京の刃

篠崎流

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用心棒

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「昼も夜も過ごし易い時期ですね」
「今ぐらいが丁度いい」

京と翠は備前の立ち寄った町で蕎麦を啜っていた。翠は服装を一般人の娘らしく、髪も短く、名も「藍」と変えた

年齢が15という事もあり、出で立ちもありパッと見、童にも見えなくも無い

だが、変装としては悪くない、もう追っ手は居ないだろうが注意するのは悪い事ではなかった

尤も、小太刀帯刀に左手拳までガードする篭手を付けているだけに目立ちはするし。少なくとも忍者には見えぬが、武芸者には見えるようにはなった

「しかし、上手い手だな、護衛か」
「ええ、移動の路銀が掛かりませんし、しかも給与が出ます。ただ、それだけの「腕」がないと困りますが」
「ま、夜盗の類がそう居るとも思えんが」
「それでも必要な物ですよ、お上が商人の護衛なんかイチイチ出しませんから、重要な物なら兎も角」
「うむ」
「特に金持ちなんか昼間は兎も角、夜なんかは一人歩きも出来ませんからね」

藍がそう説明した通り、天下定まったと言えど。自分の身は自分で守る、まだそういう時代である

強盗、夜盗、スリ、辻斬り、そういった輩も多い為「護衛」という商売は二人には両得だった、旅人だけに荷物の護衛で路銀が出て給与や駄賃が出る。まさに両得である

更に言えば京も藍も「腕に覚え有り」であるから。そこいらの相手に遅れを取らない、藍の案で始めた事だが、忙しすぎて困る程であった

特に今回受けた豪商の仕事は当人の護衛まで頼まれ。金払いも良い、それだけに危険とも言えるが、二人にとってはそれ自体望む所である

二人が飯を終えて、商家に戻る。すると早速主人に声を掛けられる

「夜には接待があります、同行なさい」と

彼が雇い主の芦屋鍛造、老紳士という表現がよく当てはまる中年だ。評判も悪くなくやり手、何より金払いが良く。自然と人も物も集まる

はじめは荷物の配達だったが二人は腕を見込まれ、専属の護衛もするようになった。とは言え、付いているのは二人だけでは無いが特に頼りにされたのが二人という事ではある

京も藍もまず外見が美しい事。帯刀してなければ、用心棒や護衛には見えない

したがって商談の場に行って同席しても怪しげな視線を向けられないという長所がある

特に芦屋は夜出る事が多い。別に怪しげな商売をしている訳でもなく会食の場で近しい交流を持って纏める事が多いからだ

その日の夜もやはり芸者と酒、静か過ぎない場での半分商談である

京は同席、藍は周囲これがいつものパターンである

こうした事が何度かあったが事件らしい事件も無く、護衛という割りには平和な仕事が続いていた

問題があったとすれば芦屋は「女好き」という事くらいだろうか

尤も、豪商となればそれだけで寄って来る相手が多いというのもあるが、何時の世も人は「金に弱い」ものだ

ちょくちょくそうした女達と夜遊びの類があるのだがそういう時は京は外される

理由は単純、京が「美形過ぎる」からだ。芸者も春売りの女もそっちに自然に寄って行く事になる

そうなると一緒に連れて行く訳にもいかず「お前もどうだ?」とあてがわれても困る訳で、自然と別の用心棒を連れる事になる

「困ったものだ」
「とは言え、私が行く訳にも‥」

と、二人が交わした事でも分かる様に、藍が代わりにという訳にもいかなかった、何しろ「少女」だからだ

「まあ‥今までも精々酔っ払いに絡まれる程度だったし問題ないとは思うが」
「極端に治安の悪い土地でもありませんからね‥」

二人はそう言ったが、その二人を外して出かけた事で「事件」に発展する。芦屋の護衛に着いた別の用心棒二人のうち、1人が斬られ、1人重傷、芦屋自身も負傷するという事が起きた


翌朝、事態を聞いた京と藍も現場に行く。周囲は既に人だかり、死者が出た為、十手持ちも出ている

とは言え、襲った相手の証言も碌に出ず、捜査と言っても、これといった証拠も出ていない

芦屋自身も護衛も「暗くて分からなかった」だった。そうなるとマトモに何かが出て来る事も無い、この時代の「捜査」等その程度である

特に群集で混じって見ている隣に居た藍も

「あんまりやる気がある連中じゃないですね‥」

と言った事でも分かる程で単なる検分である

「無理して下手人探しする理由も薄いからなぁ‥」
「正直、私達にもありませんけどね」
「同感ではある、が、一応雇い主ではあるし」
「探してみますか?京殿」
「そうだな‥」

「と、言っても、私達も何時までもここに居る訳では無いのですが」
「やれるだけはやるさ、ま、大体襲う奴なんて分かっているが」
「そうなのですか?」
「まだ確か、とも言えんがな」

そこで京は幾つかある可能性を一つづつ当てはめていく作業に取り掛かる

まずは商家に戻って芦屋への聞き込みである。と言っても「暗くて分からなかった」以上の情報があるとも思えないが

「そういう訳で犯人探しをしたい訳ですが」

芦屋は驚いて居たが、犯人探しまでしてくれるというなら拒む理由もなかった、詳細をもう一度語った

「何時もどおり、酒家に行って遊んだ帰り、いきなり背後から襲われてね‥」
「人数は」
「5人‥だったと思う‥、護衛の方が逃がしてくれたので私自身の怪我はこの程度で済んだが‥」

そう言って右腕の包帯を見せた

「何か取られました?」

「私は何も‥死んだ彼の方はどうだったか‥どっちにしろ、直ぐにその場を離れたので‥」
「成程、よく分かりました」

そこまで言って二人は立った

「もういいのかい?」
「ええ」

次に行ったのは番所、しかし京らの要請はあっさり断られた

「死体を見たい?ダメに決まってるだろう」

と、門前払いだった。まあそりゃそうかとも思ったが、ここでの長らしき男が口を挟んだ

「なんだい?若いの、そんなもん見てどうすんだい?」と

十手持ち「じいさん」と言っていい年齢の男だ。どうやら話は通じそうだと事情を話した

「はー、芦屋さんとこの用心棒ね‥まあ、別に構わんよ」

と許可を出してくれた当然他の連中は反対したが

「協力するってんだから別に構わねぇだろ」と一同を制して奥に招き入れた

「俺は巽ってんだ、ま、よろしくな」
「助かります」
「正直、あいつらもやる気無くってね」
「何でです?」
「仏さん、よそ者の身寄りなしなんでね。別にどうでもいいだろうくらいに思ってるんでね」
「なんとまぁ‥」
「分からなくはありませんけどね」

「つっても俺からすりゃ捜査しない訳にもいかん。こんな物騒な事が街中であったらなぁ枕高くして寝れねえよ」
「たしかに」

奥の間に案内され、遺体に被せられた布を開けて京らに見せて巽はしゃがみこんだ

「見ての通りだ。大刀での傷、一撃でバッサリさ」
「彼の持ち物は?」
「金も刀もそのまま、ま、物取りじゃねーな」
「となると、夜盗、強盗、人数からして辻斬りもなし、かな」

「怨恨、だろうなぁ‥問題は誰狙いなのか?だが」
「普通に考えて、芦屋殿だと思いますが」
「そうだろうな、ただ、恨まれる様な人でも無いと思うが」
「俺もそう思う、女癖は悪りぃが「派手に」て程でもない、殺したいほど、てのは微妙だな」

「そもそも人数が多すぎるからね、となれば、後はそう難しくは無いね」
「ええ」
「なんだ?」

京と藍のやり取りがイマイチ分からなかった様で巽はそう聞いた、故に藍と京は続けて、疑問を晴らした

「単純な線でいけば、商売敵かなんかでしょうね」
「5人も雇ったのだからな、しかもそれだけの「腕」それだけの金を出せるって事だな」
「問題は誰が誰にやらせたか、だが‥」
「候補はそう多くないですし、後はボロを出すまで突けばよいかと」

「おいおい、あまり無茶な事をされて仏さんが増えても困るんだが‥」
「なら、協力をお願いします」
「む?」

三人は一度番所を出て、外へ
人通りの少ない場所で話し「協力」関係を組む、ここで「やる気のある」巽を引き込むのは尤もだった。そもそも「専門家」であるし、捜査上の圧力になる

「この場合考えられるのは三つ、一つにもう一度狙う。二つに継続せずに諦める、三つ、証拠隠滅してすっとぼける」
「ふむ‥」
「こっちがやる事は、芦屋殿の護衛、捜査、実行犯も消える前に探す、とやる事が多い訳です」

「成程、お前さんら二人じゃ無理って事だな」
「ええ、なので、本来の「捜査」の面で巽さんにお願いしたいのですが」
「そりゃまあ‥構わないが‥アテはあるのか?」
「まあ、たぶん‥」
「おいおい‥」

「それでは私は情報収集を」藍はそう言った。何をすべきか言わずとも分かって居たようだ

「ああ、おそらく、芦屋殿の商家と近い稼ぎの相手。売り物が被っている者、だろう」

京はそう見解を示して「アテ」の疑問に答えた


「成程、商売仇、とすりゃそうなるわな」
「ええ、ただ、決めて掛かるのも問題なので、可能性の高い「候補」という事になります」
「それなら話しは早え、俺も早速突いてみよう」
「お願いします」

巽はやり取りを終え、そこで離れた、目標がある程度定まったので意気は上がっている、表情にもそれは見て取れた

「さて、では私も」
「ある程度分かったら合流を」
「了解です」

と京と藍も其々離れる

巨大な町という訳でもない、同じ地域で、まして、それなりの商家、売り物が被っている相手等そう多くないハズ

意外な程あっさり、情報収集から「候補」が見つかり三者は夕方飯屋にて再会した

「反物、装飾品、串、石、鼈甲、ここまで被っているのは一軒だけです」
「うむ、俺も同じ結果だ「重根屋」だ」
「芦屋殿の所は輸入品や武器もあるが、まあ、後はほぼ一緒か」
「儲けも芦屋殿からやや落ちますね」
「ある程度の纏まった金が出せて、人を雇えて、尚、邪魔な相手」
「と言っても決め付ける訳にもいかんじゃろう?」

「そうですね‥」
「まあ、いぶりだせばいいさ、正解ならボロを出す」
「と言うと?」

藍がそう聞いた所で京は指をちょいちょいと曲げて呼び一同の顔を寄せ、説明をした

「なるほど「正解」な相手ならボロを出すでしょうね」
「ふむ」
「まあ、上手くいくとは限らんが」

「いや、やってみよう、どうせ他にアテが無い訳だしな」
「とりあえず藍は今から動けるか?」
「お任せください」
「俺はどうする?」
「明日からで良いでしょう「立場」を使って分かり易くつついて貰えば圧力は大きい」
「成程、まかせろ」

そこで一同解散となり其々の役目に掛かる、とは言え、それほど奇抜な事をやる訳では無い

藍は重根屋の主人の監視
巽は十手持ちの立場を生かして正面から相手に圧力を掛け
京は当面、芦屋の周囲護衛となる

結果は直ぐに、僅か二日で出る事になる

巽は重根屋の主人に「捜査」として正面から堂々と面会し、世間話のついでに口を滑らしたフリをして洩らし

「実は証拠品が出ましてね‥どうも襲った連中、持ち物を落としたようで」と足元を滑らしにかかる

主人は「ほう、それは良かったですな」と平然とそれを聞き流したが

その夜には心中穏やかで居られなかった自身が動く、それの後を着けた藍が「雇った連中の住処」まで案内してもらい、あっさり「ボロを出して」突き止める事となる

「旦那‥俺らはそんなヘマしてませんぜ?」
「別に何も無くしてませんがね‥」
「馬鹿言え!実際撃ち洩らしてヘマしとるだろうが!」

町の外れのボロ屋敷で、重根屋とおそらく実行犯であろう連中のやり取りである、主人は相当ご立腹な様だ。だがこれで確定と言っていい

「もういい‥!金を出すからお前達はさっさと他所の土地にでも行け!こっちにまで手が及んでは堪らん!」
「は、はぁ‥じゃあ、明日にでもそうします、が」
「分かっている、午前中には金を届けさせる、それまでに準備しておけ!」

と重根屋は聞く耳持たずのまま捲くし立て、屋敷を早々に出た

「まいったねぇ‥俺らは別に何も落としてないが‥、聞きやしねぇ‥」
「まあいいさ、失敗したのに金はくれる、てんだ寧ろ美味い話には成った」
「そうだな」
「金貰って昼には出る、用意しとけ」
「おう」

その後の行動も藍は聞いた後、その場を離れ戻った。そしてそれら報告を芦屋のあてがわれた自室で受ける京

「なら、巽殿にも伝えたほうが良いか」
「どうでしょう‥、あまり大人数で踏み込まれても邪魔になるような‥」
「巽殿と3人のが良いか‥」
「ええ、捕まえて吐かせて、番所に連行、で良いかと」
「分かった、では巽殿に連絡を」
「はい」

即時三人は夜10時過ぎ頃、巽の住む屋敷外での情報交換、示し合わせを行う。やるべき事は決まっていた故話しを通すだけでいいのもあった

「問題は何時やるか?だが」
「私は夜の方が動き易くありますが‥」
「いや、金貰った直後、重屋の手下が一緒の所がいい証人は多い方がいい‥」
「成程、ご尤もで」

「では、早朝から張っておくか」
「了解です、私は今から行っておきます、何があるか分かりませんから」
「大丈夫かい?嬢ちゃん」
「ええ」
「巽殿と私は一旦仮眠しておこう、素直に降伏する相手ではないおそらく乱闘になる」
「応、了解だ」

そう短い作戦会議は早々に決められ、其々行動に移った


早朝、監視を続けた藍の元に京と巽が合流、そのまま前日の作戦の通り、重根屋の手下が実行犯に接触するのを待つ

午前8時、重根屋の下働きと思われる男が現れボロ屋敷に入る

「よし、藍は退路を塞いでくれ、巽殿と私が踏み込む」
「はい」
「おし」

ボロ屋敷と言う様に、一般の家屋と広さは変わらない、町外れで周囲は野原、道らしい道も無く、見晴らしは良い場所。藍が外を張れば見逃しはしない

巽を前にして京と屋敷に正面から踏み込む。対応する準備も与えない為、返答も待たず扉を蹴破って居間に踊りこんだ「な?!」と向こうも驚いて固まった

そこへ
「番所の巽平次だ!貴様らのやった事はこっちは掴んでいる、大人しく縛に付け!」

そう叫んで抜いた。こういう時専門家が居ると話が早い

相手は慌てて方々に動いたが、こちらが二人と見ると刀を抜いて構えた。当然だろう、向こうも腕に覚え有りの連中だ

「やはり従ってはくれんか‥」
「ま、当然だな、頼むぜ京殿!」

と、一同乱闘になる

巽は十手術の使い手、専門家でもあり、この手のやりあいは慣れたモノだ、年寄りと言ってもそこいらの無頼漢に引けは取らない

だが、5対2、多勢に無勢には違いない、故に、京は数差を無くす為に速攻で二人振りかざした刀を持つ手、「手首」に神速で斬りを叩き付け武器を落とさせた

余りにの速さに一同が声も挙げられず固まった程である。当然だろう「おのれ!」と振り上げた刀が振り下ろされる前に小手打ちが先に当ったのだ

声を挙げたのは打ち込まれた「二人」だ
蹲って腕を押さえ「ぐわああ!」と叫んだ

「こういう場」なら手加減も必要ない最速、全力の「打ち」だ、おそらく腕の骨が砕けた、いかに刃引きした刀とは言え鉄の棒である、打撃力が尋常で無い

「これは相手が悪い」と思ったか、烏合の衆故か

巽と鍔迫り合いを行う一人と、倒れた二人を見捨てて
重根屋の雇われ武芸者二人は外に向かって逃げ出した

襖扉を蹴り飛ばして庭に躍り出るがそこで待っていたのは「藍」である

二人は一瞬戸惑ったが、そうなればとうせんぼする藍を倒すしかない、藍に飛び掛る



藍は迎撃等しない、自ら飛び込んで一人背負い投げで地面に叩き付け、もう1人の刀を小太刀で受けると同時に左手の篭手で殴り飛ばして昏倒させた

彼女の篭手は元々剣の、空いている逆手で殴りつける物である、拳まで覆った軽金属の篭手で強烈である「少女」に見える小柄な彼女の一撃でも失神させるのに十分であった

あっという間に4人やられて、残った1人も戦意喪失
降伏して武器を捨てて座った

それら一同に巽が縄を討った後、藍が番所に報告、援軍が来る直前に後を巽に任せて京と藍はその場を離れ。この一件は譲って終わった

五日後、一連の事件が片付いて後。京と藍は巽に呼び出され、町の飯屋で会食した。一応事後報告、という事らしい

「重根屋も雇った暴漢が吐いて認めたぜ」そう報告する
「聞くまでも無いが、理由は?」
「お前さんの読み通りさ、ほぼ同じもん売ってて重根は赤字芦屋は儲け、しかも客取られて苦しくなった、んで、なら居なくなれば、と思ったそうだ」

「それで人を雇って芦屋殿を闇討ちか」
「商売で勝てない、なら殺してしまえですね」
「まー、尤もではあるが」
「犯人はどうなる?」
「まぁ、重根屋は死罪だろう、雇われた連中はそこまでには成らんとは思うが、ま、どっちにしろ、お上待ちだが」

「良くて流刑か牢屋か」
「くだらないことしましたね」
「しかしなんだ、俺の手柄に成っちまったがいいのか?」
「別にいいんじゃないか?」
「ええ、ヘタに有名になっても困りますし、どうせ私達は旅の者ですし」

「お前らがそう言うならいいけどな、ま、なんだ せめて美味いもん食ってくれ、奢りだ」
「そりゃどうも」
「じゃあ、私カツヲ」
「鳥はあるかなぁ」
「‥あまり高い物は困るんだが‥」

「じゃあ鍋にするか」
「ですね」
「それも内容によるんだが‥」
「奢りな割りせこいぞ」
「俺程度の懐具合じゃたかが知れてるぞ‥」

こうして巽の「せこい奢り」を受けて一同の夜は深けていった

後日、芦屋の護衛の仕事を外れ再び旅に出る事と成った。一連の事件の報告で京と藍の協力が少なからずあって解決したという巽の口出しにより、芦屋からも余分に給金が出された

「ずいぶん色を付けてくれましたね」
「そうだな、当分金に困らんな」

と言ったとおり、二人合わせて五両貰った。一月の用心棒代金としては多いだろう

「次はどこへ行きますか?」
「うーん、東かなぁ」
「何か目的が?」
「大分先の話だが剣の試合がある、と」
「江戸辺りまで出るのですか‥」
「まあ、来年の話らしいから、観光、旅ついで寄るだけだな」
「分かりました、行きましょう」

と二人は町を後にした

次の土地で何があるのか、京も藍も期待に胸膨らませていた。初夏の頃の話である

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