部下と上司の素敵で不純な恋愛交流(旧題:染めて、染められて)

もすもす。

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【12】魔獣の始末と大変な事態。

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今回も、大変お待たせしまた。
えちち本番は・・うぐぅ・・

※お知らせ※
作者の不手際により、おじ上リアムさんの話し方に統一性が無くなってしまったので【7】からの話し方を修正しました。
話の流れは変わりませんが、今話から読むといきなり性格が変わっているので違和感があるかと思います。
今後はこのような事が無いように気を付けます。
申し訳ありませんでした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「―っ!リアムさんっ!!」
「おう!見えた!あそこだな!!」

切り立った岩肌の一部が爆ぜる様に割れ、崩れ落ちていくのが遠目に確認できた。
何らかの戦闘の影響だろう。
彼女の気配も、そう遠くない・・直ぐに見えて来るはず・・

居た。

足元を、滑り流れて行く色が緑から灰色へと変化してすぐのところで魔獣を確認。
その大きさに驚き、一瞬後に焦燥が心をかき乱す。
彼女はあんな巨大な魔獣を相手に今まで戦闘を?
無事なのだろうか?
怪我は?
命は?・・

神か、精霊か・・この世界のありとあらゆる上位の存在に縋り願う。

—お願いします・・お願いします・・彼女を、失いたくないんです!―


おいていかないで。

おねがいだから。

ひとりにしないで。

溢れ、頬を伝う煩わしい雫をぐいと肩口で拭ったところで、リアムさんが「このまま突っ込むぞ!」と声を上げた。
彼女の魔力が、急激に薄くなっていくのを感じて焦りが強くなる。
返事もせず、視線を巡らせ婚約者の姿を探した。
目前に魔獣が迫る。

—居た!エトラさんっ!!—

リアムさんが展開した結界を纏ったまま、高速で魔獣へと体当たりする直前。
魔獣の背中に蹲る彼女を視界に捉えた。

まだ無事なようだが、一体何があったのか・・見える距離にいるのに、魔力が殆ど感じられない。
衝突の抵抗感も無く、魔獣の首を大きく抉り吹き飛ばしたリアムさんは急上昇、魔獣の攻撃範囲外へと離脱した。

「リアムさん!エトラさんが魔獣の背に!」
「よしっ!フォローは任せろ、行ってこい!」

足元で、魔獣は僅かに繋がった首に引き倒されるように膝を付くと、ゆっくりと横向きに倒れようとしていた。

「はいっ!」と言葉を返し、繋いでいた手を放して魔獣の背中目掛け飛び降りる。
広がる魔獣の蔦が支える力を無くし、頭上からバラバラと落ちて来る。
だが避けずとも、お守りの結界で弾かれ障害にならない。
魔獣の体が傾き倒れていく。
その背に着地した時には、脚の踏ん張りがきかない角度になっていた。
接地した勢いのまま、婚約者目掛けて滑り降りる。

彼女の方も支えきれずにずり落ち始めた・・大丈夫!絶対間に合うっ!

「エトラさんっ!!」
「―っジル?!」

叫び呼んで手を伸ばす。
彼女らしくない、緩慢な動きで伸ばされた手。
すれ違う勢いのまま腕を掴んで、そこを支点に彼女の体を振り回し空中で受け止める。

温かい。
生きてる。
ならば、守ってみせる。
絶対に。

愛しい人を腕に抱え、殆ど垂直になった魔獣の背を蹴り空中へ。
耳元で風が鳴る。
強く抱きしめ、落とさないように魔力を腕に回す。
この体勢では受け身は取れない。
同じく魔力で強化した脚で二人分の体重を支え、着地。
詰めていた息を吐き出し、すぐにこの場から離脱すべく駆けだす。

魔獣の事は意識から外し、出来るだけ早く遠くに移動することに集中する。
義父は王族筆頭護衛官だ。
魔獣は確実に処理される。この国随一の魔術師の手によって。
だから、あちらの心配は無用の長物というやつだ。

巨石の群れを足場に駆け続け、大分距離を稼いだ。
比較的平らな岩の上。木が迫り出し涼しい木陰を作り出している場所を見つけて立ち止まる。
森との境目に添うように移動してきて良かった。休憩には良さそうな場所だ。
ここまで来て漸く、腕に抱えた婚約者の様子を窺うことが出来た。

「・・?エトラさん?」

立ち止まったまま、胸に押し付ける様にして抱えていた腕の力を少し緩め、覗き込むように顔を確認する。

真っ青だった。

ヒュっと息を呑み、嫌な想像に背筋が凍る。
慌てて、状態を確認するために足元に下ろす。

「エトラさん?!エトラさんっ!!」

上体を支え、呼びかけるが反応は無い。

―落ち着け!まずは容体の確認を・・―

急ぎ上着を脱いで適当に折り畳み、枕代わりにして寝かせた。
頭の中で『落ち着け、冷静に』と繰り返しながら彼女の様子を窺う。

顔は血の気が引き、意識は無い。
呼吸はある。浅く、早い。
全身に汗をかいている・・戦闘用の黒いアンダーウェアはじっとりと濡れてしまっている。
首筋に指を当て脈を測る・・かなりゆっくりな気がする。体温も、低く感じた。
服の上からではあるが、軽く触診。
骨折は見当たらず、怪我は左耳の火傷と救出の時に掴んだ腕に少し血が滲んでいるくらいだ。
となると脳や内臓といった見た目には判りづらい傷・・若しくは魔力の枯渇。

多分、魔力枯渇で間違いない。
素人判断ではあるが、彼女の魔力が異様なほど少なくなっているのは解る。
すぐに回復させないと、命に係わるかもしれない。
今、出来る事は・・

彼女のグローブを外し、その手をぎゅっと握り込み魔力を注ぐ。

―魔力の相性の良い俺なら、反発は殆どないはずっ!―

しかし注いでも注いでも、底が抜けた入れ物に流し込んでいるかのように回復の手応えを全く感じない。
嫌な想像が脳裏に過ぎる。

生命を維持する上で、魔力は必要不可欠。
呼吸で取り込む空気や、体を巡る血と同じように無くてはならない物・・
魔力を放出し続け、魔力枯渇に陥ると生命を維持するため、体は活動を最低限に留めようとする。
だがしかし、魔力枯渇が深刻な場合、魔力の放出が止まらなくなるのだ。
つまり・・

―この人は、本当に限界ギリギリまで魔力を消費したんだ・・―

なんだって・・こんな!

愛しい婚約者がとんでもない無茶をしたのだと理解した途端、心が震え<イラぁ>とした怒りが湧いてきた。

自身を大事にして欲しかった・・
俺の〈物〉だって、言ったのにっ!!
勝手に命の危機に陥るなんてっ!

叱る。絶対に叱るっ!!その為に・・

―助けてみせるっ!!―

手を強く握り、額に当てて全力で魔力を放出!

「起きてください・・起きて、謝るまで許しませんからね!エトラさんっ!!」

強く叫んだ数秒後、背後に荒々しい気配が降り立った。


◇・○・◇・○・◇・○・◇・○


目の前の光景に、格の違いを感じて唸る。
あんなに苦戦していた魔獣が、あっけなく地に伏していた。

―攻撃魔法?・・いや、そんな気配は・・―

一瞬だった。
正に瞬きの間に何かが高速で通過し、魔獣の首半ばがゴソッと大きく抉られ弾け飛んで消失した。
もう殆ど皮一枚で繋がっている状態だ。
明らかに致命傷。
だが、死んだと確信が持てるまで気は抜けない。
それに、一体何に攻撃されたかも不明だ。
新たな攻撃対象の可能性も考え、背後の兵長を気にしつつじっと成り行きを見守る。

血を吐き、苦悶の表情で残った首が重力に引かれてダラリと垂れ下がり、同時に膝を付く形で胴体が座り込むと横向きに倒れて行く。

―まずいっ!魔獣の背にまだ軍曹が!―

「伍長!軍曹がっ!!」

兵長も軍曹を気にかけ叫ぶように声を上げる。
救助するべく飛び出そうとしたところで、魔獣の上空に突如人が現れ真下へと急降下していった。
一体何者なのか?
しかし遠目にも同じ軍に属する戦闘服を着ているのは解ったので、まず間違いなく味方であろう。
そこまで考えた時、すぐ隣に突如気配が生まれた。

驚き、反射的に距離を取ったが「よぉ、お前らがアレの足止めをしていたヤツらか?」と場違いにも軽い調子で声を掛けられ、脚を止める。

誰に声を掛けられたのか、一目で理解した。
白のローブは最高位の魔術師の証・・尖った長い耳、つまりエルフ。となれば・・

王族筆頭護衛官。
リアム・ル・モス・アール・ブレイダス様に他ならない。

咄嗟に姿勢を正し、右の拳を胸の高さに掲げて敬礼。
胸を張り、僅かに顎を上げて「そうであります筆頭殿!」と質問に答えた。
戦場とはいえ、礼を失していい方ではない。最低限の礼儀は必要だ。

「あぁ。そんなに畏まられると疲れちまうから、もっと気楽に頼むわ。ここは王宮じゃねぇしな」
「はっ!ではお言葉に甘えまして、上司に接するように対応させて頂きます!」
「おう。お前らがそれでいいなら、俺は構わんぜ」
「ありがとうございます!」

一生を通して、こんな雲の上に居るような方と直に話す機会は滅多にない。
慣れない堅苦しさと緊張に、尻尾の毛もぶわりと膨らみ、背筋が強張る。
自分でさえこれだけ緊張してしまっているのだ。
兵長はどうしているのだろうと斜め後ろをちらりと窺う。
そこには同じように緊張に体を強張らせている竜人の姿が・・
敬礼を解いたものの、直立不動で固まりこちらの視線に気づく余裕も無いようだ。

―だよな・・そうなるよな~―

出来る事なら取り返しのつかない失態をやらかす前に、筆頭殿の目の届かない所へ移動したい・・
心の底からの願いは、意外にもその原因本人により叶えられた。

「さて・・俺様はこれからアレを処理するが、お前らにはホーク軍曹を救出しに行った者の手伝いを頼みたい・・構わねぇかな?」
「はっ!勿論であります!」
「おう、助かるわ。俺も処理が終わったら直ぐそっちに行く、それまでよろしく頼むな」
「「了解です!!」」

筆頭殿がその背後に倒れ伏している魔獣へと向き直り、視線が外れたところでそっと深く息を吐いた。
兵長も、ホッとして肩が少し下がっている。
だが・・

―安心している場合じゃねぇ・・軍曹の元へ急がねぇと!―

「行くぞ兵長。早いとこ軍曹を助けようや」
「っ!そうね、行きましょう!!」

魔力を用いた広域探査により、進むべき方角は解った。
兵長に頷き、一緒に走り出して数秒後・・
背後で途轍もない魔力反応がして全身の毛が逆立つ。
驚き、脚を止めて振り向くと、魔獣が居た辺りに魔術陣が展開されていた。
幾重にも重なり、塔のようになった魔術陣が・・

王国随一の魔術師。その力の一端を垣間見て頬が引き攣る。

「凄い・・」
「あぁ、ありゃ骨も残んねーな・・」

思わずといった感じの兵長の言葉に、激しく同意した。


◇・○・◇・○・◇・○・◇・○


現れたのは猫獣人と竜人の二人。
戦闘服の胸元に縫い付けられた階級章は、それぞれ伍長と兵長を表していた。
さっきは婚約者を助ける事に集中していて気付かなかったが、彼女と一緒に魔獣を足止めしていた人達だろう。

「そこの君!軍曹は無事か?!」

伍長が強い口調で訊ねながら近づき、彼女を挟んで向かい合うように膝を付く。

「はい、無事です!でも、魔力枯渇の症状がっ!」
「なんてこった・・」
「なので今、魔力の補給を・・」
「ちょっと待って。あなたの魔力を軍曹に?」

彼女の顔に触れ、容体の確認をしていた兵長が伍長との会話に割り込む形で訊ねる。

「あ、はい。そうです。俺と彼女は魔力の相性が良くて・・以前、互いの魔力を循環させた時も反発は無かったです!」
「へぇ、珍しいわね・・わかったわ。あなたはそのまま魔力補給を続けなさい。伍長!軍曹を横向きに!服を緩めて呼吸の補助をします!」
「はいよぉ!」

伍長が彼女の肩と腰に触れ、横向きに起こすと兵長がナイフを取り出した。
背中側の服を切って服を緩めるのだと理解したが・・

「兵長あの。ちょっと待ってもらえますか?」
「何よ一体?」

返事をせずに伍長へと強い視線を向ける。

「ん?何だよ?」
「見ないでもらえますか?」
「は?」

意味が解らなかったのだろう。伍長は長い髯を困惑気に揺らし、目を瞬かせた。

「彼女の肌を、俺以外の男に見せたくないので。後ろを向いててもらえますか?支えるのは俺が代わります」
「お、おぉ・・そうか」

なりふり構わぬ威圧に気圧されてくれたらしく、自分の言葉に素直に従う伍長。
心の片隅で申し訳なく思うも、今は気に掛ける余裕が無い。
片手で魔力補給を続けながら、空けた手で伍長と交代して彼女の肩を支える。
兵長はこちらのただならぬ様子を気にしつつも、するべきことをこなして行く。

アンダーウェアの背中側を切り裂き胸元を緩め、上着を脱いで彼女の上半身を覆う。
横を向かせたまま、今度はズボンのベルトを緩めてずらした。
下着がちらっと見えた時点で自分も横を向き視線を逸らす。
その間に、下着を確認したらしい兵長は再度ナイフを構える。

「あの、もしかして下着も切るんですか?」
「そうよ。今は少しでも血流の手助けをしないと」

手は止めずに答え、作業を終えた兵長はずらしたズボンを整えると、伍長に「もういいわよ」と声をかけた。
振り向いた伍長が「靴も脱がせんのか?」と兵長に訊ねる。

兵長は頷き「靴下もよ」と答えた・・が、その言葉に咄嗟に「駄目だ!」と声を上げた。

―俺だって見た事無いのに!!―

独占欲による身勝手な言動に、伍長が大きく舌打ちをして怒鳴る。

「お前よぉ!さっきから一体何様のつもりだ?救助の邪魔してんじゃねぇぞ」
「伍長の言う通りよ。軍曹を助けたいなら、魔力補給だけしてなさい」

とうとう二人から苦言が飛び出した。
判ってはいる、けれど・・どうしても譲れない!
言い返そうと口を開きかけたその時「待たせたな!」と義父が直ぐ隣に転移してきた。

「リアムさんっ!!」
「どうよジルコニアくん。エトラの様子は」

ギョッとして固まった二人を無視する形で会話を続ける。

「あまり良くないです・・魔力枯渇の症状が重くて・・」
「おぅ・・そうみたいだな・・ほんと。無茶なんぞすっから・・」

「婚約者に心配かけたら駄目だろうに」と続いた言葉に、蚊帳の外にされていた二人が動揺に声を上げた。

「はぁ?!えっ?!!」
「なっ?!・・あのっ!筆頭殿!この者は、軍曹の・・」

動揺に揺れる視線で問う伍長に「なんだ。まだ聞いてねぇの?」と返しながら視線で問われる。

「・・それどころではなくて・・」
「ま、そうだわな。説明する義理は無いし。でもまぁ、気が散るだろうから教えておくか。こいつはホーク軍曹の婚約者のジルコニアくん。俺様の〈むすこ〉でもある」

リアムさんに向いていた二人の視線が、ぎこちない動きでこちらに移って来た。
安心させるように「義理の、ですから」と伝えたが、二人ともガチっと硬直してしまっている。
申し訳なさに視線を逸らすと、伍長が硬直から脱して頭を下げて来た。

「知らなかった事とはいえ、失礼した。先ほどの君の反応、婚約者だというなら当然だ」
「いえ・・伝えてなかったので、気にしないでください」

「こちらこそ、すみませんでした」と言うと、安堵が浮かぶ瞳で目礼された。

「あたしからも謝罪を。ごめんなさい。失礼な事を言って・・」
「いえ、俺も余裕なくて・・すみませんでした。それに、兵長はエトラさんを助けようとしてくれてただけですから」

未だ目覚める気配の無い婚約者に視線を落としながら言葉を返す。
解れ、顔に掛かった髪を空いている方の手で耳に掛けてやり、手の甲で頬を撫でた。
軽く頭を下げる兵長の姿が、視界の端に映る。
会話のタイミングを見計らい、エトラさんの様子を観察していたリアムさんが話し出した。

「う~ん・・見たところ、魔力補給が追い付いてねぇな・・」
「ええ、そうなんです。全くと言っていいほど手応えを感じなくて・・これ以上どうしたら・・」

義父の言葉に隠しきれない不安を滲ませながら返事をする。
処置を再開した兵長と、それを手伝う伍長も心配そうに耳を傾けていた。

「まずは魔力の注ぎ口が狭いから、それを広げた上で俺が周囲の魔力を集める陣を敷いて・・転移に耐えられる程度に魔力が回復したら、駐屯地に戻って治療に専念できるよう態勢を整えてもらうか・・」

「魔力回復薬の手持ちはあるか?」と全員に訊ねた義父に、俺は首を振り・・残る二人は「「あります!」」と装備のポーチから小瓶を幾つか取り出してみせる。

「おっ。ナイス。俺の手持ちじゃ効果が高すぎて負担が大きすぎるからな・・伍長のヤツをジルコニアくんにやってくれるか?」

「はい」と頷いた伍長が、小瓶の蓋を外し手渡してくれる。
受け取り、礼を言って呷った。
僅かにえぐ味を感じる液体が咽を通り胃に落ちると、半分程に減っていた魔力が徐々に回復し始める。

「おし。次だ。ジルコニアくん、服を脱げ」
「はい!・・・はい?」

一度は頷いたものの、言葉の意味を理解できずに首を傾げた。

「手を繋いだくらいじゃ埒が明かねぇ。魔力の通り道を広げるためには接触面積を直に広げる必要がある」
「接触面積・・」
「そ。肌と肌を接触させて効率をよくする。だからひとまず上を脱げ」

―それ、は。つまり・・―

あられもない姿で抱き合えと?!

その様子を想像して、ぶわっ!と頭に血が上る。
が、眼鏡越しに向けられた義父の視線が真剣そのものだったので、直ぐに気を持ち直す。
一つ深呼吸して、茹りかけた意識を落ち着かせてから「わかりました」と返した。

「こんな場所だからな。一番やり易い方法は・・エトラを抱えるようにして背中と胸を合わせるやり方・・だな」

「エトラの服は」と兵長に視線を向ける義父に「既に背中側を開いてあります」と説明する兵長。

「よし。なら後は任せた。俺らは後ろを向いてるから、支度できたら声をかけてくれ」

「はい」と返事をして、義父と共に伍長が背を向けたところでアンダーウェアの裾に手を掛ける。
半裸になったところで「手伝うわ」と兵長が補助を申し出てくれたので、礼を言って手を借りた。
二人がかりで婚約者を抱き起し脚の間に座らせると、後ろから抱き付くような形で抱えたが・・正直、目のやり場に困る。
そんな場合でないのは判っているのだけれど・・

晒された彼女の背中へ惹きつけられる視線を無理やり引き剥がし、視界に入れないように横を向いたが、腕の中に抱えれば目の前に項が晒されコレでもかと理性を削りに来る。
なんだろうコレ。拷問だろうか。生殺しにも程がある。
土埃と汗の匂いが混じる彼女の香りが鼻孔をくすぐり、くらくらした。

この上、肌と肌を密着させるなんて・・

―耐えろ、俺!―

荒くなりそうな呼吸を、少しでも彼女から離れた位置で深呼吸して落ち着ける。
情けなくも無駄な足掻きをしていると、兵長が彼女に駆けていた上着を手に取り「ちょっと失礼」と声を掛けて来た。

「これをこうして・・」

と、未だ意識の無い婚約者の上半身を覆い、袖を彼女の首に回して結んだ。

「間に合わせだけど、これで少しは隠せるでしょ?」
「あ、ありがとうございます」

助かる・・彼女の肌を隠してくれたことは勿論。項が隠されたのと、兵長の服の匂いで彼女の香りが誤魔化された事が。
丸めていた自分の上着も自身の背中に掛けてもらい、見苦しさが軽減された所で背中を向けていた二人に声をかけた。

「終わりました!」
「お。よし!じゃあやるか!」

煙管を燻らせていた義父は振り向くと、兵長を伍長の所まで下がらせこちらに歩を進めた。
自分の数歩手前まで近づき、空いた方の手で魔術杖を取り出し構える。
ふーっと紫煙を細く吐き出し、頭上に杖でくるりと円を描く。
すると、自分と婚約者を中心に魔術陣が展開され一瞬、足元から光が立ち上る。
真円の魔術陣は足元の岩から僅かに浮いた所に輝く線で構成された。
複雑な模様の帯は中心から外側へと四つ。陽が落ち、薄暗くなってきた森の端で絶えずクルクルと回りながら光の粒を零している。
その様は、こんな時でなければゆっくり鑑賞したいほど、とても美しい光景だった。

「これで周囲の魔力が君に集まる。エトラから流出する魔力も、拡散されずに留まるから一緒に吸収されるだろうな」

「どうだ?」と訊かれて先延ばしが終了した。
意識的に直接肌へと触れないように気を付けていたのだが、質問には答えなければ・・
意を決して彼女を抱え直し、ぐいと自分の胸を押し付けた。
自分の体が火照っていた所為か、彼女の肌が汗で冷えていたのか・・
思いの外ひんやりとして・・それが余計に彼女と肌を合わせているのだと意識させ、心臓が煩くなる。

―集中・・集中っ!―

目を閉じ、ぐっと歯を食いしばって魔力の流れを意識する。
・・なるほど、魔力回復薬と魔術陣の併用で急速に魔力が回復しているのが判った。
続いて、接した肌から魔力を放出。彼女へと注ぎ込む。
支度をする少しの間魔力補給を中断していたが、その間にも流出は進んでいた様だ。
補った魔力は殆ど流れ出てしまったようで、最初と同じ状態へと戻ってしまっていた。
しかし、今度は流出する以上のスピードで魔力を流し込むことが出来ている。
同時に、自分の魔力は注ぐ傍から回復。
これならば・・

「はい。いい感じです。少しずつですけど、魔力が蓄積されていくのを感じます」
「よし。ならそのまま一時間程様子をみて移動するかな・・その間、周囲の警戒を頼めるか?」

義父に視線を向けられた伍長と兵長は頷き「「お任せを」」と答えると、敬礼して早速哨戒に向かった。

陽が落ち、空の端に夕陽の余韻を残して星明りが満ち始める。
展開した魔術陣を眼鏡に反射させながら、義父はこめかみに指を当て駐屯地と連絡を取り合っていた。
短いやり取りで話は終わったらしく、直ぐにこちらに向き直る。

「あっちと話は着いたぞ。受け入れ準備はしておくとさ」
「ありがとうございます。こっちも順調です」

感覚的に把握している分には彼女の魔力流出は止まり、体内の魔力量も随分マシになった。
ただ、とても困ったことに・・
流出した彼女の魔力を取り込んだことで身体が反応してしまっている。
真剣に魔力補給に当たっているものの・・これでは面目が立たない。

「お。そうか!それならもう安心だな。よし、移動も可能かどうか先に確認しておくか」

そう言って、義父はローブの端をはためかせながら近づいてくる。
咄嗟のことで思考は停止し体が強張った。
義父は片膝を付いて抱え込む婚約者の顔を覗き込み、手首に触れて何かを確認している。
自分はそれどころではない。
すっかり臨戦態勢になっている現状に気づかれでもしたら・・と緊張して変な汗をかいていた。

「よし、もう少ししたら転移しても大丈夫そうだな・・ん?どうしたジルコニアくん」

視線を向けられ、思わず目を逸らす。そんな挙動にますます首を傾げる義父。

「おい、顔が赤いぞ?どこか調子悪くなったか?」
「・・いえ・・あの。なんと申しましょうか・・」
「なんだ、どうした。回復薬飲いるか?」
「いや、それは・・まだ必要ないです」
「じゃあなんだよ。言ってくれなきゃわからんぞ?」

・・っ!その通りだけれど!なんだけど!
「ええと。あの・・」と意味の無い言葉を紡ぎながら考えを巡らす。
ん?待てよ。逆に今がチャンスでは?
義父に知られるのは恥ずかしいが、兵長と伍長にまで察されるよりかは・・
身内に知られる羞恥より、他人に知られて拡散される可能性の方を無くしたい。
彼女の魔力に中てられ、欲に侵食されつつある碌に回らない頭で結論を出し、心の内で一つ頷いて口を開いた。

「実は・・俺とエトラさんの魔力は相当に相性が良いらしくて・・」
「だな。だからそうして魔力補給できてるよな?」
「そう・・なんですけれど・・相性が良すぎる弊害といいますか、副作用的な症状が・・ですね」
「ん?・・おい、待て。もしかして・・」

首を傾げていた義父がはたと気づき、視線を下げる。

「・・・エトラの治癒を受けた時に出るあの副作用か?」
「・・俺だけでなく彼女にも作用するので、更に質が悪いかと・・」

思わずといった感じで空を仰ぎ見、腕を組んで唸る義父。

「ん゛~・・そっかぁ。そいつはちと難儀だな・・あ~。その。なんだ。ジルコニアくんは我慢できそうか?」
「・・エトラさんから吸収した魔力量はそう多くないので、俺はまだ大丈夫なんですけど・・」
「おぉう。そうか。エトラの方が問題か」
「はい・・その。正直・・俺の魔力を大量に取り込んだエトラさんが目を覚ました時、どんな状態になるのか・・」

うん。とろっとろになってる可能性、大。
そんな彼女に迫られでもしたら・・耐えるなんて絶対無理っ!!
あられもない状態の彼女を想像してしまい、顔と首筋から背中にかけてぶわりと熱が集まり、少し眩暈を感じた。

「あ゛~・・。どうしたもんかな。眠らせる魔法や魔道具は今のエトラには負担が大きいし・・薬もちょっとな・・出来るだけ自然な状態の方が回復は早いんだが・・」

眉根を寄せ、難しい表情で顎をさすっていた義父はピタリと動きを止めるとスッと立ち上がって言った。

「ははっ!悩むだけ無駄ってな!選択肢なんぞ最初から無かったわ!」

開き直り、カラカラと笑った義父は再度しゃがむと、内緒話をするように口元に手を当てて囁いた。

「エトラの命には代えられねぇ。あいつの意識が戻ったらお伺いを立ててみろ」
「え゛?!」
「婚約者だろ?本人同士納得の上なら、何の問題がある?」
「それは・・そうですけど・・」
「それにな。〈伴侶大好き〉のホーク家だぞ?婚姻前に致さ無いと思うか?」
「・・・・確かに・・いや、でもエトラさんは女性ですし・・」
「安心しろ。お前らだけじゃない。寧ろ子どもが出来るのが先ってパターンもあったぞ」

それは安心材料にして良い情報なのか・・

―そこはかとない不安がじわりと首をもたげるのだけど・・―

いい・・のか?
ももも、もちろん。エトラさんの許可が出たのなら致すのは恐悦至極ばっちこい。
彼女を悦ばせ、満足させられるかはイマイチ自信の無い所ではありますが夜行種の友達から半ば無理やり聞かされたアレやコレやの知識を今まで以上に総動員して頑張る所存。

彼女と重ねて来た幾つもの行為が、本のページを捲るように次々と脳裏に浮かぶ。
とうとう、あの先に進むことが出来るかもしれない・・期待に思わずゴクリと喉が鳴る。
しかし、不意に冷静な自分が浮上して疑問を投げかけた。

だが・・もし・・もしですよ?
期待値限界突破。やる気満々な状態で待機してたのに「嫌」って言われたら・・
おぅ・・想像しただけでシュンとしそう。どこがとは言わないけど。

更に言うと現状、我慢するのがとても辛いです・・ハイ。
少し冷静になっても、直ぐに欲が盛り返して塗りつぶしてきます。
彼女の魔力に炙られ続けて脳内桃色。ダレカタスケテ・・

あ゛ぁー・・。マジ無理。しんどい。心も身体も彼女を求めて悲鳴を上げている。
・・・・よし。覚悟を決めよう。
どんなに情けなく恰好悪くても、彼女の意識が戻ったら縋りついて懇願しよう。

抱かせてください触れてもいいですか?』って。


腹を括ると不安定だった精神も落ち着きを取り戻した。
但し、桃色一色なのに変わりはなく「抱かせてください」「抱かせてください」と懇願の言葉がグルグルと脳内を駆け回っている状態だ。
言うぞ、言うぞと集中するあまり、魔力補給以外に割く諸々の余裕が無くなった結果、ふと気が付けば見知らぬ天幕の中に彼女と二人きりだった。

兵長の上着は取り払われ、今の俺には目の毒にしかならない美しい項が惜しげもなく晒されている・・
お腹に回していた腕を持ち上げ、鼻先に手の平を翳して意識と呼吸を確かめた。
どうやら、まだ寝ているらしい。
呼吸は、少し早いものの安定しているようだ。
触れている肌から感じられる体温は熱いくらいで、規則的に響く鼓動からも力強さを感じる。
イヤーカフの火傷は簡単な治療が施されてあった。
一通り彼女を観察したが、魔力枯渇の症状が大分改善されている様子にホッと息を吐く。

だが、安心したことにより、落ち着いていた熱が再び分身に集まりつつある・・
言い訳になるが、これだけ密着しているのだから反応しない方がおかしいと主張しておく。
それに、離れようにもぴたりと吸い付く肌と肌は汗ばみ、摩擦を強めている。
今離れれば気化熱で驚かせてしまいそうだった。

―寝てるってことは、まだ体が睡眠を必要としているんだろう・・自然に目を覚ますまで我慢・・かな?―

ゆっくり溜息を吐き、そこで初めて周囲に視線を巡らせた。

暖色系の明りを灯す魔道具が天井の真ん中に設置されている天幕内には、寝台も家具も無いシンプルな空間が広がっている。
高さは十分、広さはギリギリ寝台三つ分といったところだろうか。
座り込んだ床には厚みのある柔らかな敷物が敷き詰められており、固めのクッションが幾つか転がっている。
後は両腕で抱えられる大きさの木箱が二つ、手の届く所に置かれていた。
その箱の上に二つに折られた紙が一枚・・
手に取って開いてみると、流麗な文字で書かれた自分宛ての手紙だった。
そのまま文字を目で追う。

『大人の階段を上る義息へ』

最初の一文で吹いてしまった・・・なんて事を言ってくるんだあの人は・・
間違いではないが・・たぶん・・そうなって欲しいと思っているけど・・
ケンケンと咳き込み、乱れた呼吸を整えてから続きに目を通す。

『集中して何も聞こえてないみたいだったから、こっちで全部お膳立てしてやったぜ!
流石の俺様だわ~。素晴らしいわ~。誉めてくれても良いんだぞ?
あ、でも何を準備したら良いのか見当つかなかったから、箱の中身はエトラの友達に任せたわ。
駐屯地の衛生班に居たろ?その子に必要そうな物を一通り揃えて貰ったからな。
お前らも後で礼を言っておけよ!
その天幕は二日間自由に使って良いと許可が出てるから、安心してゆっくり過ごしてくれ。
ただ、時間経過が判らないと思うから、時が来たら精神感応で呼ぶからな!
そしたら諦めて出て来いよ?でないと問答無用で踏み込むからな?忠告はしたぞ?
小さい方の箱は俺からの餞別だ。気兼ねなく使ってくれや。

では良い夜を!!

二人の未来を見守り隊(仮)
隊長: リアム・ル・モス・アール・ブレイダス』

・・・・どこから突っ込んだら良いのだろう・・
一先ず、箱の中身を確認してみる事にする。

義父の言う、小さい方の箱を傍に寄せ開けてみた。
そこには二日分の保存食と、水を生み出す魔道具。布類、そして結界魔道具らしき物。
一緒に入っていた説明書によれば、結界魔道具らしい物は起動させると色付きの侵入不可結界が展開され、音も遮断するとある。

早速起動させることにした。
すると、周囲から聞こえていた人の声や虫の音、木々が揺れる音なんかがたちまち消え去る。
代わりに、シンと静まり返った天幕内には婚約者の寝息が静かに流れた。

―おお凄い・・これなら周りに気を使わなくて済みそう―

続いて、大きい方の箱の蓋を取った。
直ぐに閉じる。

―アクロア曹長~~~っ!!―

こちらの箱には一見しただけで夜の店御用達の品だと判る小物類が詰められていた。
思わず蓋を閉じたが、物凄く興味はある・・

箱の蓋を再度開き、恐る恐る薄目で中身を確認すると、ご丁寧に一つ一つメモが張り付けてあった。
その気遣いが有難くも恥ずかしい・・

魔力回復薬と回復薬。初級、中級各種三本ずつ。
わぁ!助かる!早速中級の魔力回復薬を頂こう。

【洗浄】の魔道具。魔力を込めれば【洗浄】が発動する優れもの。
これは純粋に有難い。二人とも土埃で汚れているし。

多粘性スライムジェル。摩擦を軽減する。
なるほど・・

寝屋着ネグリジェ。お好みで。
な、なるほど・・大変ありがとうございます。

各種玩具。使う使わないはご自由に。
し、初心者にこれはちょっと・・経験値を稼いだ暁には・・是非・・

避妊薬。必需品。〈注意〉絶対に使う事!
―っですね!大事ですね!

一つ一つ箱から取り出し、メモに目を通すに連れ体温が上がっていったが・・
最後の品でのぼせかけた頭に冷や水を浴びせられた。

―避妊大事っ!!只でさえエトラさんに負担をかけるんだし・・こ、子どもなんてまだまだ先の話だからっ!!―

いつかは欲しいけれども、今ではない。

―今は、エトラさんにだけ集中したい・・―

抱える愛しい人の後頭部に唇で触れ、続いて項にも優しく口づける。
すると、ビクンと体が跳ねた。

「・・エトラさん?もしかして・・起きてらっしゃいます?」

触れた首筋が次第に赤らみ、絞り出すような声で「あぁ」と小さく返事が返って来た。
安堵と、嬉しさで口元に笑みが浮かぶ。

衝動に任せるまま、火照る肌に舌を伸ばした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

しかし、ご覧の有様です・・
えちち本番まで入りませんでした・・

ごめんなさいぃぃぃぃ!!!
次こそありますから・・ありますから~~っ!!(ゆ、許して・・)
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