エーテルマスター

黄昏

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ギリシャ神話編

ペルセウスの開眼

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「もう一つ、あなた達に言っておく事、お願いしておく事があるの。」
「私がこんな風に魔法が使える事。あなたに魔法を教えている事。その似顔絵のこと。全部、誰にも言わないで欲しいの。
内緒よ。たとえ私の家族の前でも決してこの事には触れないで欲しいの。」
「詳しい事情は言えないけれど、これはとても大事な事なの。誓える?」
「おれぁ、大丈夫です。ぜってい喋りません。」とペルセウス。
「俺も大丈夫ですぜ。口は堅い方です。」
二人の箝口に絶対の自身があったわけではないが、バレればバレたで他に手はある。
こうして、師ヘラことアビゲイルと弟子ペルセウスの申し合わせが行われた。
ペルセウスは律儀に毎日同じ時間にヘラに祈りを捧げる。
ヘラの名前を呼び一方的にその日の出来事を報告して終わるのである。
ヘラもよく心得たもので必要だと思う時以外は特に何も言わずに通信を終了する。
「今日は、無限と無についてちょっと難しいかもしれないけど、説明するわ。」
「今日は、エーテルが何故人間にしか制御できないのかを説明しましょう。」
「人は自我を持ったエーテルの一形態なの。だから、意思次第でエーテルそのものに干渉できるの。」
「魔人達は直接エーテルの制御をできないので人の魂を操ってエーテルを操作するの。」
「今日は貴方の得意な重さの制御について、もっと高度な事が出来ることを教えてあげるわ。」
最初の講義からすでに半年が過ぎようとしていた。
日に日にペルセウスのエーテル制御の技術が向上して行く。
しかし、性格のせいかペルセウスはどこか自信がなく、言われたことは卒なくこなしても自ら何かをしようとする意思が希薄であった。
『もう少しで彼はエーテルバチュラーとして開眼する。惜しいわ、あと何が足りないのかしら。』
ヘラは少しその辺りについてペルセウスと直接話をしてみようと思い立ち、彼女の方から直接似顔絵ポータルに跳んだ。
彼女が実体化した時ペルセウスはそれに気づかずベットに腰をかけ俯いて何かごそごそとしていた。
「ヘラ様、ヘラ様」とささやいている。
「なあに? ペルセウス。何をしているの?」
その声を聞いた途端ペルセウスは飛び上がって驚き毛布を抱いて振り返った。
毛布が乱雑に彼の体に纏わり付いているが、よく見ると下半身が露出している。
『見られてしまった。よりによってヘラ様に』ペルセウスは死よりも激しい恥辱に体が打ち震える。
そのまま、床にへたり込み俯いて「うっ、うっ」と子供のように泣き出した。
ヘラはそこで何が行われていたのか理解した。
『そう言う事ね。可哀相に』
彼は32歳になる立派な男性なのである。
その容姿から女性にモテないわけがない。
事実ワインの試飲会でアルテミスが「あらいい男」とつぶやいたではないか。
その彼はしかし言い寄る女性に見向きもせずひたすらヘラに操を捧げていた。
「ごめんなさい、辛い思いをさせてしまったみたいね。貴方は他の女性と目合まぐあうこともせず私にずっと操を通してきたのね。」
「こんなところを見られて、おらぁ、もう生きていられねぇ」
ペルセウスは俯いたままそう囁く。
ヘラは考える。
『そうねぇ、ヘラにはもう3人も子供がいる。貞操なんてあったもんじゃないわね。私を慕って他の女には目もくれずひたすら我慢する。こんな子を放っておける訳ないわね。』
「ヘシオドスはどうしたの?」
「明日隣町から帰ってきます。」
それを聞いてヘラの心は決まった。
その場でキトンの肩止めを外す。
さらっと衣服が下に落ち彼女の裸体が露わになる。
『彼のアガペーには答える事ができなくても、エロスには答える事ができる。そうよね。ゴーシュ?』
「こちらにいらっしゃいペルセウス」ヘラは彼の肩を優しく掴んで立たせベッドにいざなった。
翌日、ヘラはペルセウスに告げる。
「貴方は、私以外の女も喜ばせてあげなさい。私も時には相手をしてあげられるわ。でも、前にも言ったように貴方のアガペーには答えることはできない。私には魂で繋がった人がいるの。この世界にはいないけど、貴方と同じよ、その人を思い続け決して裏切らないと誓ったわ。昨日のことはただのエロス、気に病む事はないのよ。わかった?」
そう言ってヘラは早朝の自分の部屋に帰っていった。

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