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傭兵団編
大陸連合
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ベルフ本国から出立したアルベルトの軍が中央街道突破を強行し、成功、出口にある森の集落を占拠。北伐への橋頭保を確保する
この作戦に本国周辺の兵力をほぼ全軍使った為、南方に集められた軍が中央に呼び戻される
まず、当初ロベールに預けられた3軍のうち1軍がエリザベートと共に西へ、一軍3千が本土周辺へ。ロベールに預けた残り一軍、3千をそのままシャーロットの貴下に入り指揮をまかされる
この情報は全国を駆け巡りエルメイア達も知る事になった
「まさか北伐を成功させるとは‥」と一同驚いた。この時点ではまだ明らかになっていないが皇帝は例の「スヴァート」の増強、拡大をこの半年で急ぎ。アルベルトに預けて強行突破を成功させた、その情報は身内すら知っている者は僅かだった
その1人の元に。来客が訪れていた
シャーロットは自室で書類整理をしていたが扉をノックされ「どうぞ」と声をかけそちらを見た、入ってきた彼女のその姿を見て思わず立ち上がって声を上げた
「ローザ!」と
「お久しぶりです、お嬢様、いえ、主様でしょうか」
ローズマリー=メリカント、通称ローザ。シャーロットの「家」に仕える代々の執事の家の娘で友人と言っていい間柄である。シャーロットが書簡を送って最も早く求めたのがこのローザである
再会を喜びあうのもそこそこに、まずローザが
「早速ですがシャルル様お客様が見えて居ります、お通しして宜しいですか?」
「え?ええ‥」
「どうぞ」と招き入れる
「やあ、どうもお久しぶりです」そう言って現れたのはアリオスだった
「な!?なんで貴方が?」
「いえ、別に赴任では無く、色々話に来ただけですよ、個人的に」
「まあ、いいわ、座って」
両者はお互いの従者を後ろに置き応接テーブルを囲んだ
「で、個人的に、とは何ごとかしら?」
「ええ まず、北伐ですが例の「スヴァート」を500預けて成功させた様です」
「でしょうね、アレなら例の「矛」レベルの武芸者でなければ相手にならない」
「ご存知でしたか」
「王子に預けれられた50人実験的に使ってみたわ」
「ほう‥誰に、と聞くのも野暮ですかな」
「聖女よ、結果失敗したけど、強力なのは分かったわ」
「流石シャーロットさん、優先度を分かっておられる。そこでそれに関連した事なんですが」
「ええ、北伐を成功させた事による、連合の拡大ね」
「そうです、北への突破を成功させたのは返ってマイナスになります、追い詰められた相手が聖女の手を取る事になると、そうなります」
「そうなると寧ろ、ベルフが追い込まれる」
「左様です。東西南北敵に囲まれる事態になります、それに連動して攻められると手が回りません」
「兵で劣っている訳ではないけど、人材がね。質は兎も角、量が。その辺は私も色々手を尽くしているけど」
「ええ、ですがそれは続けてください、当面北以外動けない状況ですし、時間はあります。それに、何れ私かシャーロットさんか誰か北伐に加えられるでしょうし、そこは陛下次第ですが」
「アルベルトでは不安ですからね。しかも北には「獅子の国」があるし」
「そこで私は「事」が起こった場合に備えて「スヴァート」をあるだけ用意して貰うようにお願いしてます、それと指揮官を選抜しました。私とシャーロットさん、どちらが召還されるかわかりませんので。どっちがこの周辺から離れても、行動出来る様に部隊の全容情報を共有して置きたいと思いまして」
「尤もですね。ではお願いします」
「はい、まず指揮にこちらの八重さんを当てます、スエズに残しておきますので何かの場合彼女に」
八重、と呼ばれた、どう見ても10代の少女が歩み出て頭をたれる「よろしくお願いします」とだけ言って下がった
「正直、あまり感心しないわね」
「同感ですが、そうも言ってられません、それで、これが詳細です」
アリオスは書類の束を渡して。立ち
「ロゼット様を1人には出来ませんのでね、直ぐ戻ります」
「ええ、では」と二人は別れようとした
が、アリオスは扉を開けた所で振り返ってこちらを見た
「何?」と思わず、シャーロットは声を掛けた
アリオスは「もし、もしもの事があったら‥」俯いてそう言った後
「コンスタンティ先生の事を思い出してください。彼なら何とアドバイスするか。それを考えて行動してください」
「‥え、ええ、私は何時もそのつもりだけど‥」
「はい、ですが、ここぞという場面になると人間中々、そういった思考は出来ない、もうどうしていいか分からない、そういう判断を求められる場面がありましたらぜひ思い出してください」
「分かったわ、けど‥何故急にそんな事を?」
「今までなら、我々は追い込まれる事はありませんでしたが、事此処に至っては、難しい判断を求められる。そして、今後、そうなる可能性が大いにある、という事ですよ」
「‥そうね。アドバイスは素直に受け取っておくわ」
「それなら結構です、では」とここでアリオスは去った
シャーロットとローザの二人だけになった部屋で、さっそくと二人は報告をする
「それで、頼んでおいた件だけど」
「ハイ、候補に12人、一応選びましたが‥」とリストを懐から出すローザ、それを受け取って思考した後
「即使えそう‥且つ信用が置けるのはジャスリンくらいかしら」
「分かりました、直ぐ呼び寄せませす」とローザは部屋を出た
その後、捻出、再編した兵1千がクルベルに予備兵として送られ、代わってロベールが北伐、アリオスがエリザベートと入れ替えでやはり北伐任務に加えられる
皇帝は「クルベルには後で兵を送る」としたが南方をシャーロットと王子で防ぐ事にはなる、総兵力では7千に上るので無茶という程ではない、兎角北伐の兵を確保したいが故の人事である
一ヶ月して、ショットが戻りフラウベルトの城に上がる
「じゃじゃーん!」と持ってきた魔法具が一メートル四方の鏡である
「銀の王都にもこれと同じ物が一枚置いてある、これで向こうとこっちで話せるという優れものだ」
「なんと‥」と、エルメイアもアンジェも興味深そうにそれを覗いてみるが確かに自分の顔は写らない「渡しの鏡」というらしい
あまりの珍しい道具にフラウベルトの軍官やら近習の物まで集まってどれどれと皆覗き込む
向こう側は銀の国の謁見の間らしく誰も居ない王座が写っている、一同がガヤガヤしていると
「おぬしら顔が近いぞ離れろ」と鏡の向こう側から言われ
「す、すみません」と一同離れる
そこに向こう側の王座に少女が現れ、玉座に足を組んで片肘頬杖で座る、軍官と思われる青年が彼女の隣に付く
「マリア=フルーレイトじゃ」
そういわれ「こちら側」の一同が驚き其々の立ち位置に下がって礼を取った、思わず「あれがあのマリア‥」と言いそうになるが冷静さを無理やり作った
「聖女エルメイアで御座います陛下」
「うむ、で、わらわに如何な用か?」
「はい実は‥」
エルメイアはフラウベルト側や南方連合の現在の状況、守勢に徹するとりあえずの方針、今後の情勢等いかにすべきか、決めかねている現状、並びにエルメイア自身が「事」が動いているならそれを大きく広げたいと自身とアンジェが考えている事を伝えた
「ふむ‥」とマリアは姿勢を一切変えず眼だけ閉じて考えていた
「聖女とアンジェなる者の意見は尤もじゃ、特にこの数ヶ月で状況が目まぐるしく変わっているそうしてもよかろう」そう応えた
マリアにそう同意され、アンジェもエルメイアも表情が明るく変わった
「こちらから攻める、という意見も出ておりますが如何思いますか」
「南方3国の領主国等の兵力が落ちているからの、守って結果を出すのは難しい、が、クルベルを攻めるには少し早い、ロベールが居なくなったが、兵力は7千ほど居る、まして城攻めで被害が大きければ、来るであろう次の戦いに対しての防御が出来なくなる。そちらの連合の各国軍官の「守勢」の意見も尤もじゃ」
「ではやはり、守って維持するのが最善であると?」
「一理ある、というだけじゃ。「事」を広げるという意見も積極策としては正しい、ただ」
「ただ?」
「わらわ個人としては、このまま守っても兵の回復力で劣る南方地が時間を浪費してもジリ貧になる、とは思う。守るのであればもっと上手くやらねば、攻めて来た相手をボコボコにして兵を削るくらいの「上手さ」が必要じゃ。が、今のようなやり方では時間の経過と共に戦力差が開き後が厳しくなると思う」
「でしょうね‥」「たしかに」
とフラウベルト側の一同から声が挙がる。それ以上マリアは言わず目を閉じて相変わらず思考しているようだったそれだけ難しい判断なのかもしれない
しかしマリアは一つ投げかけた
「そちらが積極策に出る。というのであれば、こちらも動けるが。聖女はどうお考えか?」と
「はい、私は進むべきだと思います」そうエルメイアは返した
マリアは大きく頷き「分かった、ではやろう」そう言って動く事に同意した
おお‥と一同も「決断」したことに歓喜とも驚きとも取れる声を上げた
「それには準備がかなり要る、同意してもらえるか?」
「はい」
「では、まず、今日のうちに例の南方連合を「大陸連合とする」宣誓を出してもらいたい、無論盟主は貴女で次席盟主としてわらわに」
「え?!それは?」
「ベルフの北伐が始まって北ルートへの派兵もかなりの規模で始まるじゃろう、今ならそちらに兵力が集中している。更に尻に火の付いた北側の各国もこの連合に同意、加わる可能性が高い。そこで、同意すればわらわの軍から北への援護派兵を考えると次席盟主として告知、向こうにチラつかせて釣る、これで向こうも断らんじゃろう」
「なるほど‥」
「幸い銀の国は兵も余っているくらいじゃし北派兵へのルートも過去の作戦で確保してある、これでまず、わらわも兵の使い道が出るし、南方、西方も手薄になる可能性が出て来る。」
「北にベルフの兵を釣る、という事ですか」
「そこまで上手くいくとは思えんがそうなれば幸いじゃ。ようやく確保した北進軍ルート皇帝も焦っているようじゃし、今がチャンスとも言える」
「分かりました、今日の内に宣誓して、各国への布告も出しましょう。ヘイベル!」と軍将に即準備をと伝える
「で、じゃ、こっちから派兵するのは良いのだが、兵は居ても将がおらん。そっちから幾人か将を送ってくれ」
「お、おう、じゃあ俺が‥」とショットが言いかけて
「お前はいらん、そのまま南に居て指揮しろ。だいたい、貴様が戻って預けた兵は誰が指揮するんじゃ」
速攻否定された
「あ、あの、では誰を」
「軍の指揮が出来る奴じゃ、ついでにエリザベートを止めれるくらいの奴が1人は欲しい、そっちには其のレベルの武の者が多いんじゃろ?」
「まさか西を攻めるのですか?!」
「形だけな、エリザベートもこっち方面に釘付けにしたい。あれの部隊は足が速いし、機転を利かせて、南に行かれても困る、精々、西とベルフの姫の所に縛り付けて置きたい、アリオスが居なければわらわの知略でどうとでもなる」
これに対してフリットが
「難しいな‥軍指揮が出来て、個の武力でエリザベートを止めるなんて‥俺とグレイのセット、あるいは‥」
そこまで言ってチラッとバレンティアを見た。というより他に候補が居ない、武ならカミュかライナだろうが部隊や軍の指揮経験など皆無だ
「わ、私ですか?!」思いっきり全員で見られては流石に気づく
「とりあえず1人は決まりだな」ともうそこで決まっていた
「ま、まあ、勝てるかと言われると微妙ですが、止めるだけなら‥」
「シャーロットと互角だったろお前」
「それも勝てるかと言われると‥」
「いや、それでいい、ついでにわらわの部下になってもいいぞ」とマリアにニッコリ言われて決定されたのでもう断れない
「しかし、百人騎馬も止めるとなると矛から人も出さんとな」
と、結局銀の国へ行くメンツは、バレンティア、カティ、パティ、団2軍150人に決定され即日出立の準備が行われる
「後そっちの連合軍、人事の情報を全部よこせ、書で送るのは無理じゃろうから口頭でここで頼む、策を練るのに必要じゃ」
「は、はい」
「何れにしろ、2ヶ月以上先の話じゃ、宣誓して広く、大陸全土に呼びかけ受け入れる。ライティスの矛のメンツがこっちに着くのを待ち軍の用意もする、ベルフの北伐メンバーの将のアリオス、ロベール、アルベルトが全部北に現れるのを待つ、一度北に出てしまえば戻るのは困難じゃ全部の条件が整うのに最低、最速でも2ヶ月後じゃ」
「しかし、その後は?」
「御主らがクルベルを落とす」
一同「!!??」
「そ、それは!?どういう‥」
「ま、落とせるか、というのは運次第じゃが。分の悪いカケって程でもない。また、クルベルを抑えれば南進自体は止まるし。東、南街道から南方攻めも出来なくなる、各国に侵攻出来るルートさえ潰せば、今までの様にフラウベルトが援軍派兵して、防ぎとめる等、非効率な事をせんでも良くなるじゃろ」
「たしかにそうですが」
「後、向こうがやった城攻めをこっちもやるべきじゃろう、送った金でなんとかしろ」
「投石器や機械弓ですか‥」
「うむ、作るのはたいして金はかからん重装備兵より数も要らんし、多ければ多い程いいが」
「分かりました、全力を尽くします」
そうして「大作戦」の方針が決定され、準備が急ピッチで進められ
まず当日「大陸連合」の告知が成され、今だベルフの支配を受けていない国々への参加の呼びかけが行われる
同日夕方には「銀の国」へ団の選抜メンバーが出立する
残った団のメンツで夜、官舎で話し合いが行われる、というより雑談だが
「やはりマリアは別格だな、ま、鏡越しだが、実際あれだけ聞くと否定する所がない」
「ですね、頼りになるレベルが違います」
「それに凄い美少女ね」
「まあ、そうなんだけどよ、性格は悪いぞ?俺の扱い悪いし」
「それはショットに問題があるんじゃ‥」
「ぬぐ‥」
「とにかく、我々も戦いと即応の準備だ、どのような策が出されるのか分からんからな」
「了解」
驚いた事に翌日朝には向こうから呼びかけられ、とりあえず人事が指示される
「おい、誰かおらんか?」とマリアから呼ばれ、アンジェと聖女が対応した
「とりあえず、向こうに動かれた場合可能性は低いのだが対応する人事を伝える。フラウベルトから無駄な兵と人を出されては困るし。わらわから見て御主らの人事に無駄が多いのでな」
「は、はい」
「まず、このアクセル=ベックマンという奴を、スカイフェルトから出し隣国カサフの主将に据えて守らせろ。スカイフェルトは兵自体500も残して篭城させておけば問題ない、今ある1700の兵を分けて1200そのままカサフに集中しておけ、こいつなら野戦をやらせてもどうにかするじゃろ。それともっと高い立場を与えて自由にやらせろ」
「しかし、他国の将を主将にするのですか?」
「今はどこどこの国という拘りを捨てよ。連合が一つの国として動かねばベルフに対せぬ」
「わ、わかりました」
「ついでに拒否されたらそう言ってごり押ししろ」
「なるほど‥」
「次に、東南の砦の街はそのままロック=ヘリベウトを充てて守らせよ物の道理を弁えた奴じゃ、何かあっても冷静な判断をする。こいつも東砦の主将に充て自由行動させろ」
「次にもしもの対応にフラウベルトからキャシー=ゴールドに即応させよ、軍も当人が持ってきただけの人数で良い。こいつらは全軍騎馬隊だし早いし、キャシー自体の武力が高いそうじゃし、南東砦はベルフの東軍と隣接しておるガレス辺りが出ても、それで足止め出来る、それで不足するなら、ショットの小僧を出しておけ「銀の軍」も高速騎馬、弓騎馬等の馬中心の機動軍じゃ、この二者なら「武」でも対応出来るし、援軍速度も速い、あくまで、フラウベルト主力は温存せよ」
「それと、主軍の軍師にアンジェラを充てよ、戦略戦術に優れた者を後ろで遊ばせておくには勿体無いシャーロットもカリス王子も「知」の人じゃ、それに対抗させよ」
「で、出来ますかね‥」
「出来ずとも良い、向こうの打つ手に邪魔出来ればいい。向こうが「何でもかんでも自由に出来る」状況を妨害出来ればいい10打てる物を5に減らすだけでも抑制効果が出る。ついでに言うと今までの経過を見る限り、御主の判断は間違っておらん「積極性」があれば、もっと活躍できる」
「はい、全力を尽くします」
「次にカミュエル=エルステルとライナ=ブランシュを常に交代でどちらかを聖女に付けろ、例の変な暗殺者が出ても困る。この両名なら撃退できるじゃろ」
「次に「事」が始まるまでこっちから動くな、今まで通り、逐次的対応を見せかけろ「侵略が止まって良かった良かった」という顔をして其の時まで過ごしておけ、向こうに見抜かれても困る、攻城兵器も同じだ」
「それと送ったうちの軍船2隻をこっちに戻せ。途中南西地域クリシュナのシューウォーザーの所に寄らせる様に指示を、向こうからそっち行くハズだった援軍を停止してこっちに回して貰うあそこは騎士の国だけに優秀な軍指揮官が多いハズ、活かすなら兵の多いこっちで使う」
「それだと、南西地域の軍力が低下し過ぎませんか?」
「ベルフが南西に進軍するなら、銀の国から軍を出し南下する、反対側から突いてやれば、南進を停止せざる得ない、ま、その可能性はほぼ0じゃが」
「以上だ」
メモを取りながら、アンジェが応えた
「はい、かしこまりました」
それから更に10日、大陸北地域の殆どがマリアの告知に対し連合への参加を承認、宣誓書を送ってくる
そこから二日、東地域の代表としてメルトから使者が二人訪れメルト並びに周辺国の宣誓書を持参して現れ、フラウベルトの謁見の間でエルメイア、マリアに面会
「メルトの使者、マルガレーテで御座います両陛下、それとあたくしの弟子でメルトの近衛で御座います」
「ウェルチ=ドナティウです」と両者、傅き挨拶をした
「恐ろしく早いのぅ‥直接持ってくるとは」とマリアが言ったが
「あたくし、術士ですので、飛べますから」
「なんとまあ珍しい、まあよい、わらわに礼など不要だ、ざっくばらんにたのむ」
「わかりました」と立ち上がる、がマリアはその姿を見て王座から立ち上がり驚いた
「な!?」
その反応が意外すぎてエルメイアが思わず聞いた
「どうされました?‥マリア様」
「どうされたではない!マルガレーテ殿の着けている装飾品‥全部エンチャンターの石だぞ!!」
「エンチャンターの石?たしかに珍しいですけd」
「ばか者!30個は付けて居るぞ!この大陸にエンチャンターの武具や装飾品がいくつ現存してると思っている!」
「え?ええ?!」
「わらわですら7個しか持っておらんのだぞ!!」
「という事は‥」
「ししし信じられん‥いったいどういう事だ‥」
「あ、あ~えっと~」とマリーは思いっきり目が泳いだ後
「じ、自作品でございますわ、オホホ」
「な!!??」と更にマリアは驚いた
「御主!エンチャンターなのか!!」
「え、ええ」
「たしかにめずらs」とエルメイアが言いかけて再びマリアが
「ばか者!!!!エンチャント技術等とっくに失伝しておるわ!!」と再び怒鳴られた
「どどどこにそんな技術や魔術が残っているというのだ!!」
「あー、えっと、あたくし海難事故で外の大陸からこの地に流されて来まして‥、外の大陸にはレアな魔術も技術もまだ、少ないながら残っておりますですハイ」
そこまで聞いてようやくマリアは納得して落ち着いたらしく再び王座に座った、肩でハァハァと息をしていたが‥
「そうじゃったのか‥外と交流が無いだけに、全くの初耳じゃ、だがそれなら納得じゃ‥」
「お、落ち着きましたか?マリア様‥」
「う、うむ‥ビックリ過ぎて死ぬところじゃった」
そこで何か思い出したらしく
「ちょっと待て、という事は最近市場に出回ってる新品の武具は‥」
「え、ええ、クルストとあたしの共作品です」
そこでまたマリアが立ち上がる
「なんと!!あの武具の作り手の片方は御主じゃったか!」
「そんなにすご・」とエルメイアが言いかけてまたもマリアが
「何を言っておるか!伝説級の武具じゃぞ!!剣一本で豪華な屋敷が二軒は買えるぞ!!」
「ええ?!」
これは収集がつかないと思ったマリーは
「落ち着いてください、マリア様、暇が出来ましたら、陛下の下にも伺いますので今はどうか‥」
「ほんとか!絶対じゃぞ!!」
「は、はい必ず‥」
「ハァハァ‥それにしてもメルトにその様な者が居るとは‥、なんと羨ましい‥そなたは一体どういう立場なのか」
ようやくまた落ち着いて、ようやくまた座った
「メルトではフラウベルトに習って学園を創設しております、そこで魔術や戦略、の授業、教員の育成等をしております。先年の開戦の際、陛下お付きの軍官として参加しておりまして今は名誉職を与えられて細々と生活しておりますわ」
「なんという無駄使い‥わらわの所にくれば厚遇するのに‥」
「結婚したばかりですので、まだ、離れるというのは」
「そうか、では致し方ない、その件は置こう、が、頭には入れといてくれ」
「分かりました‥」
「あのマリア様?」
「おおう、そうじゃった、連合への参加を歓迎する。ただ、東地域に兵の援助をするのは難しい。領土が隣接してるのが現在攻められている北だけじゃ、もう少し全体の戦局が動いてからという事になるが、そこは了承願いたい」
「はい、問題ありません、メルトは単身でも一万の兵を揃えて居りますので。独自防衛が可能です、むしろこちらから北への派兵人員を考えております。また、学園が功を相し、「知」と「武」の者も多く揃っていますので現状連合他国からの援助もさほど必要ありません。隣接地ではありませんので、こちらからも兵は二千程度は出せますが人材や将も出せます、相互に協力出来ればと思います」
「分かりました」「了解した」
「それとメルトは大陸国家では2,3番目に豊かな国、資金的な援助もかなりの額が可能です」
「具体的にどのくらいかの?」
「そうですね‥予備費だけでも常時20万は御座います、緊急時となれば倍は捻出できるかと」
「ほほ~これはなかなか‥」
そこに大荷物を抱えたフラウベルトの衛兵が10人程現れる
「それと、挨拶代わりに、戦時に置いて役に立ちそうな私の自作武具をお持ちしましたお役立てくd」
とマリーが言いかけた所でまたマリアが驚いて立ち上がった
「なななななんじゃと!!!まことか!」
「‥」もうエルメイアはツッコミのを止めた
「つ、通常の剣や盾には「堅牢」処理したアンブレイカー、重い武具には「風の加護」を付与されたフェザー、空気の盾をを張れる指輪、術士の魔力消費を肩代りする石を20神聖術の国で必要とは思いませんがヒーラーの石を10ほど‥」
「ヒ、ヒーラーの石じゃと!初めて聞いた、そんな物まで作れるのか!?」
「は、はい、あたくしが使える術なら、大抵何でも詰められますので‥」
「よ、よし!5個よこせ、いくらじゃ!」
「いえ、贈り物ですので‥進呈いたしますが‥」
「んぬなんだとぉ?!正気か!!」
結局剣を5、槍を2、必中の弓を2、斧1、反射盾1、壊れない盾1、指輪5、石類を30、が謁見の間にズラリと並べられた。
それを見てマリアは恍惚の表情でサウナに半日居た後のように玉座の上で軟体生物の様になっていた
当然と言えば当然だろう、ここにあるだけで世界規模の美術館が開かれるだけの物が一同に会しているのだ、しかも出土品では無く、全部「新品」である
分かる人が見ればその場で失神するか心臓発作で倒れるレベルだ、なんだかんだで、マリアが7割方これを強奪
剣とヒーラーの石を分割してフリット、ロック、ショットらに、斧の使い手が居ないので斧をキャシーに、盾の指輪や肩代りの石を神聖術者でもあるエルメイアと武の心得の無いアンジェに。弓をカティ姉妹にとなった
残りをほぼマリアが貰う事にしたハッキリ言って自分が欲しいだけである、マリアは以降、話もそっちのけでずっと鏡の前に張り付いて
「あ~今すぐそこに行きたい~人生最良の日じゃ~~」と繰り返していた
「そ、そこまで‥」とあまりの普段とギャップのあるマリアの子供の様な態度を見て
エルメイアは即日マリアの分のエンチャント武具を配送させようとしたが帰りがけにマルガレーテが
「じゃあ、ついでにあたしが飛ばして運びますわ」と言ったので任せる事にした
彼女は「飛行」や「転移」の術が使えるらしい。一体どういう人なのか、と両女王とも仰天した
困った事が一つあった、マリーがそのまま銀の国に行って届けたが、当然マリアに抱きつかれ離して貰えず、五日間メルトに帰れなかった事だろう
ついでに珍しい種類のエンチャントアイテムもアホ程作成依頼された事だ
また、一連の事情を聞いたマリーは再び蜻蛉帰りでフラウベルトに寄り
「ウェルチを聖女の護衛に」とウェルチを残してマリーはそのままメルトに戻った
同日、クルベルのシャーロットは無理は承知で人材の確保に当たっていた、呼び寄せた1人ジャスリン=ビショップがいち早くクルベルに来訪する
「シャルル!」と会った途端シャーロットに抱きつく
ジャスリンはシャーロットの生徒の1人18歳。豪族、所謂成り上がりの成金の家の娘で生徒でもある
本来こうした家がシャーロットのような名家の者を招いて教師など、家の「格」が違うのでありえないのだがジャスリン=ビショップはあらゆる面に置いて理想的な生徒で才能豊かだったので弟子として迎えた
戦術面と術、特に馬術と槍が優れており、早くから軍に推薦して、才能、技術で、即騎馬隊として活躍する
「ランサー」に成る為に生まれてきた様な子でシャーロットの下に即置いても活躍出来る力があり、事「馬上槍試合」に限ってはシャーロットと互角である
更に、ベルフへの忠誠心の高さ、シャーロットに15歳で推薦され軍に入れてもらった、また、そこでの働きで受勲も受け「家」その物も「貴族」に上げられた為
シャーロットに対する尊敬、感謝、など高く、部下として最も理想的であった
これでどうにか「自分しか頼れない軍」の打開を図った
そこから5日、マリアは準備を整え、元々共闘同盟にあった北隣国、ワールトールと協議、とりあえずワールトールの将の指揮で混成軍を2000と金、兵糧、武器等、北に送る、この時点で銀の国に将が届いて居らず
どちらかと言えば、金と兵糧を送る輸送軍の意味合いが強く戦闘参加は見送られる、また、獅子の国はベルフに対して、独自防衛が可能なほどの強国である所以である
更に言えばせっかくの兵もこれと言った将をつけねばベルフの北軍とは戦えまいと考えての事だ
ベルフの北軍はこの時点でアリオスもロベールも到着していなかったので今のところはそれで十分と考えていたが、アルベルト単体でも戦端を開き、森の街から北進速攻で自治区の街を占領に成功していた。単純に数の差と特殊部隊の力だった
「大陸連合」の宣誓から20日、マリアの元にライティスの矛がクリシュナ回りで港から小型船を使って到着、さっそくカティとパティに必中弓を与え、バレンティアと会談する
一対一でエリザベートを止められるか?という話で馬上斬り合いでは自分はレイピアなので、ヘタに打ち合うと負けると過去にも言った通り説明、そこで
「通常剣でもやれるか?」と聞かれ
「使えます」と応えたので。エンチャント武器の「堅牢」中型剣を与えられる
ただ、口だけで「強い」と言われてもさっぱりなので、グラムと試合させてみる
殆ど軍の8割の兵や城の者まで集まって一種お祭りになった
銀の国の主将グラムバトルとの御前試合である、ある意味当然である
二人は全く互角で10分も打ち合ったがお互い無被弾でビデオがあれば撮っておきたいレベルの名勝負を見せた
グラムは感想を
「達人、名人と言って良いレベルです、ショットの小僧より1枚上手ですな。しかもムラも隙も全く無い様式美の様な極まった美しさの剣筋です」と絶賛した
「グラム殿もその域にありましょう、しかも防御に優れ、危ない場面を作りません、陛下は最高の剣と盾を同時に持っています」とバレンティアもグラムを称えた
「よし!これでメドが立ったな」マリアもそう言った
「ところでこの作戦が成功したらうちに来んか?厚遇するぞ?」とさり気無く勧誘も忘れない
「え?!は、はぁ‥考えておきます」
「わらわは優秀な奴が大好きじゃ~」と言って顔をすりすりしてくる
「ちょ!ま‥」
それをほほえましくも呆れて見るグラム、まあ、いわゆる「何時もの事」なのだ、ただ、グラム自身も「そうなったらいいな」と思っていた
ハッキリ言ってグラムでも惚れ込む程の名剣士であるし極めて正統的な技の持ち主で指導者としても恐らく優秀、自分も高齢となれば後釜にと、考えても不思議でも無かった
実際夜の会食の場で彼女の事を聞いてみると、彼女の生い立ちは非常に厳しく複雑な物だった。両親は東の国の貴族で暗殺に倒れ、家は無くなり、その暗殺者だったアーリアに拾われ
親代わりでもあり仇でもあるアーリアに剣を習いつつ一緒に旅し、そのアーリアさえも国の兵団に殺され、今の傭兵団に流れ着く。という波乱万丈の人生を語ってくれた
一同はしばらく言葉も無かったが
「終わってみれば、悪い思い出、て事もなかったわ」とバレンティア自身が笑って言ったのだ
「たしかロッシュブルグ家と言えば国の軍高官を努めた名家じゃな‥」
「しかもアーリア=レイズの義理の子で弟子とは‥」
「アーリアは自分の事を分かっていながら、私に何かを残そうとしたわ、最初にこういったの「私より強く成れば、親の仇である私を殺して仇を取れるぞ、だから強くなれ」てね」
「なんとも曲がった愛情じゃな」
「かもね、けど私はだから今がある「技」と「レイピア」を残してくれた、別に不幸な事とも思わないし、それに、旧傭兵団も似た様な生い立ちの子は多いしね。マリアだってさほど違わないんじゃない?」
「ま、そうかも知れんな、終わった事をとやかく言ってもしかたない、わらわはそう思う」
「そ、ショットだって孤児だし、でも全然暗くないでしょ?境遇を呪った所で何も良い事はないわ」
「ご尤もじゃな、沈んでいてもなにも良い事は無い」
グラムもマリアもバレンティアの精神的強さと資質に感銘を受けた。これ程の人物にはめったに会えないだろう、と
陣営を違くするのがこれほど無念に感じるのは初めてだったかもしれなかった
この作戦に本国周辺の兵力をほぼ全軍使った為、南方に集められた軍が中央に呼び戻される
まず、当初ロベールに預けられた3軍のうち1軍がエリザベートと共に西へ、一軍3千が本土周辺へ。ロベールに預けた残り一軍、3千をそのままシャーロットの貴下に入り指揮をまかされる
この情報は全国を駆け巡りエルメイア達も知る事になった
「まさか北伐を成功させるとは‥」と一同驚いた。この時点ではまだ明らかになっていないが皇帝は例の「スヴァート」の増強、拡大をこの半年で急ぎ。アルベルトに預けて強行突破を成功させた、その情報は身内すら知っている者は僅かだった
その1人の元に。来客が訪れていた
シャーロットは自室で書類整理をしていたが扉をノックされ「どうぞ」と声をかけそちらを見た、入ってきた彼女のその姿を見て思わず立ち上がって声を上げた
「ローザ!」と
「お久しぶりです、お嬢様、いえ、主様でしょうか」
ローズマリー=メリカント、通称ローザ。シャーロットの「家」に仕える代々の執事の家の娘で友人と言っていい間柄である。シャーロットが書簡を送って最も早く求めたのがこのローザである
再会を喜びあうのもそこそこに、まずローザが
「早速ですがシャルル様お客様が見えて居ります、お通しして宜しいですか?」
「え?ええ‥」
「どうぞ」と招き入れる
「やあ、どうもお久しぶりです」そう言って現れたのはアリオスだった
「な!?なんで貴方が?」
「いえ、別に赴任では無く、色々話に来ただけですよ、個人的に」
「まあ、いいわ、座って」
両者はお互いの従者を後ろに置き応接テーブルを囲んだ
「で、個人的に、とは何ごとかしら?」
「ええ まず、北伐ですが例の「スヴァート」を500預けて成功させた様です」
「でしょうね、アレなら例の「矛」レベルの武芸者でなければ相手にならない」
「ご存知でしたか」
「王子に預けれられた50人実験的に使ってみたわ」
「ほう‥誰に、と聞くのも野暮ですかな」
「聖女よ、結果失敗したけど、強力なのは分かったわ」
「流石シャーロットさん、優先度を分かっておられる。そこでそれに関連した事なんですが」
「ええ、北伐を成功させた事による、連合の拡大ね」
「そうです、北への突破を成功させたのは返ってマイナスになります、追い詰められた相手が聖女の手を取る事になると、そうなります」
「そうなると寧ろ、ベルフが追い込まれる」
「左様です。東西南北敵に囲まれる事態になります、それに連動して攻められると手が回りません」
「兵で劣っている訳ではないけど、人材がね。質は兎も角、量が。その辺は私も色々手を尽くしているけど」
「ええ、ですがそれは続けてください、当面北以外動けない状況ですし、時間はあります。それに、何れ私かシャーロットさんか誰か北伐に加えられるでしょうし、そこは陛下次第ですが」
「アルベルトでは不安ですからね。しかも北には「獅子の国」があるし」
「そこで私は「事」が起こった場合に備えて「スヴァート」をあるだけ用意して貰うようにお願いしてます、それと指揮官を選抜しました。私とシャーロットさん、どちらが召還されるかわかりませんので。どっちがこの周辺から離れても、行動出来る様に部隊の全容情報を共有して置きたいと思いまして」
「尤もですね。ではお願いします」
「はい、まず指揮にこちらの八重さんを当てます、スエズに残しておきますので何かの場合彼女に」
八重、と呼ばれた、どう見ても10代の少女が歩み出て頭をたれる「よろしくお願いします」とだけ言って下がった
「正直、あまり感心しないわね」
「同感ですが、そうも言ってられません、それで、これが詳細です」
アリオスは書類の束を渡して。立ち
「ロゼット様を1人には出来ませんのでね、直ぐ戻ります」
「ええ、では」と二人は別れようとした
が、アリオスは扉を開けた所で振り返ってこちらを見た
「何?」と思わず、シャーロットは声を掛けた
アリオスは「もし、もしもの事があったら‥」俯いてそう言った後
「コンスタンティ先生の事を思い出してください。彼なら何とアドバイスするか。それを考えて行動してください」
「‥え、ええ、私は何時もそのつもりだけど‥」
「はい、ですが、ここぞという場面になると人間中々、そういった思考は出来ない、もうどうしていいか分からない、そういう判断を求められる場面がありましたらぜひ思い出してください」
「分かったわ、けど‥何故急にそんな事を?」
「今までなら、我々は追い込まれる事はありませんでしたが、事此処に至っては、難しい判断を求められる。そして、今後、そうなる可能性が大いにある、という事ですよ」
「‥そうね。アドバイスは素直に受け取っておくわ」
「それなら結構です、では」とここでアリオスは去った
シャーロットとローザの二人だけになった部屋で、さっそくと二人は報告をする
「それで、頼んでおいた件だけど」
「ハイ、候補に12人、一応選びましたが‥」とリストを懐から出すローザ、それを受け取って思考した後
「即使えそう‥且つ信用が置けるのはジャスリンくらいかしら」
「分かりました、直ぐ呼び寄せませす」とローザは部屋を出た
その後、捻出、再編した兵1千がクルベルに予備兵として送られ、代わってロベールが北伐、アリオスがエリザベートと入れ替えでやはり北伐任務に加えられる
皇帝は「クルベルには後で兵を送る」としたが南方をシャーロットと王子で防ぐ事にはなる、総兵力では7千に上るので無茶という程ではない、兎角北伐の兵を確保したいが故の人事である
一ヶ月して、ショットが戻りフラウベルトの城に上がる
「じゃじゃーん!」と持ってきた魔法具が一メートル四方の鏡である
「銀の王都にもこれと同じ物が一枚置いてある、これで向こうとこっちで話せるという優れものだ」
「なんと‥」と、エルメイアもアンジェも興味深そうにそれを覗いてみるが確かに自分の顔は写らない「渡しの鏡」というらしい
あまりの珍しい道具にフラウベルトの軍官やら近習の物まで集まってどれどれと皆覗き込む
向こう側は銀の国の謁見の間らしく誰も居ない王座が写っている、一同がガヤガヤしていると
「おぬしら顔が近いぞ離れろ」と鏡の向こう側から言われ
「す、すみません」と一同離れる
そこに向こう側の王座に少女が現れ、玉座に足を組んで片肘頬杖で座る、軍官と思われる青年が彼女の隣に付く
「マリア=フルーレイトじゃ」
そういわれ「こちら側」の一同が驚き其々の立ち位置に下がって礼を取った、思わず「あれがあのマリア‥」と言いそうになるが冷静さを無理やり作った
「聖女エルメイアで御座います陛下」
「うむ、で、わらわに如何な用か?」
「はい実は‥」
エルメイアはフラウベルト側や南方連合の現在の状況、守勢に徹するとりあえずの方針、今後の情勢等いかにすべきか、決めかねている現状、並びにエルメイア自身が「事」が動いているならそれを大きく広げたいと自身とアンジェが考えている事を伝えた
「ふむ‥」とマリアは姿勢を一切変えず眼だけ閉じて考えていた
「聖女とアンジェなる者の意見は尤もじゃ、特にこの数ヶ月で状況が目まぐるしく変わっているそうしてもよかろう」そう応えた
マリアにそう同意され、アンジェもエルメイアも表情が明るく変わった
「こちらから攻める、という意見も出ておりますが如何思いますか」
「南方3国の領主国等の兵力が落ちているからの、守って結果を出すのは難しい、が、クルベルを攻めるには少し早い、ロベールが居なくなったが、兵力は7千ほど居る、まして城攻めで被害が大きければ、来るであろう次の戦いに対しての防御が出来なくなる。そちらの連合の各国軍官の「守勢」の意見も尤もじゃ」
「ではやはり、守って維持するのが最善であると?」
「一理ある、というだけじゃ。「事」を広げるという意見も積極策としては正しい、ただ」
「ただ?」
「わらわ個人としては、このまま守っても兵の回復力で劣る南方地が時間を浪費してもジリ貧になる、とは思う。守るのであればもっと上手くやらねば、攻めて来た相手をボコボコにして兵を削るくらいの「上手さ」が必要じゃ。が、今のようなやり方では時間の経過と共に戦力差が開き後が厳しくなると思う」
「でしょうね‥」「たしかに」
とフラウベルト側の一同から声が挙がる。それ以上マリアは言わず目を閉じて相変わらず思考しているようだったそれだけ難しい判断なのかもしれない
しかしマリアは一つ投げかけた
「そちらが積極策に出る。というのであれば、こちらも動けるが。聖女はどうお考えか?」と
「はい、私は進むべきだと思います」そうエルメイアは返した
マリアは大きく頷き「分かった、ではやろう」そう言って動く事に同意した
おお‥と一同も「決断」したことに歓喜とも驚きとも取れる声を上げた
「それには準備がかなり要る、同意してもらえるか?」
「はい」
「では、まず、今日のうちに例の南方連合を「大陸連合とする」宣誓を出してもらいたい、無論盟主は貴女で次席盟主としてわらわに」
「え?!それは?」
「ベルフの北伐が始まって北ルートへの派兵もかなりの規模で始まるじゃろう、今ならそちらに兵力が集中している。更に尻に火の付いた北側の各国もこの連合に同意、加わる可能性が高い。そこで、同意すればわらわの軍から北への援護派兵を考えると次席盟主として告知、向こうにチラつかせて釣る、これで向こうも断らんじゃろう」
「なるほど‥」
「幸い銀の国は兵も余っているくらいじゃし北派兵へのルートも過去の作戦で確保してある、これでまず、わらわも兵の使い道が出るし、南方、西方も手薄になる可能性が出て来る。」
「北にベルフの兵を釣る、という事ですか」
「そこまで上手くいくとは思えんがそうなれば幸いじゃ。ようやく確保した北進軍ルート皇帝も焦っているようじゃし、今がチャンスとも言える」
「分かりました、今日の内に宣誓して、各国への布告も出しましょう。ヘイベル!」と軍将に即準備をと伝える
「で、じゃ、こっちから派兵するのは良いのだが、兵は居ても将がおらん。そっちから幾人か将を送ってくれ」
「お、おう、じゃあ俺が‥」とショットが言いかけて
「お前はいらん、そのまま南に居て指揮しろ。だいたい、貴様が戻って預けた兵は誰が指揮するんじゃ」
速攻否定された
「あ、あの、では誰を」
「軍の指揮が出来る奴じゃ、ついでにエリザベートを止めれるくらいの奴が1人は欲しい、そっちには其のレベルの武の者が多いんじゃろ?」
「まさか西を攻めるのですか?!」
「形だけな、エリザベートもこっち方面に釘付けにしたい。あれの部隊は足が速いし、機転を利かせて、南に行かれても困る、精々、西とベルフの姫の所に縛り付けて置きたい、アリオスが居なければわらわの知略でどうとでもなる」
これに対してフリットが
「難しいな‥軍指揮が出来て、個の武力でエリザベートを止めるなんて‥俺とグレイのセット、あるいは‥」
そこまで言ってチラッとバレンティアを見た。というより他に候補が居ない、武ならカミュかライナだろうが部隊や軍の指揮経験など皆無だ
「わ、私ですか?!」思いっきり全員で見られては流石に気づく
「とりあえず1人は決まりだな」ともうそこで決まっていた
「ま、まあ、勝てるかと言われると微妙ですが、止めるだけなら‥」
「シャーロットと互角だったろお前」
「それも勝てるかと言われると‥」
「いや、それでいい、ついでにわらわの部下になってもいいぞ」とマリアにニッコリ言われて決定されたのでもう断れない
「しかし、百人騎馬も止めるとなると矛から人も出さんとな」
と、結局銀の国へ行くメンツは、バレンティア、カティ、パティ、団2軍150人に決定され即日出立の準備が行われる
「後そっちの連合軍、人事の情報を全部よこせ、書で送るのは無理じゃろうから口頭でここで頼む、策を練るのに必要じゃ」
「は、はい」
「何れにしろ、2ヶ月以上先の話じゃ、宣誓して広く、大陸全土に呼びかけ受け入れる。ライティスの矛のメンツがこっちに着くのを待ち軍の用意もする、ベルフの北伐メンバーの将のアリオス、ロベール、アルベルトが全部北に現れるのを待つ、一度北に出てしまえば戻るのは困難じゃ全部の条件が整うのに最低、最速でも2ヶ月後じゃ」
「しかし、その後は?」
「御主らがクルベルを落とす」
一同「!!??」
「そ、それは!?どういう‥」
「ま、落とせるか、というのは運次第じゃが。分の悪いカケって程でもない。また、クルベルを抑えれば南進自体は止まるし。東、南街道から南方攻めも出来なくなる、各国に侵攻出来るルートさえ潰せば、今までの様にフラウベルトが援軍派兵して、防ぎとめる等、非効率な事をせんでも良くなるじゃろ」
「たしかにそうですが」
「後、向こうがやった城攻めをこっちもやるべきじゃろう、送った金でなんとかしろ」
「投石器や機械弓ですか‥」
「うむ、作るのはたいして金はかからん重装備兵より数も要らんし、多ければ多い程いいが」
「分かりました、全力を尽くします」
そうして「大作戦」の方針が決定され、準備が急ピッチで進められ
まず当日「大陸連合」の告知が成され、今だベルフの支配を受けていない国々への参加の呼びかけが行われる
同日夕方には「銀の国」へ団の選抜メンバーが出立する
残った団のメンツで夜、官舎で話し合いが行われる、というより雑談だが
「やはりマリアは別格だな、ま、鏡越しだが、実際あれだけ聞くと否定する所がない」
「ですね、頼りになるレベルが違います」
「それに凄い美少女ね」
「まあ、そうなんだけどよ、性格は悪いぞ?俺の扱い悪いし」
「それはショットに問題があるんじゃ‥」
「ぬぐ‥」
「とにかく、我々も戦いと即応の準備だ、どのような策が出されるのか分からんからな」
「了解」
驚いた事に翌日朝には向こうから呼びかけられ、とりあえず人事が指示される
「おい、誰かおらんか?」とマリアから呼ばれ、アンジェと聖女が対応した
「とりあえず、向こうに動かれた場合可能性は低いのだが対応する人事を伝える。フラウベルトから無駄な兵と人を出されては困るし。わらわから見て御主らの人事に無駄が多いのでな」
「は、はい」
「まず、このアクセル=ベックマンという奴を、スカイフェルトから出し隣国カサフの主将に据えて守らせろ。スカイフェルトは兵自体500も残して篭城させておけば問題ない、今ある1700の兵を分けて1200そのままカサフに集中しておけ、こいつなら野戦をやらせてもどうにかするじゃろ。それともっと高い立場を与えて自由にやらせろ」
「しかし、他国の将を主将にするのですか?」
「今はどこどこの国という拘りを捨てよ。連合が一つの国として動かねばベルフに対せぬ」
「わ、わかりました」
「ついでに拒否されたらそう言ってごり押ししろ」
「なるほど‥」
「次に、東南の砦の街はそのままロック=ヘリベウトを充てて守らせよ物の道理を弁えた奴じゃ、何かあっても冷静な判断をする。こいつも東砦の主将に充て自由行動させろ」
「次にもしもの対応にフラウベルトからキャシー=ゴールドに即応させよ、軍も当人が持ってきただけの人数で良い。こいつらは全軍騎馬隊だし早いし、キャシー自体の武力が高いそうじゃし、南東砦はベルフの東軍と隣接しておるガレス辺りが出ても、それで足止め出来る、それで不足するなら、ショットの小僧を出しておけ「銀の軍」も高速騎馬、弓騎馬等の馬中心の機動軍じゃ、この二者なら「武」でも対応出来るし、援軍速度も速い、あくまで、フラウベルト主力は温存せよ」
「それと、主軍の軍師にアンジェラを充てよ、戦略戦術に優れた者を後ろで遊ばせておくには勿体無いシャーロットもカリス王子も「知」の人じゃ、それに対抗させよ」
「で、出来ますかね‥」
「出来ずとも良い、向こうの打つ手に邪魔出来ればいい。向こうが「何でもかんでも自由に出来る」状況を妨害出来ればいい10打てる物を5に減らすだけでも抑制効果が出る。ついでに言うと今までの経過を見る限り、御主の判断は間違っておらん「積極性」があれば、もっと活躍できる」
「はい、全力を尽くします」
「次にカミュエル=エルステルとライナ=ブランシュを常に交代でどちらかを聖女に付けろ、例の変な暗殺者が出ても困る。この両名なら撃退できるじゃろ」
「次に「事」が始まるまでこっちから動くな、今まで通り、逐次的対応を見せかけろ「侵略が止まって良かった良かった」という顔をして其の時まで過ごしておけ、向こうに見抜かれても困る、攻城兵器も同じだ」
「それと送ったうちの軍船2隻をこっちに戻せ。途中南西地域クリシュナのシューウォーザーの所に寄らせる様に指示を、向こうからそっち行くハズだった援軍を停止してこっちに回して貰うあそこは騎士の国だけに優秀な軍指揮官が多いハズ、活かすなら兵の多いこっちで使う」
「それだと、南西地域の軍力が低下し過ぎませんか?」
「ベルフが南西に進軍するなら、銀の国から軍を出し南下する、反対側から突いてやれば、南進を停止せざる得ない、ま、その可能性はほぼ0じゃが」
「以上だ」
メモを取りながら、アンジェが応えた
「はい、かしこまりました」
それから更に10日、大陸北地域の殆どがマリアの告知に対し連合への参加を承認、宣誓書を送ってくる
そこから二日、東地域の代表としてメルトから使者が二人訪れメルト並びに周辺国の宣誓書を持参して現れ、フラウベルトの謁見の間でエルメイア、マリアに面会
「メルトの使者、マルガレーテで御座います両陛下、それとあたくしの弟子でメルトの近衛で御座います」
「ウェルチ=ドナティウです」と両者、傅き挨拶をした
「恐ろしく早いのぅ‥直接持ってくるとは」とマリアが言ったが
「あたくし、術士ですので、飛べますから」
「なんとまあ珍しい、まあよい、わらわに礼など不要だ、ざっくばらんにたのむ」
「わかりました」と立ち上がる、がマリアはその姿を見て王座から立ち上がり驚いた
「な!?」
その反応が意外すぎてエルメイアが思わず聞いた
「どうされました?‥マリア様」
「どうされたではない!マルガレーテ殿の着けている装飾品‥全部エンチャンターの石だぞ!!」
「エンチャンターの石?たしかに珍しいですけd」
「ばか者!30個は付けて居るぞ!この大陸にエンチャンターの武具や装飾品がいくつ現存してると思っている!」
「え?ええ?!」
「わらわですら7個しか持っておらんのだぞ!!」
「という事は‥」
「ししし信じられん‥いったいどういう事だ‥」
「あ、あ~えっと~」とマリーは思いっきり目が泳いだ後
「じ、自作品でございますわ、オホホ」
「な!!??」と更にマリアは驚いた
「御主!エンチャンターなのか!!」
「え、ええ」
「たしかにめずらs」とエルメイアが言いかけて再びマリアが
「ばか者!!!!エンチャント技術等とっくに失伝しておるわ!!」と再び怒鳴られた
「どどどこにそんな技術や魔術が残っているというのだ!!」
「あー、えっと、あたくし海難事故で外の大陸からこの地に流されて来まして‥、外の大陸にはレアな魔術も技術もまだ、少ないながら残っておりますですハイ」
そこまで聞いてようやくマリアは納得して落ち着いたらしく再び王座に座った、肩でハァハァと息をしていたが‥
「そうじゃったのか‥外と交流が無いだけに、全くの初耳じゃ、だがそれなら納得じゃ‥」
「お、落ち着きましたか?マリア様‥」
「う、うむ‥ビックリ過ぎて死ぬところじゃった」
そこで何か思い出したらしく
「ちょっと待て、という事は最近市場に出回ってる新品の武具は‥」
「え、ええ、クルストとあたしの共作品です」
そこでまたマリアが立ち上がる
「なんと!!あの武具の作り手の片方は御主じゃったか!」
「そんなにすご・」とエルメイアが言いかけてまたもマリアが
「何を言っておるか!伝説級の武具じゃぞ!!剣一本で豪華な屋敷が二軒は買えるぞ!!」
「ええ?!」
これは収集がつかないと思ったマリーは
「落ち着いてください、マリア様、暇が出来ましたら、陛下の下にも伺いますので今はどうか‥」
「ほんとか!絶対じゃぞ!!」
「は、はい必ず‥」
「ハァハァ‥それにしてもメルトにその様な者が居るとは‥、なんと羨ましい‥そなたは一体どういう立場なのか」
ようやくまた落ち着いて、ようやくまた座った
「メルトではフラウベルトに習って学園を創設しております、そこで魔術や戦略、の授業、教員の育成等をしております。先年の開戦の際、陛下お付きの軍官として参加しておりまして今は名誉職を与えられて細々と生活しておりますわ」
「なんという無駄使い‥わらわの所にくれば厚遇するのに‥」
「結婚したばかりですので、まだ、離れるというのは」
「そうか、では致し方ない、その件は置こう、が、頭には入れといてくれ」
「分かりました‥」
「あのマリア様?」
「おおう、そうじゃった、連合への参加を歓迎する。ただ、東地域に兵の援助をするのは難しい。領土が隣接してるのが現在攻められている北だけじゃ、もう少し全体の戦局が動いてからという事になるが、そこは了承願いたい」
「はい、問題ありません、メルトは単身でも一万の兵を揃えて居りますので。独自防衛が可能です、むしろこちらから北への派兵人員を考えております。また、学園が功を相し、「知」と「武」の者も多く揃っていますので現状連合他国からの援助もさほど必要ありません。隣接地ではありませんので、こちらからも兵は二千程度は出せますが人材や将も出せます、相互に協力出来ればと思います」
「分かりました」「了解した」
「それとメルトは大陸国家では2,3番目に豊かな国、資金的な援助もかなりの額が可能です」
「具体的にどのくらいかの?」
「そうですね‥予備費だけでも常時20万は御座います、緊急時となれば倍は捻出できるかと」
「ほほ~これはなかなか‥」
そこに大荷物を抱えたフラウベルトの衛兵が10人程現れる
「それと、挨拶代わりに、戦時に置いて役に立ちそうな私の自作武具をお持ちしましたお役立てくd」
とマリーが言いかけた所でまたマリアが驚いて立ち上がった
「なななななんじゃと!!!まことか!」
「‥」もうエルメイアはツッコミのを止めた
「つ、通常の剣や盾には「堅牢」処理したアンブレイカー、重い武具には「風の加護」を付与されたフェザー、空気の盾をを張れる指輪、術士の魔力消費を肩代りする石を20神聖術の国で必要とは思いませんがヒーラーの石を10ほど‥」
「ヒ、ヒーラーの石じゃと!初めて聞いた、そんな物まで作れるのか!?」
「は、はい、あたくしが使える術なら、大抵何でも詰められますので‥」
「よ、よし!5個よこせ、いくらじゃ!」
「いえ、贈り物ですので‥進呈いたしますが‥」
「んぬなんだとぉ?!正気か!!」
結局剣を5、槍を2、必中の弓を2、斧1、反射盾1、壊れない盾1、指輪5、石類を30、が謁見の間にズラリと並べられた。
それを見てマリアは恍惚の表情でサウナに半日居た後のように玉座の上で軟体生物の様になっていた
当然と言えば当然だろう、ここにあるだけで世界規模の美術館が開かれるだけの物が一同に会しているのだ、しかも出土品では無く、全部「新品」である
分かる人が見ればその場で失神するか心臓発作で倒れるレベルだ、なんだかんだで、マリアが7割方これを強奪
剣とヒーラーの石を分割してフリット、ロック、ショットらに、斧の使い手が居ないので斧をキャシーに、盾の指輪や肩代りの石を神聖術者でもあるエルメイアと武の心得の無いアンジェに。弓をカティ姉妹にとなった
残りをほぼマリアが貰う事にしたハッキリ言って自分が欲しいだけである、マリアは以降、話もそっちのけでずっと鏡の前に張り付いて
「あ~今すぐそこに行きたい~人生最良の日じゃ~~」と繰り返していた
「そ、そこまで‥」とあまりの普段とギャップのあるマリアの子供の様な態度を見て
エルメイアは即日マリアの分のエンチャント武具を配送させようとしたが帰りがけにマルガレーテが
「じゃあ、ついでにあたしが飛ばして運びますわ」と言ったので任せる事にした
彼女は「飛行」や「転移」の術が使えるらしい。一体どういう人なのか、と両女王とも仰天した
困った事が一つあった、マリーがそのまま銀の国に行って届けたが、当然マリアに抱きつかれ離して貰えず、五日間メルトに帰れなかった事だろう
ついでに珍しい種類のエンチャントアイテムもアホ程作成依頼された事だ
また、一連の事情を聞いたマリーは再び蜻蛉帰りでフラウベルトに寄り
「ウェルチを聖女の護衛に」とウェルチを残してマリーはそのままメルトに戻った
同日、クルベルのシャーロットは無理は承知で人材の確保に当たっていた、呼び寄せた1人ジャスリン=ビショップがいち早くクルベルに来訪する
「シャルル!」と会った途端シャーロットに抱きつく
ジャスリンはシャーロットの生徒の1人18歳。豪族、所謂成り上がりの成金の家の娘で生徒でもある
本来こうした家がシャーロットのような名家の者を招いて教師など、家の「格」が違うのでありえないのだがジャスリン=ビショップはあらゆる面に置いて理想的な生徒で才能豊かだったので弟子として迎えた
戦術面と術、特に馬術と槍が優れており、早くから軍に推薦して、才能、技術で、即騎馬隊として活躍する
「ランサー」に成る為に生まれてきた様な子でシャーロットの下に即置いても活躍出来る力があり、事「馬上槍試合」に限ってはシャーロットと互角である
更に、ベルフへの忠誠心の高さ、シャーロットに15歳で推薦され軍に入れてもらった、また、そこでの働きで受勲も受け「家」その物も「貴族」に上げられた為
シャーロットに対する尊敬、感謝、など高く、部下として最も理想的であった
これでどうにか「自分しか頼れない軍」の打開を図った
そこから5日、マリアは準備を整え、元々共闘同盟にあった北隣国、ワールトールと協議、とりあえずワールトールの将の指揮で混成軍を2000と金、兵糧、武器等、北に送る、この時点で銀の国に将が届いて居らず
どちらかと言えば、金と兵糧を送る輸送軍の意味合いが強く戦闘参加は見送られる、また、獅子の国はベルフに対して、独自防衛が可能なほどの強国である所以である
更に言えばせっかくの兵もこれと言った将をつけねばベルフの北軍とは戦えまいと考えての事だ
ベルフの北軍はこの時点でアリオスもロベールも到着していなかったので今のところはそれで十分と考えていたが、アルベルト単体でも戦端を開き、森の街から北進速攻で自治区の街を占領に成功していた。単純に数の差と特殊部隊の力だった
「大陸連合」の宣誓から20日、マリアの元にライティスの矛がクリシュナ回りで港から小型船を使って到着、さっそくカティとパティに必中弓を与え、バレンティアと会談する
一対一でエリザベートを止められるか?という話で馬上斬り合いでは自分はレイピアなので、ヘタに打ち合うと負けると過去にも言った通り説明、そこで
「通常剣でもやれるか?」と聞かれ
「使えます」と応えたので。エンチャント武器の「堅牢」中型剣を与えられる
ただ、口だけで「強い」と言われてもさっぱりなので、グラムと試合させてみる
殆ど軍の8割の兵や城の者まで集まって一種お祭りになった
銀の国の主将グラムバトルとの御前試合である、ある意味当然である
二人は全く互角で10分も打ち合ったがお互い無被弾でビデオがあれば撮っておきたいレベルの名勝負を見せた
グラムは感想を
「達人、名人と言って良いレベルです、ショットの小僧より1枚上手ですな。しかもムラも隙も全く無い様式美の様な極まった美しさの剣筋です」と絶賛した
「グラム殿もその域にありましょう、しかも防御に優れ、危ない場面を作りません、陛下は最高の剣と盾を同時に持っています」とバレンティアもグラムを称えた
「よし!これでメドが立ったな」マリアもそう言った
「ところでこの作戦が成功したらうちに来んか?厚遇するぞ?」とさり気無く勧誘も忘れない
「え?!は、はぁ‥考えておきます」
「わらわは優秀な奴が大好きじゃ~」と言って顔をすりすりしてくる
「ちょ!ま‥」
それをほほえましくも呆れて見るグラム、まあ、いわゆる「何時もの事」なのだ、ただ、グラム自身も「そうなったらいいな」と思っていた
ハッキリ言ってグラムでも惚れ込む程の名剣士であるし極めて正統的な技の持ち主で指導者としても恐らく優秀、自分も高齢となれば後釜にと、考えても不思議でも無かった
実際夜の会食の場で彼女の事を聞いてみると、彼女の生い立ちは非常に厳しく複雑な物だった。両親は東の国の貴族で暗殺に倒れ、家は無くなり、その暗殺者だったアーリアに拾われ
親代わりでもあり仇でもあるアーリアに剣を習いつつ一緒に旅し、そのアーリアさえも国の兵団に殺され、今の傭兵団に流れ着く。という波乱万丈の人生を語ってくれた
一同はしばらく言葉も無かったが
「終わってみれば、悪い思い出、て事もなかったわ」とバレンティア自身が笑って言ったのだ
「たしかロッシュブルグ家と言えば国の軍高官を努めた名家じゃな‥」
「しかもアーリア=レイズの義理の子で弟子とは‥」
「アーリアは自分の事を分かっていながら、私に何かを残そうとしたわ、最初にこういったの「私より強く成れば、親の仇である私を殺して仇を取れるぞ、だから強くなれ」てね」
「なんとも曲がった愛情じゃな」
「かもね、けど私はだから今がある「技」と「レイピア」を残してくれた、別に不幸な事とも思わないし、それに、旧傭兵団も似た様な生い立ちの子は多いしね。マリアだってさほど違わないんじゃない?」
「ま、そうかも知れんな、終わった事をとやかく言ってもしかたない、わらわはそう思う」
「そ、ショットだって孤児だし、でも全然暗くないでしょ?境遇を呪った所で何も良い事はないわ」
「ご尤もじゃな、沈んでいてもなにも良い事は無い」
グラムもマリアもバレンティアの精神的強さと資質に感銘を受けた。これ程の人物にはめったに会えないだろう、と
陣営を違くするのがこれほど無念に感じるのは初めてだったかもしれなかった
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結末やいかに!!
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執筆終了済みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
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時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
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