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江戸に舞う火・Ⅱ
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其の日の夕方
「そろそろ町の見回りに」と思い屋敷を出た藍らと屋敷に訪れた「客」と入り口で鉢合わせする
が、藍はその相手を見て血の気が引いた。咄嗟に腰の小太刀に手を掛けて構えた
「!?こ‥胡蝶‥様‥」
「あら?翠ちゃんじゃない?今は藍だったかしら?」
ただならぬ雰囲気を察して琥珀も脇差を抜く体勢を取ったが、胡蝶と呼ばれた女性は両手を上げ
「落ち着きなさい、別に藍ちゃんを追っかけてきた訳じゃないわよ、あたしも「菱姫」のコネの一つよ」
「な?!」
そう言われ藍も静かに、ゆっくり構えを解いた
「あなたの主、に会わせてくれない?京とか言ったかしら?」
「ええ、こちらへどうぞ‥」と藍も屋敷内に案内した
無論藍と胡蝶の関係を知ってる者は居ない故にまずその事を説明した。
胡蝶、妖艶な美女で年の頃は20半ば
藍の元居た忍びの里で指導員の様な立場の女性で所謂「上忍」である
「つまり私の「しのび」の技の師に当たる方です」
「偶然、の再会という事で良いのかな?」
「ええ、それに里の主も藍の事については知っているわ、新たな主に付いて、別の人間として生きる、そして里に害が無いならそれでいいと、考えているわ。そもそも里で藍に勝てる者等いないしね、敵しないならそれで問題ないとされている」
「私はどうなっているんでしょう?」
「予定通り、というか抜け忍として討たれた事になっている、それでおしまいよ」
「そうでしたか‥」
「で?胡蝶殿は菱殿のコネの一つという事だが」
「今度の将軍様は裏の連中を好まないのでね、その意味こちら里としては、末子と言えど徳川と繋がりがあるのは悪くない。そこで子飼いの忍びと成れば、という期待もある、そうした事情から今回初仕事という訳よ」
「私たちの事を随分知っている様でしたが?」
「どこへ行っても有名人、だからね、探すのは難しくない孤狼の件の後、「一応の事」として貴方達の事は探っていたわ」
「要するに、それで害にならない、と見切りを付けられた訳か」
「まあ、そうね、兎に角、藍は気に入らないだろうけど、仲良くしたいものね、後ろから刺されても嫌ですしね」
「それはこちらのセリフですが‥」
「で、今回の相手は組織的な相手である可能性が高い。となれば、こっちで争ってる場合じゃない、そこは理解してもらいたいわね。そもそも貴方達は菱様のお気に入りそれに手を出したりしないわよ」
「ま、ご尤もだな」
「そういう事なら‥」
「とりあえず「夜」の方はあたしたちも担当するわ11人下の者を連れてきている」
「ふむ、それは有り難いな、こっちだけだと数が少なすぎる」
「ですが、私はやはり単独で動きます」
「心配いらないわよ、貴女の一件を知ってるのは、あたしと孤狼と御屋形様だけよ、こっちにとっても恥には違いないから隠匿されいるわ」
「そうですか‥分かりました」
そこでどうにか納得して、藍と琥珀も共同戦線に同意して加わる、京は自分の考え、基本方針を伝えた
「で、本題ですが」
「捜査の面では既に時間が経っているし、本職、火付け盗賊改めがやっている、そこから我々が新たに証拠を掴むのは難しい」
「そうねぇ、忍びと言っても捜査が上手いという訳ではない」
「そこで見回りは続けて貰うが、いつ次があるとも分からんし実際、1~3回目の火付け自体、6ヶ月の間だ次を待って捕らえるのは無茶過ぎるし、非効率だ」
「同感です」
「故に、証拠が出ないなら向こうから出してもらう事を考えている」
「と言うと?」
「ま、お上次第だが、菱姫か柳生に頼んで罠を張る」
「成る程!アレですな!」
「そ、餌と罠で実行犯を捕らえる」
「そう上手くいくかしら?」
「ま、餌次第だろうな、相手が飛びつかざる得ない程の餌、これがあればという事になる」
「それで「お上次第」か」
「ただ、相手が大組織である事前提での話しだがな、あくまで徳川にとって痛手で向こうにとって得という物が要る」
京の説明を受けて一同も「うーん」と考え込んだが
胡蝶は「だが、確かに有効な手だろう、上手くすれば短期間でカタが付くやって損は無いわね」と同意した
「具体的な餌の用意まで実際は何日か掛かるハズだ、そういう基本方針でいざという時の為、忍びの方は半数に割って夜の見回りと休息を一日交代で張ってくれ」
「了解したわ」
そこに「ただいま」と慶次が屋敷に戻った。いきなり「ん?誰だこの美女は」と言ったので、その場で胡蝶を紹介した
「ほほう、忍びとな」
「よろしく、柳生の末弟殿」
「それも知ってたのかよ‥」
「んで?どこ行ってた?」
「京に「期待しているぞ?」と言われてはな‥こっちも「裏」の連中に収集を掛けた」
「と言うと?」
「知らんか?「裏柳生」だが」
「マジデ?」
「マジデ」
裏柳生とは、元は柳生家に敵する者や害をなす者、表ではやらない暗殺や情報収集等も受け持った、所謂忍者でありながら武芸者であるという、個々の武芸に秀でた隠密特殊部隊である
「ま、戦国の世の終わりから規模はかなり縮小されているが、まだ、そこそこ人数と組織がある」
「そんなもんまで動かせるとはな‥」
「本家、徳川の危機、と吹聴すれば二つ返事で出すさ、俺が言って大規模に動かせるもんでもないがな」
「いやはや心強い」
「とりあえず、江戸留守部隊だけだが20は直ぐ動かせる」
「分かった」
「というかですね、えらい大事になってきた様に思うのですが‥」
と千鶴も驚きだった
「そうだな…」と京も返さざる得ない程の状況である
さて、其々の対応、捜査だが藍と琥珀、胡蝶らは夜の見回り、不審者の目付けは一応続けた
それで何かが掛かるという可能性は低いが監視業務は必要ではある事
千鶴と京は何時かの事件の時やった様に組んで夜町の飲み歩きである
慶次は菱姫に京の策を伝え、「餌」の準備を頼みつつ、自身は柳生や火盗らと共同で正規の捜査に加わった
五日程経ったがやはりこれと言った「何か」は出なかった
そこでその五日後、菱姫は京らの屋敷に自ら訪れ伝えた
「餌、と言っても新たに大規模の物を用意するのは流石に無理じゃ、そこで既に予定にあった物を早めて貰い、それを「餌」に使う」
「ふむ」
「来月、他国から小判の原料でもある「金」が大規模に届く予定じゃったが、これを明後日に早めてもらった。しかしながら元々大事故、輸送にはかなりの人員警備が付く、これを襲う馬鹿はおらんじゃろう」
「では?」
「うむ、なのでこれを保管して置く造幣所の蔵を守って貰いたい、ここは元々、名も顔も信頼度も高い者しか配置されておらんし護衛の規模は少ない、敵が狙うとすればここが一番楽と言える」
「成る程、確率的には一番高いですね」
「左様、が、それだけに責任は重大じゃぞ?」
「まあ、これだけの面子が揃っていればなんとかなるでしょう相手にも寄りますが‥」
「空振りの可能性もあるがな」
「そこはそれで問題ないですがね、何も出なければ平穏無事、改めて餌を撒けばいいだけです」
「確かに」
「ある意味状況はこっちが有利ですからね。こっちは仕掛けを続ければいいし、向こうが食いつかなければ餌を変えてまた糸をたらせばいいそれだけです」
「釣堀の鯉じゃな」
「そういう事ですね、それともう一つお願いがあるのですが」
「なんじゃ?」
と京はある、もう一つの策と自己の推理を菱に伝えた
「ふむ‥それも一理あるな‥」
「ええ、そういう訳で慶次と裏柳生の方は菱殿の方に、直ぐに動いて貰いたい」
「了解した」
そこで、京と菱姫の会談は終了して後は其の日を待つだけ、となった
同時、京の「推理」あってこの「輸送計画」は徹底して情報封鎖される
本来なら意図して流し、より釣り餌としての効果を拡大させるのがベターだが、ある「引っかかり」があってこのような形が今回は取られたのである
1日後、武蔵の国から輸送が最速で出立し、到着は更に5日後である
一方「こちら」は既に準備万端である
更に保管所での人員を減らし、減った分を京、千鶴、胡蝶の隊の忍と入れ替えた
火付けから襲撃という流れも読んで居たので、そこから余った人員、藍、琥珀、胡蝶と配下残り5人は外での見回り監視である「徳川」の後ろ盾あっての可能な人事でもある
「食いつかなければそれでいい」と頭にあったが向こうは面前に上げられた「餌」に食いつかずに居られなかった様だ、事はその日の夜起こる
造幣所の周囲への火付けからの襲撃、もズバリ予想通りだった、だが予測していただけに最初の火付けすら防止された
保管所から5件離れた両替商の対面の家、そこに数人の不審者が現れ路地の材木の類と合わせて油を撒いた。後、火種を持って点火しようとした瞬間
不審者に「粉玉」が一斉に浴びせられ掛け火種ごと放火前に消され、同時に煙幕と成って「目」も塞いだ、そこへ一斉に飛び掛る胡蝶と忍達
「殺すな!捕縛しろ!」と胡蝶は声を掛け不審者一同は逃げる間も無く、胡蝶の配下の忍に打ち倒された
それらの火付け実行犯とは別に離れてもしもの事態に備えて控えた予備人員も事態を察して動こうとしたが。それら一同の動いた瞬間、何かが投げ込まれ、煙に撒かれた。琥珀の「香辛料入り煙球」である
「何事だ!?」と敵が叫んだ瞬間
背後から忍び寄った藍が残り3人を蹴り倒して捕縛した
一方、火付けと同時襲撃を待った別働隊10人は、造幣所の門前で「今か今か」と事を待ったが、この時点で既に放火犯は全員捕縛されていた
事態を伝えれた京らは「良し、逆奇襲を掛ける」と正面門から一斉に飛び出し、外で機会を待った敵、別働隊に逆奇襲を敢行
まさか突入前に向こうから出てくると思わず相手も混乱する、その隙を見逃さず千鶴と京は敵に駆け一瞬で4人打ち倒した
これで6対12
既に勝負は付いた、が、ここで止めとばかり、対峙した両者の敵側だけ囲まれる事になる
藍、琥珀、胡蝶らが合流、包囲し、もはや逃げ道すら無かった、向こうもそのまま降伏する事と成った
味方被害無し、敵18名全員捕縛である。そのまま明け方前に報を聞き駆けつけた火盗に引き渡し終えた
ただ、これで全部とは限らないのでそのまま京らは造幣所に残った
「全員捕らえた、というのは最高の結果でしたね」
まず、藍が滞在所で出された握り飯を食って言った
「同感ね、誰かしら吐くでしょ」そう、胡蝶も返し、ほぼ終わったと言って良い、見解を見せた
だが実際は引き渡してそれで終わりでは無い。京はその後の事まで考えて、菱姫との会談での指示も出していた。そしてそれはこの襲撃事件の後、即明らかになる
菱姫は襲撃事件終了直後、番所や関所に検問を張って一端封鎖をした。同時にこの襲撃事件での内容を城内に流し
慶次ら柳生を使って場内の動きを監視した。すると意外な程あっさり、この事件の首謀者がボロを出した
襲撃事件の失敗、その情報が即流され、実行犯が吐くのを恐れて焦ったのである、逃亡を図った所
そこを菱の配下らが動いて其の日のうちに首謀者も密かに捕縛、一連の事件の流れが明らかになった
「しかし‥内部の犯行とはねぇ‥」
屋敷に戻った京ら一行はその報を受け、呆れたように胡蝶が呟いた、報告に来訪した慶次は一方で逆の意味で呆れて言った
「ま、全部京の指示での網張りだがな‥」
「え?」
「知ってたんですか??」
これには藍も千鶴も驚きしかない
「知っていた、という訳ではないが、怪しい所はあったからな確証は無いので、今回絞って情報を流してもらった」
「それは?」
「まず、狙われるのが幕府管轄の物ばかりという点、普通に警備の厳しい場所が多い、ここがまず夜盗や強盗の狙いとしてはリスクが大きい」
「確かにそうですね‥わざわざ狙う意味が薄いですね」
「そこで菱姫には今回、輸送計画の内容を意図的に封鎖してもらった、逆に城内には流した、もしかしたらという程度の物だったがズバリだった」
「成るほどねぇ」
「極一部の者しか知らない情報なのに、向こうは知って襲撃して来た、しかも輸送計画自体もかなり日数がずれたにも関わらずだ、そこで、我々は実行犯を捕らえた、しかも全員だ、と成れば、焦った首謀者が動く、と考え慶次ら柳生に城内を任せた」
「それが嵌ったんだなこれが‥」
「で?詳細は?」
「ああ、首謀者も吐いた、まず間違いないだろう、勘定方の男だ」
「成る程、となれば金の流れは容易に掴める、という事か」
「だな、名は佐久間」
「で?なんでこんな大事を?」
「当人に借金があったのが一つと、出世から外れた事だ、身内で不正をやった者が居て、その道から外れた事、上の者に対して恨みがあったとの事だ」
「不自然だなぁ、それでこんな大事を起こすか?」
「まあ、逆恨みだな、実際は身内の不正と彼の出世が止まったのは関係無いのだがそう思いたかったのだろう」
「無茶なこじつけだな」
「で、ある日佐久間の下に書が届いたそうだ、内容は単純、城に仕返ししないか?という物だ」
「つまり真犯人は別という事か」
「左様、人員、計画も別の所から出ている、佐久間は唆されただけ、という事になるが」
「その真犯人は、捕まえた実行犯は吐かなかったのか?」
「口は堅い、ただ、これから、という事になるだろう。まあかなり厳しく追求されるし、時間の問題だと思うが」
「ま、昨日の今日だしな、そこは追々、か」
「そういう事になるな」
「ところで奪った物資、金はどこへ」
「一部は佐久間が懐に、残りは例の実行犯の連中がどこかへ、という事になるな」
「兎に角、わたくし達がやる事はここまで、ですかね?」
「そうだな、後は専門家の仕事だろうな」
そこで一応締めくくられたが
事情が全て明らかになる事は無かった
その日の夜、再び火事があった事だ、言うまで無く火付けである。そして捕らえた実行犯が他の牢屋人と共に焼死したのである
それら内容を城の菱の部屋で報告された京も思わずつぶやいた
「まとめて口封じ、という事か‥」
番所の一時牢に放火、その場に置かれていた罪人全員死亡だった、規模は大きく無く、番所が焼けただけで他に被害は出ないのだが
それだけに「狙っての事」であり「口封じでの放火」も間違いない
「正直予想外過ぎた、逃亡の類は注意を払っていたが、まさか、この様な手段で口封じを図るとは‥」
そう慶次も言い京もがっくりであった
「これで真相は闇の中か」
「ううむ‥」
「いや、このままでは済まさん。何時か必ず縄に掛けてやる」
「佐久間自身は生きてるし、唆そそのかした「書」てのも残ってはいるからな」
「城に捕縛して置いていたのが功を相した」
「ま、兎に角京殿らは戻って休んでくれ、後はわらわの配下達で探る、柳生も忍びもおるでの」
「分かりました」
と京も了解し屋敷に戻った
「なんだかスッキリしない終わり方ですねぇ」
「それはあるが、これ以上やる事もないしなぁ、同じ罠に掛かるとも思えんし‥捜査、裏の事なら忍び衆と裏柳生のが効率はいいだろう、ただ‥」
「ただ?」
「真犯人とやらの目的が政府に対する者なら何れ形を変えて何か仕掛けてくる。この一件と同じ餌と罠が通じるとは限らんが「事」が起こる、動く事は高い確率を持つ」
「そこをまた逆撃を加える、という事ですね」
「基本的な事は変わらんのよ、向こうが動くのを待つ、こっちはそれに反撃迎撃する、という流れはな」
「確かにそうですね」
「今回の一件も、無駄って訳では無い、一つ前進したわけだし。これを積み重ねていけば何れ本丸に辿り着く」
「成る程」
「そうね、この一件で分かったけど、京殿のやり方は有効だわ色々為になったわ」
そう締めくくり、同席した胡蝶はスッと立った
「ま、あたしは菱姫にそのまま着くわ、真犯人探しはこっちに任せておいて頂戴」
「ああ、姫も諦めておらんしな」
「そういう事、ま、機会があったらまた会いましょう」
そう言って胡蝶は手をヒラヒラ振って部屋を出た
「私達はどうします?」
「んー、このままっての気分悪いしなぁ、進展があるかどうかは分からんが、しばらく江戸に留まるか‥」
「賛成です
「旅、と言っても次の目的もまだですからねぇ」
「ではそういう方針で」
「はい」
結局京らはそのまま江戸に残ったのである
彼ら一行の物語と事件、はまだまだ終わらないのあった
「そろそろ町の見回りに」と思い屋敷を出た藍らと屋敷に訪れた「客」と入り口で鉢合わせする
が、藍はその相手を見て血の気が引いた。咄嗟に腰の小太刀に手を掛けて構えた
「!?こ‥胡蝶‥様‥」
「あら?翠ちゃんじゃない?今は藍だったかしら?」
ただならぬ雰囲気を察して琥珀も脇差を抜く体勢を取ったが、胡蝶と呼ばれた女性は両手を上げ
「落ち着きなさい、別に藍ちゃんを追っかけてきた訳じゃないわよ、あたしも「菱姫」のコネの一つよ」
「な?!」
そう言われ藍も静かに、ゆっくり構えを解いた
「あなたの主、に会わせてくれない?京とか言ったかしら?」
「ええ、こちらへどうぞ‥」と藍も屋敷内に案内した
無論藍と胡蝶の関係を知ってる者は居ない故にまずその事を説明した。
胡蝶、妖艶な美女で年の頃は20半ば
藍の元居た忍びの里で指導員の様な立場の女性で所謂「上忍」である
「つまり私の「しのび」の技の師に当たる方です」
「偶然、の再会という事で良いのかな?」
「ええ、それに里の主も藍の事については知っているわ、新たな主に付いて、別の人間として生きる、そして里に害が無いならそれでいいと、考えているわ。そもそも里で藍に勝てる者等いないしね、敵しないならそれで問題ないとされている」
「私はどうなっているんでしょう?」
「予定通り、というか抜け忍として討たれた事になっている、それでおしまいよ」
「そうでしたか‥」
「で?胡蝶殿は菱殿のコネの一つという事だが」
「今度の将軍様は裏の連中を好まないのでね、その意味こちら里としては、末子と言えど徳川と繋がりがあるのは悪くない。そこで子飼いの忍びと成れば、という期待もある、そうした事情から今回初仕事という訳よ」
「私たちの事を随分知っている様でしたが?」
「どこへ行っても有名人、だからね、探すのは難しくない孤狼の件の後、「一応の事」として貴方達の事は探っていたわ」
「要するに、それで害にならない、と見切りを付けられた訳か」
「まあ、そうね、兎に角、藍は気に入らないだろうけど、仲良くしたいものね、後ろから刺されても嫌ですしね」
「それはこちらのセリフですが‥」
「で、今回の相手は組織的な相手である可能性が高い。となれば、こっちで争ってる場合じゃない、そこは理解してもらいたいわね。そもそも貴方達は菱様のお気に入りそれに手を出したりしないわよ」
「ま、ご尤もだな」
「そういう事なら‥」
「とりあえず「夜」の方はあたしたちも担当するわ11人下の者を連れてきている」
「ふむ、それは有り難いな、こっちだけだと数が少なすぎる」
「ですが、私はやはり単独で動きます」
「心配いらないわよ、貴女の一件を知ってるのは、あたしと孤狼と御屋形様だけよ、こっちにとっても恥には違いないから隠匿されいるわ」
「そうですか‥分かりました」
そこでどうにか納得して、藍と琥珀も共同戦線に同意して加わる、京は自分の考え、基本方針を伝えた
「で、本題ですが」
「捜査の面では既に時間が経っているし、本職、火付け盗賊改めがやっている、そこから我々が新たに証拠を掴むのは難しい」
「そうねぇ、忍びと言っても捜査が上手いという訳ではない」
「そこで見回りは続けて貰うが、いつ次があるとも分からんし実際、1~3回目の火付け自体、6ヶ月の間だ次を待って捕らえるのは無茶過ぎるし、非効率だ」
「同感です」
「故に、証拠が出ないなら向こうから出してもらう事を考えている」
「と言うと?」
「ま、お上次第だが、菱姫か柳生に頼んで罠を張る」
「成る程!アレですな!」
「そ、餌と罠で実行犯を捕らえる」
「そう上手くいくかしら?」
「ま、餌次第だろうな、相手が飛びつかざる得ない程の餌、これがあればという事になる」
「それで「お上次第」か」
「ただ、相手が大組織である事前提での話しだがな、あくまで徳川にとって痛手で向こうにとって得という物が要る」
京の説明を受けて一同も「うーん」と考え込んだが
胡蝶は「だが、確かに有効な手だろう、上手くすれば短期間でカタが付くやって損は無いわね」と同意した
「具体的な餌の用意まで実際は何日か掛かるハズだ、そういう基本方針でいざという時の為、忍びの方は半数に割って夜の見回りと休息を一日交代で張ってくれ」
「了解したわ」
そこに「ただいま」と慶次が屋敷に戻った。いきなり「ん?誰だこの美女は」と言ったので、その場で胡蝶を紹介した
「ほほう、忍びとな」
「よろしく、柳生の末弟殿」
「それも知ってたのかよ‥」
「んで?どこ行ってた?」
「京に「期待しているぞ?」と言われてはな‥こっちも「裏」の連中に収集を掛けた」
「と言うと?」
「知らんか?「裏柳生」だが」
「マジデ?」
「マジデ」
裏柳生とは、元は柳生家に敵する者や害をなす者、表ではやらない暗殺や情報収集等も受け持った、所謂忍者でありながら武芸者であるという、個々の武芸に秀でた隠密特殊部隊である
「ま、戦国の世の終わりから規模はかなり縮小されているが、まだ、そこそこ人数と組織がある」
「そんなもんまで動かせるとはな‥」
「本家、徳川の危機、と吹聴すれば二つ返事で出すさ、俺が言って大規模に動かせるもんでもないがな」
「いやはや心強い」
「とりあえず、江戸留守部隊だけだが20は直ぐ動かせる」
「分かった」
「というかですね、えらい大事になってきた様に思うのですが‥」
と千鶴も驚きだった
「そうだな…」と京も返さざる得ない程の状況である
さて、其々の対応、捜査だが藍と琥珀、胡蝶らは夜の見回り、不審者の目付けは一応続けた
それで何かが掛かるという可能性は低いが監視業務は必要ではある事
千鶴と京は何時かの事件の時やった様に組んで夜町の飲み歩きである
慶次は菱姫に京の策を伝え、「餌」の準備を頼みつつ、自身は柳生や火盗らと共同で正規の捜査に加わった
五日程経ったがやはりこれと言った「何か」は出なかった
そこでその五日後、菱姫は京らの屋敷に自ら訪れ伝えた
「餌、と言っても新たに大規模の物を用意するのは流石に無理じゃ、そこで既に予定にあった物を早めて貰い、それを「餌」に使う」
「ふむ」
「来月、他国から小判の原料でもある「金」が大規模に届く予定じゃったが、これを明後日に早めてもらった。しかしながら元々大事故、輸送にはかなりの人員警備が付く、これを襲う馬鹿はおらんじゃろう」
「では?」
「うむ、なのでこれを保管して置く造幣所の蔵を守って貰いたい、ここは元々、名も顔も信頼度も高い者しか配置されておらんし護衛の規模は少ない、敵が狙うとすればここが一番楽と言える」
「成る程、確率的には一番高いですね」
「左様、が、それだけに責任は重大じゃぞ?」
「まあ、これだけの面子が揃っていればなんとかなるでしょう相手にも寄りますが‥」
「空振りの可能性もあるがな」
「そこはそれで問題ないですがね、何も出なければ平穏無事、改めて餌を撒けばいいだけです」
「確かに」
「ある意味状況はこっちが有利ですからね。こっちは仕掛けを続ければいいし、向こうが食いつかなければ餌を変えてまた糸をたらせばいいそれだけです」
「釣堀の鯉じゃな」
「そういう事ですね、それともう一つお願いがあるのですが」
「なんじゃ?」
と京はある、もう一つの策と自己の推理を菱に伝えた
「ふむ‥それも一理あるな‥」
「ええ、そういう訳で慶次と裏柳生の方は菱殿の方に、直ぐに動いて貰いたい」
「了解した」
そこで、京と菱姫の会談は終了して後は其の日を待つだけ、となった
同時、京の「推理」あってこの「輸送計画」は徹底して情報封鎖される
本来なら意図して流し、より釣り餌としての効果を拡大させるのがベターだが、ある「引っかかり」があってこのような形が今回は取られたのである
1日後、武蔵の国から輸送が最速で出立し、到着は更に5日後である
一方「こちら」は既に準備万端である
更に保管所での人員を減らし、減った分を京、千鶴、胡蝶の隊の忍と入れ替えた
火付けから襲撃という流れも読んで居たので、そこから余った人員、藍、琥珀、胡蝶と配下残り5人は外での見回り監視である「徳川」の後ろ盾あっての可能な人事でもある
「食いつかなければそれでいい」と頭にあったが向こうは面前に上げられた「餌」に食いつかずに居られなかった様だ、事はその日の夜起こる
造幣所の周囲への火付けからの襲撃、もズバリ予想通りだった、だが予測していただけに最初の火付けすら防止された
保管所から5件離れた両替商の対面の家、そこに数人の不審者が現れ路地の材木の類と合わせて油を撒いた。後、火種を持って点火しようとした瞬間
不審者に「粉玉」が一斉に浴びせられ掛け火種ごと放火前に消され、同時に煙幕と成って「目」も塞いだ、そこへ一斉に飛び掛る胡蝶と忍達
「殺すな!捕縛しろ!」と胡蝶は声を掛け不審者一同は逃げる間も無く、胡蝶の配下の忍に打ち倒された
それらの火付け実行犯とは別に離れてもしもの事態に備えて控えた予備人員も事態を察して動こうとしたが。それら一同の動いた瞬間、何かが投げ込まれ、煙に撒かれた。琥珀の「香辛料入り煙球」である
「何事だ!?」と敵が叫んだ瞬間
背後から忍び寄った藍が残り3人を蹴り倒して捕縛した
一方、火付けと同時襲撃を待った別働隊10人は、造幣所の門前で「今か今か」と事を待ったが、この時点で既に放火犯は全員捕縛されていた
事態を伝えれた京らは「良し、逆奇襲を掛ける」と正面門から一斉に飛び出し、外で機会を待った敵、別働隊に逆奇襲を敢行
まさか突入前に向こうから出てくると思わず相手も混乱する、その隙を見逃さず千鶴と京は敵に駆け一瞬で4人打ち倒した
これで6対12
既に勝負は付いた、が、ここで止めとばかり、対峙した両者の敵側だけ囲まれる事になる
藍、琥珀、胡蝶らが合流、包囲し、もはや逃げ道すら無かった、向こうもそのまま降伏する事と成った
味方被害無し、敵18名全員捕縛である。そのまま明け方前に報を聞き駆けつけた火盗に引き渡し終えた
ただ、これで全部とは限らないのでそのまま京らは造幣所に残った
「全員捕らえた、というのは最高の結果でしたね」
まず、藍が滞在所で出された握り飯を食って言った
「同感ね、誰かしら吐くでしょ」そう、胡蝶も返し、ほぼ終わったと言って良い、見解を見せた
だが実際は引き渡してそれで終わりでは無い。京はその後の事まで考えて、菱姫との会談での指示も出していた。そしてそれはこの襲撃事件の後、即明らかになる
菱姫は襲撃事件終了直後、番所や関所に検問を張って一端封鎖をした。同時にこの襲撃事件での内容を城内に流し
慶次ら柳生を使って場内の動きを監視した。すると意外な程あっさり、この事件の首謀者がボロを出した
襲撃事件の失敗、その情報が即流され、実行犯が吐くのを恐れて焦ったのである、逃亡を図った所
そこを菱の配下らが動いて其の日のうちに首謀者も密かに捕縛、一連の事件の流れが明らかになった
「しかし‥内部の犯行とはねぇ‥」
屋敷に戻った京ら一行はその報を受け、呆れたように胡蝶が呟いた、報告に来訪した慶次は一方で逆の意味で呆れて言った
「ま、全部京の指示での網張りだがな‥」
「え?」
「知ってたんですか??」
これには藍も千鶴も驚きしかない
「知っていた、という訳ではないが、怪しい所はあったからな確証は無いので、今回絞って情報を流してもらった」
「それは?」
「まず、狙われるのが幕府管轄の物ばかりという点、普通に警備の厳しい場所が多い、ここがまず夜盗や強盗の狙いとしてはリスクが大きい」
「確かにそうですね‥わざわざ狙う意味が薄いですね」
「そこで菱姫には今回、輸送計画の内容を意図的に封鎖してもらった、逆に城内には流した、もしかしたらという程度の物だったがズバリだった」
「成るほどねぇ」
「極一部の者しか知らない情報なのに、向こうは知って襲撃して来た、しかも輸送計画自体もかなり日数がずれたにも関わらずだ、そこで、我々は実行犯を捕らえた、しかも全員だ、と成れば、焦った首謀者が動く、と考え慶次ら柳生に城内を任せた」
「それが嵌ったんだなこれが‥」
「で?詳細は?」
「ああ、首謀者も吐いた、まず間違いないだろう、勘定方の男だ」
「成る程、となれば金の流れは容易に掴める、という事か」
「だな、名は佐久間」
「で?なんでこんな大事を?」
「当人に借金があったのが一つと、出世から外れた事だ、身内で不正をやった者が居て、その道から外れた事、上の者に対して恨みがあったとの事だ」
「不自然だなぁ、それでこんな大事を起こすか?」
「まあ、逆恨みだな、実際は身内の不正と彼の出世が止まったのは関係無いのだがそう思いたかったのだろう」
「無茶なこじつけだな」
「で、ある日佐久間の下に書が届いたそうだ、内容は単純、城に仕返ししないか?という物だ」
「つまり真犯人は別という事か」
「左様、人員、計画も別の所から出ている、佐久間は唆されただけ、という事になるが」
「その真犯人は、捕まえた実行犯は吐かなかったのか?」
「口は堅い、ただ、これから、という事になるだろう。まあかなり厳しく追求されるし、時間の問題だと思うが」
「ま、昨日の今日だしな、そこは追々、か」
「そういう事になるな」
「ところで奪った物資、金はどこへ」
「一部は佐久間が懐に、残りは例の実行犯の連中がどこかへ、という事になるな」
「兎に角、わたくし達がやる事はここまで、ですかね?」
「そうだな、後は専門家の仕事だろうな」
そこで一応締めくくられたが
事情が全て明らかになる事は無かった
その日の夜、再び火事があった事だ、言うまで無く火付けである。そして捕らえた実行犯が他の牢屋人と共に焼死したのである
それら内容を城の菱の部屋で報告された京も思わずつぶやいた
「まとめて口封じ、という事か‥」
番所の一時牢に放火、その場に置かれていた罪人全員死亡だった、規模は大きく無く、番所が焼けただけで他に被害は出ないのだが
それだけに「狙っての事」であり「口封じでの放火」も間違いない
「正直予想外過ぎた、逃亡の類は注意を払っていたが、まさか、この様な手段で口封じを図るとは‥」
そう慶次も言い京もがっくりであった
「これで真相は闇の中か」
「ううむ‥」
「いや、このままでは済まさん。何時か必ず縄に掛けてやる」
「佐久間自身は生きてるし、唆そそのかした「書」てのも残ってはいるからな」
「城に捕縛して置いていたのが功を相した」
「ま、兎に角京殿らは戻って休んでくれ、後はわらわの配下達で探る、柳生も忍びもおるでの」
「分かりました」
と京も了解し屋敷に戻った
「なんだかスッキリしない終わり方ですねぇ」
「それはあるが、これ以上やる事もないしなぁ、同じ罠に掛かるとも思えんし‥捜査、裏の事なら忍び衆と裏柳生のが効率はいいだろう、ただ‥」
「ただ?」
「真犯人とやらの目的が政府に対する者なら何れ形を変えて何か仕掛けてくる。この一件と同じ餌と罠が通じるとは限らんが「事」が起こる、動く事は高い確率を持つ」
「そこをまた逆撃を加える、という事ですね」
「基本的な事は変わらんのよ、向こうが動くのを待つ、こっちはそれに反撃迎撃する、という流れはな」
「確かにそうですね」
「今回の一件も、無駄って訳では無い、一つ前進したわけだし。これを積み重ねていけば何れ本丸に辿り着く」
「成る程」
「そうね、この一件で分かったけど、京殿のやり方は有効だわ色々為になったわ」
そう締めくくり、同席した胡蝶はスッと立った
「ま、あたしは菱姫にそのまま着くわ、真犯人探しはこっちに任せておいて頂戴」
「ああ、姫も諦めておらんしな」
「そういう事、ま、機会があったらまた会いましょう」
そう言って胡蝶は手をヒラヒラ振って部屋を出た
「私達はどうします?」
「んー、このままっての気分悪いしなぁ、進展があるかどうかは分からんが、しばらく江戸に留まるか‥」
「賛成です
「旅、と言っても次の目的もまだですからねぇ」
「ではそういう方針で」
「はい」
結局京らはそのまま江戸に残ったのである
彼ら一行の物語と事件、はまだまだ終わらないのあった
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