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人間側の国でのトラブルも収束に向った、一番頭の痛い魔物の脅威と、隣国トラブルが同時に片付き、シュバイクとツバル、両王がマトモで穏健派であった事から不戦から同盟という形に動いて、これもあっさりまとまる
ま、勿論レオ自身は不安の種はまだある、ここまで安定して人、魔と俺の関係が強固になれば、確かに何者も余計な手出しは出来ないだろうが魔物の本国とやらがどう動くかだ。
第三勢力が強固に成れば成る程それだけ向こうからは邪魔になる、無視されるか、あるいは潰しにくるのか、だ
一応ゼノはだが
「ふん、わらわに逆らうアホ等本国にもおらんわ、仮に来ても叩き潰す」とか言ったが
「でもトップは居るんだろ?」
「ああ、魔族か、ま、あいつ等は戦力的にはそんなでもない、特殊能力や魔術に優れた者は多いが、個体や種としては竜には及ばん」
「ふむ」
事実上、単純に戦力の話だけで言えばゼノを味方にした事で、この第三勢力は魔物全体の戦力の三割近くに匹敵するらしい。それはそれで逆に怖いが‥
まあ、魔物の最上種で伝説上に近い生物だから分らんでもないが、それから竜の天敵というのは大体人間らしい、魔物側では竜を与させる相手がマズ居ない
自身も言った通りだが、竜と物理で相手出来るのが、獣族か秋くらいなもんなのでまず、何も恐れる事もない、との事だ。一応これも、皆にも聞いたが見解は略同じらしい
「まあ、ゼノの言う通りだなぁ‥あの種とまともに実戦闘でやりあえるのは昔は兎も角、今はもの凄く限られている」
「ですね。一匹、二匹なら兎も角、です」
「成る程」
「人間側で個体戦闘力と装備に秀でた勇者と同じ竜族、秋様と私達方術士。これが全て味方とあらばもう、魔族でもほんの極一部しか対抗出来ないでしょう」
「参考までに聞くけど、それは?」
「ええと、魔族でも大型の闇召喚を操れる人くらいでしょうね‥これも数名しか居ませんし、戦闘で武器を交せるのも一部暗黒騎士くらいでしょうか‥」
「暗黒騎士??」
「魔族は大体、術系と特殊能力系とかが多いんですが物理的に剣士的力を持つ者も居ますね‥魔法剣士みたいな。ただ、そういった者でも複数でないと‥」
「ふむー、じゃあ後はその獣族くらいか、ていうか其れ何?ライオンとかコカトリスとか、みたいな??」
「そういった獣系魔物を束ねている王は秋様とゼノ様とも戦えるのではないか?とは言われていますが‥。実際我々の間で戦う訳ではないので」
「それくらい才覚がある、程度の基準かあまり考え無くて良さそうだな‥」
「ええ、まあ。」
「それに仮に敵対する、命令を受けてこっちに来ても本気バトルにはならなそうんだよなぁ‥」
「どういう意味??」
「オレとはガキの頃から交流あるしな‥顔見知りというか‥」
「ああ、そうなんだ」
「とは言え、ゼッカ様、と仰いますが、獣種の血を継いで居る訳ではありませんね。元の獣の王をぶちのめしてしまった為、代表に成っているだけです、元々族を率いて居らず、単独で行動している方です」
「豪快だなぁ」
「ええ、普段は温厚で冷静な方なんですが‥キレるポイントがありまして」
「しかし獣の血を継いでないて事は何の魔物なの?」
「ええと、堕天使と亜人のハーフだとか‥我々の中では、上から数えて五番目の年長者ですね、実戦の経験と知識が秀でていますし、未だ現役で前線を務めれるのでかなり信奉されています」
「なるほど、厄介そうだな‥」
「ええ」
「それとレオさんの言う懸念ですが、対処法はあるかと、例えばエスター=フリンの時の様に罠とか」
「ふむ、しかし実際は難しいかなぁ相手が来るのが事前に分ってないといけないし誘導が必要に成る。この拠点に配するのもそれはそれで難しい、有象無象居る訳だし」
「それでしたら、エルフ側で未踏領域でも敷きましょうか?」
「それってエルフ森の結界だよね?出来るの?」
「街の周り森ですから可能ではありますね、例えば東の湖周りにラインを決めて敷くとか、そうすれば東からの侵入はかなり時間稼ぎできます、必ず掛かるという訳ではないですが」
「それもありだな‥、北と西から敵が侵攻して来る事はないし。よし、これやってみよう」
「主様、それと常時防衛なら迎撃装置を置いては如何かと」
「それもいいな。俺も少し上の闇召喚覚えたし防衛させてもいいかもしんない」
「ですね」
「ま、実際そこまで必要かも微妙だが。大した手間じゃないならやってみるか」
「では、用意しますね」
細かく言うとだが、鬼拠点の旧街は東に大きな湖に、四方河川が延びていて後はそこを中心に森林が広がる、これ自体五十キロ近くあり西側は低い山岳地もある。街の北も勿論この森が展開しているが既に、レオの方針から始めた、林業や農耕等も展開し、丁度真北にある、一般オーガの集落からも南に同じ様に狩猟や石類の生産も行われ両方の間で通り道になっている
元々の野良の獣やら魔物らは、この範囲にはまず入って来ないし魔物の本拠から何らかの行動が起こされる場合、略東からと予測されるので、北東から南東まで半月状に防御ラインを敷くのが妥当である
ま、尤も、鳳の言った通り、現状この拠点に攻めるアホは居ないだろうがまるっきり放置という訳にもいかないし最低監視部隊の類はあっていいだろう、くらいの事だ
更に一週程の間に東側にエルフ族で未踏領域を敷く。これは所謂、迷いの森という奴で、一種の幻術である
等間隔でオブジェを置き、有効範囲に侵入した相手が同じ所をグルグル回る事になる、というエルフ独自の結界で、置き場をあまり選ばない、要はそのオブジェを置いた半径数百メートルとかの有効範囲に入ると霧とか暗闇とか同じ空間でも方向感覚を失念すると言う物で簡単なトラップの割り有効である
それから元々召喚斥候を周囲に置いているレオも魔力許容量とレベルアップから幾つか習得出来たスピリットウォルフ等も放った
闇族なんかが使う召喚で、青白い透明な狼で目立つのだが、生物ではないので剣等の物理を受け付けない、またインプと同じく、召喚者の眼に成る事も可能で解除しなければ略永久に稼動しているので楽だ、これをエルフトラップの回りに徘徊監視として三匹程置いた
本拠近くでは、ゼノのお陰で魔物も増えた事もありこれらも幾つかの集団に分けて、見回りや遊撃隊も組織する、まあ、自衛軍+監視部隊みたいなもんだ
いざ何か有った際、てんでバラバラじゃ困るし人間側でトラブルが無いとも言い切れないから、役割分担は大事だ
三ヶ月程、また平和の時期が過ぎたが良くも悪くも、同じ時間というのは繰り返されないのだろう、そして、レオの懸念していた通り
「魔物側の首脳部はどう判断するのか」という部分から始まった、そう魔物の本拠点からだ
彼女は何時もの様に、暗い自身の部屋で待っていた、そこに待望の報せを持って訪問する訪問と言っても公式な報告ではない
石造りの天井から溶ける様にヌッと現れたのが自身の部下である、悪魔、見た目は黒い翼を持った重武装の女騎士だろう
彼女は無表情に傅き言葉ではなく、伝心によって報告する、一通り報告を受けた後、双方口を開いた
「そうか‥ここまでは読みどおりだな」
「既にコチラの将、三人が向こうに付きました、最早放置という訳にも参りますまい‥」
「いや‥」とだけ言って彼女は空を見た
一分そのままだったろう、何かを閃いた様に話ながらも、部屋のロックの掛かったクローゼットの様な物を開ける
「まだ一つある。動くには少し早い‥」
「左様ですか、しかし、将官会議でも既に報は届いていますが」
「次、は自ら動くとある、それで一時不満も収まる。ほっといていい」
「はっ」
「それと、もう一つ使いを頼む」
「はい?」
そして取り出した「剣」を渡した
「それを届けよ」
「これは‥しかし、何故?いえ、必要だから、ですね‥」
「うむ」
そう交わして両者離れた。疑念は持たない必要が無いから、そのまま彼女はまた空を暫く見続けた、五分して、魔物の将官会議に向う
巨大な円卓に其々の魔物種族から代表者が集まり着席する、そこから離れた上座の王座に座る、丁度全員見渡せる位置だ
会議は誰かが主導するとか段取りがある訳ではない、参加した者の自由な意見が許される、彼女は、これに口を挟む事も滅多に無い、たとえ「王」だとしてもだ
「おい、例の報告聞いたか?」
「人間の勇者か‥、厄介な話だな、伝承通りなら、だが」
「だが、戦って勝ってる訳でもないんだろ、事実、こちらの将の死亡は無く、迎合されただけだ」
「だから余計頭が痛いんだろうが」
「確かに‥。鬼姫と竜姫だからな‥しかもあの二人が抱える手下も丸ごと吸収されたわけだからな‥」
「激戦の後、二人共やられた、ならまだマシだな、削りにすらならん、疲弊させて漁夫の利で食う事すら出来ん」
「まだ詳細は出てない様だが、単に従わされているのか?それとも勇者とやらの手下になったのか?」
「おそらく後者だな、シュウとゼノの配下も無傷で向こうに従っているらしい」
「一体どんな手品師だ、強制契約か呪いでも使うのか?」
「分らん、何れにしろ、もう少し調査は必要だろう肝心な部分は殆ど分ってない」
そこで議論が止まり、沈黙したが手を上げたのが一人のメスだ
「放っておけ、という訳にも行かないわねぇ‥」
「何か手があるのか?ゼッカ」
「無いな、だが、興味はある」
「‥」
「シュウとゼノが与したという程の相手と聞けば自然と熱くならんか?」
「お前はそうだろうな」
「どうせ議論も進展が無いのなら我が行こう。知るにしろ、戦うにしろ、交渉するにしろ、経験のある我のがよい、な」
これに反対する者は居ない。何故ならこの中で最も力があるのは彼女だ。そして年長でもあるから、だが、勿論不安はある、何しろ「自分を通す」者だから
「アスタ様、ゼッカがそう申しておりますが?」そして問われ、これを良いを出した
「ゼッカがそうしたいのならそれでいい。だが、余も勇者とやらを見てみたい、可能であれば余の前に連れて来い」
「はっ、他の事は?」
「自由にせよ、殺そうが痛ぶるおもちゃにしようが人間共をどうしようが構わん。」
「では、行って参ります」
「うむ‥、任せる、余はだるい」
それだけ交わして彼女は王座からだるそうに降りて自室に下がった
こうして「次」が示され、中央大陸からゼッカが向う事になったが、直ぐに、ではない。
一旦自身の居城に向かい、一目散に自室へ、そこでずっと仕舞ってあった装備を引っ張り出し、噛締めるように着替える。新品ではない。経年で色が深くなった紫のショルダーガード付きのバストアーマー、敢て補修していない傷付いている鎧
そして湾曲した中型の和刀に鞘の部分が縦長でそのままスモールシールドとして扱える、特注品のマジックウェポンを帯刀し連れて行くメンツも選抜する
そこで今回の任を説明し、後任を決めて任せた
「トルド。本国の一族は貴様に任せる、私が戻らない、死ぬなら、お前を一族の長に戻す」
「は、はい‥」
「元々貴様の領土と配下だ問題ないな」
「はっ」
元々の側近である一名と獣を操れる魔物使い二名、これに移動の為の翼獣の二匹だけ選び居城を出る、後は現地等、移動しながら糾合すればよい
「ゼッカ様。その御召物は」
「西大陸の勇者の話聞いたか?」
「は」
「我がやる事になった。とりあえず現地に向う人間の勇者が出たとあらば我がやるしかない」
「はっ、西大陸には既に先人が居りますが」
「そうか、ではまずそこへいこう。新しく基地の類を作らずに済む」
そうして大型のキマイラに乗って飛翔した、彼女は経験がある、と言った意味は単純だ、そして百年ぶりにこの装備を出したのも意味がある
「まさか生きている内にまたアレと戦う機会が訪れるとはな‥」
「勇者の事ですか?」
「そうだ」
「成る程」
「今度こそ勝つ‥(ボソ」
ゼッカの一団は敢て、西大陸では目立つ行動は避けて行動した、元々獣族の先遣隊は居るので竜の拠点は避けて、南から入る。ここで北に上がって、現地の少数部隊と合流する
とは言え、移動キャンプに近い小数だ、ゼッカはそれで構わない。同属の者にも平伏して迎えられたがこれを制して、直ぐに指示を出した
「情報は来ているが、まだ不足だ、当面これを補いつつ向こうの拠点を探る、我に礼など不用だ、直ぐ行う」と示し休息も取らず、北伐する
ある程度察知出来る距離まで入って近隣の自然に入り、偽装して野営陣を敷き情報収集を図った。丁度第参勢力と竜の港、自身らの張った陣の間、三角で結んだ南、鬼拠点の南東三百キロ辺りの山岳である
地形は大体分っているが本国に流れて来た情報でも分る通り、明らかに不足している、その為、潜入捜査も必要だろう
「人間側の領土地形は大まかに分っているが例の勇者の一団は不明点が多い。その為調査が必要だ、同族側も居るので、派手な事は出来ん」
「では変化出来る者で潜入でしょうか」
「うむ、ある程度、場所と向こうの拠点の内部の状況が把握出来ればいい、仕掛けるかどうかは後の話だ」
「はっ、では早速」
獣種は大概、大型ライオンや熊みたいのが多いが一部は小型の狼や犬や鳥等に成れる者も居るのでそれ程問題ない
ゼッカ自身も魔術が使えるので使い魔斥候も可能だ、慎重にならざる得ないのも、何しろ、レオ側に与した魔物が多数居る事。位置が分ったからと言って単に攻めたら良いという問題でもない
ゼッカは自身の戦闘力で言えば、ゼノや秋を黙らせるのは可能だと計算しているが、纏めては無理だ。まして勇者が居るから
「今度こそは」と自身でも言った通り、彼女は嘗て先代勇者と呼ばれる者と戦った経験がある、だから、レオ一人でも舐めて掛かるつもりはない
大まかな情報を現地で掴んだのは更に一週後。だが問題も多い
「む‥向こうも斥候隊や監視部隊が居るのか」
「はい、トラップや未踏領域等もあるようですね。一応、鳥を使って街内には侵入できましたが‥どうも与されたというは間違いのようです」
「元々のシュウやゼノの側近や部下も普通に生活している‥か」
「両方確認は出来ていませんし、流石に屋内までは入れませんのでしかとは分りませんが、人間側の噂では、勇者と人間の王国、それからこちらから攻めた魔物等、外交交渉に寄って共闘に近い形になっていると」
「つまり強制されて勇者に従っている訳ではないと?」
「これもしかとは」
「ふむ、まあいい、最悪を考えて策を展開しよう」
というのも条件と目的が彼女の中では決まっていたからだ・この際、勇者と、秋とゼノ、全部敵だと想定して考えても構わない、不確定なら、これを前提にして策を展開すればいい
そこでゼッカは敢て、魔物側の拠点を避けて北伐し現地の獣種を迎合する、丁度位置的に。四角形の角に其々勢力や拠点があるのでその中央辺りまで動いた
シュバイク ツバル
鬼拠点 竜拠点
である事。そしてゼッカの目的の八割は勇者なのだから、ここから人間の国に攻撃を掛け、目的の奴を引っ張り出す、そこで戦うか捕らえるかしてしまえば良い
人間側の勇者であればまず無視はしなかろうという事、この用意が大まかに整ったのが、ゼノが味方に加わって後四ヶ月の頃だ
ま、勿論レオ自身は不安の種はまだある、ここまで安定して人、魔と俺の関係が強固になれば、確かに何者も余計な手出しは出来ないだろうが魔物の本国とやらがどう動くかだ。
第三勢力が強固に成れば成る程それだけ向こうからは邪魔になる、無視されるか、あるいは潰しにくるのか、だ
一応ゼノはだが
「ふん、わらわに逆らうアホ等本国にもおらんわ、仮に来ても叩き潰す」とか言ったが
「でもトップは居るんだろ?」
「ああ、魔族か、ま、あいつ等は戦力的にはそんなでもない、特殊能力や魔術に優れた者は多いが、個体や種としては竜には及ばん」
「ふむ」
事実上、単純に戦力の話だけで言えばゼノを味方にした事で、この第三勢力は魔物全体の戦力の三割近くに匹敵するらしい。それはそれで逆に怖いが‥
まあ、魔物の最上種で伝説上に近い生物だから分らんでもないが、それから竜の天敵というのは大体人間らしい、魔物側では竜を与させる相手がマズ居ない
自身も言った通りだが、竜と物理で相手出来るのが、獣族か秋くらいなもんなのでまず、何も恐れる事もない、との事だ。一応これも、皆にも聞いたが見解は略同じらしい
「まあ、ゼノの言う通りだなぁ‥あの種とまともに実戦闘でやりあえるのは昔は兎も角、今はもの凄く限られている」
「ですね。一匹、二匹なら兎も角、です」
「成る程」
「人間側で個体戦闘力と装備に秀でた勇者と同じ竜族、秋様と私達方術士。これが全て味方とあらばもう、魔族でもほんの極一部しか対抗出来ないでしょう」
「参考までに聞くけど、それは?」
「ええと、魔族でも大型の闇召喚を操れる人くらいでしょうね‥これも数名しか居ませんし、戦闘で武器を交せるのも一部暗黒騎士くらいでしょうか‥」
「暗黒騎士??」
「魔族は大体、術系と特殊能力系とかが多いんですが物理的に剣士的力を持つ者も居ますね‥魔法剣士みたいな。ただ、そういった者でも複数でないと‥」
「ふむー、じゃあ後はその獣族くらいか、ていうか其れ何?ライオンとかコカトリスとか、みたいな??」
「そういった獣系魔物を束ねている王は秋様とゼノ様とも戦えるのではないか?とは言われていますが‥。実際我々の間で戦う訳ではないので」
「それくらい才覚がある、程度の基準かあまり考え無くて良さそうだな‥」
「ええ、まあ。」
「それに仮に敵対する、命令を受けてこっちに来ても本気バトルにはならなそうんだよなぁ‥」
「どういう意味??」
「オレとはガキの頃から交流あるしな‥顔見知りというか‥」
「ああ、そうなんだ」
「とは言え、ゼッカ様、と仰いますが、獣種の血を継いで居る訳ではありませんね。元の獣の王をぶちのめしてしまった為、代表に成っているだけです、元々族を率いて居らず、単独で行動している方です」
「豪快だなぁ」
「ええ、普段は温厚で冷静な方なんですが‥キレるポイントがありまして」
「しかし獣の血を継いでないて事は何の魔物なの?」
「ええと、堕天使と亜人のハーフだとか‥我々の中では、上から数えて五番目の年長者ですね、実戦の経験と知識が秀でていますし、未だ現役で前線を務めれるのでかなり信奉されています」
「なるほど、厄介そうだな‥」
「ええ」
「それとレオさんの言う懸念ですが、対処法はあるかと、例えばエスター=フリンの時の様に罠とか」
「ふむ、しかし実際は難しいかなぁ相手が来るのが事前に分ってないといけないし誘導が必要に成る。この拠点に配するのもそれはそれで難しい、有象無象居る訳だし」
「それでしたら、エルフ側で未踏領域でも敷きましょうか?」
「それってエルフ森の結界だよね?出来るの?」
「街の周り森ですから可能ではありますね、例えば東の湖周りにラインを決めて敷くとか、そうすれば東からの侵入はかなり時間稼ぎできます、必ず掛かるという訳ではないですが」
「それもありだな‥、北と西から敵が侵攻して来る事はないし。よし、これやってみよう」
「主様、それと常時防衛なら迎撃装置を置いては如何かと」
「それもいいな。俺も少し上の闇召喚覚えたし防衛させてもいいかもしんない」
「ですね」
「ま、実際そこまで必要かも微妙だが。大した手間じゃないならやってみるか」
「では、用意しますね」
細かく言うとだが、鬼拠点の旧街は東に大きな湖に、四方河川が延びていて後はそこを中心に森林が広がる、これ自体五十キロ近くあり西側は低い山岳地もある。街の北も勿論この森が展開しているが既に、レオの方針から始めた、林業や農耕等も展開し、丁度真北にある、一般オーガの集落からも南に同じ様に狩猟や石類の生産も行われ両方の間で通り道になっている
元々の野良の獣やら魔物らは、この範囲にはまず入って来ないし魔物の本拠から何らかの行動が起こされる場合、略東からと予測されるので、北東から南東まで半月状に防御ラインを敷くのが妥当である
ま、尤も、鳳の言った通り、現状この拠点に攻めるアホは居ないだろうがまるっきり放置という訳にもいかないし最低監視部隊の類はあっていいだろう、くらいの事だ
更に一週程の間に東側にエルフ族で未踏領域を敷く。これは所謂、迷いの森という奴で、一種の幻術である
等間隔でオブジェを置き、有効範囲に侵入した相手が同じ所をグルグル回る事になる、というエルフ独自の結界で、置き場をあまり選ばない、要はそのオブジェを置いた半径数百メートルとかの有効範囲に入ると霧とか暗闇とか同じ空間でも方向感覚を失念すると言う物で簡単なトラップの割り有効である
それから元々召喚斥候を周囲に置いているレオも魔力許容量とレベルアップから幾つか習得出来たスピリットウォルフ等も放った
闇族なんかが使う召喚で、青白い透明な狼で目立つのだが、生物ではないので剣等の物理を受け付けない、またインプと同じく、召喚者の眼に成る事も可能で解除しなければ略永久に稼動しているので楽だ、これをエルフトラップの回りに徘徊監視として三匹程置いた
本拠近くでは、ゼノのお陰で魔物も増えた事もありこれらも幾つかの集団に分けて、見回りや遊撃隊も組織する、まあ、自衛軍+監視部隊みたいなもんだ
いざ何か有った際、てんでバラバラじゃ困るし人間側でトラブルが無いとも言い切れないから、役割分担は大事だ
三ヶ月程、また平和の時期が過ぎたが良くも悪くも、同じ時間というのは繰り返されないのだろう、そして、レオの懸念していた通り
「魔物側の首脳部はどう判断するのか」という部分から始まった、そう魔物の本拠点からだ
彼女は何時もの様に、暗い自身の部屋で待っていた、そこに待望の報せを持って訪問する訪問と言っても公式な報告ではない
石造りの天井から溶ける様にヌッと現れたのが自身の部下である、悪魔、見た目は黒い翼を持った重武装の女騎士だろう
彼女は無表情に傅き言葉ではなく、伝心によって報告する、一通り報告を受けた後、双方口を開いた
「そうか‥ここまでは読みどおりだな」
「既にコチラの将、三人が向こうに付きました、最早放置という訳にも参りますまい‥」
「いや‥」とだけ言って彼女は空を見た
一分そのままだったろう、何かを閃いた様に話ながらも、部屋のロックの掛かったクローゼットの様な物を開ける
「まだ一つある。動くには少し早い‥」
「左様ですか、しかし、将官会議でも既に報は届いていますが」
「次、は自ら動くとある、それで一時不満も収まる。ほっといていい」
「はっ」
「それと、もう一つ使いを頼む」
「はい?」
そして取り出した「剣」を渡した
「それを届けよ」
「これは‥しかし、何故?いえ、必要だから、ですね‥」
「うむ」
そう交わして両者離れた。疑念は持たない必要が無いから、そのまま彼女はまた空を暫く見続けた、五分して、魔物の将官会議に向う
巨大な円卓に其々の魔物種族から代表者が集まり着席する、そこから離れた上座の王座に座る、丁度全員見渡せる位置だ
会議は誰かが主導するとか段取りがある訳ではない、参加した者の自由な意見が許される、彼女は、これに口を挟む事も滅多に無い、たとえ「王」だとしてもだ
「おい、例の報告聞いたか?」
「人間の勇者か‥、厄介な話だな、伝承通りなら、だが」
「だが、戦って勝ってる訳でもないんだろ、事実、こちらの将の死亡は無く、迎合されただけだ」
「だから余計頭が痛いんだろうが」
「確かに‥。鬼姫と竜姫だからな‥しかもあの二人が抱える手下も丸ごと吸収されたわけだからな‥」
「激戦の後、二人共やられた、ならまだマシだな、削りにすらならん、疲弊させて漁夫の利で食う事すら出来ん」
「まだ詳細は出てない様だが、単に従わされているのか?それとも勇者とやらの手下になったのか?」
「おそらく後者だな、シュウとゼノの配下も無傷で向こうに従っているらしい」
「一体どんな手品師だ、強制契約か呪いでも使うのか?」
「分らん、何れにしろ、もう少し調査は必要だろう肝心な部分は殆ど分ってない」
そこで議論が止まり、沈黙したが手を上げたのが一人のメスだ
「放っておけ、という訳にも行かないわねぇ‥」
「何か手があるのか?ゼッカ」
「無いな、だが、興味はある」
「‥」
「シュウとゼノが与したという程の相手と聞けば自然と熱くならんか?」
「お前はそうだろうな」
「どうせ議論も進展が無いのなら我が行こう。知るにしろ、戦うにしろ、交渉するにしろ、経験のある我のがよい、な」
これに反対する者は居ない。何故ならこの中で最も力があるのは彼女だ。そして年長でもあるから、だが、勿論不安はある、何しろ「自分を通す」者だから
「アスタ様、ゼッカがそう申しておりますが?」そして問われ、これを良いを出した
「ゼッカがそうしたいのならそれでいい。だが、余も勇者とやらを見てみたい、可能であれば余の前に連れて来い」
「はっ、他の事は?」
「自由にせよ、殺そうが痛ぶるおもちゃにしようが人間共をどうしようが構わん。」
「では、行って参ります」
「うむ‥、任せる、余はだるい」
それだけ交わして彼女は王座からだるそうに降りて自室に下がった
こうして「次」が示され、中央大陸からゼッカが向う事になったが、直ぐに、ではない。
一旦自身の居城に向かい、一目散に自室へ、そこでずっと仕舞ってあった装備を引っ張り出し、噛締めるように着替える。新品ではない。経年で色が深くなった紫のショルダーガード付きのバストアーマー、敢て補修していない傷付いている鎧
そして湾曲した中型の和刀に鞘の部分が縦長でそのままスモールシールドとして扱える、特注品のマジックウェポンを帯刀し連れて行くメンツも選抜する
そこで今回の任を説明し、後任を決めて任せた
「トルド。本国の一族は貴様に任せる、私が戻らない、死ぬなら、お前を一族の長に戻す」
「は、はい‥」
「元々貴様の領土と配下だ問題ないな」
「はっ」
元々の側近である一名と獣を操れる魔物使い二名、これに移動の為の翼獣の二匹だけ選び居城を出る、後は現地等、移動しながら糾合すればよい
「ゼッカ様。その御召物は」
「西大陸の勇者の話聞いたか?」
「は」
「我がやる事になった。とりあえず現地に向う人間の勇者が出たとあらば我がやるしかない」
「はっ、西大陸には既に先人が居りますが」
「そうか、ではまずそこへいこう。新しく基地の類を作らずに済む」
そうして大型のキマイラに乗って飛翔した、彼女は経験がある、と言った意味は単純だ、そして百年ぶりにこの装備を出したのも意味がある
「まさか生きている内にまたアレと戦う機会が訪れるとはな‥」
「勇者の事ですか?」
「そうだ」
「成る程」
「今度こそ勝つ‥(ボソ」
ゼッカの一団は敢て、西大陸では目立つ行動は避けて行動した、元々獣族の先遣隊は居るので竜の拠点は避けて、南から入る。ここで北に上がって、現地の少数部隊と合流する
とは言え、移動キャンプに近い小数だ、ゼッカはそれで構わない。同属の者にも平伏して迎えられたがこれを制して、直ぐに指示を出した
「情報は来ているが、まだ不足だ、当面これを補いつつ向こうの拠点を探る、我に礼など不用だ、直ぐ行う」と示し休息も取らず、北伐する
ある程度察知出来る距離まで入って近隣の自然に入り、偽装して野営陣を敷き情報収集を図った。丁度第参勢力と竜の港、自身らの張った陣の間、三角で結んだ南、鬼拠点の南東三百キロ辺りの山岳である
地形は大体分っているが本国に流れて来た情報でも分る通り、明らかに不足している、その為、潜入捜査も必要だろう
「人間側の領土地形は大まかに分っているが例の勇者の一団は不明点が多い。その為調査が必要だ、同族側も居るので、派手な事は出来ん」
「では変化出来る者で潜入でしょうか」
「うむ、ある程度、場所と向こうの拠点の内部の状況が把握出来ればいい、仕掛けるかどうかは後の話だ」
「はっ、では早速」
獣種は大概、大型ライオンや熊みたいのが多いが一部は小型の狼や犬や鳥等に成れる者も居るのでそれ程問題ない
ゼッカ自身も魔術が使えるので使い魔斥候も可能だ、慎重にならざる得ないのも、何しろ、レオ側に与した魔物が多数居る事。位置が分ったからと言って単に攻めたら良いという問題でもない
ゼッカは自身の戦闘力で言えば、ゼノや秋を黙らせるのは可能だと計算しているが、纏めては無理だ。まして勇者が居るから
「今度こそは」と自身でも言った通り、彼女は嘗て先代勇者と呼ばれる者と戦った経験がある、だから、レオ一人でも舐めて掛かるつもりはない
大まかな情報を現地で掴んだのは更に一週後。だが問題も多い
「む‥向こうも斥候隊や監視部隊が居るのか」
「はい、トラップや未踏領域等もあるようですね。一応、鳥を使って街内には侵入できましたが‥どうも与されたというは間違いのようです」
「元々のシュウやゼノの側近や部下も普通に生活している‥か」
「両方確認は出来ていませんし、流石に屋内までは入れませんのでしかとは分りませんが、人間側の噂では、勇者と人間の王国、それからこちらから攻めた魔物等、外交交渉に寄って共闘に近い形になっていると」
「つまり強制されて勇者に従っている訳ではないと?」
「これもしかとは」
「ふむ、まあいい、最悪を考えて策を展開しよう」
というのも条件と目的が彼女の中では決まっていたからだ・この際、勇者と、秋とゼノ、全部敵だと想定して考えても構わない、不確定なら、これを前提にして策を展開すればいい
そこでゼッカは敢て、魔物側の拠点を避けて北伐し現地の獣種を迎合する、丁度位置的に。四角形の角に其々勢力や拠点があるのでその中央辺りまで動いた
シュバイク ツバル
鬼拠点 竜拠点
である事。そしてゼッカの目的の八割は勇者なのだから、ここから人間の国に攻撃を掛け、目的の奴を引っ張り出す、そこで戦うか捕らえるかしてしまえば良い
人間側の勇者であればまず無視はしなかろうという事、この用意が大まかに整ったのが、ゼノが味方に加わって後四ヶ月の頃だ
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