先生と僕

２０

方向性

「それでどうするんです？」
　話をそらす様に、というか話を戻す様に彩錦あかねがもう一度聞いてくる。
「恋愛学のことか？」
「それ以外にあります？」
　話の流れ的にはそうかもしれないけど、一度途切れた会話について尋ねているんだからあるかもしれないだろう。と心の中で思いながらも、余計なことを口にするとまた口論になると思い。僕は比較的冷静に「ないな」と返す。

「でも、僕ほど優柔不断な男にそれを聞くのは酷だと思わないか？」
「曲がりなりにも、部長――この部のリーダーなんですからまともな意見を口にしてほしいものですね。そもそも優柔不断な奴がこんな部作るわけないじゃないですか」

　どうやら彩錦は僕のことをそれなりには評価してくれているらしい。
　だけど、そもそも先生のために始めただけの部活で、仕方なく部長の座に収まっていただけの僕に部長的な決断を求められても荷が重すぎる。もう部長じゃないし。
　なんて文句ばかりを言っていられる状況でないことは確かだ。
　何とか、ない頭を使って言葉を絞り出す。

「そうだな……そもそも、僕たちは恋愛を学問という観点から見た場合においては、知識が足りなさすぎる」
「学問という観点じゃなくても同じだと思いますけどね」

　いちいち僕の言葉に嫌味を入れてくるのが彩錦だ。それを相手にしていてはいくら時間があっても足りない。

「とにかく、僕たちが最初にすることは恋愛学について調べることだ」

　知識無くしてはどうすることも出来ない。