先生と僕

６

誰のせい

「ごめんなさい！」

　僕たちを引き気味に見ていた梓あずさが頭を下げる。
　いつもなら、一目散にティッシュを差し出すであろう彼女が、下がってみていたんだ。きっとかなり落ち込んでいるのだろう。
　ドジに対してなじるのも、こんな状況じゃ、ただのいじめになりかねない。

「今のは仕方ない。幸い大けがもなかったことだし、気にすることないよ」
　僕は思ってもないことを口にした。
　そうしなければ、彼女は自殺でもしてしまうんじゃないかと思ったからだ。
――といっても、彼女がそこまで弱い人間だとは思わないけど。

「いえ……あたしが悪いので……」

　半分くらい泣いている顔で、消え入りそうな声を梓あずさは出した。
　本当にやばいんじゃないだろうか。なんて考えてみるけど、だからと言って、どうすることもできない。
「いや、本当に大丈夫だって、僕もこの通りちゃんと立ち上がれるし、顔だってぶつけて前よりかっこよくなっただろう？」
　なんて、冗談を言ってみる。
「いてっ！」
　僕の後ろで、彩錦あかねがそんな声を上げた。
　忘れていたが、僕の背中には彩錦あかねが乗っていたんだった。すっかり忘れていた。

「大丈夫か？」
「大丈夫じゃないです」
　彩錦あかねは地面に倒れながら、涙目で僕を睨みつけた。
　僕たちのやりとりを見て、梓あずさは少しだけ笑った。