先生と僕

真白 悟

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信条

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「それで、その2人を新任の私にどうしろと?」
 間違いなく父は私に押し付けようとしている。でも、面倒ごとはごめんだ。というか私には荷が重い。肩も重いし、何より受けてやる義理もなければ、父の存在自体が重苦しい目の上のたんこぶだ。家族のいる職場で働くなんて尊敬する人物でもいなければやっていられない。
 私は椅子から腰を上げた。このままの状態で、理事長である父からの命令に従って生徒2人の面倒を私が見ることになったら、かわいそうなのはその生徒たちだ。

「まあ待て……もちろんタダでとは言わない。家族であろうが何であろうが、労働にはふさわしい対価を払うのが私の信条だ」
 父が私を制止してそんなことを口にする。
 私は何とか気持ちを持ち直して椅子に座るのだが、何とも嫌な予感がしてならない。何というか、父は昔からどこかずれている。
 しかし、言質を取った今だからこそ、きっちりと必要なことを伝えておかなければあとで痛い目を見ることになるだろう。

「じゃあ、1つだけお願いがあるわ。教師としてじゃなくて、娘としてね」
 私が敬語を使わなかったことに対して父は少しだけむっとしたが、自分がお願いしている立場だということを思い出したのだろうか、少しだけ苦い顔をして口を開いた。
「なんだ?」

 満を持して私は父の質問に答える。
 私の望みはただ一つ。
「その2人……いいえ、私はすべての生徒たちを導くために教師になった。だから――私が2人を指導するにあたっては全面的に協力して」
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