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ギリシャ神話編
オリュンポス建設
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彼らが転移した場所は現在のギリシャのテッサリア地方の丘陵であった。
その地域には標高3000メートルほどのその地域では最高峰と思われる山がそびえていた。
あの山の頂上に拠点を設けよう。
アビゲイルからしたら首を傾げたくなるような場所に彼らは自分たちの居城を作ろうと言い出した。
『習慣の違いだろうから、ここは異を唱えるのは控えるべきね。』
アビゲイルは内心そう嘯いた。
オリンポスの山頂を13の区画に分割しそれぞれに神殿を建立する。
それを実現するのに魔法は必須であったが、どこかで人間が襲われたという噂は聞かなかった。
『どうやって魂を調達しているのかしら?』
ハデスは天寿を全うして、あるいは事故で、あるいは病気でこの世を去った全ての魂が集まる冥界を支配するものであった。
「どうやってあの大きな石を持ち上げているの?」
ヘラことアビゲイルは記憶喪失を装い魔法に関わる質問をハデスの仲間たちに投じた。
主にアレスが相手の場合が多いが、アテナ、アポロ、アフロディーテなど誰もが快く質問に答えてくれる。
「重力を制御するんだ。風を使う人もいるけど、重力制御の方が洗練されてるよね。これが使える人は限られているんだ。第5元素エーテルの素地が必要なんだ。」
「その素地というのがあったら誰でもそんな力を持てるの?」
「そうだね、でも発動には人間の魂が必要なんだ。それは火、水、風、土のどの元素の魔法でも同じだね。」
「に、人間の魂だなんて、恐ろしい。あの建物一つ立てるのに何人の人を殺すの?」
ヘラは神殿の敷地の北西部にある区画に建設中の仮設住宅を指して質問した。
「あははは! 人を殺したりしないよサタン一族じゃあるまいし。用済みの魂が冥界に使い切れないほどあるからね。僕たちはそれを拾ってきて使うんだ。母さん本当にまだ何も思い出せないの? でも、今の母さんの方が好きだけどね。」
「昔の母さんはどうだったの?」
「ごめん、余計なこと言っちゃったね。昔の母さんはゼウス父さんの事ばっかりで僕やエリスにあまり構ってくれなかったんだよ。」
「そんなにゼウスと言う人の事を?」
「あはは、自分の旦那さんのことを、ゼウスと言う人、とはね。」
話をすればするほど、彼らは人と変わりがない事が分かって来る。
『こんな人たちを滅ぼしてしまったのか?』
誤解とはいえ、彼らにとってはキルケゴールこそが悪の権化だったに違いない。
アビゲイルは免罪符を求めてさらに質問を続ける。
「サタン一族は人を殺すの?」
「彼らは、新鮮な魂ほど魔法の威力が増すと言うんだよ。魂に古いも新しいもないのにね? 僕たちが使っているのは、厳密には魂じゃなく魄(ハク)と言うんだって。サタン一族は魂しか使わないんだ。それで、人をさらったり、殺したりする。大賢者が僕たちを滅しようとしたのも、多分サタンのせいだ。」
「大賢者を恨んでる?」
「そうだね。恨んでる。でも敵わないという事も知っているよ。あの強さは反則だと思うよ。出会ったら、逃げ出すしかない。」
立場が違うとは言え、キルケゴールが人に恨まれているという事がアビゲイルにとってはこの上なく悲しい事であった。
彼は正義と同意だと思っていたが、魔人族から見たら謂れのない罪で殺しにくる災厄なのだ。
アビゲイルはこの後どう動くべきなのか分からなくなっていた。
彼らは、このままでも人に害をなす事はない。
だが、どうもまだ引っかかるところがある。
アレスは「用済みの魂」と言った。「用済み」とはどういう意味だろう。
立て続けに質問すると怪しまれるから、この疑問は少し時を置いてから解消する事にした。
その地域には標高3000メートルほどのその地域では最高峰と思われる山がそびえていた。
あの山の頂上に拠点を設けよう。
アビゲイルからしたら首を傾げたくなるような場所に彼らは自分たちの居城を作ろうと言い出した。
『習慣の違いだろうから、ここは異を唱えるのは控えるべきね。』
アビゲイルは内心そう嘯いた。
オリンポスの山頂を13の区画に分割しそれぞれに神殿を建立する。
それを実現するのに魔法は必須であったが、どこかで人間が襲われたという噂は聞かなかった。
『どうやって魂を調達しているのかしら?』
ハデスは天寿を全うして、あるいは事故で、あるいは病気でこの世を去った全ての魂が集まる冥界を支配するものであった。
「どうやってあの大きな石を持ち上げているの?」
ヘラことアビゲイルは記憶喪失を装い魔法に関わる質問をハデスの仲間たちに投じた。
主にアレスが相手の場合が多いが、アテナ、アポロ、アフロディーテなど誰もが快く質問に答えてくれる。
「重力を制御するんだ。風を使う人もいるけど、重力制御の方が洗練されてるよね。これが使える人は限られているんだ。第5元素エーテルの素地が必要なんだ。」
「その素地というのがあったら誰でもそんな力を持てるの?」
「そうだね、でも発動には人間の魂が必要なんだ。それは火、水、風、土のどの元素の魔法でも同じだね。」
「に、人間の魂だなんて、恐ろしい。あの建物一つ立てるのに何人の人を殺すの?」
ヘラは神殿の敷地の北西部にある区画に建設中の仮設住宅を指して質問した。
「あははは! 人を殺したりしないよサタン一族じゃあるまいし。用済みの魂が冥界に使い切れないほどあるからね。僕たちはそれを拾ってきて使うんだ。母さん本当にまだ何も思い出せないの? でも、今の母さんの方が好きだけどね。」
「昔の母さんはどうだったの?」
「ごめん、余計なこと言っちゃったね。昔の母さんはゼウス父さんの事ばっかりで僕やエリスにあまり構ってくれなかったんだよ。」
「そんなにゼウスと言う人の事を?」
「あはは、自分の旦那さんのことを、ゼウスと言う人、とはね。」
話をすればするほど、彼らは人と変わりがない事が分かって来る。
『こんな人たちを滅ぼしてしまったのか?』
誤解とはいえ、彼らにとってはキルケゴールこそが悪の権化だったに違いない。
アビゲイルは免罪符を求めてさらに質問を続ける。
「サタン一族は人を殺すの?」
「彼らは、新鮮な魂ほど魔法の威力が増すと言うんだよ。魂に古いも新しいもないのにね? 僕たちが使っているのは、厳密には魂じゃなく魄(ハク)と言うんだって。サタン一族は魂しか使わないんだ。それで、人をさらったり、殺したりする。大賢者が僕たちを滅しようとしたのも、多分サタンのせいだ。」
「大賢者を恨んでる?」
「そうだね。恨んでる。でも敵わないという事も知っているよ。あの強さは反則だと思うよ。出会ったら、逃げ出すしかない。」
立場が違うとは言え、キルケゴールが人に恨まれているという事がアビゲイルにとってはこの上なく悲しい事であった。
彼は正義と同意だと思っていたが、魔人族から見たら謂れのない罪で殺しにくる災厄なのだ。
アビゲイルはこの後どう動くべきなのか分からなくなっていた。
彼らは、このままでも人に害をなす事はない。
だが、どうもまだ引っかかるところがある。
アレスは「用済みの魂」と言った。「用済み」とはどういう意味だろう。
立て続けに質問すると怪しまれるから、この疑問は少し時を置いてから解消する事にした。
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