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発現した能力2個目
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ディスターヴ砦から北西は直ぐ他国領土だ、数時間で国境を越え、最初の街に着いたのが二日後
此処は特に、目立った事件も無くそのまま北に領土を抜け、二つ目の国に移動したのが、二週間後。それでも馬とか使ったり移動商人の馬車に同道させて貰ったりと早い方なのだが、それだけかかった
故郷の国から北、二つの国に辿り着いてとりあえずの中心の大町に入ったのがこの辺りに成ると、寧ろ別の意味で荒れてる
というのも、大陸の北側から東は細かく国が分かれていて国もある、狭い訳でもないが、どちらかと云えば限られた土地の中を犇めき合っているようなもので中々面倒な場所である
そして当然「対魔」より「人間同士の争い」つまり国家間の争いが圧倒的に多い土地柄。しかも人種間の争いもある。人種間てのも、亜人系、ディスターヴ砦の縮図を百倍にしたようなもんだ
だから差別も多いし、荒事も多いし、魔物の被害もある事はある非常に頭の痛い場所だろう
レオは「最速」のルートで移動したには違い無い、野良魔物が多数生息していると思われる地域の範囲を避けて、最短の道でCの円内側を移動した訳で、この北国の一つ「アレハンドロ」は丁度東西北に他国、南に魔物の生息域、と挟まれる地勢て事になる
天然危険地帯みたいなもんだ、領土的危険度という話しであれば、どこもそんな変わらないが故郷のクルーデは安定した強国で人、国家の争いは略無いか北~東は国家間の争いが苛烈で魔物の大陸拠点が近い程、数も増えるので多くなる、という事
ただ、王国首都に入って、不足する状況の情報を収集したが、寧ろ厳しい地勢なのは此処から東も相当なモノらしいが
東に分類される国は3国しかないが、東西に他国で南やはり魔物が出るし、更に南東に魔物の大陸拠点がある訳でもっと厳しいだろう
「さて、観光ついで、と言ってもホントに遊んでる訳にもいかんな」
という事もあり先の砦街の事情を考え、あくまでソロで動く事に拘った、地元のクラスの低い酒場に行き情報収集する、これは当初の方針に近いが事情は少々異なる
子鬼討伐でも分る事だが、人間側が魔物側と戦うとなると、ああいう風に、ただ人間の生活圏に近づいて来る相手を一方的に殴るだけで寧ろ、味方が居る方が邪魔だし
レオが発現した能力を使うには「敵だ!殺せ!」みたいな奴は近くに居ない方がいい
外交とか取引の際、相手を最初から敵と見なして交渉するアホはいない、人間側は最初から固定観念でそうなってるから、少なくともそう決め付けている奴なら要らないのである
この国は南側に大きな岩場の山岳があり、魔物の生存領域に最初から集団が居る、所謂、オーク種。これが最初から集落を作っていて結構な集団として存在している
その被害もそこそこあるが、基本的に政府は討伐は出せない、対人の対応、国家間の防衛に兵を割いているしオークの集団と戦っても、かなりの被害が予測される
何しろアイツらはレオの知識から言っても強い、人間と比べて、だが体も大抵二メートルはあるし体重も二倍はある
プロレスラーと相撲取りをプラスしたような体格で武装もしているし、大体怪我の被弾の治りも早いし、痛覚も鈍い、それが「集落を作って住んでいる」となれば無闇に人間側から攻めても、まず勝てない可能性のが高い
数も推計だが、二~三百の集団らしく、被害と言っても、近隣の集落から食料の略奪があるとか、そんな程度だから、被害が過大で無いなら討伐するよりセコイ被害に眼を瞑る、方が楽ちゃ楽な訳だ
これが一つ、一番目立って存在する脅威
脅威て程でもないが
「まあ、その程度ならほっといても問題ない訳か」
「実害は薄いからな」と酒場の店主も返した通りだ
「後はまあ、細かいのだと首都周りでもアチコチ居るが亜人系との争いだなぁ‥」
「と言うと?」
「この国は地勢的に状況が良くないから、ハーフとかもなるべく迎合する方針で国内でも受け入れているんだがどうしても対立はあるからな」
「成程、東西北に他国、南に魔物が色々その上、混ざり物やらとも争ってられない、という事か」
「ああ、だから、領内の町とかでも住民として入れているんだが、あいつらはそんな問題は多く無いが、それを利用する側もいる」
「なんじゃそりゃ‥」
「お前さんは若いし、知らんかも知れんが獣人系は奴隷というかペットとかに需要がある」
「人身売買の類か?というかどういう需要があるんだ?ライカンスロープなんか強いし気性が荒いし、危険だろう‥」
「性的な意味で、だ」
「???」
レオには意味不明だったが、要するに性奴隷というヤツだ。簡単に言えば魔物との混ざりで獣系だと人間も半分だが、獣の特徴も引き継いでいる、身体能力とか反射神経に優れて戦わせても強いのだが、それ以上にアッチの具合がいいらしい、それから極めて妊娠し難い
これは生態的に当たり前の話で、人間×人間なら普通に、子供が出来るが、人間×別種だと子供が出来難い「種」として遠い、離れる程そうなる。ハーフエルフが稀なのもそうだ、人間とエルフは生物的にはかなり近いが、それでも極めて間に子供出来難い、獣人なら尚更って事だ。
だから両方の需要から、傍に置いて護衛に使いながらも性的欲求の道具としても使える、更に言えば、一度従わせるとかなり従順らしい
「くだらんな‥」
「まあ、ワカランでもないがな、人間の護衛は直ぐ裏切るし性行為すりゃ妊娠しやすいから単に商品価値で言えばそういうヤツラのが高い」
「という事は、雇う、飼うにしても高いのか?金持ちとかが買うのか?」
「らしいぜ?ただ、獣人系は見た目で直ぐ分るのと分らんヤツが居る、後者のが需要は高い、数も多く無いしな」
「たしか、変身するんだっけか‥」
「そうだな。まあ、ただ混ざり物も性格は一定じゃないし特徴もバラバラ、凶暴なのも居るし、見た目の醜美もある、年齢の問題もあるかなり限られているから難しいらしいが」
「それは分ったがこれも関係無さそうだな」
「というかお前さんの言う「個人」「魔物」てのはあんま無いぞ?はぐれの大型討伐なんかじゃ、そもそも個人で出来ないし募集してない、そこまで話しがデカクなると「私人」ではなく公人の話しになる」
「そりゃそうだな‥」
そう言われたのも当然で、そもそも「個人」で魔物狩りとか出来る奴は居ない、居ない者に募集が掛かる訳がない
「別に単に稼ぐだけなら対人でいいんじゃねーか??」
「はい?」
「短期で稼ぐ、とか腕に自信があるなら闘士とか、賭け試合とかまたは、その代理とか」
「そんなんあるのか‥、確かに個人の範囲で済むが‥」
「まあ、それなりに危険ではあるだろうな」
「殺し合いするのか??」
「いや、ルールは様々だ、真剣じゃないのもある、捕まえた魔物とやるのも稀にある、後者のはめっちゃ危険だが」
「そりゃそうだろうなぁ‥」
そうして中々興味深い情報を得て結果的に「やってみようかな?」と思ったのだが闘士である。短期で稼げるし、俺の範囲で済むし魔物とタイマンも面白そう、とか思った
大体、家を出る時に自分でも言った通り「もっと戦える手段を探すよ」、とか言った割に、まだ実質一回も戦闘に加わってない。腕を試すのにも、手を合わせるのも悪くない、無論、試しにどういうルールか確認してからだが
場所は首都の西で結構デカクて綺麗ではある。娯楽もそんなに無いし、国とも関わりがある、関わりというのも、王国の騎士なんかも出る事がある
実戦経験の訓練にも成るし、優秀な奴が野良剣士でも出れば登用される事もあるし、金持ちが雇う事もある
現代と違って娯楽は少ないので不満解消にもなるし、勿論、商業の一環であるし、運営利益から税も多い、と、様々な恩恵が国にもあるからだが
酒場の店主に説明された通り、ルールは様々。単純に腕試しで出るどこにも所属してない野良剣士も冒険者も出る事もあるし王国のちゃんとした騎士、兵が出る事もある
主流は、やむなき事情、借金のカタで引っ張って来られ専属闘士として出る奴。あまり無いが、魔物との対戦もある事はある
基本刃引きした練習剣での決闘、殺傷出来る武器、防具装備のルールもあるが基本死ぬ事はあんまりない。体は鎧兜のある部分への攻撃か手足しか認められてない、治療専門の術士も居るのでまず死はないがゼロではない
魔物との戦いも、一対一はまずない、そもそも無理だし、止めようがない、まあ、現在で言うマタドールみたいなルールで対戦はするが、周囲にイザという時、注意を逸らす補佐とか重武装の盾持ちとかが複数配されていて、人間の対戦相手だった場合、救出される
一応、死なない様には配慮されている、尤も、魔物との決闘自体はあまり開催されないが
何れの試合も金が良い、公式なカケであって、カケ金の中から勝とうが負けようが対戦の両方の闘士に賞金が出るので、やる奴は結構居るらしい
が、あくまでカケに対しての賞与分配なので、人気の無い試合、あんまり金額が動かない試合だと応じて褒賞は少なくなるがまるでゼロではないが。ある程度、回数出るか、人気闘士、あるいは強くないと金は入らない
レオもまあ、そうだろうな、と思いつつ登録する、名前とこれまでの簡易プロフを記載し証明書を貰うだけだが、同時に誓約書も書かされる。これもまあ、しょうがない
内容は要約すると
「安全には配慮してるが闘技だから大怪我も死亡もありえる死んでも文句言うな」
「金はちゃんと分配するが、人気次第だから儲からなくても文句言うな」
という事、死んだら文句は言えないが。まあ、大怪我とか障害とか出ても自己責任で訴えたりすんな、て事だ
闘技場で安全に配慮てのもおかしな話ではあるが実際、国も運営に一部関わっているしやたら殺し合いされても困る
合法殺人可能みたいな扱いも困るし自国民でもあるから、なるべく死なない方がいい訳でこうなっている
レオは早速「随分直接戦ってないなぁ、とりあえず練習剣での闘技に出てみよう」と当日から参加
闘技場というかスタジアムに近い広さでデカイ客も一般からかなり入っているし。平日の昼間から五千人くらい居る。まあ、だから金も動く訳だが
二試合程、飛び入り新人みたいな扱いで紹介されたが
「あんまり強く無さそう‥」とか思われてカケのオッズは低かった
まあ、見た目は西洋人の男性、というか青年にしては
ちっちゃい方だし、華奢なのでそりゃそうだが
ただ、試合は一戦目、相手も若い冒険者風の剣士だったが
これは難なく、小手打ちで武器を奪って負傷させず勝ち
二戦目は三十前くらいの中堅剣士風の相手がこれも相手が上段から打とうした所に、相手の左後方に駆け抜ける様に避けながら、小手を打って武器を落とさせ、首に剣を添えて終らせた
実力差、はあるにはあったろう、レオは元々、スピードと技と反射神経、動体視力に限って言えば人間ではトップ百くらいに元々ある、そこいらの野良剣士や冒険者くらいじゃまず捉えられない。
逆に腕力とか体格に優れていない、平均より低いくらいなので細剣、軽装、で「蝶の様に舞い、蜂の様に刺す」という自分にあった、特徴を活かした戦闘スタイルではあるのだが、観客からは「美しい」「名人」と見えて、この二戦だけで、賞賛と声援が飛んだ
この辺は故郷でのレオーネ、としての評価と同じだ「スプレンドーレ(華麗」な獅子、という賞賛を此処でも受けた
当日二試合だけして、感触を確かめたのでとりえずこれでいいだろう
ただ、この二戦だけで名前を覚えられたらしい、客からも闘技場の運営者からも、帰る所で「また来るよな!?」「此処に住むのか?」と聞かれて「明日も来いよ」と念も押される
そして分配金だが一戦、銀三、計銀六枚
現在の金で言うと六万円くらいだ
「おお、これホントに儲かるんだな!」とレオも喜んだ
が「鈍ってるて程じゃないけど、実戦もやっとくか」の軽い気持ちで参加したのだが違和感はあった、対戦した野良剣士とか冒険者だがレオの眼から見ても弱い、て事はない、そこそこ実戦をやってきた相手だったろう
それが「何だろう?やけにノロく見えたな‥」
「俺強くなったんだろうか??」と思った
それくらい自身から見て「格下」に感じたのである、まあ、悪魔と戦った後も、移動の傍ら練習はしていたし、知識も得た、久々の実戦だから感覚にズレはあったろうが前よりは腕は上がってるハズだろう、とか気楽に流した
そう、これがレオが「混ざった」事に寄り得た力の二つ目。俺と悪魔の力がプラスされていたのだ、当人はまだ自覚してなかったが
混ざってベースに成った、レオの方の元々持ってる能力が飛躍的にプラスされていたのである、だから「そこそこの相手のハズ」の二人の対戦相手が異常にノロく感じたのである
ノロく感じた、見えたのも、レオが最も優れた才能の一つ「眼」動体視力と反射神経の速度の向上からだ
これも別に「特殊能力」じゃない
俺と悪魔の能力が単純に掛け算されただけだ
まあ、掛け算されただけと言っても「人間のトップクラスの才能、能力」と、そのレオより強かった悪魔、がプラスされたのだからトンデモない事になる
ただ、元々人間としてはそんなでもない能力はそこまで増えてない、1×1は1でしかないから。だから肉体的に優れては居ない所はあんまり差異が無い
レオはそのまま、暫く「闘士」として活動する。金が美味い、のもあるがそんな稼ぎに拘ってる訳でもない
一番の原因は「また来いよ!」「出ろよ!」という声、それと自身がまだ認知してない「違和感」が分らない事で続けただけだ
一ヶ月、十戦程してここでレオも違和感の原因に気づいた。十二戦目は王国の騎士で、それなりに有名な相手だったから
「こりゃ流石にきつそう‥」と
レオ自身も観客も思ってたのだが。相手の動きが「まるでスローモーションに見えた」のだ、ここでようやく
「俺「が」凄い早いんだ!」と実感したのである
その試合もあっさり、相手の突き見切って一センチくらいの剣の通り道をギリギリ頬を掠めて避けて腕を叩いて武器を奪い決着させた
それくらいスピードの認知に、相手と自分に差があった。そうする事が余裕で可能な程、こっちだけよく見えて、早いのである
流石にかなり有名な相手をそこまで余裕で倒すと騒ぎになった。ついでに言えば「闘士」としても試合のランクから云っても、もう花形、無敗、且つ、相手を一切傷付けずに全勝だから
「トンデモ無い天才が現れた」と成った
「これが「同化」で変わった事の二つ目か‥」
と自分でも驚きと同時、呆れも、恐怖もあった、同化した事でこうも強くなるのか‥と、だからと言ってあまり有頂天に成るべきでもない、という戒め
そう、最初の失敗が自分の過信であったから、凄い、嬉しいはあったが自分で感情を抑え込んだ、それに、変化が出た、同化が進んだ、と言う事はあまり喜ぶべき事でもない
人間の領域から離れれば、人間では無くなるのではないか?という危機感もあった
尤も、その心配は杞憂ではあるのだが
此処は特に、目立った事件も無くそのまま北に領土を抜け、二つ目の国に移動したのが、二週間後。それでも馬とか使ったり移動商人の馬車に同道させて貰ったりと早い方なのだが、それだけかかった
故郷の国から北、二つの国に辿り着いてとりあえずの中心の大町に入ったのがこの辺りに成ると、寧ろ別の意味で荒れてる
というのも、大陸の北側から東は細かく国が分かれていて国もある、狭い訳でもないが、どちらかと云えば限られた土地の中を犇めき合っているようなもので中々面倒な場所である
そして当然「対魔」より「人間同士の争い」つまり国家間の争いが圧倒的に多い土地柄。しかも人種間の争いもある。人種間てのも、亜人系、ディスターヴ砦の縮図を百倍にしたようなもんだ
だから差別も多いし、荒事も多いし、魔物の被害もある事はある非常に頭の痛い場所だろう
レオは「最速」のルートで移動したには違い無い、野良魔物が多数生息していると思われる地域の範囲を避けて、最短の道でCの円内側を移動した訳で、この北国の一つ「アレハンドロ」は丁度東西北に他国、南に魔物の生息域、と挟まれる地勢て事になる
天然危険地帯みたいなもんだ、領土的危険度という話しであれば、どこもそんな変わらないが故郷のクルーデは安定した強国で人、国家の争いは略無いか北~東は国家間の争いが苛烈で魔物の大陸拠点が近い程、数も増えるので多くなる、という事
ただ、王国首都に入って、不足する状況の情報を収集したが、寧ろ厳しい地勢なのは此処から東も相当なモノらしいが
東に分類される国は3国しかないが、東西に他国で南やはり魔物が出るし、更に南東に魔物の大陸拠点がある訳でもっと厳しいだろう
「さて、観光ついで、と言ってもホントに遊んでる訳にもいかんな」
という事もあり先の砦街の事情を考え、あくまでソロで動く事に拘った、地元のクラスの低い酒場に行き情報収集する、これは当初の方針に近いが事情は少々異なる
子鬼討伐でも分る事だが、人間側が魔物側と戦うとなると、ああいう風に、ただ人間の生活圏に近づいて来る相手を一方的に殴るだけで寧ろ、味方が居る方が邪魔だし
レオが発現した能力を使うには「敵だ!殺せ!」みたいな奴は近くに居ない方がいい
外交とか取引の際、相手を最初から敵と見なして交渉するアホはいない、人間側は最初から固定観念でそうなってるから、少なくともそう決め付けている奴なら要らないのである
この国は南側に大きな岩場の山岳があり、魔物の生存領域に最初から集団が居る、所謂、オーク種。これが最初から集落を作っていて結構な集団として存在している
その被害もそこそこあるが、基本的に政府は討伐は出せない、対人の対応、国家間の防衛に兵を割いているしオークの集団と戦っても、かなりの被害が予測される
何しろアイツらはレオの知識から言っても強い、人間と比べて、だが体も大抵二メートルはあるし体重も二倍はある
プロレスラーと相撲取りをプラスしたような体格で武装もしているし、大体怪我の被弾の治りも早いし、痛覚も鈍い、それが「集落を作って住んでいる」となれば無闇に人間側から攻めても、まず勝てない可能性のが高い
数も推計だが、二~三百の集団らしく、被害と言っても、近隣の集落から食料の略奪があるとか、そんな程度だから、被害が過大で無いなら討伐するよりセコイ被害に眼を瞑る、方が楽ちゃ楽な訳だ
これが一つ、一番目立って存在する脅威
脅威て程でもないが
「まあ、その程度ならほっといても問題ない訳か」
「実害は薄いからな」と酒場の店主も返した通りだ
「後はまあ、細かいのだと首都周りでもアチコチ居るが亜人系との争いだなぁ‥」
「と言うと?」
「この国は地勢的に状況が良くないから、ハーフとかもなるべく迎合する方針で国内でも受け入れているんだがどうしても対立はあるからな」
「成程、東西北に他国、南に魔物が色々その上、混ざり物やらとも争ってられない、という事か」
「ああ、だから、領内の町とかでも住民として入れているんだが、あいつらはそんな問題は多く無いが、それを利用する側もいる」
「なんじゃそりゃ‥」
「お前さんは若いし、知らんかも知れんが獣人系は奴隷というかペットとかに需要がある」
「人身売買の類か?というかどういう需要があるんだ?ライカンスロープなんか強いし気性が荒いし、危険だろう‥」
「性的な意味で、だ」
「???」
レオには意味不明だったが、要するに性奴隷というヤツだ。簡単に言えば魔物との混ざりで獣系だと人間も半分だが、獣の特徴も引き継いでいる、身体能力とか反射神経に優れて戦わせても強いのだが、それ以上にアッチの具合がいいらしい、それから極めて妊娠し難い
これは生態的に当たり前の話で、人間×人間なら普通に、子供が出来るが、人間×別種だと子供が出来難い「種」として遠い、離れる程そうなる。ハーフエルフが稀なのもそうだ、人間とエルフは生物的にはかなり近いが、それでも極めて間に子供出来難い、獣人なら尚更って事だ。
だから両方の需要から、傍に置いて護衛に使いながらも性的欲求の道具としても使える、更に言えば、一度従わせるとかなり従順らしい
「くだらんな‥」
「まあ、ワカランでもないがな、人間の護衛は直ぐ裏切るし性行為すりゃ妊娠しやすいから単に商品価値で言えばそういうヤツラのが高い」
「という事は、雇う、飼うにしても高いのか?金持ちとかが買うのか?」
「らしいぜ?ただ、獣人系は見た目で直ぐ分るのと分らんヤツが居る、後者のが需要は高い、数も多く無いしな」
「たしか、変身するんだっけか‥」
「そうだな。まあ、ただ混ざり物も性格は一定じゃないし特徴もバラバラ、凶暴なのも居るし、見た目の醜美もある、年齢の問題もあるかなり限られているから難しいらしいが」
「それは分ったがこれも関係無さそうだな」
「というかお前さんの言う「個人」「魔物」てのはあんま無いぞ?はぐれの大型討伐なんかじゃ、そもそも個人で出来ないし募集してない、そこまで話しがデカクなると「私人」ではなく公人の話しになる」
「そりゃそうだな‥」
そう言われたのも当然で、そもそも「個人」で魔物狩りとか出来る奴は居ない、居ない者に募集が掛かる訳がない
「別に単に稼ぐだけなら対人でいいんじゃねーか??」
「はい?」
「短期で稼ぐ、とか腕に自信があるなら闘士とか、賭け試合とかまたは、その代理とか」
「そんなんあるのか‥、確かに個人の範囲で済むが‥」
「まあ、それなりに危険ではあるだろうな」
「殺し合いするのか??」
「いや、ルールは様々だ、真剣じゃないのもある、捕まえた魔物とやるのも稀にある、後者のはめっちゃ危険だが」
「そりゃそうだろうなぁ‥」
そうして中々興味深い情報を得て結果的に「やってみようかな?」と思ったのだが闘士である。短期で稼げるし、俺の範囲で済むし魔物とタイマンも面白そう、とか思った
大体、家を出る時に自分でも言った通り「もっと戦える手段を探すよ」、とか言った割に、まだ実質一回も戦闘に加わってない。腕を試すのにも、手を合わせるのも悪くない、無論、試しにどういうルールか確認してからだが
場所は首都の西で結構デカクて綺麗ではある。娯楽もそんなに無いし、国とも関わりがある、関わりというのも、王国の騎士なんかも出る事がある
実戦経験の訓練にも成るし、優秀な奴が野良剣士でも出れば登用される事もあるし、金持ちが雇う事もある
現代と違って娯楽は少ないので不満解消にもなるし、勿論、商業の一環であるし、運営利益から税も多い、と、様々な恩恵が国にもあるからだが
酒場の店主に説明された通り、ルールは様々。単純に腕試しで出るどこにも所属してない野良剣士も冒険者も出る事もあるし王国のちゃんとした騎士、兵が出る事もある
主流は、やむなき事情、借金のカタで引っ張って来られ専属闘士として出る奴。あまり無いが、魔物との対戦もある事はある
基本刃引きした練習剣での決闘、殺傷出来る武器、防具装備のルールもあるが基本死ぬ事はあんまりない。体は鎧兜のある部分への攻撃か手足しか認められてない、治療専門の術士も居るのでまず死はないがゼロではない
魔物との戦いも、一対一はまずない、そもそも無理だし、止めようがない、まあ、現在で言うマタドールみたいなルールで対戦はするが、周囲にイザという時、注意を逸らす補佐とか重武装の盾持ちとかが複数配されていて、人間の対戦相手だった場合、救出される
一応、死なない様には配慮されている、尤も、魔物との決闘自体はあまり開催されないが
何れの試合も金が良い、公式なカケであって、カケ金の中から勝とうが負けようが対戦の両方の闘士に賞金が出るので、やる奴は結構居るらしい
が、あくまでカケに対しての賞与分配なので、人気の無い試合、あんまり金額が動かない試合だと応じて褒賞は少なくなるがまるでゼロではないが。ある程度、回数出るか、人気闘士、あるいは強くないと金は入らない
レオもまあ、そうだろうな、と思いつつ登録する、名前とこれまでの簡易プロフを記載し証明書を貰うだけだが、同時に誓約書も書かされる。これもまあ、しょうがない
内容は要約すると
「安全には配慮してるが闘技だから大怪我も死亡もありえる死んでも文句言うな」
「金はちゃんと分配するが、人気次第だから儲からなくても文句言うな」
という事、死んだら文句は言えないが。まあ、大怪我とか障害とか出ても自己責任で訴えたりすんな、て事だ
闘技場で安全に配慮てのもおかしな話ではあるが実際、国も運営に一部関わっているしやたら殺し合いされても困る
合法殺人可能みたいな扱いも困るし自国民でもあるから、なるべく死なない方がいい訳でこうなっている
レオは早速「随分直接戦ってないなぁ、とりあえず練習剣での闘技に出てみよう」と当日から参加
闘技場というかスタジアムに近い広さでデカイ客も一般からかなり入っているし。平日の昼間から五千人くらい居る。まあ、だから金も動く訳だが
二試合程、飛び入り新人みたいな扱いで紹介されたが
「あんまり強く無さそう‥」とか思われてカケのオッズは低かった
まあ、見た目は西洋人の男性、というか青年にしては
ちっちゃい方だし、華奢なのでそりゃそうだが
ただ、試合は一戦目、相手も若い冒険者風の剣士だったが
これは難なく、小手打ちで武器を奪って負傷させず勝ち
二戦目は三十前くらいの中堅剣士風の相手がこれも相手が上段から打とうした所に、相手の左後方に駆け抜ける様に避けながら、小手を打って武器を落とさせ、首に剣を添えて終らせた
実力差、はあるにはあったろう、レオは元々、スピードと技と反射神経、動体視力に限って言えば人間ではトップ百くらいに元々ある、そこいらの野良剣士や冒険者くらいじゃまず捉えられない。
逆に腕力とか体格に優れていない、平均より低いくらいなので細剣、軽装、で「蝶の様に舞い、蜂の様に刺す」という自分にあった、特徴を活かした戦闘スタイルではあるのだが、観客からは「美しい」「名人」と見えて、この二戦だけで、賞賛と声援が飛んだ
この辺は故郷でのレオーネ、としての評価と同じだ「スプレンドーレ(華麗」な獅子、という賞賛を此処でも受けた
当日二試合だけして、感触を確かめたのでとりえずこれでいいだろう
ただ、この二戦だけで名前を覚えられたらしい、客からも闘技場の運営者からも、帰る所で「また来るよな!?」「此処に住むのか?」と聞かれて「明日も来いよ」と念も押される
そして分配金だが一戦、銀三、計銀六枚
現在の金で言うと六万円くらいだ
「おお、これホントに儲かるんだな!」とレオも喜んだ
が「鈍ってるて程じゃないけど、実戦もやっとくか」の軽い気持ちで参加したのだが違和感はあった、対戦した野良剣士とか冒険者だがレオの眼から見ても弱い、て事はない、そこそこ実戦をやってきた相手だったろう
それが「何だろう?やけにノロく見えたな‥」
「俺強くなったんだろうか??」と思った
それくらい自身から見て「格下」に感じたのである、まあ、悪魔と戦った後も、移動の傍ら練習はしていたし、知識も得た、久々の実戦だから感覚にズレはあったろうが前よりは腕は上がってるハズだろう、とか気楽に流した
そう、これがレオが「混ざった」事に寄り得た力の二つ目。俺と悪魔の力がプラスされていたのだ、当人はまだ自覚してなかったが
混ざってベースに成った、レオの方の元々持ってる能力が飛躍的にプラスされていたのである、だから「そこそこの相手のハズ」の二人の対戦相手が異常にノロく感じたのである
ノロく感じた、見えたのも、レオが最も優れた才能の一つ「眼」動体視力と反射神経の速度の向上からだ
これも別に「特殊能力」じゃない
俺と悪魔の能力が単純に掛け算されただけだ
まあ、掛け算されただけと言っても「人間のトップクラスの才能、能力」と、そのレオより強かった悪魔、がプラスされたのだからトンデモない事になる
ただ、元々人間としてはそんなでもない能力はそこまで増えてない、1×1は1でしかないから。だから肉体的に優れては居ない所はあんまり差異が無い
レオはそのまま、暫く「闘士」として活動する。金が美味い、のもあるがそんな稼ぎに拘ってる訳でもない
一番の原因は「また来いよ!」「出ろよ!」という声、それと自身がまだ認知してない「違和感」が分らない事で続けただけだ
一ヶ月、十戦程してここでレオも違和感の原因に気づいた。十二戦目は王国の騎士で、それなりに有名な相手だったから
「こりゃ流石にきつそう‥」と
レオ自身も観客も思ってたのだが。相手の動きが「まるでスローモーションに見えた」のだ、ここでようやく
「俺「が」凄い早いんだ!」と実感したのである
その試合もあっさり、相手の突き見切って一センチくらいの剣の通り道をギリギリ頬を掠めて避けて腕を叩いて武器を奪い決着させた
それくらいスピードの認知に、相手と自分に差があった。そうする事が余裕で可能な程、こっちだけよく見えて、早いのである
流石にかなり有名な相手をそこまで余裕で倒すと騒ぎになった。ついでに言えば「闘士」としても試合のランクから云っても、もう花形、無敗、且つ、相手を一切傷付けずに全勝だから
「トンデモ無い天才が現れた」と成った
「これが「同化」で変わった事の二つ目か‥」
と自分でも驚きと同時、呆れも、恐怖もあった、同化した事でこうも強くなるのか‥と、だからと言ってあまり有頂天に成るべきでもない、という戒め
そう、最初の失敗が自分の過信であったから、凄い、嬉しいはあったが自分で感情を抑え込んだ、それに、変化が出た、同化が進んだ、と言う事はあまり喜ぶべき事でもない
人間の領域から離れれば、人間では無くなるのではないか?という危機感もあった
尤も、その心配は杞憂ではあるのだが
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