先生と僕

１５

他人の力

「確かにそう聞いたわ。でも、それは先輩には無理……このまま放っておけば頭のネジが足りない先輩は、永遠にこんな行動はとれなかったと思うわ」
　彩錦あかねは先ほどまでの怯えた様子とはうってかわり、これまた淡々とした口調で言い放つ。
　確かに僕は頭のネジが足りないだとか散々なことを言われてきたが、思えば最近はあまり耳にしなくなっていたような気がする。

「恋次さんは変わった」

　梓あずさが否定する。
　しかし、その点に関しては渦中の人物である僕にしてみれば甚だ疑問だ。
「ううん。それは違う。お姉ちゃんと先生は変わったと……成長したと思いたいだけで、先輩はそれを実感していないし、私も成長していないと思う。クラスの人と仲良くなれたのも結局は先生のおかげだし、部活を作ることが出来たのだって先生の手助けがあったから……もっと言うならお姉ちゃんと仲良くなれたのだって、先生とお姉ちゃんが作りだした。私なら先輩と友達になることは絶対にしなかったもん。つまりそれは先輩の力じゃなくて、他人の力でしかないわ」
　僕の気持ちを大方代弁してくれた彩錦だが、それはあまりにも言い過ぎだと思う。