸連合の「盟主と副盟主」が双方若い女性である
だが、一つも偉そうではない、この様な場で無ければ、貴族のお嬢様同士の友達にしか見えない
どの様な話合いになるかも決まっていないのだが、一応の事としてクリシュナの軍の大会議場が充てられ、集まった三軍責任者らが巨大な円卓を囲んでの会談となった
其々分かれて席に座り、マリアだけ円卓の上に抱えていた猫を乗せた、一同はそれが不思議だったのか「?」という顔をしていた
そこを見計らってマリアが
「北から送られた渡しを付ける者じゃ」と言ってのけて
「聞こえておるか?アレクシア殿」と猫に向かって言い
テーブルで丸くなった猫が顔だけ向けて
「もちろんですわ」としゃべって返した、これには一同ひっくり返る程驚いた。
もちろんマリアは半分いたずらでわざわざ猫を持ってきた。その反応を見てマリアは「ククク」と笑っていた、無論そんな事は百も承知であったアレクシア=猫は
「‥私の使い魔をいたずらの道具にするのは止めてくれませんか?」と言った為、一同も事態が飲み込めた
「これが!?」「使い魔?初めて見た‥」
「北の獅子の国、総軍、軍師、兼宮廷魔術士で、並びに政治面を取り仕切っておるアレクシア殿じゃ」
マリアが紹介したが、まだ、肩を震わせて笑っていた
「な、なるほど‥この場に居なくても話せるという訳ですか‥」
正直猫に向かって挨拶するのもオカシイだろうと思ったがそういう事情ならと
「は、始めまして、聖女エルメイアです」と自己紹介をする
「アレクシアです、まあ、私、飛べますので、直接行けなくは無いのですがマリア様が「来るな」と言われましたので‥」
「マリア様‥」と一同に呆れらてジロッと見られたが、マリア自身は全く意に介さない
「くくく‥御主らのあの反応‥くくく」とずっと笑ってた
一頻り笑った後満足したのか、スッとまじめな表情を作ってから
「さて、聖女の要望あっての会談ではあるが。この様な場はこれからそう何度もある訳では無い、故に、せっかくなので大陸戦略について話し合いの場、ともしたいと思う」
といきなりまじめに切り替えた
「ご尤もですな。大陸連合としての体勢、応対の準備も整いつつありますが、我々としても具体的な戦略がまだであり、両盟主様の見識も拝見したいと思います」
シューウォーザーが言った通り、具体的な策はこれからであり両盟主から方針決定があるのと無いのでは動きも変わる
「うむ、そうしたい所だが、まだ、メルトの代表者が来ておらん、故、しばし自由意見の出し場としよう」
無論、東代表で政務、外交官、大御所付き軍師という立場であるマリーであるが、このの様な場にあっても朝だけに思いっきり遅刻していた
「東は隣接地がありませんからね、ある程度はしかたないでしょう」
「では」とまず基本的な事としてシューウォーザーは
「全体兵力としても、拮抗していると言って良い現状ですが、それ以上に人材は上回って居ります、今後の向こうの戦略次第ですが基本的に守っても攻めても、問題は少ないと思います」
「更なる軍備の増強を図りつつも、でしょうか」
「その辺りは既に北がいち早く展開しておる、終戦間もないが更に「人」の数と質の向上は図られておる」
「はい、我が王は北伐開戦前からそれを続けております。また、兵力自体も増強しても財政面が潤っている為続けても問題ありません。また、これまで戦争が無かっただけに周辺国家の軍力も劣化しておらず北は北だけでも反転攻勢が可能な状況にあります」
「ほう‥流石、というべきか‥」
「ただ、残念ながら「ルート」が中央街道しかありませんし、抜けてもベルフ本国周辺に繋がる為、少々こちらからというのは無理があります」
「たしかに‥」
「故に、マリア様から、西中立街道からの攻勢というのが妥当ですが。」
とアレクシア=猫が言いかけた所で会議室にマリーが訪れる
「遅れました、申し訳ありません」とそそくさと空いた席に進む
「いや、構わんよ、遠路であるからにはやむをえん」
実際は単なる寝坊だが、そうフォローされたのでホホホと誤魔化して座った
「で、どの様な話に?」
「まだ各国の状況を披露しているだけじゃ、メルトは軍備や周囲状況はどうだ?」
「ええ、兵力は単身で一万「武」の者も揃っております。更に兵力自体も志願、学園卒業者中心に増えております、教育システムが確立されておりますので、ただ、東地域、という全体での話しとなると、メルト以外がそれほど強国ではありません」
「また、現在対しているのが向こうの大軍将のガレスという事になりますので進軍して破るという状況でもなく、隣接地が連合としては北しかありませんので」
「そうじゃな、そもそもメルト側が天然の要塞じゃし、攻める意味が薄い有利な条件を捨てるのも馬鹿らしいからの。何かするとしたら誘引策となるが、相手がガレスと成ると、ヘタな挑発は無理じゃろうな、しかも、北は兵も将も揃いすぎくらい多いからの」
「まあ、相手がガレスでも、うちのダンナのジェイド‥いえ、軍将なら正面から打ち抜けなくもありませんけど」
「?!」
といきなりマリアが声を挙げて立ち上がった
「ジェイドじゃと?!「あの」ジェイド=ホロウッドか!?」
「は?、はい、ご存知でしたか?」
一同「?」だったが、マリアは無理やり落ち着いて座った
「あいつ、メルトにおったのか、しかもダンナじゃと?‥」
「お知り合いですか?」
「うむ、昔うちの国の武芸会に参加して、いきなり優勝した奴じゃある約束があってのう‥‥」
「そうでしたか」
「音信不通だからどっかでのたれ死んだかと思っていたが、メルトに雇われとったか」
「雇われたというか、私が武芸の教師として招いて、そこでエリザベートの東軍に攻められたのでメルトを捨てるという判断はしなかった、そのままなし崩しな感じですね」
「ふーむ‥、ま、それは後で聞こう、話を止めてすまんかった」
「いえ」
「これで全方位の責任者が揃いましたが改めて全体戦略を話したいと思いますが」
「そうですな」
「とは言え、わらわも今の所、これと言った明確な「策」がある訳ではない、と言うより、もう少し時間を稼ぎたいのもある」
「と、言うと?」
「うむ、南戦から北伐に掛けて、どうも妙に皇帝の戦略ミスが目立つからじゃ」
「そうですわね、自ら戦力分断を行っていますし、基本的な事が抜け落ちているようにも見えます。ソレ前も戦力分断はして居りましたが、兵の多さと速攻で勝ってきましたが、今の状況にあって同じ事をするというのも間違いだと思います」
「左様じゃ、消極的ながら、向こうのミスを更に待ちたいというのも一つある」
「更に重ねてくれれば、ですが」
「うむ、そこで、策というより、基本方針のような物があるにはある」
「お聞きしたいですね」
「これまで通り、各国軍備を増強しつつ防備主体、向こうの焦りを突いて、尚且つ嫌がらせの攻めを続け、敵の疲弊と判断の誤りを更に誘発させたい」
「南でシャーロットやカリス軍がやった削り作戦ですか」
「うむ、ただ、個々の状況判断がより一層必要になるが」
「うーむ」とマリアの言を聞いて一同は各々考えていた
まず最初にアレクシア=猫が同意する
「奇策をかける「余地」も「必要」もたしかにありませんね、大規模な何かが発生するまで只管向こうを追い込むのは正しいと思います、自然と瓦解する可能性も出てきますし。更に工夫するなら、向こうの人材の「数」を更に圧迫したいと思います」
「うむ、せっかく包囲戦略に成ったのだからのう」
「はい、多方面からの突きで、更に向こうの将を分断しつつ戦うのが良いのですが、ただ」
「そうね、実際それが出来る「地域」の問題ね、現状マリア様の西、かしら」
「後は我ら北から対峙しているベルフの北軍への嫌がらせ、ですかね」
「メルトとガレス東軍は戦力が拮抗しているし、勝ち負けは兎も角痛いですし、こちらの南地域もまだ、クルベルに6千で防備以上は厳しくあります」
「うむ、故に、圧迫戦略と共に「時間稼ぎ」を続けてもう少し状況の変化を待ちたいという事じゃ」
「妥当ですな。」
「そこで、先ほど指摘のあった通り、主に攻めはわらわが行う、後は奪取したトレバーからじゃな。ただ、兵は余るのだが、やはり将が厳しい、付ける軍師もおらん」
「では、獅子の国から人材、北連合から兵、というのはどうでしょう」
「頼めるか?」
「はい、私はアリオスを止めねばなりませんから、動けませんので、主軍補佐のハンナがおりますのでそれを、将や武芸者も数人は派遣できるでしょう」
「うむ、有り難い、ただ、向こうは西南にシャーロットやエリザベートがおる、武芸ならそれとあわせられる者、戦術でもシャーロットに好きにやらせないくらいのが欲しいのう」
「それはやってみないと‥、まあ、武芸や指揮、武装なら問題無いのですが」
「そうじゃな、ま、ぶち抜いて勝つ訳でもないしな、そこまで贅沢は言えんか」
「うーん‥じゃあ、うちのダンナか私が行きましょうか?」
「ほ、ほんとか!」
「え、ええ、ハッキリ言ってこっちは守勢一本のが効率がいいですし、どっちかメルトに残ればガレスが出ても止められると思うので」
「え?!え?、マルガレーテさんって武芸も!?」
「え、一応、そもそも魔法剣士ですし」
「しかし、相手は八将じゃぞ!?」
「うーん、ダンナがエリザベートよりちょっと上くらいだからたぶんあたしでもいけるでしょう」
「エ、エリザベートより上?!?」
「どういうレベルなんじゃ二人は‥」
「あ、エヘー‥」
まあ、それはそうでしょうね、とアレクシア=猫も思った。そもそも人間じゃないんだし
その「ダンナ」もドラゴンスレイヤーである、人間の最高到達点に居るのは明白だ、まあ、人の事は言えないのだが
「まあ、兎に角よろしく頼む、基本方針も全体の展開待ちの、小中戦闘の繰り返しになる、また、不足する部分も「国家の拘り」を捨てて何でも相談、要請せよ」
「了解しました」
「とりあえず、全方面で「渡し」を付けてあるので、即応が可能じゃろう」
「あ、そうだ、皆さんこれを、伝心のイヤリングです」とマリーが例の「エンチャントイヤリング」をバラバラと10個ほど、テーブルに置いた
そこでまた、マリアが立ち上がる
「伝心じゃと!!!ももも貰っていいのか!!!」
「え、ええ、ど、どうぞ‥」
(マリア様‥また‥)と どこかで見たような光景の再現にエルメイアは呟いた
全部強奪する勢いだったが流石にマリアは自重して其々の責任者と分配した
「ああああ」と泣きそうだったが
そこで一同の顔合わせと、とりあえずの基本戦略が決定され其々解散となった
ただ、援護派兵と人員だが、メルトはジェイドが出される事になる「文武」となればマリーのが適任だが、前線で活躍するのを渋った為である
「何で俺なんだ‥」
「あたしが目立っても困るでしょうに、色々追求されたらやだもん」と言って決定された
銀の国でも「人材不足」の解消の為、先年からグラムの娘となったバレンテイア、実子のクルツらが共同で色々当ったり、見出したりもしたのだが。兎角武芸の者が少なく、お国柄か政治官の類だけ偏って増える
それ自体、まあ、有り難い事ではあるが。現状、マリアが居る限りその面で不足する事が無いのが困り者である、何しろ、銀の国200年に一度の政治的駿才の名君である、代わりが必要な訳はないのだ
ただ、バレンティアが主軍に加わった事、指導力がフリットに劣らぬ名士である事。女性としては「異常な強さ」優雅で美しく優しい人である為、弟子やある種「同姓ファン」の様な物は大量に増えたのだが
そこから育成となると何年か後の話なら兎も角、即、直ぐに使える戦力にするのは無茶であり、割りと時間が掛かるのである、それでも「これは?!」という即戦力の名士は1人だけ出た
フランチェスカ=ランペールという20歳の女性、元々軍属の一騎士で、下級貴族の出である、どこがどう極めて凄いという事もないのだが兎に角バランスが良い
適正を図る為にバレンティアは色々な武器を持たせてみたのだが、剣を振るっても、槍を持たせても、盾を持たせても劣りが無いという万能型で指揮も学もという非常に珍しいタイプである
その時点でも指揮は中隊、数百ならソツなくこなし武でも、「鍛えればフリットに並ぶかしら?」という能力があった為主軍での一部隊を任せた。判断に優れて、命令を厳守する為、軍の中では非常に使い易い
無い者、出ない者をねだっても仕方ないので。マリアは元々多い兵を志願中心に増強もしていた
更に、北から齎されたマニュアルから、運べる大型機械弓や対人投石、大型輸送、重装備兵も創設
元々国家財政が豊か過ぎるくらいである為その辺りの兵装の増強に一切問題は無かった故である
また、「戦略家でもあり戦術家でもある」マリアにとって「戦場での打つ手」が多いに越したことはないのである
大陸連合会談から一週間後には最速でメルトからジェイドが銀の国に来援する
マリーは転移でジェイドを運んで
「じゃよろしくね」とさっさと帰った。また、マリアに捕まると仕事が増えるし帰れないからだ
正直ジェイドも気が進まない、やはり彼も過去にマリアに捕まった経験がある、だが、国家間の戦略の一環、と言われれば拒否も出来ないのだ
もちろん、銀の国の謁見の間でマリアに飛び付かれて、木に捕まる動物状態になった
「おぬし~終わったら戻ると言ったじゃろ~なんで連絡くれんのじゃ~」と、グチグチ言い続けられた
「ああ、話す話す、とりあえず降りろ!」とマリアを引き剥がして床に置いた
「まあ、いいじゃろう、さっさと話せ」と玉座に戻って何時もの片肘頬杖足を組んで座った
その後、長い話ではあるが、旅でメルトに辿り着いた事、竜と出会えた事
戦って引き分けた事、竜は戦いの後他の大陸に旅立った事、マリーにその為の武器を依頼して作成してもらい、その後のベルフとの戦い、結婚の事を「マリーがその竜である事を隠して」アレンジを加え全て話した
その場にいた近習含め、あまりの事に驚いて居たがマリアは感慨深そうにしていた
「そうじゃったか‥わらわの「男」に出来んかったのは残念じゃが、まあ、あのマリー殿では仕方ないのう、それに、あの時のわらわの「目利き」が間違っていなかったのも嬉しい事じゃ」
「まあ、いいじゃないか、また、会えたんだし」
「しっかし、ここまでの剣士になるとはのう‥まさかドラゴンスレイヤーとは‥」
「実際はお情けの引き分けだがな、向こうは飛ばなかったし、武器自体も、マリー、クルスト製の魔法剣がなきゃボロクソ負けだったろうし」
と背中に担いだ武器を見せた
「むぅ‥」とマリアは再び玉座を降りてそれをシゲシゲと見る
「これが、現時点で最強の武器、という事になるかのう‥、しかし御主にしか使えんなこりゃ」
「見た目はな、だが実際は普通の人間でも持てる」
「ほほー、そういうエンチャント処理か」
「そうだ」
どうやらそっちに興味が移ったらしい
「せっかくじゃし、グラム辺りと試合してみるか?」と無茶を言うが「流石に竜剣士とは無理ですが‥」とグラムに即、拒否された
「兎に角、ベルフの連中と連戦になる、頼むぞ」
「ああ、最善は尽くすよ」
一方で「人材の輩出」という点では、北の獅子の国とメルトが郡を抜いて優れていた、北はロランの人事選抜眼が異常であり「個」の目立った人材があふれ
東は育成その物がマニュアル化されている効率性があり「平均的に高い」人材が排出されている
更に一方で人材強国で「あった」ベルフは、皇帝の様々な面での衰えにより、その影は潜めたが。ここでも代わりとして支えたシャーロット=バルテルスがその面を補った
父の友人の子であって、生徒の1人でもある「ラファエル」に遊撃軍として1千与え領土中央付近に置き
自分が家の主となった際、商売の取引で様々な面でパートナーを務めた豪商の「ベッツ」という中年紳士から「裏」の渡りを付けて貰い「裏社会」からも人を探した
あらゆる面からフル稼働して「国の劣化」を防ぎ止めたが、シャーロットと言えど、個人でどこまでも出来る訳では無い点、更に、皇帝そのものからの信望が厚い訳でないという所から後の話だが崩れていく事になる
そして、大陸連合側、マリアらの戦略方針からかけられる
「多重戦闘」への対処である
まず、銀の国に北から人が到着する
本国の防衛を担当していた近衛軍のニコライ=カールトンを長として補佐にハンナ
軍その物は2千だが再編して遠距離武器、投石、機械弓を揃えて、もしもの事態に自由参戦軍として後詰にクルツに1千の弓騎馬を与え出撃
トレバー砦からもキャシーらが混成軍二千で出撃してスエズの最西前線ロンデルへ向かう
更にキャシーの後ろからグラムが4千率いてトレバー砦回りに後に張り付く様に動く
まず、マリアは間にある、独立自治区の長に領土通過の許可を取り、北回りルートからニコライが徹底して遠距離によるロンデルへの仕掛けを行う
キャシーのラバスト軍は南から回って正面決戦、グラムは南街道の「千年草原」の分かれ道に陣取りスエズ側からの援軍を跳ね返す役目を受けた
更にマリアは直属軍五千を率いてデルタ砦に向かい北回りのベルフ援軍も封鎖
ロンデル自体防衛軍は三千と少ない訳ではないが、それ故、遠距離主体の包囲戦を誣いた
ここは囲まれると逃げのルートが無く孤立死しかねない為、シャーロットが自らスエズを出て援軍に向かい、ギリギリのタイミングで。ロンデル南街道別れ道での封鎖を防止したが、シャーロット自体軍は3千であり、南連合軍だけでも、グラムとキャシーと合わせて六千と倍である
戦って撃退する状況で無く、止む無くロンデルの軍だけでも生かそうと、城からの撤退を指示して自らはグラム、キャシーの軍と決戦して味方がロンデルの南街道へ出るまでの時間を稼ぐ
劣勢な上、相手も並の将でない、更に街道分かれ道を取られるわけにもいかないという極めて厳しい状況であるが
ジャスリンと自分の騎馬隊を交互左右から突撃して敵を止めつつ、重装突破兵を中央防御に当てて、一歩も下がらず丸一日稼いだ後
城から出た味方の防衛軍と合流して味方をスエズへの道、東に少しずつ逃がす策をとったが、それを容易に許してくれる相手でも無い
銀の国の「宿将グラム」である
グラムは敵が交差する瞬間を狙って自ら最前線指揮で前進突撃、陣形が交差する所に突撃を敢行され、崩れかかるがシャーロット自ら部隊を指揮し突撃に突撃を合わせ返して足止めする
その隙に陣形を再編させ全軍反転攻勢の姿勢を見せるが、形だけの事とグラムに見抜かれ前線で打ち返される
「ならば直接落とすのみ!」とシャーロットとグラムが直接前線対決、激しい打ち合いになるが、グラムもシャーロットも「武」に置いても名人
両者一歩も譲らぬ半ば一騎打ち状態になるが、10分の打ち合いの後個人戦はほんの僅かグラムに傾く
グラムは兎に角「隙」が無い、壁を撃っているような錯覚を覚える程の「守将」である年齢、経験、頑強さ、それらから差が出る
グラムは徹底して防御迎撃、そこから、合わせた剣を防御しながらも強く返して、相手のバランスを崩し、相手を圧迫する
いかにシャーロットと言えど「女性」である、この「力の防御返し」で一撃一撃ごとに疲労と肉体ダメージが蓄積される一方「向こう」は長剣を片手で振り回す頑強な武者
「なんという、力の防御将‥」
初めて当ったグラムの強さに驚いた、この相手には「長期戦」を挑んではいけなかったのだ。
だが、状況がそれを許さない、向こうの特徴が分かっても、味方の再編まで支えないといけないのである、しかし、シャーロットにも対応する物があった
数歩馬を下げつつ、槍を捨てて、剣と盾に換装して「防ぎ」にかかったそれは功を相して、更に10分稼いだ
シャーロットには「どの武器で戦っても名人」という特徴と武器があった、知に置いてもそうだが、シャーロットは偏りが極端に少ない所謂「万能将」であった為である
そこで味方が立ち直り、前線の打ち合いを個人戦から集団戦に少しづつ移行して、この個人・部隊戦を打ち切った後、味方を収集して後退迎撃を展開する
グラムも「これ以上は無理だな」と見切って、近接から半撤退の相手に弓での削りという遠距離に切り替えて敵をいくばか削った後両軍後退した
連合側はロンデルを奪取、そのまま占領軍としてニコライらが滞在防衛しグラムは本国へ撤収、キャシーらもトレバー砦へ後退
地形条件から、ニコライらの北軍二千でも防衛には十分と考えたトレバー砦とロンデルの位置からも敵が攻め返してきても二正面作戦を展開出来る故である
その為「あえて最速での奪取」を行った
そもそもベルフがここを再奪取しても先の戦闘の様に寧ろ維持、防衛が厳しいのである
マリア軍自体はこの時点で総軍二万を超えており、出そうと思えば出せるのだがなるべく北軍から兵を出す戦略を取った
10日後にリッカートから援護軍1500の来援と共にそのままロンデルに合流させクルツも引かせる
デルタのマリア直属軍はロンデルの奪取を受け、やはり一戦もせず撤退して終えたが
ここでマリア直属軍は本国でなく、トレバー砦の最北の領土線に滞在施設の建設を行う、大軍でのデルタ牽制を行ったのはクロスランドからの援軍の封鎖が一つと、この「中立街道」監視施設の建設がもう一つの目的である
言わば、トレバー、ロンデルの両地域の更に後詰を確立させるためと。ここを更に「連合合同地」としてどの方面連合軍が滞在しても良いように開放した
何れの事だが「連合側」の兵と人の移動、各国独自の戦争参加を、各個の判断で自由にさせる目的がある
連合側はロンデルの奪取した事により、またも「ベルフの領土」が奪取される事態となった
「ま、そりゃそうでしょうね‥」
「西と南、もう西前線と言っていいか、ここに兵力を集めて防ぐしかないな」
森街の維持を命じられ動けなくなったアリオスとロベールは
アリオスの司令部の会議室でそう言った
「打てる手が無いですからねぇ」
「そもそもシャーロットに掛かる負担がでか過ぎる。それでも何れ崩れる」
「ご尤もです」
「お前ならどうする?」
「さあ‥スエズとクロスランドまで引いて防備ですかねぇ。そこで向こうの前線の距離を長くして分断戦とか」
「後は防備で上手く立ち回って削っていくしかないな」
「まあ、我々が北を放棄して戻って防衛に加わるのがいいんですが」
「だろうな、何故こっちだけ戦力分断を自らやる必要があるのか」
「向こうの兵力を圧倒的に上回るなら各方面同時に押せばいいんですけどね」
「戦争5,6年目まではそれで行っていたからな」
「ええ、強引に見えますが、こっちが攻めている間は。同時に向こうも削れますし、まあ、物量作戦ですね」
「立ち直る機会を与えず削り倒せば良かったからな、カリス王子のやり口を続ければいいだけだ」
「はい、ま、何があってもマリアに挑んではいけなかった。つまる所はそれですよ」
「やはりお前もそう思うか」
「ええ、ま、済んだ事を言ってもしかたないですが」
「現時点ならどうする?」
「うーん、やるとしたら‥ですが、南を全力で落とす、ですかね、ガレスさんと包囲戦が出来ますし数の上では南は少なめですから」
「その後南西、東、西、だな」
「全く持って同感です、やりやすい所から戦略条件を整えながら落とせばいいだけです」
「それはいいとして、防備だが」
「はぁ、アルベルトさんが戻りましたので、数は5,6千防備に回るでしょう」
「それも逆な気がするが‥」
「はい‥アルベルトさんを北で専守、私とロベールさんが戻るが妥当でしょうね」
「そもそも、北等攻める意味も維持する意味もないからな、囮に置いておけばいい、そもそもアイツは守りならどうにかする」
「ご尤もで‥」
「と、言っても、勝手に動く訳にもいかんからな我らは「将」だからな」
「まあ、いいでしょう、西のお手並み拝見という事で‥」
「珍しく消極的だな」
「いえ、具申はしてますけどね、却下されてるだけで‥」
「そうか、ならしかたないな」
「とりあえずの方針ですが、北から嫌がらせの攻めがあるかもしれないので」
「ああ、それは俺がやる、向こうも全軍反撃するほど暇じゃないだろう、そもそも俺個人としても、チカという武芸者と手合わせできるからな」
「楽しみがあっていいですね」
「状況を嘆いてもしかたないからな」
そこでロベールは席を立って解散となった。ただ、アリオスとしても「ただ」傍観している訳にもいかなかった
「キョウカさん、イリアさん」
「はい?」
「ここはさしてやる事が無いので中央に戻っていていいですよ」
「けど‥」
「向こう、連合側の動きを見ていてくれませんか?後、姫百合さんを軍と共に西前線で活かしてください、指揮は委任、もしくはシャーロットさんに、ここに置いても遊兵になるだけです」
「成程‥」
「アリオスさんが1人になりますが‥」
「女人隊が居るので大丈夫ですよ、それにいざ戦争になっても前に出るつもりもないですし、ま、ロベールさんが居ますからね」
「ご命令とあらば‥」
と、アリオスは手持ちの配下からも中央へ戻す、現状ではそれが「出来る事」であった
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