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野良犬拾った
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こうして、レオはまた有名になってしまった。勿論、王国からも使者が来て「雇おう」という事になったがこれも断った。金とか立場の問題でもなくそもそも目的が違う
「何れ旅に戻る身、辞退します」と丁重にお断りだけ入れる、まあただ「此処で闘士として生きるのも悪くないなぁ」とはちょっとあったが
更に事態が動いたのが三日後の事である、レオはその日も難なく闘技で勝ち、賞賛され一部観客やファンから「おごり」で比較的豪華な食事を頂いた
まあ、賭け決闘には違い無いし
「お前さんのお陰で儲けたぜ!」て人も多い訳でタダ飯に預かる事は偶にある、その帰り宿に戻る途中の事だ
「今日は南回って戻るか~」とか呑気に街を散策しながら宿に戻る中途、今日は比較的、庶民が多く住む地区から戻った事でそうなった偶然である。
「あれ?」と歩いている所で気づいた
商店の裏、所謂裏路地で争いの声が聞こえる、まあ、夜の庶民的商用街だから喧嘩の類はよくあるだろうくらいの感覚なんだが
今回に限っては「おっさんの喧嘩」ではないらしい、子供ぽい甲高い声も混じってる
レオもその方へ向い裏路地へ、遠くからチラッと観察したが、おっさん三人に囲まれ、子供が踏まれたり、蹴られたりしている
相手は「子供」と言った通り、子供だろう、身長は目算で百六十センチ無いくらい、あんまり綺麗じゃない身なりの男の子て言っていいくらい
そして目立つ「耳」ピンと立った、シルバーの毛並みの、犬ぽい耳がある、つまり「獣人」だ
おっさんの方は体格のいい、武装した連中、多分傭兵か冒険者の崩れだろうか
いったい何事だ?とは思ったが、外から観察してるだけで事情は分った、獣人の子供を罵倒しながらボールでも蹴る様に三人でリンチに掛けてる、そして
「獣人風情が人間様の物を盗もうとはふざけた奴だ」
とか言ってるので多分ガキの方が、なんかスッたんだろう。ただ、流石にやり過ぎだろうと思いレオも間に入った
「おいおい、幾らなんでもやり過ぎだろう」と
おっさん共はレオに最初は歯向かった
「こいつは泥棒なんだよ!しかも獣人だ!」
「あのなぁ、おっさん、だからって殺すほど殴ったらダメだろう一応この国では「ハーフでも迎合する」からソイツも国民ではあるんだぞ?勝手に個人が犯罪者だから、て殺すと牢にぶち込まれるぞ?」
とレオが返して、おっさんらもたじろいだ
「まあ、あれだ酒が足りないのか?奢ってやるからその辺で止めとけ。ガキ蹴るより飲んだ方が楽しいだろう?」
そう言われて、おっさんらの一人が気がついた。一人が残り二人に耳打ちし、態度もガラっと変わる
「こいつが‥あのレオン‥」と
そう、おっさんらの一人がレオが「有名な天才闘士」である事を知ってた、だから逆らうのは無謀と思ったらしい
「そ、そうだな、呑み直そう」とか言って、ガキを捨てた
そこでレオも「一応」「奢ってやる」と言ったので去り際に銀三枚渡し、見送った
泥棒だから、相手を殴った訳でもない、要は金が無い、酒買う金が尽きただけの事だ、だから余計ウサ晴らし八つ当たりしてるだけ、金与えて追い払うのが一番早い
実際、スッたと言っても、あいつ等のサイフなんぞ幾らも入ってないだろう
まあ、差別主義でクズの所に偶々殴っていい相手が居たってだけの事。
レオはこういう奴は嫌いだから、切り刻んでもいいのだが、それこそ馬鹿らしい、一応どんなクズでも「人間」だからな
おっさんらが放棄して路地に転がった子供の所へ行き屈んでとりあえず触診。肋骨骨折、打撲多数、頭から流血もしてるが頭蓋骨は無事らしい
レオは荷物から酒袋を出し新品の布に含ませ子供の口に添えて、軽く飲ませる
「うぐ‥な、なんだ」
「キツイアルコールだ、そのままじゃ激痛があるだろ?麻酔代わりだ」
次に、レオの得意スキルの一つでもある神聖魔法を掛ける、これは元々持っている術「コンティニュージョンヒール」という継続回復魔法だ
通常のキュアーウーンズと違い一回の回復量は少ないが長時間、複数回、回復が掛かる、一人で戦ってる事が多いレオにはとても有り難い術で悪魔とも戦えたのもこれがあるからだ
魔法剣士てのは魔法と戦闘両方出来ると言えば聞こえがいいが実際、実戦では半端になる
詠唱しながら印を結びながら戦える訳でもなく、所詮順番、交互にしか出来ないがこの回復魔法は五分は続くので最初に自分に掛ければ、戦闘終了まで回復が続くので戦闘に集中できる
ゲームで言うと、ヒール→五分間、相手とこっちのラウンドの頭にHPが数%回復、が発動する感じなので、戦闘→魔法→戦闘、と作業しなくてよくなる
ちなみにレオが持ってる、援護、回復魔法は継続がメイン、プロテクションとかエンチャントウエポンとか自身を回復、強化しつつ、最低三分は続くモノが多い
子供は徐々に負傷も治りその間に血だらけの頭や腕などアルコールで拭ってやる
見た目は「子供」と言った通りで十五歳前後、短髪ボサボサのシルバーの髪で、童顔、可愛い男の子て感じ、人間の耳のあるポジョンと別に天頂部側に犬ぽい耳がありパッと見て獣人と分る
犬耳の後ろから獣の毛が人間の髪と混じっていてライトグレーになる、それが首筋まであり背中側の一部も毛皮に近いのだろう、色と形からすると、現在で言うシベリアンアスキーとか狼の系統、一応尻尾もある
当然結構毛深い、人間の顔の部分、眉もライトグレーの濃い、怒り眉てやつだが顔が童顔なのであんまり怖いとか、怒ってる印象は受けない。ただ、そうして手当てしてる中で話したが口は良くない
「クッソ‥なんで僕らだけこんな眼に‥」
「目立って獣人だからなぁ‥まあ、運が悪い、スリなんかすりゃあ、過剰に殴られるだろうな。大人しく普通に生きてりゃいいのに」
「アホかお前!普通になんか生きられないんだよ!」
「この国は獣人とかハーフでも迎合してるんだろ?」
「そりゃ表面上はな、でも法じゃない」
そう返されてレオもある程度分った
「成程、差別は消える訳じゃないし、法律じゃないから強制でもないのか。だから気性が荒く、危険かも知れない混ざりモノは正規の仕事には雇われない、と」
「そうだよ‥、あんた、この国の人間じゃないんだな」
「旅人だ」
「だろうと思った‥」
「ボウズの方は?保護者は居ないのか?」
「ああ‥親父は死んだ、かーちゃんは元々知らない」
「そうか‥」
そうしてまたレオは「可哀相だな」と思った。子鬼での一件でもそうだが、レオはそういう感情を持ちやすい、慈愛とか優しさてのも才能だ
「オレがコイツの生まれだったら」
「コイツがオレの生まれだったら」
と直ぐ立場をリンクさせられる、だから「可哀相だな」そういう風に瞬時に理解出来る、つまり頭がいい、相手の立場を自分に入れ替えて理解する能力、これは馬鹿には出来ない
だからさっきの殴りつけたおっさんはその程度の人間でその程度の人生しか送れない、見える範囲が「自分だけ」だから
大方怪我を治して、血汚れも拭ってから、レオは手持ちの金から銀二枚、そいつに渡した勿論ソイツは拒否したが
「善意じゃねえ、哀れみじゃねぇ、お前ガリガリだぞ飯食え」と無理矢理握らせた
そうして、レオはソイツから離れ岐路に着いた、が、十メートルくらい離れてソイツは付いて来る
ただ、それも分らなくも無い、あんな見た目で、この国で怪我を治して貰っても金も貰っても、その後また同じ事になる。
レオがこういう行動を取ったのも可哀相とは思ったのだが、あくまで個人の範囲で出来る事をやっただけ、それ以上は国とか社会がやる事とも分っているだからそこに留めた
だから無視してたのだがそれも何か中途半端な気がした。そして「助けるなら最後まで助けてやれ」と誰かに言われた気がして、離れた所から尾行してくるさっきのガキを手招きして呼び寄せた
「お前、俺と来るか?」
「いいのか!?」
「まあ、飯の面倒くらいみてやる」
として、滞在する宿につれてった
そのままあまりに汚いので風呂を使わせ、飯も注文して食わせた、まあ、十五くらいなら用意だけしてやるから自分の事は自分でやれ、てスタンスで
飯食って喜んだガキは見た目通り、十五歳、まあまあ、美形だし幼さと大きなブルーの眼もあって、どっちかと云えば「生意気ぽい可愛い系の僕」て感じ
人間に生まれてたら結構モテたろうレオ程正統派な美形ではないが。ガリガリと言った通り、身長百六十ちょうどの割り体重は四十五㌔くらいだろう、骨が浮いてるしあんま食ってないと直ぐ分る
ただ、骨格は良く、華奢ではない、レオよりは大きくなりそうだ、まあ元が獣とのハーフだし、身体能力は優れて居るし頑丈なんだろう、所謂骨太系ではある
翌日には商店に行ってそれなりに良い服も与えた、今で言う黒い、どっかの学生服ブレザーぽいやつだ。この街、国では獣人を護衛にするのはあるらしいのでこの際、表面上そういうことにしておこうという事だ
その事も説明して納得させ、ソイツも「それでいいよ」て事にした
名前は「アルゼンタ」どこの言葉か知らんが「銀」て意味の名前らしい
獣人の護衛てのは、まあ人身売買で買うとかが実情ではある、一応法的には養子の扱いも可能でそれも、社会保障系の一環だ
獣人やハーフてのはどう制度を敷こうと差別はなくならないし、アルゼンタの例でも分る通り人間の社会に迎合しても、危険、強い、気性が荒い、と思われている為、正業に就ける事は稀で何かすればああいう風に暴行される
だから「養子にする」「保護者になる」て人間の金持ちが居るならこの際、専属護衛でも色の扱いでも、しょうがないだろうという国としての見解もある、だから奴隷とは言わないが養ってやる奴、が居るならあまり酷い扱いでない限り取り締まりにも消極的である
まあ、そんな訳で、それなりにいい格好をさせて置いて「俺の護衛だ」と言っとけば見た目がモロ獣人でも少なくとも、暴行の類はされないだろうし
「天才剣士レオ」が保護者て事になれば、敵に回そうと思う奴もいない
公式に認められ、というか、お目こぼしされている手法だし文句もないはずだ
それから「助けてやるなら最後まで助けてやれ」の部分も勿論ある、二ヶ月程、養ってある程度、痩せてるのと体力が戻った所で
レオは短めの剣を与えた「一応護衛」という事もあるが、その後の事を考えたからだ
基礎教育と剣術を教えて一人に成っても、なんとか出来る様にする為だ、戦えればその道でも食えるし、冒険者側、レオの様に闘士の道もあるし、実際獣人の護衛でもいい。なら純粋に「腕」が評価される獣人だろうとなんだろうと関係ない
そうして剣、戦いの指導を行うがこれはアルゼンタは優秀だった、種族的優位性も大きい、人間ではまるで捉えられない、見えない速度と技の領域のレオの攻撃も6割くらいの力ならアルゼンタは避けられるのだから
「こいつは才能あるな」とレオも思った
このまま基礎だけ徹底させるだけで、おそらく、直ぐ闘技でも勝てるだろう
ベースのスペックが元々高い、レオの目算だが、才能、速度と反射神経に優れ技術も実力も計三ヶ月で中堅の剣士くらいまで伸びたから
ここまでやってやると案の定、アルゼンタもレオに懐いた「にーちゃん!」とか呼ぶ様になって、まあ、それも何か嬉しい
レオは家では末っ子だし今まで一人だったし、話し相手とか、頼ってくれる弟みたいでそれはそれでよかっただろう
勿論一応護衛だからちゃんと給金も出してレオ自身は闘技で稼ぐ。二人なら余裕だ。そうして、稼ぐ事、生きる事、その手段を与えて徐々に自立させていく、レオ十八歳には丁度アルゼンタも十六歳。もう闘士でも剣士でもやれるだろうと思い
そろそろ違う国か街に行こうかなと、思いかけた所でまた、事態が反転する
こいつには話してもいいかな?と思い「悪魔と同化して」の部分を除いてアルゼンタには自分のこれまでの経緯を話したのだが「僕も行くよ!」とか言い出した
正直困ったが、まあ、此処に置いていくのも一人旅のままもどうかな、とか思ったので連れて行く事にした
「何れ旅に戻る身、辞退します」と丁重にお断りだけ入れる、まあただ「此処で闘士として生きるのも悪くないなぁ」とはちょっとあったが
更に事態が動いたのが三日後の事である、レオはその日も難なく闘技で勝ち、賞賛され一部観客やファンから「おごり」で比較的豪華な食事を頂いた
まあ、賭け決闘には違い無いし
「お前さんのお陰で儲けたぜ!」て人も多い訳でタダ飯に預かる事は偶にある、その帰り宿に戻る途中の事だ
「今日は南回って戻るか~」とか呑気に街を散策しながら宿に戻る中途、今日は比較的、庶民が多く住む地区から戻った事でそうなった偶然である。
「あれ?」と歩いている所で気づいた
商店の裏、所謂裏路地で争いの声が聞こえる、まあ、夜の庶民的商用街だから喧嘩の類はよくあるだろうくらいの感覚なんだが
今回に限っては「おっさんの喧嘩」ではないらしい、子供ぽい甲高い声も混じってる
レオもその方へ向い裏路地へ、遠くからチラッと観察したが、おっさん三人に囲まれ、子供が踏まれたり、蹴られたりしている
相手は「子供」と言った通り、子供だろう、身長は目算で百六十センチ無いくらい、あんまり綺麗じゃない身なりの男の子て言っていいくらい
そして目立つ「耳」ピンと立った、シルバーの毛並みの、犬ぽい耳がある、つまり「獣人」だ
おっさんの方は体格のいい、武装した連中、多分傭兵か冒険者の崩れだろうか
いったい何事だ?とは思ったが、外から観察してるだけで事情は分った、獣人の子供を罵倒しながらボールでも蹴る様に三人でリンチに掛けてる、そして
「獣人風情が人間様の物を盗もうとはふざけた奴だ」
とか言ってるので多分ガキの方が、なんかスッたんだろう。ただ、流石にやり過ぎだろうと思いレオも間に入った
「おいおい、幾らなんでもやり過ぎだろう」と
おっさん共はレオに最初は歯向かった
「こいつは泥棒なんだよ!しかも獣人だ!」
「あのなぁ、おっさん、だからって殺すほど殴ったらダメだろう一応この国では「ハーフでも迎合する」からソイツも国民ではあるんだぞ?勝手に個人が犯罪者だから、て殺すと牢にぶち込まれるぞ?」
とレオが返して、おっさんらもたじろいだ
「まあ、あれだ酒が足りないのか?奢ってやるからその辺で止めとけ。ガキ蹴るより飲んだ方が楽しいだろう?」
そう言われて、おっさんらの一人が気がついた。一人が残り二人に耳打ちし、態度もガラっと変わる
「こいつが‥あのレオン‥」と
そう、おっさんらの一人がレオが「有名な天才闘士」である事を知ってた、だから逆らうのは無謀と思ったらしい
「そ、そうだな、呑み直そう」とか言って、ガキを捨てた
そこでレオも「一応」「奢ってやる」と言ったので去り際に銀三枚渡し、見送った
泥棒だから、相手を殴った訳でもない、要は金が無い、酒買う金が尽きただけの事だ、だから余計ウサ晴らし八つ当たりしてるだけ、金与えて追い払うのが一番早い
実際、スッたと言っても、あいつ等のサイフなんぞ幾らも入ってないだろう
まあ、差別主義でクズの所に偶々殴っていい相手が居たってだけの事。
レオはこういう奴は嫌いだから、切り刻んでもいいのだが、それこそ馬鹿らしい、一応どんなクズでも「人間」だからな
おっさんらが放棄して路地に転がった子供の所へ行き屈んでとりあえず触診。肋骨骨折、打撲多数、頭から流血もしてるが頭蓋骨は無事らしい
レオは荷物から酒袋を出し新品の布に含ませ子供の口に添えて、軽く飲ませる
「うぐ‥な、なんだ」
「キツイアルコールだ、そのままじゃ激痛があるだろ?麻酔代わりだ」
次に、レオの得意スキルの一つでもある神聖魔法を掛ける、これは元々持っている術「コンティニュージョンヒール」という継続回復魔法だ
通常のキュアーウーンズと違い一回の回復量は少ないが長時間、複数回、回復が掛かる、一人で戦ってる事が多いレオにはとても有り難い術で悪魔とも戦えたのもこれがあるからだ
魔法剣士てのは魔法と戦闘両方出来ると言えば聞こえがいいが実際、実戦では半端になる
詠唱しながら印を結びながら戦える訳でもなく、所詮順番、交互にしか出来ないがこの回復魔法は五分は続くので最初に自分に掛ければ、戦闘終了まで回復が続くので戦闘に集中できる
ゲームで言うと、ヒール→五分間、相手とこっちのラウンドの頭にHPが数%回復、が発動する感じなので、戦闘→魔法→戦闘、と作業しなくてよくなる
ちなみにレオが持ってる、援護、回復魔法は継続がメイン、プロテクションとかエンチャントウエポンとか自身を回復、強化しつつ、最低三分は続くモノが多い
子供は徐々に負傷も治りその間に血だらけの頭や腕などアルコールで拭ってやる
見た目は「子供」と言った通りで十五歳前後、短髪ボサボサのシルバーの髪で、童顔、可愛い男の子て感じ、人間の耳のあるポジョンと別に天頂部側に犬ぽい耳がありパッと見て獣人と分る
犬耳の後ろから獣の毛が人間の髪と混じっていてライトグレーになる、それが首筋まであり背中側の一部も毛皮に近いのだろう、色と形からすると、現在で言うシベリアンアスキーとか狼の系統、一応尻尾もある
当然結構毛深い、人間の顔の部分、眉もライトグレーの濃い、怒り眉てやつだが顔が童顔なのであんまり怖いとか、怒ってる印象は受けない。ただ、そうして手当てしてる中で話したが口は良くない
「クッソ‥なんで僕らだけこんな眼に‥」
「目立って獣人だからなぁ‥まあ、運が悪い、スリなんかすりゃあ、過剰に殴られるだろうな。大人しく普通に生きてりゃいいのに」
「アホかお前!普通になんか生きられないんだよ!」
「この国は獣人とかハーフでも迎合してるんだろ?」
「そりゃ表面上はな、でも法じゃない」
そう返されてレオもある程度分った
「成程、差別は消える訳じゃないし、法律じゃないから強制でもないのか。だから気性が荒く、危険かも知れない混ざりモノは正規の仕事には雇われない、と」
「そうだよ‥、あんた、この国の人間じゃないんだな」
「旅人だ」
「だろうと思った‥」
「ボウズの方は?保護者は居ないのか?」
「ああ‥親父は死んだ、かーちゃんは元々知らない」
「そうか‥」
そうしてまたレオは「可哀相だな」と思った。子鬼での一件でもそうだが、レオはそういう感情を持ちやすい、慈愛とか優しさてのも才能だ
「オレがコイツの生まれだったら」
「コイツがオレの生まれだったら」
と直ぐ立場をリンクさせられる、だから「可哀相だな」そういう風に瞬時に理解出来る、つまり頭がいい、相手の立場を自分に入れ替えて理解する能力、これは馬鹿には出来ない
だからさっきの殴りつけたおっさんはその程度の人間でその程度の人生しか送れない、見える範囲が「自分だけ」だから
大方怪我を治して、血汚れも拭ってから、レオは手持ちの金から銀二枚、そいつに渡した勿論ソイツは拒否したが
「善意じゃねえ、哀れみじゃねぇ、お前ガリガリだぞ飯食え」と無理矢理握らせた
そうして、レオはソイツから離れ岐路に着いた、が、十メートルくらい離れてソイツは付いて来る
ただ、それも分らなくも無い、あんな見た目で、この国で怪我を治して貰っても金も貰っても、その後また同じ事になる。
レオがこういう行動を取ったのも可哀相とは思ったのだが、あくまで個人の範囲で出来る事をやっただけ、それ以上は国とか社会がやる事とも分っているだからそこに留めた
だから無視してたのだがそれも何か中途半端な気がした。そして「助けるなら最後まで助けてやれ」と誰かに言われた気がして、離れた所から尾行してくるさっきのガキを手招きして呼び寄せた
「お前、俺と来るか?」
「いいのか!?」
「まあ、飯の面倒くらいみてやる」
として、滞在する宿につれてった
そのままあまりに汚いので風呂を使わせ、飯も注文して食わせた、まあ、十五くらいなら用意だけしてやるから自分の事は自分でやれ、てスタンスで
飯食って喜んだガキは見た目通り、十五歳、まあまあ、美形だし幼さと大きなブルーの眼もあって、どっちかと云えば「生意気ぽい可愛い系の僕」て感じ
人間に生まれてたら結構モテたろうレオ程正統派な美形ではないが。ガリガリと言った通り、身長百六十ちょうどの割り体重は四十五㌔くらいだろう、骨が浮いてるしあんま食ってないと直ぐ分る
ただ、骨格は良く、華奢ではない、レオよりは大きくなりそうだ、まあ元が獣とのハーフだし、身体能力は優れて居るし頑丈なんだろう、所謂骨太系ではある
翌日には商店に行ってそれなりに良い服も与えた、今で言う黒い、どっかの学生服ブレザーぽいやつだ。この街、国では獣人を護衛にするのはあるらしいのでこの際、表面上そういうことにしておこうという事だ
その事も説明して納得させ、ソイツも「それでいいよ」て事にした
名前は「アルゼンタ」どこの言葉か知らんが「銀」て意味の名前らしい
獣人の護衛てのは、まあ人身売買で買うとかが実情ではある、一応法的には養子の扱いも可能でそれも、社会保障系の一環だ
獣人やハーフてのはどう制度を敷こうと差別はなくならないし、アルゼンタの例でも分る通り人間の社会に迎合しても、危険、強い、気性が荒い、と思われている為、正業に就ける事は稀で何かすればああいう風に暴行される
だから「養子にする」「保護者になる」て人間の金持ちが居るならこの際、専属護衛でも色の扱いでも、しょうがないだろうという国としての見解もある、だから奴隷とは言わないが養ってやる奴、が居るならあまり酷い扱いでない限り取り締まりにも消極的である
まあ、そんな訳で、それなりにいい格好をさせて置いて「俺の護衛だ」と言っとけば見た目がモロ獣人でも少なくとも、暴行の類はされないだろうし
「天才剣士レオ」が保護者て事になれば、敵に回そうと思う奴もいない
公式に認められ、というか、お目こぼしされている手法だし文句もないはずだ
それから「助けてやるなら最後まで助けてやれ」の部分も勿論ある、二ヶ月程、養ってある程度、痩せてるのと体力が戻った所で
レオは短めの剣を与えた「一応護衛」という事もあるが、その後の事を考えたからだ
基礎教育と剣術を教えて一人に成っても、なんとか出来る様にする為だ、戦えればその道でも食えるし、冒険者側、レオの様に闘士の道もあるし、実際獣人の護衛でもいい。なら純粋に「腕」が評価される獣人だろうとなんだろうと関係ない
そうして剣、戦いの指導を行うがこれはアルゼンタは優秀だった、種族的優位性も大きい、人間ではまるで捉えられない、見えない速度と技の領域のレオの攻撃も6割くらいの力ならアルゼンタは避けられるのだから
「こいつは才能あるな」とレオも思った
このまま基礎だけ徹底させるだけで、おそらく、直ぐ闘技でも勝てるだろう
ベースのスペックが元々高い、レオの目算だが、才能、速度と反射神経に優れ技術も実力も計三ヶ月で中堅の剣士くらいまで伸びたから
ここまでやってやると案の定、アルゼンタもレオに懐いた「にーちゃん!」とか呼ぶ様になって、まあ、それも何か嬉しい
レオは家では末っ子だし今まで一人だったし、話し相手とか、頼ってくれる弟みたいでそれはそれでよかっただろう
勿論一応護衛だからちゃんと給金も出してレオ自身は闘技で稼ぐ。二人なら余裕だ。そうして、稼ぐ事、生きる事、その手段を与えて徐々に自立させていく、レオ十八歳には丁度アルゼンタも十六歳。もう闘士でも剣士でもやれるだろうと思い
そろそろ違う国か街に行こうかなと、思いかけた所でまた、事態が反転する
こいつには話してもいいかな?と思い「悪魔と同化して」の部分を除いてアルゼンタには自分のこれまでの経緯を話したのだが「僕も行くよ!」とか言い出した
正直困ったが、まあ、此処に置いていくのも一人旅のままもどうかな、とか思ったので連れて行く事にした
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