先生と僕

１１

校則

　この学校の生徒であれば、間違いなく全生徒に配られているもの。その条件だけでいうのであれば、該当する物は１つや２つではないはずだ。数えきれないほど多くはないが、いくつかはあるはずだろう。
　その中でも身分証になるものという条件を付け加えれば、誰しもが１つのものを思い浮かべるはずだ。そう、それは生徒手帳だ。その手帳の中には校則という項目がある。学校によってはないのかもしれないが、そんなことは今はどうでもいい。
　ともかく、その校則をよく見てみると、確かに部活に関してのことが記載されている。

「部を発足するためには、部員５人と顧問が必要……」
　なるほど、先生の言うとおりだ。この方法を使えば、恋愛部はよみがえる……よみがえるだろう。よみがえるはずだ。
　だが、この方法には一つだけ落とし穴があることに誰しも気がつくはずだ。
　なんたって、この僕でさえ簡単に気がつけたのだから、誰にだって気がつけるはずだ。

　僕は冷や汗を流しながらも、職員室を少しだけ見渡した。
　大丈夫、厄介な教頭はいない。
「わかってますよね。恋愛部が廃部した理由について？」
　僕は先生に耳打ちをする。
「もちろん、わかっているわ……必要な人数部員が集まらなかったからでしょ？」
　当然だと言わんばかりに、先生は疑問を抱くこともなくそう言った。