先生と僕

６

難しい問題

――それから、たくさんの方法を考えて、いくつか試してみたが、どれも梓あずさの集中力を欠くには至らなかった。

「とりあえず、夕食としましょうか……」
　今回の合宿を提案した先生は、最初の頃に持っていた元気をすべて失ったらしい。
　疲れているのだろう、先生はふらふらと立ち上がり、部屋の奥へと消えて行った。

「それで、どうするかだが……」
　静まり返った部屋に我慢できず、僕は口を開いた。
　その瞬間、うつむいていた梓あずさと彩錦あかねの２人がこちらを向く。

「どうもこうも、どうしようもないと思いますけど」
　彩錦あかねは、ずいぶんと眠たそうだ。
　姉のことだからと頑張ってはいたが、それよりも眠気の方が勝ったらしい。
「あたしも、そう思います」
　ずっと、頑張ってきた梓あずさも、疲れがたまっているのだろう。もはや、あきらめようとさえしている。
　だが、それじゃあ、本当に退学になってしまう可能性が高くなる。
「何かないだろうか……」
　僕ほどのレベルになれば、好きなだけ集中力を乱すことは出来る。一度でも、ゲームが目に入れば、それだけで集中力は分散されるし、テレビなんてつけた時には、何も手につかないレベルだ。
　だから、彼女の集中力を解く方法なんてまるで思いつかない。
　簡単にできることほど、教えるのは難しいということだ。
「難しい問題ですね」
　まるで他人事のように、梓あずさはつぶやいた。