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竜騎士ジェイド編
計画
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翌日、約束を律儀に守ってジェイドは一日亭の酒場で昼食を取りつつマリーを待った
「おはよー」とマリーが店に入ってきた、いきなりおかみさんに「あたしこないだの果実酒」と注文するが拒否された
「お酒出せるのは午後三時からだよマリー‥」と
「うえー!?‥じゃあ、紅茶で‥」と心底残念そうに言い注文する。
「あー、おっさん!こっちこっち」と外に声を掛ける、どうやら今日は誰か連れてきたらしい、すぐさまマリーはジェイドの座るテーブル席の対面に座る
開口一番「アルコール‥午後三時からだって‥」
食後のコーヒーを啜っていたジェイドはマリーの顔にコーヒーを浴びせかけそうになったがどうにかこらえた
「アルコールを店で出すのは午後三時から、てのは法律で決まってたハズだが‥」
「そうなの?‥残念」
(地元民なのに来たばかりの俺より物を知らないとはどういうことだよ)と思ったが言わないようにした
直後マリーの同行者と思われる中年の背はでかくないが筋肉質でガタイのいい日焼けしたおっさんが入って来て、おかみさんに「俺ビールねおかみさん」と言う
マリーと全く同じ流れで拒否されて
しぶしぶコーヒーを注文してマリーの隣に座り
「ビールだめだって‥」と心底残念そうに言う
(お前ら、親子かよ‥)と言いそうになったが面倒な流れになりそうなので自重した
二人の注文したコーヒーと紅茶が運ばれてきて二人はすすってから一息ついた、マリーはカップをおき隣に座るおっさんの紹介を始める
「えーと、こちら、たしか、クルスト=ウル=なんとかさん、鍛冶屋さんよ」
クルストは「バイスです、よろしく。クルストで結構です」と頭を下げる
「で、こちらが巷で噂の旅の剣士様、ジェイド=なんだっけ?」
「ジェイドでいい、よろしく」同じく頭を下げる
ジェイドはどっかで聞き覚えのある名前で鍛冶屋とひらめきがあり、記憶を漁ってみる。しばらく渋い顔をして考えたが「たしか!?」と思い出す
「鍛冶屋クルスト?‥て、もしや名工クルスト!?」
対面の二人は「え?」という感じでジェイドを見て
「あれ?知ってたの?お知り合いだった?」とマリーは間抜けな事いう
「左様です、巷ではそう呼ばれております」とクルストは返す
ジェイドは無知なのかふざけてるのかわからないような言い草のマリーに
「あほたれ、名工クルストの剣と言えば、剣士、王族なら誰も一振りは何としても欲しいと言わしめるほどの名剣だぞ」
「いやー‥知ってるけどさ‥、武器は見事だけど、おっさんはこの通り、ふつうのおっさんじゃん?」
クルストは「いや、いんですよ、実際ただのおっさんですし」と宥める
「それにマル‥いえ、マリーさんの、誰にも媚びない、ズケズケ言う、そういう所があっしはとても好きでしてね‥」
「え!?さりげなく愛の告白!?」
「いえ、妻にするなら、おしとやかで支えてくれるような、主張のきつくない女性が好きなので‥」と軽く流す
(なかなかマリーの扱いに慣れてるな)と思いつつ話が進まないので黙っておく
「で、マリーとクルストはどういう経緯で知り合いに?それにクルストと言えば別名「神隠し」とも言われる程会うのが難しいとも聞くが」
「はあ、あっしは街には住んでおりませんで、メルトの西の山脈付近に工房を構えて、時々出てくるんですよ」
「あたしが呼ばないと来ないのよねおっさん」
「はい、で、出会いの経緯ですが、マリーさんは魔術付与の装飾品や武具なんかを作って稼いでおりますがご存知で?」
「前に聞いたなそいや」
「で、あっしその装飾品を市場で見かけまして、これは!と思い、マリーさんに共作をお願いしたわけです」
「そそ、あたしのエンチャンターとしての技術とおっさんの名工としての技術を合わせたらさぞや、凄い武器になるのでは?と一緒に作り始めた訳よ」
「ところがですね。マリーさんのエンチャンターは効果を半永久付与するために何らかの魔石をかならずその武器に埋め込むんですがその石が何でもいいと言う訳ではなくて、エンチャンターの石そのモノが非常に高価な物で、見た目も「宝剣」の様になってしまいましてね、おまけに、その、あっしもマリーさんも気まぐれなうえ、気に入らない仕事はしないもんで作る数も少ない」
「あー‥なんとなく分かった。希少且つ、高価、更に見た目も「宝剣」更に、世界に幾人も居ないだろう、名工の技術と世界に幾人も居ないだろうエンチャント技術を合わせた剣、ともなれば‥」
「お察しの通りです。余りにも値がつり上がってしまいまして。「武器」として使う方は居られなくなる始末。例えば、西方の氷の女王と言われるマリア=フルーレイト陛下がお得意様ですが、芸術品や美術品として扱われ収集しておりまして名も値も余りに高い武器であるため、大功を立てた臣下などに最高の名誉としてあっしたちの武器を進呈する、という使われ方をされることが多く‥あっしとしては、その」
「武器は武器としての役目を果たすべき、か?」
「あっしはそう思っております」
「参考までに聞くが、どのくらいの値が付いてるんだ?」
「さあ‥あってないような値ですから‥」
「去年最後に出したミドルサイズの両刃剣は、市場だと即売過ぎるから、オークションに掛けてみたけど。金八百落札だったかしら?」
「落札されたのもマリア陛下でしたがね‥」
「ここだけ世界が違うなぁ‥」
ちなみにマリア「陛下」とはジェイドは面識があったが、二人には関係無い話なので特に言わなかった。そこまで話してクルストは本題の話を切り出す
「これは、あっしのお願いでもあるんですが‥」とジェイドを真剣は面持ちで見て
「マリーさんから依頼されたのも、もちろんありますが。ジェイドさんは大陸1の剣の使い手、更に人外の者に挑み、その為に自ら剣を用意されたとお聞きしました」
「まて、大陸1では無いと思うぞ、誰にふきこまr」
「えー‥あたしが大陸トップ20には入るならジェイドは間違いなく1番でしょ?うん」当然吹き込んだのはこいつだった
「後半は大体間違ってないが‥竜に単身挑む、てのは事実だ」
「ハイ、マリーさんにジェイドさんの剣の改造依頼を受けまして。あっし是非ともその仕事、うけさせてもらいたいと思いまして嬉々としてこうして参ったしだいで‥」
「ちょっとまて‥‥俺は金千近くも出せんぞ。手持ちをかき集めても30くらいだ‥」
「いえ、あっし「剣を剣として使う」方の為に鍛冶をやりたいのです基本は刀鍛冶ですから、しかもジェイドさんは大陸1‥の剣士かは分かりませぬが大陸屈指の使い手と聞きます。更に人造魔人とも手を合わされ、更に単身、あの竜に挑もうとされるお方、あっし、こうした夢のある話が大好きでして」
「それにあっしは金銭には困っておりません、それどころか近年の出来事でジャブジャブで使い道も無く、どうしたものかという始末、流石に材料費は頂きますが、その費用も既に受け取っておりまして‥」
「うん、あたしもう払ったよ」
クルストはテーブルに頭を擦り付け「どうか!」と頼む。なにやらおかしなことになっとるなぁ、とジェイドは変な感覚を覚えたが、こう返答する
「クルストさん、皆は貴方に剣を作って貰いたくてお願いしに行くでしょう。そのクルストさんにお願いされるというのは栄誉な事でしょうだから、俺の方からお願いします。どうか対竜用の剣を作り上げてもらえませんか?」
と言いクルストと同じように頭を下げた
「お、おお‥。もちろんです。最高の物を仕上げてご覧に入れます!」とちょっと泣きそうになってさらに返答した
ジェイドはテーブルに大剣を置く、いかにもな重量のある、ズンッという音が立ち、テーブルもギシッと音をだす
「ふーむ、かなり重いですなぁ。10キロちょいでしょうか、片刃の大剣。色々工夫の跡があちこちに見受けられますなぁ‥切れない方いわゆるミネの方、中央から割って後ろに非常に硬いが軽い黒炭鉄というのを芯に据え支え、折れないように工夫されております、切れる方の前半分には鋼鉄を据え、あえてナマクラに刃をしてあります」
「あえて?」
「そうです、これほどの重量と振り回せる力の方が使うわけですから、鋭利に加工すると自重だけで、石畳等に置いただけも刃がこぼれる、もしくは砕けます、あえて鋭角でなく丸みと厚みを作る事で「壊れにくく」してあるわけです」
「すごく考えて作ってるのね」
「色々な‥しかしさすが専門家、ズバリだな」
「ハハハ、話が早くていいでしょう?」
「で、どうするの?おっさん?」
「芯は軽く丈夫な物ですし、黒炭鉄は簡単には量が集まりませんし作るにもとてつもない時間が掛かります、このまま芯として使い、刃は鉄や鋼鉄を使うにしてもそう、硬い物と柔らかめの物を交互に貼り付け丁度サンドイッチのように作り変えましょう」
「更に壊れにくくなりましょう、ナマクラなのは多少改善しても、問題ない程度に。このままですと、本当にただの鈍器ですし、後、加工を工夫してスリムにすれば重量も多少減らせます、長さも10センチ~は削った方がいいでしょう。その程度なら使い勝手に差はありませんし前より早く振れます」
「あっしはこんなもんです、マリーさんの要求は?」
「そうねぇ‥」
と呟きながら懐から袋を出し、中から5センチ程度の綺麗に丸く加工した石をだし、置く
「この石と同じ大きさの石を最低3つは着けたいわね」
「その心は?」
「彼は純粋な剣士だし、遠距離からへの対応、並びに対抗魔法、人に強化を掛けると魔力が馬鹿にならないから、剣そのものに更に軽くするか硬くするかの付与を掛けたいわ、それでもこの大きさだと長時間戦闘になった場合、石が死んでしまう可能性や衝撃で石が破損する可能性を考慮して、埋没埋め込みはメンテが出来ないので困るわね」
「うーむ、せっかくの宝玉を埋め込むのは美しくありませんしなぁ‥外に見える様に、ええ、なんとかなるでしょう‥、かなり作業が増えますが」
「本石は同じサイズの物を用意するわ」
「いえ、石そのものにも加工、溝をつけてもらいたいので、こちらが出来上がってからそちらの用意を‥それで、可能であれば円柱にしてもらいたいんですが‥」
「筒の形に石を成型加工するの?出来るわ、後でサンプル作成して持って伺うわ」
「ハイ、ではさっそく持ち帰って取り掛かります、預かってよろしいですね?」
「もちろんだ」
「そうそう、それから、見た目は今よりかなり変わると思いますが大丈夫ですかね?」
「そこには拘らないから大丈夫だ」
「時間も余り無いようですし直ぐかかります」
「そういう事なら、別に余裕を持ってやってもいいが‥、俺の出立は伸ばせる訳だし」
「いやいや、もう、はじめたくてしかたないのですよ。こんなに燃える仕事はウン年ぶりですから」と
クルストは嬉々として剣を抱えて店を出て行った
「おっさんのあんな嬉しそうな顔、私と共作を始めた3年前ぶりくらいから、かねぇ」
「やる気がでたなら彼にも皆にもいいことだな」
二人は店の外に出て晴れの日の太陽をその身に受ける
マリーは「うん」と伸びをして
「さて、おっさんの仕事が終わるまであたしもあんまりやる事無いし帰って寝よっかなー」と
「おい」
「ウン?」
「城から仕事貰ってるだろ?忘れたか?」
「あー‥」
「忘れてたのかよ!?」
「いやーそうじゃないけど、施設も予算捻出も仕組み上の組み立て、法整備もあっちの仕事で、あたしはまだ、特に‥」
「議論の場に出てアドバイスとかしないんか?」
「面倒事はなるべくしない様に配慮してくれたのよ。ま、門外漢に口出されても嫌だろうし、てのもある」
「なるほどな、わからんでもない」
「後は教師、を集めるにも、あんまツテないし。募集は掛けるけど。後は他所の国から剣士とか軍略家とか引き抜くとか。流石に無理かなと」
「うむ‥この時勢じゃな」
「人数に制限を掛けて少なめで初めて、あたしがそこから教えるのが上手い人とか優秀な人を選抜して教員にしたり。こういう風にしてくださいというマニュアル化するか。ここは政治官、事務方は居るからやってもらう事も可能ではあるわね、いずれにしろ初めは、あたしが複数兼任しかないわね‥特に王は軍部の人が居無すぎるのを悩んでいたし」
「さっきのおっさんも誘ってみたらどうだ?名工クルストの授業は面白そうだな」
「あーいいかもね。それにあのおっさん意外に剣も出来るし」
「そうなのか?」
「うん「剣を作る者が剣を使えないでどうする!」とか言ってたし、何気顔広いし、獅子の国で、主流の剣法も習ったみたいよ?」
「つーとあれか、王国騎士団が正式採用している。‥ラウトス流剣盾術、だったかな」
「それそれ。」
「割と正統派だな‥軍向き、要人護衛向きだが」
「わが身を盾にして仲間と主人を守れーみたいな暑苦しいやつよね」
「集団ではかなり有効だけどな、重装備と馬鹿でかい盾で一列に並び、亀移動で守備展開するやつだ。」
「あんま好きくないわねぇ、それで相手に攻めさせて、装備で跳ね返し、隙を片手剣で突いて倒すやり方でしょ?」
「誰でも簡単に習得できる技っては有象無象の居る軍隊では有効だけどな。そもそもあの流派片手突きと振り下ろしの斬りしか攻撃技ないし技自体は恐ろしく単純で習得が楽だ。それ以外は殆ど体力訓練だしな‥」
「どんな事すんの?」
「フル装備と同じ重量の重り付けて丘とか浅い川を行ったりきたりとか‥」
「なにその拷問‥」
「第一あれが出来るのは、軍にかなり予算付けてる国だけだぞ‥」
「あんで?」
「想像してみろ、全身フルプレート、フルフェイス、体を隠す巨大盾にくそ重い片手剣だぞ‥あれを一軍全員に配備するとかいくら掛かるんだ」
「きもちわる‥」
「まあ、メルトも出来なくは無いだろうが、たしか財政は大陸国家では三番目に豊かなはず。軍に予算付けてないだけで‥」
「相談してみようかしら?」
「‥そんな軍隊入りたいか?‥」
「ちなみにだが。皇帝ベルフの重装突破兵てのはラウトス流の攻撃バージョンでほぼ同じだ、片手剣が片手短槍に変えられてるがな」
「益々きもちわるいわね、そんなん迫ってくるなんて」
「ま、ベターとか単純てのは案外有効なもんだって事さ、軍剣法ってのは達人育成カリキュラムじゃないからな」
「そうかも」
「あー、そいやさ?」
「どうした?」
「おっさんかなりのガチムチだよね?」
「やったんだろうな、あの訓練‥」
「おはよー」とマリーが店に入ってきた、いきなりおかみさんに「あたしこないだの果実酒」と注文するが拒否された
「お酒出せるのは午後三時からだよマリー‥」と
「うえー!?‥じゃあ、紅茶で‥」と心底残念そうに言い注文する。
「あー、おっさん!こっちこっち」と外に声を掛ける、どうやら今日は誰か連れてきたらしい、すぐさまマリーはジェイドの座るテーブル席の対面に座る
開口一番「アルコール‥午後三時からだって‥」
食後のコーヒーを啜っていたジェイドはマリーの顔にコーヒーを浴びせかけそうになったがどうにかこらえた
「アルコールを店で出すのは午後三時から、てのは法律で決まってたハズだが‥」
「そうなの?‥残念」
(地元民なのに来たばかりの俺より物を知らないとはどういうことだよ)と思ったが言わないようにした
直後マリーの同行者と思われる中年の背はでかくないが筋肉質でガタイのいい日焼けしたおっさんが入って来て、おかみさんに「俺ビールねおかみさん」と言う
マリーと全く同じ流れで拒否されて
しぶしぶコーヒーを注文してマリーの隣に座り
「ビールだめだって‥」と心底残念そうに言う
(お前ら、親子かよ‥)と言いそうになったが面倒な流れになりそうなので自重した
二人の注文したコーヒーと紅茶が運ばれてきて二人はすすってから一息ついた、マリーはカップをおき隣に座るおっさんの紹介を始める
「えーと、こちら、たしか、クルスト=ウル=なんとかさん、鍛冶屋さんよ」
クルストは「バイスです、よろしく。クルストで結構です」と頭を下げる
「で、こちらが巷で噂の旅の剣士様、ジェイド=なんだっけ?」
「ジェイドでいい、よろしく」同じく頭を下げる
ジェイドはどっかで聞き覚えのある名前で鍛冶屋とひらめきがあり、記憶を漁ってみる。しばらく渋い顔をして考えたが「たしか!?」と思い出す
「鍛冶屋クルスト?‥て、もしや名工クルスト!?」
対面の二人は「え?」という感じでジェイドを見て
「あれ?知ってたの?お知り合いだった?」とマリーは間抜けな事いう
「左様です、巷ではそう呼ばれております」とクルストは返す
ジェイドは無知なのかふざけてるのかわからないような言い草のマリーに
「あほたれ、名工クルストの剣と言えば、剣士、王族なら誰も一振りは何としても欲しいと言わしめるほどの名剣だぞ」
「いやー‥知ってるけどさ‥、武器は見事だけど、おっさんはこの通り、ふつうのおっさんじゃん?」
クルストは「いや、いんですよ、実際ただのおっさんですし」と宥める
「それにマル‥いえ、マリーさんの、誰にも媚びない、ズケズケ言う、そういう所があっしはとても好きでしてね‥」
「え!?さりげなく愛の告白!?」
「いえ、妻にするなら、おしとやかで支えてくれるような、主張のきつくない女性が好きなので‥」と軽く流す
(なかなかマリーの扱いに慣れてるな)と思いつつ話が進まないので黙っておく
「で、マリーとクルストはどういう経緯で知り合いに?それにクルストと言えば別名「神隠し」とも言われる程会うのが難しいとも聞くが」
「はあ、あっしは街には住んでおりませんで、メルトの西の山脈付近に工房を構えて、時々出てくるんですよ」
「あたしが呼ばないと来ないのよねおっさん」
「はい、で、出会いの経緯ですが、マリーさんは魔術付与の装飾品や武具なんかを作って稼いでおりますがご存知で?」
「前に聞いたなそいや」
「で、あっしその装飾品を市場で見かけまして、これは!と思い、マリーさんに共作をお願いしたわけです」
「そそ、あたしのエンチャンターとしての技術とおっさんの名工としての技術を合わせたらさぞや、凄い武器になるのでは?と一緒に作り始めた訳よ」
「ところがですね。マリーさんのエンチャンターは効果を半永久付与するために何らかの魔石をかならずその武器に埋め込むんですがその石が何でもいいと言う訳ではなくて、エンチャンターの石そのモノが非常に高価な物で、見た目も「宝剣」の様になってしまいましてね、おまけに、その、あっしもマリーさんも気まぐれなうえ、気に入らない仕事はしないもんで作る数も少ない」
「あー‥なんとなく分かった。希少且つ、高価、更に見た目も「宝剣」更に、世界に幾人も居ないだろう、名工の技術と世界に幾人も居ないだろうエンチャント技術を合わせた剣、ともなれば‥」
「お察しの通りです。余りにも値がつり上がってしまいまして。「武器」として使う方は居られなくなる始末。例えば、西方の氷の女王と言われるマリア=フルーレイト陛下がお得意様ですが、芸術品や美術品として扱われ収集しておりまして名も値も余りに高い武器であるため、大功を立てた臣下などに最高の名誉としてあっしたちの武器を進呈する、という使われ方をされることが多く‥あっしとしては、その」
「武器は武器としての役目を果たすべき、か?」
「あっしはそう思っております」
「参考までに聞くが、どのくらいの値が付いてるんだ?」
「さあ‥あってないような値ですから‥」
「去年最後に出したミドルサイズの両刃剣は、市場だと即売過ぎるから、オークションに掛けてみたけど。金八百落札だったかしら?」
「落札されたのもマリア陛下でしたがね‥」
「ここだけ世界が違うなぁ‥」
ちなみにマリア「陛下」とはジェイドは面識があったが、二人には関係無い話なので特に言わなかった。そこまで話してクルストは本題の話を切り出す
「これは、あっしのお願いでもあるんですが‥」とジェイドを真剣は面持ちで見て
「マリーさんから依頼されたのも、もちろんありますが。ジェイドさんは大陸1の剣の使い手、更に人外の者に挑み、その為に自ら剣を用意されたとお聞きしました」
「まて、大陸1では無いと思うぞ、誰にふきこまr」
「えー‥あたしが大陸トップ20には入るならジェイドは間違いなく1番でしょ?うん」当然吹き込んだのはこいつだった
「後半は大体間違ってないが‥竜に単身挑む、てのは事実だ」
「ハイ、マリーさんにジェイドさんの剣の改造依頼を受けまして。あっし是非ともその仕事、うけさせてもらいたいと思いまして嬉々としてこうして参ったしだいで‥」
「ちょっとまて‥‥俺は金千近くも出せんぞ。手持ちをかき集めても30くらいだ‥」
「いえ、あっし「剣を剣として使う」方の為に鍛冶をやりたいのです基本は刀鍛冶ですから、しかもジェイドさんは大陸1‥の剣士かは分かりませぬが大陸屈指の使い手と聞きます。更に人造魔人とも手を合わされ、更に単身、あの竜に挑もうとされるお方、あっし、こうした夢のある話が大好きでして」
「それにあっしは金銭には困っておりません、それどころか近年の出来事でジャブジャブで使い道も無く、どうしたものかという始末、流石に材料費は頂きますが、その費用も既に受け取っておりまして‥」
「うん、あたしもう払ったよ」
クルストはテーブルに頭を擦り付け「どうか!」と頼む。なにやらおかしなことになっとるなぁ、とジェイドは変な感覚を覚えたが、こう返答する
「クルストさん、皆は貴方に剣を作って貰いたくてお願いしに行くでしょう。そのクルストさんにお願いされるというのは栄誉な事でしょうだから、俺の方からお願いします。どうか対竜用の剣を作り上げてもらえませんか?」
と言いクルストと同じように頭を下げた
「お、おお‥。もちろんです。最高の物を仕上げてご覧に入れます!」とちょっと泣きそうになってさらに返答した
ジェイドはテーブルに大剣を置く、いかにもな重量のある、ズンッという音が立ち、テーブルもギシッと音をだす
「ふーむ、かなり重いですなぁ。10キロちょいでしょうか、片刃の大剣。色々工夫の跡があちこちに見受けられますなぁ‥切れない方いわゆるミネの方、中央から割って後ろに非常に硬いが軽い黒炭鉄というのを芯に据え支え、折れないように工夫されております、切れる方の前半分には鋼鉄を据え、あえてナマクラに刃をしてあります」
「あえて?」
「そうです、これほどの重量と振り回せる力の方が使うわけですから、鋭利に加工すると自重だけで、石畳等に置いただけも刃がこぼれる、もしくは砕けます、あえて鋭角でなく丸みと厚みを作る事で「壊れにくく」してあるわけです」
「すごく考えて作ってるのね」
「色々な‥しかしさすが専門家、ズバリだな」
「ハハハ、話が早くていいでしょう?」
「で、どうするの?おっさん?」
「芯は軽く丈夫な物ですし、黒炭鉄は簡単には量が集まりませんし作るにもとてつもない時間が掛かります、このまま芯として使い、刃は鉄や鋼鉄を使うにしてもそう、硬い物と柔らかめの物を交互に貼り付け丁度サンドイッチのように作り変えましょう」
「更に壊れにくくなりましょう、ナマクラなのは多少改善しても、問題ない程度に。このままですと、本当にただの鈍器ですし、後、加工を工夫してスリムにすれば重量も多少減らせます、長さも10センチ~は削った方がいいでしょう。その程度なら使い勝手に差はありませんし前より早く振れます」
「あっしはこんなもんです、マリーさんの要求は?」
「そうねぇ‥」
と呟きながら懐から袋を出し、中から5センチ程度の綺麗に丸く加工した石をだし、置く
「この石と同じ大きさの石を最低3つは着けたいわね」
「その心は?」
「彼は純粋な剣士だし、遠距離からへの対応、並びに対抗魔法、人に強化を掛けると魔力が馬鹿にならないから、剣そのものに更に軽くするか硬くするかの付与を掛けたいわ、それでもこの大きさだと長時間戦闘になった場合、石が死んでしまう可能性や衝撃で石が破損する可能性を考慮して、埋没埋め込みはメンテが出来ないので困るわね」
「うーむ、せっかくの宝玉を埋め込むのは美しくありませんしなぁ‥外に見える様に、ええ、なんとかなるでしょう‥、かなり作業が増えますが」
「本石は同じサイズの物を用意するわ」
「いえ、石そのものにも加工、溝をつけてもらいたいので、こちらが出来上がってからそちらの用意を‥それで、可能であれば円柱にしてもらいたいんですが‥」
「筒の形に石を成型加工するの?出来るわ、後でサンプル作成して持って伺うわ」
「ハイ、ではさっそく持ち帰って取り掛かります、預かってよろしいですね?」
「もちろんだ」
「そうそう、それから、見た目は今よりかなり変わると思いますが大丈夫ですかね?」
「そこには拘らないから大丈夫だ」
「時間も余り無いようですし直ぐかかります」
「そういう事なら、別に余裕を持ってやってもいいが‥、俺の出立は伸ばせる訳だし」
「いやいや、もう、はじめたくてしかたないのですよ。こんなに燃える仕事はウン年ぶりですから」と
クルストは嬉々として剣を抱えて店を出て行った
「おっさんのあんな嬉しそうな顔、私と共作を始めた3年前ぶりくらいから、かねぇ」
「やる気がでたなら彼にも皆にもいいことだな」
二人は店の外に出て晴れの日の太陽をその身に受ける
マリーは「うん」と伸びをして
「さて、おっさんの仕事が終わるまであたしもあんまりやる事無いし帰って寝よっかなー」と
「おい」
「ウン?」
「城から仕事貰ってるだろ?忘れたか?」
「あー‥」
「忘れてたのかよ!?」
「いやーそうじゃないけど、施設も予算捻出も仕組み上の組み立て、法整備もあっちの仕事で、あたしはまだ、特に‥」
「議論の場に出てアドバイスとかしないんか?」
「面倒事はなるべくしない様に配慮してくれたのよ。ま、門外漢に口出されても嫌だろうし、てのもある」
「なるほどな、わからんでもない」
「後は教師、を集めるにも、あんまツテないし。募集は掛けるけど。後は他所の国から剣士とか軍略家とか引き抜くとか。流石に無理かなと」
「うむ‥この時勢じゃな」
「人数に制限を掛けて少なめで初めて、あたしがそこから教えるのが上手い人とか優秀な人を選抜して教員にしたり。こういう風にしてくださいというマニュアル化するか。ここは政治官、事務方は居るからやってもらう事も可能ではあるわね、いずれにしろ初めは、あたしが複数兼任しかないわね‥特に王は軍部の人が居無すぎるのを悩んでいたし」
「さっきのおっさんも誘ってみたらどうだ?名工クルストの授業は面白そうだな」
「あーいいかもね。それにあのおっさん意外に剣も出来るし」
「そうなのか?」
「うん「剣を作る者が剣を使えないでどうする!」とか言ってたし、何気顔広いし、獅子の国で、主流の剣法も習ったみたいよ?」
「つーとあれか、王国騎士団が正式採用している。‥ラウトス流剣盾術、だったかな」
「それそれ。」
「割と正統派だな‥軍向き、要人護衛向きだが」
「わが身を盾にして仲間と主人を守れーみたいな暑苦しいやつよね」
「集団ではかなり有効だけどな、重装備と馬鹿でかい盾で一列に並び、亀移動で守備展開するやつだ。」
「あんま好きくないわねぇ、それで相手に攻めさせて、装備で跳ね返し、隙を片手剣で突いて倒すやり方でしょ?」
「誰でも簡単に習得できる技っては有象無象の居る軍隊では有効だけどな。そもそもあの流派片手突きと振り下ろしの斬りしか攻撃技ないし技自体は恐ろしく単純で習得が楽だ。それ以外は殆ど体力訓練だしな‥」
「どんな事すんの?」
「フル装備と同じ重量の重り付けて丘とか浅い川を行ったりきたりとか‥」
「なにその拷問‥」
「第一あれが出来るのは、軍にかなり予算付けてる国だけだぞ‥」
「あんで?」
「想像してみろ、全身フルプレート、フルフェイス、体を隠す巨大盾にくそ重い片手剣だぞ‥あれを一軍全員に配備するとかいくら掛かるんだ」
「きもちわる‥」
「まあ、メルトも出来なくは無いだろうが、たしか財政は大陸国家では三番目に豊かなはず。軍に予算付けてないだけで‥」
「相談してみようかしら?」
「‥そんな軍隊入りたいか?‥」
「ちなみにだが。皇帝ベルフの重装突破兵てのはラウトス流の攻撃バージョンでほぼ同じだ、片手剣が片手短槍に変えられてるがな」
「益々きもちわるいわね、そんなん迫ってくるなんて」
「ま、ベターとか単純てのは案外有効なもんだって事さ、軍剣法ってのは達人育成カリキュラムじゃないからな」
「そうかも」
「あー、そいやさ?」
「どうした?」
「おっさんかなりのガチムチだよね?」
「やったんだろうな、あの訓練‥」
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