先生と僕

１５

人の心

「嫌われる覚悟！？」
　僕は突拍子もない彩錦あかねの言葉に声を上げる。
　言葉の意味が分からないとかそんなレベルの話ではない。彼女は姉である梓あずさの願いをかなえるために僕をここまで連れてきたはずだ。それがどうして嫌われることになる。

「あんたには理解できないでしょうね……」
「何が理解できないっていうんだ？　いや、まあ理解できないから何が理解できないんだかも理解できないんだろうけど……」
「そうやって、いともたやすく状況を理解し、簡単に本心をさらけ出すことが出来るあなたには、うわべと本心を使い分ける人間の心が理解できない。先生はあなたが成長したと思っているみたいだけど、私はそうは思わない」
「それは何となくわかる。僕は１人じゃ何もできないし、だからこそ今回のことは１人でやろうと思った」
「それは人の心が理解できていないから……成長した思考に未熟な心がついてきていない。でも誰もそれに気が付けない」

　彼女は真剣なまなざしでそう言い切った。
　僕はそれをいつもの単なる嫌味であるとは到底思えなかった。実際に僕もそう感じていたからだ。