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お礼
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「ありがとうございました!」
僕は職員室の端から端まで届くぐらいの大きな声とともに90度ぴったりに頭を下げた。
先生は少し驚いた様子だったが、すぐに僕の頭を軽く叩く。
「声が無駄に大きい。意味もなく大声を上げるのは馬鹿のすることよ……そういうのは野球部とか吹奏楽部とかに任せておきなさい」
先生がそんなことを言うものだから、野球部と吹奏楽部の顧問が思いっきりこちらを睨んでいる。
そりゃそうだ。自分たちの教育方針を馬鹿にされて怒らない人がいるはずもない。先生もそれにはすぐ気がついたらしい、あわてて顧問たちに頭を下げている。僕と同じく90度だ。
「とにかく、私はお礼を言われるようなことはしてないって言ったでしょ? あの部活はもともと私が父――理事長に頼まれて作った部活で、あなたは巻き込まれただけ! それが原因でクラスメートたちとなじめないんなら私のせいじゃない?」
後先考えずに先にした言葉を恥じているのだろう先生は顔を真っ赤に染めながらよくわからない理屈を口にした。
「いえいえ、先生は新しい部活を作るよう頼まれただけで、恋愛部を作ったのは僕です。先生はそれを手伝ってくれただけじゃないですか」
その点に関してもずっとお礼を言いたかったのだ。何に対してかは直接言えなかったが、お礼の言葉だけでも口に出来てよかった。――先生、僕に居場所をありがとう。
僕は職員室の端から端まで届くぐらいの大きな声とともに90度ぴったりに頭を下げた。
先生は少し驚いた様子だったが、すぐに僕の頭を軽く叩く。
「声が無駄に大きい。意味もなく大声を上げるのは馬鹿のすることよ……そういうのは野球部とか吹奏楽部とかに任せておきなさい」
先生がそんなことを言うものだから、野球部と吹奏楽部の顧問が思いっきりこちらを睨んでいる。
そりゃそうだ。自分たちの教育方針を馬鹿にされて怒らない人がいるはずもない。先生もそれにはすぐ気がついたらしい、あわてて顧問たちに頭を下げている。僕と同じく90度だ。
「とにかく、私はお礼を言われるようなことはしてないって言ったでしょ? あの部活はもともと私が父――理事長に頼まれて作った部活で、あなたは巻き込まれただけ! それが原因でクラスメートたちとなじめないんなら私のせいじゃない?」
後先考えずに先にした言葉を恥じているのだろう先生は顔を真っ赤に染めながらよくわからない理屈を口にした。
「いえいえ、先生は新しい部活を作るよう頼まれただけで、恋愛部を作ったのは僕です。先生はそれを手伝ってくれただけじゃないですか」
その点に関してもずっとお礼を言いたかったのだ。何に対してかは直接言えなかったが、お礼の言葉だけでも口に出来てよかった。――先生、僕に居場所をありがとう。
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