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目覚め
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目覚めは最悪だった。
喉はカラカラとしているし、体中から水分というものが失われていた。
視界はあまり良好とはいえない。むしろかすんですらいる。思考はまともにまとまらないし、水分を見つけることだって一人ではできそうにもない。
「……あ、み……ず……」
声を発しようとしたら、このざまだ。
乾いた喉からは声とともに痛みが出た。まるで大声大会の次の日だ。こんなことなら大声大会なんて参加しなければよかった。
――ん? 大声大会なんて参加したっけ?
ダメだ。思考がまとまらない。
手探りで水分を探す。だがそんなものがタイミングよく見つかるはずがない。
ぶらぶらと揺らした手に触れたのは、冷たい何かだ。筒状の冷たい何か……依然として視界はクリアではなく、ぼやけて見えてはいるが、それが何かぐらいはよくわかった。
僕たちがほぼ毎日のように握っているものだ。
「水ででしょ?」
耳鳴りとともに聞こえてきたのは、聞きなれた声。つい先ほどまでも聞いていたあの声だ。
「先生。まだいたんですね?」
延々と続く思考の霞が、わずかに消えた。会話という魔法によって不安が消し去られたように、安心感という不確かなものに救われたからだ。
「生徒の一大事だからな」
僕は受け取った水を一口、二口と流し込んだ。
それがいけなかったのだ。つかの間の幸せを消し去るように、全ての霞が視界から消え、耳鳴りもわずかに残るばかりだ。
「教頭先生? あれ!?」
「理事長の娘なら、少し前に帰らせたぞ……夜遅いからな」
どうやら僕は熱にうなされていたらしい。
喉はカラカラとしているし、体中から水分というものが失われていた。
視界はあまり良好とはいえない。むしろかすんですらいる。思考はまともにまとまらないし、水分を見つけることだって一人ではできそうにもない。
「……あ、み……ず……」
声を発しようとしたら、このざまだ。
乾いた喉からは声とともに痛みが出た。まるで大声大会の次の日だ。こんなことなら大声大会なんて参加しなければよかった。
――ん? 大声大会なんて参加したっけ?
ダメだ。思考がまとまらない。
手探りで水分を探す。だがそんなものがタイミングよく見つかるはずがない。
ぶらぶらと揺らした手に触れたのは、冷たい何かだ。筒状の冷たい何か……依然として視界はクリアではなく、ぼやけて見えてはいるが、それが何かぐらいはよくわかった。
僕たちがほぼ毎日のように握っているものだ。
「水ででしょ?」
耳鳴りとともに聞こえてきたのは、聞きなれた声。つい先ほどまでも聞いていたあの声だ。
「先生。まだいたんですね?」
延々と続く思考の霞が、わずかに消えた。会話という魔法によって不安が消し去られたように、安心感という不確かなものに救われたからだ。
「生徒の一大事だからな」
僕は受け取った水を一口、二口と流し込んだ。
それがいけなかったのだ。つかの間の幸せを消し去るように、全ての霞が視界から消え、耳鳴りもわずかに残るばかりだ。
「教頭先生? あれ!?」
「理事長の娘なら、少し前に帰らせたぞ……夜遅いからな」
どうやら僕は熱にうなされていたらしい。
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