ファンタズマ

真白 悟

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 説教じみたことを口にするのに嫌気がさしている様子の教授は、それでも説教を続けた。
「勘違いしてはいけない。FAというのは普通の人間とは違う力を持っているというだけの存在だ。それが普通の人間と比べて優れているという証明にはならないし……君と同じように力を遺伝している人間もまた、存在しているという事を理解しなければならない……そうだろう?」
 耳が痛くなる話だ。
 もちろん、僕は万能感におぼれているつもりは微塵もなかった。能力を知らない相手に向かっていけるほど、僕は優れた人間ではないことを理解できていなかったという事だ。

「はい……」
「私の研究室に所属しているからには理解はしているとは思うが、知識というのは一朝一夕に身につくことはない。皆、弛まず努力を続けて結果をだし、そしてようやく認められる。君が努力を続けていることはもちろん知っているが、それでは意味がない。研究における結果というのはテストの結果とは違う。ヒーローに求められることだって同じはずだ……」

 結果なきヒーローには何の価値もない。
 力のないヒーローが誰も救うことが出来ないように、力をまともに扱うことも出来ないヒーローも誰も救うことが出来ない。誰も救うことが出来ないヒーローには何の価値も存在はしない。

「わかっています」
「わかっているというなら、これ以上何も言うまい」
「すみません……」

 今年で18歳になった。僕はもう大人だ。
 教授が今言ったようなことは、本来なら自分で気が付かなければならないことだ。ここから先の人生は、今までとは違いすべてが自分の責任として重くのしかかる。質問をすれば帰ってくるのが当たり前だった時は過ぎ去り、自らの行いが正しいかを自分で考えなければならない。
 僕には父親がいない。
 女性を助けて僕が死んでいれば、母はおそらく誇りには思ってくれるかもしれないが、それは同時に母を1人にすることとなる。相手の女性のことだってそうだ。永遠とまでは言わないし、そこまでうぬぼれてもいないが、長い間彼女の心に僕の死がまとわりつくこととなるだろう。

 僕の死は女性の体を救っても、心までは救えない。

 自らの命をかけるのはいい。何の策も考えず命を投げ捨てるようなことは、ヒーローが最もしてはいけないことだ。
 自分も含めるすべての人間が、死なずに安心して生きて行くことが出来る世界を作りだすのがヒーローである。教授の話を聞いてようやく僕はそのことに気が付いた。

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