剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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傭兵団編

撤退と追撃

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更に悪くしたのは南方の神聖国フラウベルトから来る援軍のアテが外れた事にある、当初開戦前「1千程度の援軍を送る」宣言していたため、それが来ればなんとか成るという目論見だったが

この時期に来て、それが「200名程度に圧縮する」と言って実際200名送ってきた為だ

「どういう事か!」とクルベルの幹部は怒ったが継いでベルフ軍が多方面南方侵攻を行っている事を知り「別方面の国への援軍も送らねばならぬ為」と言われ。クルベル側は愕然とした

完全に戦略と戦術両面でアリオスに手玉に取られたのだ。

ただフラウベルトの援軍により僅かだが軍全体に一時余裕が生まれ。その日のベルフ軍の攻撃を凌ぎきって三日目に戦争は突入するに至る。

フラウベルトの軍兵自体がかなり守備に特化した重歩兵であり装備に掛けている金額が多い為、少数でも膠着戦に持ち込むだけの土台があるからでもある

僅かな余裕、の中、傭兵団も全軍一時後退して3時間程休息が出来たがとても足りるとは言えなかった

そのまま三日目になっても後はズルズル崩されるだけなのは誰にも分かっていた

クルベル軍はここで城内に全軍撤退し、篭城戦に移行すべきとの相談をしていたが。それで守れるかも怪しい状況であり

フリットは自らクルベル軍の指揮官に具申し、篭城前に、最後の一手を打たせて欲しいと願う。それで上手く行く確率は低いが何もせぬ訳にはいかなかった

三日目昼前、傭兵団は全隊の残り兵力180を持って、ぶつかり合う両軍の右から回ってベルフ軍の左翼中ほどに側面突撃を掛ける。エリザベートの百人騎馬の本来の戦法をそっくりそのまま真似て敢行した

それを見逃すエリザベートとアリオスでは無い

エリザベートと百人騎馬はソレを予測してフリットの隊の前に立ちはだかった

「万策尽きたか!隊長!」

エリザベートはいち早く突撃してくる

「僅かな可能性に掛けるまでよ!」と応じるフリット


一年前と同じく、双方の精兵の私兵となっての戦いだった、だが、傭兵団のあのメンツはこの時の準備をしていた、エリザベートとフリットの打ち合いを受けると思われたが1合だけしてフリットは引いたのだ

「な?逃げるか!?隊長!」

そう叫んだエリザベートの眉間に矢が飛んでくる

「チッ!」とそれを槍で弾き瞬間彼女の馬の足元に影が滑り込み、馬の足を斬った者が居た馬が嘶き倒れる、エリザベートは咄嗟に飛び降り構える

その者と対峙するエリザベート

「また貴様か!‥」

そう、ライナである、ある意味当然の選択だろう、一対一でやれそうな者をぶつけただけの事だが、そうでは無かった

「悪いが狩らせてもらうぜ!」
「貴女が落ちればそれで終りよ!」

と左右からバレンティアとショットが突撃し、上と下に切り分けて剣撃を放った

エリザベートはそれを巧みに槍斧を操って弾き返すが、即時 体の中心目掛けてロックの投げナイフが襲う

彼女はソレの軌道上に柄を滑り込ませ弾く。しのいだと思った瞬間 顔面目掛けて又も矢が襲う、顔を背けてギリギリでかわすが、バランスを崩す、その隙にライナが駆け突きを放つ

エリザベートは飛びのきながら槍を返して弾き距離を取りながら返しの槍を打ち込むが、それが「見えない盾」の魔法でガンッと弾かれる。その瞬間左右から追い縋ったショットとバレンティアが上下に斬りを放つ。

「これは避けれぬ!」

とエリザベートは体を半回転させながら軌道から逃れるが二人の手に手ごたえがあった、頬と脇腹に剣が通った

「クッ!」と声を挙げながらそのまま倒れるエリザベート。

そこにライナが突撃する一貫の終りかと思った

が。それの前に立ちはだかってクリスが剣を出して止めた。続けてエリザベートの周りに群がる団員達にも5人の女騎士達が飛び込み壁を作るように立ちはだかる

「なんだこいつら!」
「失敗か‥!」

立て続けにショットとバレンティアが叫ぶ
ライナと剣を合わせたままクリスが怒鳴る

「姉上!下がってください!、この多数陣には一人では無理です!」

もしもの事態、の為にクリスに預けてあったアリオスの近衛騎士「女人隊」である、それを素早く動かし姉を守ったのである

エリザベートは槍斧を杖にして起き上がり構えてジリジリ下がる。完全に彼女の油断だ。2,3人の武芸者なら、と一人で猪突したのを完全に逆に突かれた、流石にこの時の彼女はクリスに謝意を述べて下がった

「すまぬクリス!‥」と別の馬に乗って後退していった

傭兵団の目的は完全に崩れた。初めから敵陣の崩しを狙った部隊の突撃では無く、エリザを引き出し全軍総司令官の首を取り、戦局を一気に逆転するのが目的だった

こうなってはもはや戦闘を継続する意味も無く傭兵団は即撤収し「最後の一手」は失敗となった

後数秒あれば。のギリギリの結果だったが、それが成されなければ意味など無かった

エリザベートは後方陣に戻り手当てを受けた。左目の下の頬を僅かに。右脇腹を10センチ斬られた。彼女で無ければ致命傷だったろう

アリオスは一連の流れを見て
「ご無事で何よりです」と声を掛けた

「ご無事では無いがな‥」エリザベートは自己の愚かさに沈んでいた

「いえ、向こうのやり方が上手かっただけですよ。こちらはそれにまんまと乗ってしまった、見抜けぬ私にも責はあります、自分を責めますな」
「だが、お前は自分の近衛を、私に付けたろう「こういう事もあるだろう」と」
「‥偶然ですよ‥」
「嘘付け。」

「いやまあ‥戦局が不利になれば、起死回生の一撃を打って来る、とは思いましたがね‥」
「そらみろ。嘘つきめ」
「エリザベート様にはかないませんな」
「フン‥これで当分貴様には頭が上がらんな‥」
「いえいえ、これからも踏みつけてくださって結構ですよ」
「お前、変態か、クッ」と笑おうとしたが傷が痛んだ 「いててて」と脇腹を押さえる

「いけません、早く寝室に!」周囲の者に運ばせる指示を出す
「すまんアリオス‥以後の指揮を頼む」
「お任せあれ」

続けて、彼女に付いたクリスにも去り際に礼を言われる

「ありがとうございますアリオス様」
「どういたしまして」と短く二人は交わした

「さて、私の方はまだやる事が多いですな~。特に2つが面倒な‥うーん‥」とアリオスは悩み顔だ
「アリオス様、今後の指示は‥」彼のお付きのキョウカが尋ねる

「ええと、とりあえずエリザベート様は負傷、指揮は私が引き継ぐと告知して以後は従ってもらう様に。と、それと「うちの子ら」を全員収集。半数の5人は引き続きエリザベート様の周囲に気を配ってください。向こうは撤退、篭城するでしょうから攻城戦の用意と重装備兵を即出します、後で、クリス殿を呼んでください。とりあえずそんなもんで」
「はい」とキョウカはその命を伝える為に離れた

一方、「最後の一手」が失敗に終わったクルベル側はアリオスの予想通り。城内に撤収、篭城戦の準備に入る。

傭兵団も全軍撤退となり、メンバーは旧官舎に戻った。篭城戦となれば彼らに余り用は無く恐らく狭い門の取り合いになり人数が多い必要はなく。まず、自分達の隊員の休息を取らせた

しかし

この時一同を驚愕させる策をアリオスが仕掛ける

クルベル軍が城に引き上げるかどうかというタイミングより早くベルフ軍は総攻撃をかける。重装突破兵も最前線投入、城門閉鎖もままならず、そのまま門前の水路の橋で大乱戦になる

「休ませるとこれまでの作戦の効果が薄れるので。こののまま続けさせてもらいますよ」

この際、重装備兵300を100ずつに分け、三隊交代で城門攻略に投入それを盾にして弓と火矢を交互に浴びせかける

それを見守るアリオスの元にクリスが呼び出され話しかけた

「御呼びと聞きましたが?」
「ああ、どうもすいません、クリスさんの怪我はどうです?戦えますか?」
「え、ええ、それなりなら‥」
「エリザベート様は動けませんので百人騎馬の指揮をお願いしたいのですが」
「構いませんが‥我々も攻城戦に参加でしょうか?」
「いえ、ここは2~3時間で落とします、その後の事をお願いしたい」
「その後?‥」
「はい、城を落とすと同時に、百人騎馬を率いて、南側に逃げる敵を、特に例の傭兵団を追撃して頂きたい」
「な、まさか‥」
「はい、開戦前、エリザベート様に頼まれたいくつかの事の一つです。この状況で無理にやる必要も無いんですがやれるだけはやっておきたいので」
「しかし姉上無しでは厳しいのでは、私では役不足かと」
「ええ、なので私の手勢一千も南側進軍に全て当てます。うちの子らも残り5人貴方に付けます。ついでに言えば足止め出来れば十分ですから、クリスさんが無理に戦う必要はありません」

「わかりました‥やってみましょう‥」
「申し訳ありません、怪我人を駆りだして。」
「いえ、これは私の願いでもありますし、やらせてもらいます」
「では、2時間程度しかありませんが、休息と1時間で用意を」
「はい」とクリスは即座に動く


その予想通り、ベルフ軍は力押しで最初の一時間で城門を突破

著しい指揮の低下と疲弊のクルベル軍では重装備兵の突破を防ぎとめられなかった

が、後発参戦のフラウベルトの兵は今だ活力があり、それを必死に押し留めた

せっかく一時的にでも休めると思った傭兵団も全員叩き起こされる。フリットは国からの出立の指示を出した

「おいおい、この国捨てるのかよ」とショットが言ったが
「我々の戦いはまだ続く、ここで命運を共にするのが最終目的ではない」と言い従わせた

とは言ってもそれも容易ではない。荷物を纏めて、非戦闘員も居る、この早い判断でもギリのタイミングだろう。それだけアリオスの策は兵は神速を尊ぶを体現している

アリオスの予想通り、更に一時間後にはベルフ軍の兵が城になだれ込む

既に数の上で主軍だけで、2800対1200、更にクルベル軍の半数以上の兵はまともに戦える状態ではない

城の占拠に更に45分でカタが付いた。そこから重装備兵が街にもなだれ込み、アリオスの無傷の兵と共に占拠

ここで、準備を整えたクリス副長の代理指揮する百人騎馬が南側街道への城門へ向かう

しかしここでフラウベルトの残り170の兵が街と南門の守備を展開し一時乱戦になる

せっかく援軍に来たのに何も出来ぬでは申し開きも出来ぬといかにも武人らしい考えで必死の防衛戦を展開した

これの鎮圧に無駄に一時間近く掛かり、フラウベルの軍は鎮圧された際、残った兵は20名だった

傭兵団はこれのおかげで、どうにか南へ脱出に成功するが、クリス率いる百人騎馬がそれを追って出撃。

更に10分後、用意も半ばにアリオスの軍も300、3隊に分け出撃

アリオスは自らの手勢は100のみ残し南方側街道に移動陣を敷きながら全体指揮を取る

その中から斥候、早馬、用意半ばの物資の配送馬。を組織して、各隊との連携と情報伝達を構築し、南に出した追撃隊と城の占領政策、戦後処理を同時に行った

「ほんと過労死しますよ私‥」

傭兵団は南街道を真っ直ぐ南進した。
このまま進めば中立地域やフラウベルト領内方面に入る、それを優先したが、非戦闘員もおり、更に疲労もきわまっており、足が速いとは言いにくかった

クルベル陥落から翌日明け方。

最初に傭兵団に追いついた百人騎馬がそれを見かけて突撃を敢行

「我々に追撃隊だと!しかも百人騎馬?!」
これには流石に面食らった。

が、フリットとグレイは馬を返し、それを迎撃しつつ味方を守りながら後退指示をする。打ち合いながらズルズル下がるように撤退を図るが並の相手では無く、それは亀の移動並に遅い

その情報をいち早く受け取ったアリオスは残りの各隊に伝令を飛ばし、援護に向かわせる、自らも陣を畳んで後発する

この辺りのクルベル南領土は境界線まで街道、丘、森、川等があり軍の展開には適さないが、少数同士となれば通路での戦いになり、守る方、撤退戦を展開する傭兵団には比較的やり易い

また、百人騎馬はたしかに強敵だが、軽症のクリスが指揮のうえ、エリザベートは離脱している、いつもの強烈無比な火力は無い、が、この時点で傭兵団側もまともに戦えたのは80名程とフリットとグレイだけであり苦戦した

「最後まで一秒たりとも休ませないつもりか‥」と流石のフリットも歯をかみ鳴らした

それが2時間も続いた後 報を聞きつけ駆けつけたアリオスの分隊300が百人騎馬に加勢

このままでは領土境界線までもたぬと考えたフリットは街道に面した西森に味方を逃がす、せめて馬だけでも封じるしか手が無かった

「バラバラでもいい、南へ逃れろ!」

指示を出し自らは押しすがる敵を叩き伏せながら下がる
こうなると完全に狩る側と狩られる側になる。

いかに個々の武芸の秀でた傭兵団でも各個撃破を繰り返しながら逃れるしかなかった

それでも森へ逃れたのは効を相した。ベルフ側の追撃隊の馬足も止まり、歩兵での追撃に切り替える、どうにかそのまま非戦闘員と負傷兵は離脱に成功する

我々も、とフリット達も思ったがそこへ更にベルフの別隊が次々集結する。半ば半包囲の状態に陥り粘っていた傭兵団の兵達も次第にやられ始める

ここで
「ここが最後の粘り時だなぁ」とショットら、例の6名が最前線に躍り出る

「比較的休ませて貰ってたからね、精精働きましょうか」と細剣を抜くバレンティア

「フリット団長、下がってください」とロック

が、フリットはそうはいかない

「馬鹿言え!お前らだけで何が出来る!」と叫んだ
「それはこっちのセリフだ、そんなズタボロの奴が一人居ても邪魔なんだよ、下がれ」そうクイックは厳しく言い返した

クイックの言は全く持って正論だ、今の自分では足手まといもいいとこだ、それを理解しているが責任者として逃げる訳にはいかないのが半々である

それが分かったグレイはフリットの背後から忍び寄り刀の柄を当てて当身して昏倒させる、それを抱えて走り出した

「時間稼ぐだけでいい死ぬなガキ共」とグレイは言った

「誰が死ぬかよ。俺の黒剣士伝説は始まったばかりだぜ!」ショットは迫る敵兵を切り伏せる

「何そのダサい伝説‥」と言いつつバレンティアは神速で3人突き殺した

前線で斬り合う二人に迫る兵を即座弓とナイフを放って射殺すクイックとロック。二人に走る敵兵を飛び回る様に駆け切り倒すライナ

皆に援護魔法と治癒を掛けるイリア

かねてから連携練習を重ねてきたこの6人の動きが完璧と言って良かった

ベルフの700人近い兵は前に進めなかった程、この集団連携の足止め戦は20分稼いだが物量に対して補給が無くそこまでが限界でもあった

まず30本ありったけ持ってきたロックのナイフが切れる。
彼は双剣を抜いて継続しようとしたが
「お前は先に下がれ、連携を乱す」クイックはまず先にロックを離脱させた

次に前線で疲労が極まったショットを離脱指示を出す
「アホぬかせ、まだやれるぞ!」とショットは固辞するが
「前で倒れられると迷惑なんだよ」と従わせる

そこからバレンティアも次に下がらせる。が彼女はクイックが何をしているのか分かっていたので
「よろしくね」とだけ言って離脱した

ライナはその動きと強さは一向に衰えず一人で前線で切り捲っていた、イリアは直接戦闘は避けたが、魔法援護の連続で肩で息をし始めていた

クイックの持ってきた矢も残り20無い

そろそろだな。と感じて「お前らそろそろ引くぞ」と声を掛けたが

そうはならなかった。クイックが何をしているのか見抜いていたクリスはアリオスから預かった「女人隊の5人」と共にライナの前に出、襲い掛かった

クイックは「チッ!」と舌打ちし矢を同時に2本掛けて引きライナに群がる敵に放って援護

一人の足を捉えて戦闘不能にしたが、もう一本は避けられた同時に襲われたライナはやられるかと思ったが全ての剣撃をすり抜けて一人切り倒して横に飛ぶように離脱回避した

「な?!!」と周囲から声が挙がる

ライナはただそれを振り向いて見た。が、それを見た者は硬直した。まるで別人の様な冷たい眼と表情に

クリスにはそれが分かった。何者なのか知っているのはここではクリスとクイックだけだ

「スラクトキャバリテイターの本性‥」

こうなってはまともな武芸者では相手にならない。クリスは

「全員かかれ!バラバラに戦っては負けるぞ!」と全兵を動かし、負傷した女人隊の二人を抱えて下がり、後を物量に任せる

「マズったな、読まれたか、仕方ない」とクイックは特注のナックルガード付きのナイフを二刀構え、イリアの前に出る

「イリア、ライナに援護魔法を掛けたら離脱しろ、後は俺達が時間を稼ぐ」とだけ言って群がる兵達に立ち向かう

彼の狙いは明確だった、集団陣で時間を稼ぐ抜けても全体戦力の低下が少ない者から一人、また一人と離脱させ逃がす、最後まで自分が残り、自分も逃げる「つもり」だったが前衛が掴まる

ここで目的は崩れたが

ライナは想像を絶して強かった。襲い来る兵を迎撃等しない自ら飛び掛って次々首を刎ねる

四方八方から繰り出される剣や槍をまるで影がすり抜けるようにかわし相手を切り刻む、その倒し方も完璧だった

深く切ったりはしない、頚動脈や手や足の鎧の無い部分、肘の裏、膝の裏、の繋ぎ目を表面だけ切断して戦闘不能にしつつ

自分の速度を維持して且つ、武器の磨耗を極力減らして戦う、切って骨に当てず、決して打ち合わず。打ち合って武器が壊れたらそこで終りだから

だがそれがいつまでも続くわけではない、徐々にだが、苦し紛れの反撃の中、ライナ自身も刀を受けるが、声も挙げず、表情も変えず、戦闘を継続し続ける

それが、クイックの狙いをまたも崩した。
イリアは下がらず、ライナが受けた傷に治療魔法を掛け続けたのだ、彼女がライナを置いて逃げる等出来なかったのだ

クイックはそれを怒ろうとは思わない、今の彼にはそれをどうこういう暇も無い。ただ、一人でも多く、逃れる事しか頭にない、彼は「そういう訓練」を受けてきた者だからだ

そのうちその均衡も崩れる。イリアが力尽きるまで魔法を掛け、倒れ、ベルフ兵に捕縛される

その瞬間クイックは下がる

それに群がる兵に両手のナイフをクルリと返して持ち替え投げつけ二人に命中させ、走りながら弓と矢を拾い。残り全矢、神業の速度で打ちつくす

更に、最後の残り3本の矢を同時に弓に掛け追い縋る兵にの眉間に正確に当てて倒し最後にその弓すら捨てて、森の奥に姿を消した

ライナは負けなかった、すでに一人で50人は戦闘不能にしただろうか、もはや周りの状況など見えて居なかった

動けなくなるまで、噛み殺し続けるだけだったが、そこで、クリスは捕縛したイリアに剣を突き立て叫ぶ

「そこまでだ!お前の仲間も捕らえた!仲間の命が惜しくないのか!」と脅す

ライナはそれを無表情で見て、止まる、その場に剣を投げ捨てて、糸の切れた操り人形の様にその場で昏倒した

クリスは安堵の溜息をほんとうに心からついて座り込んだ。やっと「終わってくれた」としか思わなかった
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