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11 魔法の言葉
161 責任
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「――イチゴさん! 早く仕込みに入ってもらえないと、開店に間に合いませんよ!」
という妹、メリーの警告が決め手となり、イチゴことイザベラは部屋を後にした。
メリーは僕を見て、なんだかまごまごして何か言いたげにしていたが、結局何も言わずにそのまま部屋を立ち去る。
そう言えば、最近まともにメリーと話していない気がする。
といっても夕食は一緒にとっているし、ささやかな会話はしているが、おたがいの深い部分については何も話していないような気がした。
「メリーちゃん、『最近、兄ちゃんが暗い』って心配してたよ。たった一人の家族なんだから、たまには悩みを相談し合わなきゃいけないって言うのは分かってるよね? まあ、家族のいない私が言うのもなんだけど」
「そうですね……少し落ち着いたら、これからのことを話してみます」
さっきまで、イチゴと言い争ってたとは思えないほど冷静に僕を諭すケントニスの言葉で、僕は改めて妹とすべてを話す覚悟を決めた。
「とにもかくにも、何をするにもまずは腹ごしらえだよ! お腹が空いてちゃ、頭もさえないからね!」
そう言われるがままに、僕はケントニスと一緒に一階の喫茶店に下りて朝食をとり、そのままいつも訓練する場所へと向かうために中央通を歩く。
「なんだか、いつにもましてじろじろ見られてる気がしますね?」
犬種の獣人が道の真ん中を歩いているものだから、それはもう好奇な目で見られていたが、伝説の魔法使いケントニスも一緒に歩いているからか、普段はそれほどじろじろと見られることはなかった。だけど、今はそうじゃない。すれ違う獣人の半数はこちらを凝視している気がする。
最初は被害者意識過剰な勘違いだと思っていたが、立ち止まってまでこちらを見たり、踵を返してまで僕たちについてくる獣人もいたから、たぶん勘違いじゃない。
「そうだね。ちょっと面倒くさいよね!」
ケントニスは満面の笑みで、その言葉とは裏腹に全く面倒くさそうじゃなかった。
一体なんだというのだろう。ケントニスも、じろじろ見てくる獣人たちも。
「ちょっとどころじゃありませんよ……」
「そうかもね! でも、これは責任ってやつだから!」
「言葉の意味が分からないんですけど」
何の責任というのだろうか、僕は誰かに犯罪者のように見られなくちゃいけないようなことをした覚えはない。
まあ、みんながそんな目で僕のことを見ているのかはわからないけど。でもまあ、ケントニスがそう言うのなら、気にしないでもないけど、気にしていないふりをして歩くとしよう。
わけがわからないけど。
「失敗の責任だよ……」
ケントニスが何かをつぶやいた気がしたが、喧騒の中では、それは風の音と同じぐらいに気にもならなかった。
という妹、メリーの警告が決め手となり、イチゴことイザベラは部屋を後にした。
メリーは僕を見て、なんだかまごまごして何か言いたげにしていたが、結局何も言わずにそのまま部屋を立ち去る。
そう言えば、最近まともにメリーと話していない気がする。
といっても夕食は一緒にとっているし、ささやかな会話はしているが、おたがいの深い部分については何も話していないような気がした。
「メリーちゃん、『最近、兄ちゃんが暗い』って心配してたよ。たった一人の家族なんだから、たまには悩みを相談し合わなきゃいけないって言うのは分かってるよね? まあ、家族のいない私が言うのもなんだけど」
「そうですね……少し落ち着いたら、これからのことを話してみます」
さっきまで、イチゴと言い争ってたとは思えないほど冷静に僕を諭すケントニスの言葉で、僕は改めて妹とすべてを話す覚悟を決めた。
「とにもかくにも、何をするにもまずは腹ごしらえだよ! お腹が空いてちゃ、頭もさえないからね!」
そう言われるがままに、僕はケントニスと一緒に一階の喫茶店に下りて朝食をとり、そのままいつも訓練する場所へと向かうために中央通を歩く。
「なんだか、いつにもましてじろじろ見られてる気がしますね?」
犬種の獣人が道の真ん中を歩いているものだから、それはもう好奇な目で見られていたが、伝説の魔法使いケントニスも一緒に歩いているからか、普段はそれほどじろじろと見られることはなかった。だけど、今はそうじゃない。すれ違う獣人の半数はこちらを凝視している気がする。
最初は被害者意識過剰な勘違いだと思っていたが、立ち止まってまでこちらを見たり、踵を返してまで僕たちについてくる獣人もいたから、たぶん勘違いじゃない。
「そうだね。ちょっと面倒くさいよね!」
ケントニスは満面の笑みで、その言葉とは裏腹に全く面倒くさそうじゃなかった。
一体なんだというのだろう。ケントニスも、じろじろ見てくる獣人たちも。
「ちょっとどころじゃありませんよ……」
「そうかもね! でも、これは責任ってやつだから!」
「言葉の意味が分からないんですけど」
何の責任というのだろうか、僕は誰かに犯罪者のように見られなくちゃいけないようなことをした覚えはない。
まあ、みんながそんな目で僕のことを見ているのかはわからないけど。でもまあ、ケントニスがそう言うのなら、気にしないでもないけど、気にしていないふりをして歩くとしよう。
わけがわからないけど。
「失敗の責任だよ……」
ケントニスが何かをつぶやいた気がしたが、喧騒の中では、それは風の音と同じぐらいに気にもならなかった。
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