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ギリシャ神話編
ヒュドラ
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ペルセウスは砂浜に戻った。
バラシオンの位置を確認する、先ほどより沖合に出ているが100メートルほどだ。
おそらくペルセウスを心配しての事だろう。
ペルセウスは三人組の行方を調べるため上空高く舞い上がった。
エーテルマトリクスを視覚化し生命パターンを調べる。
まだ二~三人の人間が残っているようだ。
そして、あの大猿が南北の森に数十体いる。
しかし、あの三人組は見つからない、しっかりと生命パターンを記憶した、見間違えることはないはずだが。
三人組はヒュドラを封印していた地下空洞に転移していた。
「いいかい? 放つよ。」
ステンノーは地下空洞の天井を元素転換によって砂に変換した。
上空から島を探索していたペルセウスは遠浅の砂浜に突然大きな穴が空いたのを目撃した。
三姉妹が立っている所からは天井から大量の海水が流れ込んでくる様子を見ることができた。
いずれ、この空洞は海の水で満たされてしまうだろう。
天井に空いた巨大な円形の穴に向かってヒュドラが登っていく。
三姉妹はここでの仕事は終わったと言わんばかりにどこかに転移した。
遠浅の砂浜に空いた大きな穴に大量の砂と水が流れ込んでいるのが見える。
ペルセウスは何が起きているのか上空から観察を続けることにした。
やがてその穴は十分な水と砂を飲み込んで満足したのか急激な水流が影を潜め海底にわき上がった砂煙も消えた。
上空から見ると透明な水の膜をたたえた広大な海の浅瀬に大きな円形の穴が空いたように見えた。
その中央にイソギンチャクのような生き物がうごめいている。
小さく見積もっても直径20メートルはありそうな巨大イソギンチャクである。
そのイソギンチャクがバラシオンに向かって進んでいるようにペルセウスには見えた。
『いかん、此方におびき寄せないと。』
ペルセウスはイソギンチャクの進行方向を遮る位置に降り立った。
近くで見ると、巨大イソギンチャクに見えたそれはイソギンチャクではなかった。
正面から見ると亀の頭部らしきものが生えている。
それが頭部だと思ったのは、両側面に蛇の目のような無機質な黒い目があったことと、鋭い牙が下顎からせり出した凶暴そうな口があったからである。
手足も亀そのものだ。
亀の甲羅らしき物もその上に見えるがその上にさらに軟体動物のようなコブが円環状に付着している。
そのコブからミミズのような触手がうねうねと揺れながら上空に向かって伸びている。。
空からイソギンチャクに見えたのは、この触手が何10本も生えていたからである。
移動速度が思ったより早い、このままではすぐにバラシオンに届き甚大な被害を与えるだろう。
ペルセウスは自分に注意を向けさせるために亀の頭にケラウノスを振り下ろした。
亀の頭はその瞬間に頭部を体内に引っ込め強靭な甲羅でケラウノスを受けた。
『切れない』
ケラウノスにペルセウスのエーテルパラメータ変換を纏わせてから初めて切断できないものに遭遇した。
ケラウノスの質量は攻撃の瞬間10倍に跳ね上がりその刃先は1ミクロンの薄さにまで研ぎ澄まされ、まさに空間をも切り裂く。
その剣を受けてなお無傷でいられる物質。
ペルセウスはこの時初めてわずかに焦った、ケラウノスの切れ味はポセイドンの水刃よりも高い、それを持ってしても切れない敵の甲羅。
しかし、それも僅かな間の事だった、ペルセウスはケラウノスにハデスの灼熱を纏い、大上段に振り下ろす。
またしても亀の頭は甲羅の奥に引っ込み、その甲羅で剣を受けた。
甲羅が灼熱のエネルギーで炭化したように見えたが、その下から新たな外皮が現れ何事もなかったかのように亀の頭が元に位置に戻る。
「くっ」
ペルセウスは短く唸った。
『どうすれば、いい?』
亀はペルセウスに向かって方向を変えてきている。
とにかく、バラシオンから遠ざける事には成功しそうであった。
一方三姉妹は
「今の攻撃で魂が一気に5個消滅したよ。」
メデューサが叫ぶ。
「何という威力だ、人間の攻撃なら100回受けたって魂が一個消えるだけなのに。」
とエウリュアレー。
「たった2回あの男の攻撃を受けただけで、魂を5個も持っていかれるとは。早く片付けないとヒュドラと言えども消されてしまう。」
ステンノーはペルセウス以上に焦っていた。
男の攻撃は尋常ではない、まるで、あの大賢者の攻撃のようだ。
「ヒュドラがあの男を追って方向を変えた!」
エウリュアレーが報告する。
「だめだよ、今のところあの男の弱点はあの客船。攻撃対象を変えてはだめだ、客船に向かうよう指示しな。」
ステンノーは与し易いバラシオンを人質にして活路を見出そうとした。
注意を此方に向けることに成功した。
そう思った矢先、化け物亀は再びバラシオンに向かい始めた。
『そっちじゃない、こっちだ!』
ペルセウスは必死に自分に注意を向けさせようとしたが、化け物亀は意に介することなくバラシオンに向かっている。
ペルセウスは攻撃対象を変更した。
化け物亀の前に再び立ちふさがり、今度は触手の根本を狙う。
『触手を全部なぎ倒す!』
ペルセウスは右側の触手の根本に剣を振った。
触手の直径は1メートルは優にあったが、ケラウノスはそれに合わせたように切っ先を伸ばす。
触手は根本から切断された。
『やはり甲羅ほど硬くはないようだ。』
そう考えはしたのだが、すぐに落胆の顔に変わる。
触手の根本から再びミミズのような触手が生えてきたのだ、しかも、すごい速さで復元される。
化け物亀は進行方向を変える様子がなかった。
バラシオンの艦橋からその様子を見ていたローレンスは天井に続くハシゴを駆け上りハッチを開いて屋上に出た。
自分の体で風を受ける。
しばらく目を瞑って考え込むような様子を見せていたが、頷いたかと思うと目を開き、伝声管を掴み艦橋に伝える。
「面舵一杯、進路を南西にとれ!」
ローレンスの声を聞いて操舵師は疑問に思う、『その方向では化け物亀に近づいてしまう』。
「船長、その方向ではあの化け物の前を通らねばなりません。」
操舵師は伝声管を通じて異を唱えた。
「構わん、敵の移動速度は現状では我が艦より早い、当艦の最大船速で逃げる。」マストブームは今左にあるアビームにするためには舵を右に切り南西に向かう方が早い。
「ウィンドアビーム、南西に進路設定!」
ローレンスは再度指示を出した。
バラシオンの右舷前方から化け物亀が近づいてくるのが見えた。
化け物亀が右舷前方15メートルまで近づいてくる。
甲板からも化け物亀の姿がはっきりと見て取れる位置にまで近づいてきた。
ペルセウスが必死で触手を切断しているが、切断する端から生えてきているのが見えた。
『もう少しで追いつかれてしまう』
誰もがそう思った。
しかし、バラシオンは南東風を真横に受け、どんどん速度を上げていった。
やがて、化け物亀の見える位置が徐々にバラシオンの右舷前方から右舷へ、そして右舷後方に変化していった。
化け物亀はバラシオンにどんどん水をあけて行く。
ローレンスの判断がもう少し遅ければ何をしても追いつかれてしまったであろう。
「ちきしょう! 逃した!」
ステンノーは叫んだ。
「魂はあと何個残ってる?」
「触手を切られるたんびに1個消えてしまった。今は86個しか残ってないよ」
メデューサが答える。
「なんてこった、この短時間に40本近くも切られたってのかい?」
ペルセウスはこの化け物亀の再生能力はいずれ尽きるに違いないと信じてひたすら触手を切断していた。
化け物亀が「ガギギギイー」と不気味が咆哮を上げる、バラシオンを取り逃がしたことを悔しがっているように聞こえた。
『バラシオンへの脅威は消えた。こいつの再生能力が無限に続こうともこの攻撃を続けるぞ。』
ペルセウスは化け物亀を片付けることを諦め、バラシオンが安全域まで逃げ切る事を優先させた。
バラシオンが安全な場所まで移動できたら、ペルセウスも船に転移する気でいた。
『あの三人組は放置しておけないが、この怪物の討伐方法がわかるまでお預けだ。』
ペルセウスが攻撃してくるたびに魂のストックが減って行く。
今は、残り57個にまで数を減らしている。
このままではじり貧だ、
「ポイズンサリバを打たせなさい。」
ステンノーは最後の手段と言わんばかりにそう指示を出す。
「一回打つたびに8個の魂を使ってしまうのよ、7発撃ったらヒュドラが死んじゃうよ。」
メデューサが異を唱える。
「このままでも何時かやられる。あいつは手を緩める気はないようだよ。」
エウリュアレーがステンノーに賛成する。
ペルセウスはそろそろタイミングを見計らってバラシオンに向かおうと考えたいた時だ。
化け物亀の触手の頭と思えるところがすべてペルセウスに向いた。
触手の先頭はミミズの口のように穴が空いている。
『何かが来る!』
ペルセウスは本能的に遠隔攻撃が来ると予感した。
タイムインデックスを10倍速にし投擲型に対応し、アキレスの盾に反射フィールドを纏わせ光線系の攻撃に備えた。
触手の根本が膨らみ殆ど球状に膨らんだ。
その膨らみが徐々に頭部に移って行く。
明らかに何かが本体からミミズの体を通って頭に向かっている。
『何という間抜けな攻撃だ。これでは逃げなさいと言っているようなものではないか。』
球状の膨らみが頭部に達した。
ミミズの口から赤黒い球体が吐き出された、白い脂肪の網で包んだ肉の塊のような球体、丸い腸詰と言えば良いだろうか、そのぶよぶよした球体がまるでツバを吐くように吐き出される。
タイムインデックスの書き換えで高速化するまでもない、ペルセウスは余裕でその球体を避けた。
8本の触手から8個の球体が吐き出され、そのうちの一つが海面に接触した。
肉塊はその瞬間破裂し、周りの海水を巻き込んで大きな水柱を作った。
8個全てが同じように水柱を作り、ペルセウスは余裕で上空に跳躍して躱した。
しかし、海水の飛沫までは気にしなかったため、何箇所か海水がペルセウスに掛る。
悲劇はそこから起こった。
海水が掛かった場所からペルセウスの体が徐々に石化している。
『しまった、あの化け物亀の毒は接触するすべての物質をその毒に変えてしまうのか?』
ペルセウスの体は徐々に侵食されていった。
すでに下半身は動かなくなっている、10秒も経たないうちにペルセウスは全身が石化し海に落下した。
アドリア海のほぼ中心の海底、そこは水深1000メートルにもなる帰還不可能な場所だった。
バラシオンの位置を確認する、先ほどより沖合に出ているが100メートルほどだ。
おそらくペルセウスを心配しての事だろう。
ペルセウスは三人組の行方を調べるため上空高く舞い上がった。
エーテルマトリクスを視覚化し生命パターンを調べる。
まだ二~三人の人間が残っているようだ。
そして、あの大猿が南北の森に数十体いる。
しかし、あの三人組は見つからない、しっかりと生命パターンを記憶した、見間違えることはないはずだが。
三人組はヒュドラを封印していた地下空洞に転移していた。
「いいかい? 放つよ。」
ステンノーは地下空洞の天井を元素転換によって砂に変換した。
上空から島を探索していたペルセウスは遠浅の砂浜に突然大きな穴が空いたのを目撃した。
三姉妹が立っている所からは天井から大量の海水が流れ込んでくる様子を見ることができた。
いずれ、この空洞は海の水で満たされてしまうだろう。
天井に空いた巨大な円形の穴に向かってヒュドラが登っていく。
三姉妹はここでの仕事は終わったと言わんばかりにどこかに転移した。
遠浅の砂浜に空いた大きな穴に大量の砂と水が流れ込んでいるのが見える。
ペルセウスは何が起きているのか上空から観察を続けることにした。
やがてその穴は十分な水と砂を飲み込んで満足したのか急激な水流が影を潜め海底にわき上がった砂煙も消えた。
上空から見ると透明な水の膜をたたえた広大な海の浅瀬に大きな円形の穴が空いたように見えた。
その中央にイソギンチャクのような生き物がうごめいている。
小さく見積もっても直径20メートルはありそうな巨大イソギンチャクである。
そのイソギンチャクがバラシオンに向かって進んでいるようにペルセウスには見えた。
『いかん、此方におびき寄せないと。』
ペルセウスはイソギンチャクの進行方向を遮る位置に降り立った。
近くで見ると、巨大イソギンチャクに見えたそれはイソギンチャクではなかった。
正面から見ると亀の頭部らしきものが生えている。
それが頭部だと思ったのは、両側面に蛇の目のような無機質な黒い目があったことと、鋭い牙が下顎からせり出した凶暴そうな口があったからである。
手足も亀そのものだ。
亀の甲羅らしき物もその上に見えるがその上にさらに軟体動物のようなコブが円環状に付着している。
そのコブからミミズのような触手がうねうねと揺れながら上空に向かって伸びている。。
空からイソギンチャクに見えたのは、この触手が何10本も生えていたからである。
移動速度が思ったより早い、このままではすぐにバラシオンに届き甚大な被害を与えるだろう。
ペルセウスは自分に注意を向けさせるために亀の頭にケラウノスを振り下ろした。
亀の頭はその瞬間に頭部を体内に引っ込め強靭な甲羅でケラウノスを受けた。
『切れない』
ケラウノスにペルセウスのエーテルパラメータ変換を纏わせてから初めて切断できないものに遭遇した。
ケラウノスの質量は攻撃の瞬間10倍に跳ね上がりその刃先は1ミクロンの薄さにまで研ぎ澄まされ、まさに空間をも切り裂く。
その剣を受けてなお無傷でいられる物質。
ペルセウスはこの時初めてわずかに焦った、ケラウノスの切れ味はポセイドンの水刃よりも高い、それを持ってしても切れない敵の甲羅。
しかし、それも僅かな間の事だった、ペルセウスはケラウノスにハデスの灼熱を纏い、大上段に振り下ろす。
またしても亀の頭は甲羅の奥に引っ込み、その甲羅で剣を受けた。
甲羅が灼熱のエネルギーで炭化したように見えたが、その下から新たな外皮が現れ何事もなかったかのように亀の頭が元に位置に戻る。
「くっ」
ペルセウスは短く唸った。
『どうすれば、いい?』
亀はペルセウスに向かって方向を変えてきている。
とにかく、バラシオンから遠ざける事には成功しそうであった。
一方三姉妹は
「今の攻撃で魂が一気に5個消滅したよ。」
メデューサが叫ぶ。
「何という威力だ、人間の攻撃なら100回受けたって魂が一個消えるだけなのに。」
とエウリュアレー。
「たった2回あの男の攻撃を受けただけで、魂を5個も持っていかれるとは。早く片付けないとヒュドラと言えども消されてしまう。」
ステンノーはペルセウス以上に焦っていた。
男の攻撃は尋常ではない、まるで、あの大賢者の攻撃のようだ。
「ヒュドラがあの男を追って方向を変えた!」
エウリュアレーが報告する。
「だめだよ、今のところあの男の弱点はあの客船。攻撃対象を変えてはだめだ、客船に向かうよう指示しな。」
ステンノーは与し易いバラシオンを人質にして活路を見出そうとした。
注意を此方に向けることに成功した。
そう思った矢先、化け物亀は再びバラシオンに向かい始めた。
『そっちじゃない、こっちだ!』
ペルセウスは必死に自分に注意を向けさせようとしたが、化け物亀は意に介することなくバラシオンに向かっている。
ペルセウスは攻撃対象を変更した。
化け物亀の前に再び立ちふさがり、今度は触手の根本を狙う。
『触手を全部なぎ倒す!』
ペルセウスは右側の触手の根本に剣を振った。
触手の直径は1メートルは優にあったが、ケラウノスはそれに合わせたように切っ先を伸ばす。
触手は根本から切断された。
『やはり甲羅ほど硬くはないようだ。』
そう考えはしたのだが、すぐに落胆の顔に変わる。
触手の根本から再びミミズのような触手が生えてきたのだ、しかも、すごい速さで復元される。
化け物亀は進行方向を変える様子がなかった。
バラシオンの艦橋からその様子を見ていたローレンスは天井に続くハシゴを駆け上りハッチを開いて屋上に出た。
自分の体で風を受ける。
しばらく目を瞑って考え込むような様子を見せていたが、頷いたかと思うと目を開き、伝声管を掴み艦橋に伝える。
「面舵一杯、進路を南西にとれ!」
ローレンスの声を聞いて操舵師は疑問に思う、『その方向では化け物亀に近づいてしまう』。
「船長、その方向ではあの化け物の前を通らねばなりません。」
操舵師は伝声管を通じて異を唱えた。
「構わん、敵の移動速度は現状では我が艦より早い、当艦の最大船速で逃げる。」マストブームは今左にあるアビームにするためには舵を右に切り南西に向かう方が早い。
「ウィンドアビーム、南西に進路設定!」
ローレンスは再度指示を出した。
バラシオンの右舷前方から化け物亀が近づいてくるのが見えた。
化け物亀が右舷前方15メートルまで近づいてくる。
甲板からも化け物亀の姿がはっきりと見て取れる位置にまで近づいてきた。
ペルセウスが必死で触手を切断しているが、切断する端から生えてきているのが見えた。
『もう少しで追いつかれてしまう』
誰もがそう思った。
しかし、バラシオンは南東風を真横に受け、どんどん速度を上げていった。
やがて、化け物亀の見える位置が徐々にバラシオンの右舷前方から右舷へ、そして右舷後方に変化していった。
化け物亀はバラシオンにどんどん水をあけて行く。
ローレンスの判断がもう少し遅ければ何をしても追いつかれてしまったであろう。
「ちきしょう! 逃した!」
ステンノーは叫んだ。
「魂はあと何個残ってる?」
「触手を切られるたんびに1個消えてしまった。今は86個しか残ってないよ」
メデューサが答える。
「なんてこった、この短時間に40本近くも切られたってのかい?」
ペルセウスはこの化け物亀の再生能力はいずれ尽きるに違いないと信じてひたすら触手を切断していた。
化け物亀が「ガギギギイー」と不気味が咆哮を上げる、バラシオンを取り逃がしたことを悔しがっているように聞こえた。
『バラシオンへの脅威は消えた。こいつの再生能力が無限に続こうともこの攻撃を続けるぞ。』
ペルセウスは化け物亀を片付けることを諦め、バラシオンが安全域まで逃げ切る事を優先させた。
バラシオンが安全な場所まで移動できたら、ペルセウスも船に転移する気でいた。
『あの三人組は放置しておけないが、この怪物の討伐方法がわかるまでお預けだ。』
ペルセウスが攻撃してくるたびに魂のストックが減って行く。
今は、残り57個にまで数を減らしている。
このままではじり貧だ、
「ポイズンサリバを打たせなさい。」
ステンノーは最後の手段と言わんばかりにそう指示を出す。
「一回打つたびに8個の魂を使ってしまうのよ、7発撃ったらヒュドラが死んじゃうよ。」
メデューサが異を唱える。
「このままでも何時かやられる。あいつは手を緩める気はないようだよ。」
エウリュアレーがステンノーに賛成する。
ペルセウスはそろそろタイミングを見計らってバラシオンに向かおうと考えたいた時だ。
化け物亀の触手の頭と思えるところがすべてペルセウスに向いた。
触手の先頭はミミズの口のように穴が空いている。
『何かが来る!』
ペルセウスは本能的に遠隔攻撃が来ると予感した。
タイムインデックスを10倍速にし投擲型に対応し、アキレスの盾に反射フィールドを纏わせ光線系の攻撃に備えた。
触手の根本が膨らみ殆ど球状に膨らんだ。
その膨らみが徐々に頭部に移って行く。
明らかに何かが本体からミミズの体を通って頭に向かっている。
『何という間抜けな攻撃だ。これでは逃げなさいと言っているようなものではないか。』
球状の膨らみが頭部に達した。
ミミズの口から赤黒い球体が吐き出された、白い脂肪の網で包んだ肉の塊のような球体、丸い腸詰と言えば良いだろうか、そのぶよぶよした球体がまるでツバを吐くように吐き出される。
タイムインデックスの書き換えで高速化するまでもない、ペルセウスは余裕でその球体を避けた。
8本の触手から8個の球体が吐き出され、そのうちの一つが海面に接触した。
肉塊はその瞬間破裂し、周りの海水を巻き込んで大きな水柱を作った。
8個全てが同じように水柱を作り、ペルセウスは余裕で上空に跳躍して躱した。
しかし、海水の飛沫までは気にしなかったため、何箇所か海水がペルセウスに掛る。
悲劇はそこから起こった。
海水が掛かった場所からペルセウスの体が徐々に石化している。
『しまった、あの化け物亀の毒は接触するすべての物質をその毒に変えてしまうのか?』
ペルセウスの体は徐々に侵食されていった。
すでに下半身は動かなくなっている、10秒も経たないうちにペルセウスは全身が石化し海に落下した。
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