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10 伝説の魔法
139 伝説の魔法14
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「それでどうして、僕は一気に魔力を?」
怒りの感情を抱いた覚えはない。それなのに、体から魔力が一気に放出された。それに対してケントニスが謝罪したことにはどういうつながりがあるのだろう。
「君は私の言葉のせいで冷静に保っていた感情を『喜び』に傾けてしまったんだ!」
ケントニスは誰でも知っていて当然だという風にそう説明た。
しかし僕には到底その言葉の意味が理解できなかった。
「喜びの感情では魔力が回復するはずでは?」
確かそうだったはずだ。僕の勉強不足かもしれないが、最初に彼女自身がそう話したはずだ。そうなると、今回の彼女の説明には矛盾が発生する。
「回復することと、魔力が放出されることは何も矛盾しないと思うけどね!」
「なぜです?」と僕が訊ねると、彼女は「簡単なことだよ!」とだけ答えた。
先ほどの『自分で考えろ』という言葉は冗談ではなく、そうするべきだという彼女の優しさだったのかもしれない。何でも人に尋ねてばかりでは勉強にならないとか。たぶんそんなところだろう。
しかし、考えてもよくわからない。正直なところ、僕は感情と魔力に関する勉強があまりできていない。自主訓練でもして試してみるべきだったのだろうが、いかんせん、きつい訓練を終えた後にはそんな余裕はなかった。
まさか膨らませた風船のように、体内に突然発生した魔力が体外に出て行こうとするなんて……そんなはずはないだろう。そんな単純なものであるはずがない。もっと深いところの何かを見逃しているはずだ。
「ケン君はまだまだ感情について勉強不足なようだね!」
「感情……?」
これだけヒントを出してもわからないか、ケントニスは少しだけ困ったような顔をした。
感情が魔力に作用する……その結果が魔力の精製や、魔力の放出、減退につながるのであれば……いやダメだ全然わからない。
「感情をコントロールすることがいかに大切か、それは十分に理解してくれているはずだね! じゃあ、それが単に感情の性質によって魔力がどうこうなるってだけでそう言ったわけじゃないことは理解してくれているかな?」
「感情の起伏によって、魔力のコントロールが制御できなくなる……?」
そうだ。言われてみれば確かにそうだった。魔力を一定に保とうとする時、僕はいつも感情の起伏が大きくならないようにコントロールしていた。
「つまり、どんな感情であったとしても、感情が昂れば昂るほどに魔力のぶれもおおきくなる……そう言う事ですか?」
ケントニスが大げさに拍手する。
「そう! 感情が多少変化したぐらいじゃ別にどうってことないんだけど、さっきみたいになっちゃうと魔力のコントロールは難しくなる。さっきみたいにうれしいことがあったりだとか、戦いの中で絶望した時とかね!」
そう言う事か、でもちょっと待ってほしい。僕にとってこの訓練は確かにありがたいものではあるが、辛くて苦しい訓練の中でうれしいことなんてあるはずもない。
今だってそうだ。ケントニスは尊敬できる相手ではあるし、ある程度の信頼を置くことが出来る相手かもしれないが、メリーと、家族と同じほどに心を預けられるほどの相手ではない。そんな相手に対して、こんなきつい訓練の中で喜びの感情を見いだせるほどの特殊性癖の持ち主ではない。
「それがどうしてあなたのせいだと?」
そう訊ねると彼女は少しだけ考え込んだのち、何かを思いついたように口を開いた。
「アメと鞭だよ! どれだけつらい訓練でも乗り越えたという感情の昂ぶりと、きつい訓練を与えていた教官の優しさ――アメには至高の喜びを感じるとか言うじゃない!」
今までに僕はそんな感情を抱いたことはない。はたして本当にそれが原因なのだろうか、だがケントニスがそう言うのならたぶんそうなのだろう。
怒りの感情を抱いた覚えはない。それなのに、体から魔力が一気に放出された。それに対してケントニスが謝罪したことにはどういうつながりがあるのだろう。
「君は私の言葉のせいで冷静に保っていた感情を『喜び』に傾けてしまったんだ!」
ケントニスは誰でも知っていて当然だという風にそう説明た。
しかし僕には到底その言葉の意味が理解できなかった。
「喜びの感情では魔力が回復するはずでは?」
確かそうだったはずだ。僕の勉強不足かもしれないが、最初に彼女自身がそう話したはずだ。そうなると、今回の彼女の説明には矛盾が発生する。
「回復することと、魔力が放出されることは何も矛盾しないと思うけどね!」
「なぜです?」と僕が訊ねると、彼女は「簡単なことだよ!」とだけ答えた。
先ほどの『自分で考えろ』という言葉は冗談ではなく、そうするべきだという彼女の優しさだったのかもしれない。何でも人に尋ねてばかりでは勉強にならないとか。たぶんそんなところだろう。
しかし、考えてもよくわからない。正直なところ、僕は感情と魔力に関する勉強があまりできていない。自主訓練でもして試してみるべきだったのだろうが、いかんせん、きつい訓練を終えた後にはそんな余裕はなかった。
まさか膨らませた風船のように、体内に突然発生した魔力が体外に出て行こうとするなんて……そんなはずはないだろう。そんな単純なものであるはずがない。もっと深いところの何かを見逃しているはずだ。
「ケン君はまだまだ感情について勉強不足なようだね!」
「感情……?」
これだけヒントを出してもわからないか、ケントニスは少しだけ困ったような顔をした。
感情が魔力に作用する……その結果が魔力の精製や、魔力の放出、減退につながるのであれば……いやダメだ全然わからない。
「感情をコントロールすることがいかに大切か、それは十分に理解してくれているはずだね! じゃあ、それが単に感情の性質によって魔力がどうこうなるってだけでそう言ったわけじゃないことは理解してくれているかな?」
「感情の起伏によって、魔力のコントロールが制御できなくなる……?」
そうだ。言われてみれば確かにそうだった。魔力を一定に保とうとする時、僕はいつも感情の起伏が大きくならないようにコントロールしていた。
「つまり、どんな感情であったとしても、感情が昂れば昂るほどに魔力のぶれもおおきくなる……そう言う事ですか?」
ケントニスが大げさに拍手する。
「そう! 感情が多少変化したぐらいじゃ別にどうってことないんだけど、さっきみたいになっちゃうと魔力のコントロールは難しくなる。さっきみたいにうれしいことがあったりだとか、戦いの中で絶望した時とかね!」
そう言う事か、でもちょっと待ってほしい。僕にとってこの訓練は確かにありがたいものではあるが、辛くて苦しい訓練の中でうれしいことなんてあるはずもない。
今だってそうだ。ケントニスは尊敬できる相手ではあるし、ある程度の信頼を置くことが出来る相手かもしれないが、メリーと、家族と同じほどに心を預けられるほどの相手ではない。そんな相手に対して、こんなきつい訓練の中で喜びの感情を見いだせるほどの特殊性癖の持ち主ではない。
「それがどうしてあなたのせいだと?」
そう訊ねると彼女は少しだけ考え込んだのち、何かを思いついたように口を開いた。
「アメと鞭だよ! どれだけつらい訓練でも乗り越えたという感情の昂ぶりと、きつい訓練を与えていた教官の優しさ――アメには至高の喜びを感じるとか言うじゃない!」
今までに僕はそんな感情を抱いたことはない。はたして本当にそれが原因なのだろうか、だがケントニスがそう言うのならたぶんそうなのだろう。
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