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ベイルモンド砂漠編
急な用件
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夜会の翌日。宿の部屋の中、バザールで安く買ったわら半紙の切れ端に、文字を書き連ねる。
まずは日本語、それから英語で簡単な文章を書く。更に中国語、ヒンドゥー語、スペイン語、フランス語にアラビア語などにも挑戦した。いずれも過去にそれらを主要言語として利用していた国に滞在したことがある。
すると、当たり前だが知っている単語しか書くことが出来なかった。自動翻訳のギフトは地球の言語には対応していないらしい。あるいは書けなくても読めるということはあるかもしれない。だが、それを確かめる術は無い。
次に、ベイルモンド砂漠の言葉で単語を書く。これは問題無く書けた。日本語で書くようにスルスルと。書けたのはいいが、改めて自分が書いた文字を読むと、それが砂漠の言葉なのか日本語なのか脳が混乱した。
先に書いてあった日本語の文章「一羽の燕が来ても夏にはならない。」と砂漠の言葉で書いた「一日で夏になることもない。」この二つは交互に見て違いを探す。意外なことに、違いは嗅覚で判別出来た。砂漠の言葉を認識しているときは焼けた砂の臭いがするのだ。非常に微かなもので今まで気づかなかったがこうして比較することで分かった。本当にそんな臭いが部屋に漂っている訳じゃない。あくまで、私が臭いがすると感じるだけ、だ。
借りている「グスタニカ王国記」を空間収納から取り出して読んでみる。焼けた砂の臭いがするはずだと思ったが、違う。これは…苔むした洞窟の中の臭いのようだ。この感覚は覚えがあるぞ。数分、記憶の海を泳いで思い出した。これは大図書館の壁に書かれた警句を見た時と同じ感覚だ。あの時は気のせいだと思ったが、間違いない。つまり、このグスタニカ王国記は警句同様、古い言葉で書かれているということだ。
さらっとこれを貸してくれたスースは私が古い文字を読めると分かっていたのか?あー、いや。最初に表題を私が読み上げたんだっけな。まあ、いいか。
自動翻訳のギフトに関して理解が深まったところで宿を出る。腹も減ったし、朝飯代わりにバザールで買い食いでもしよう。
バザールから宿に戻ったところで、宿のおばちゃんから声を掛けられた。
「あ!お客さん!戻ってきたね。さっきあんたを探して人が来ていたよ。」
「客?アレーナかな。」
「女じゃなかったね。若い男だった。で、伝言を預かってるんだ。可能な限り急いで討伐者ギルドに顔を出してくれってさ。」
ギルドから呼び出し?呼び出される理由に見当がつかない。とはいえ、今日は暇だからこのまま向かおう。おばちゃんに礼を言って、ギルドに向かう。
討伐者ギルドの建物に入ってすぐ目が合ったのは、アルサーヤの水売り貴族ユーセフだった。娘の結婚式に向かうということでイズマイルまでは一緒に来たが、まだアルサーヤに帰っていなかったようだ。
ユーセフは部下らしき小柄な男を連れて小走りで私の方に近づいてきた。その顔には安堵と緊張が見て取れる。
「アキヒコ殿!良かった、伝言は受け取られたようですな。」
「こんにちは、ユーセフさん。なにか急ぎの用のようですね?」
ユーセフは頷いた。
「そうなのだ。是非あなたにお願いしたいことがあるのです。娘婿の救助を依頼したい!」
部下に耳元で何か囁かれ、ユーセフは目元を揉んで言葉を繋げる。
「ああ。そうだな。いきなり救助と言われても何の事だか分からないな。最初から説明させてくれ…。」
私は頷き、ユーセフは説明を始める。
件の娘婿の名はナーデル。イズマイルで中規模の商店を経営している。扱っているのは、硝石。こちらの世界にきてから火薬の類は見ていないが、硝石はここで主に染料や肥料として使われている。その硝石が産出するのはベイルモンド砂漠の北西地域。イズマイルの町からは西南西方向にある。ナーデルと直接契約した掘削人達が硝石産出地近くに集落を作り、硝石をとってはイズマイルまで運んでいる。
ユーセフの娘とナーデルとの結婚式の少し前から、その集落との連絡が途絶えたらしい。居ても立っても居られなくなったナーデルは結婚式後すぐ、状況を確認するため部下数人と集落に向かった。そして彼と入れ違いにイズマイルに到着した集落からの使者。
使者の話では、集落は魔物の襲撃を受けて半壊。死んだ者は放置し、生存した者はイズマイル方向へ退避中。ただ負傷者が多く、移動速度は極めて遅く、更に魔物による追撃を受けているらしい。
「怪我人を抱えた集団は魔物の格好の獲物だ。そして、娘婿は恐らく彼らを見捨てられない。私はすぐギルドに討伐者の派遣を要請した。だが…。」
だが、タイミングが悪かった。スコールの近いこの時期は、殆どの討伐者が砂漠の西部~南西部へ移動してしまっているのだ。皆、スコール後に出現する希少な魔物を狙っている。
「なるほど。それで私にその人を助けに行って欲しいと…。」
「単純に戦力としてなら、アキヒコ殿より上級の討伐者を数人だが確保出来た。私がアキヒコ殿にお願いしたいのは戦力というより寧ろ負傷者の輸送役なのです。あなたが私の息子を助けてくれた時のように魔法で彼らを運んでほしいのです。」
少数で現場に急いで向かって負傷者を回収し土魔法で運んでくる。成程、ユーセフの言う通り私向きの案件のようだ。
「その現場まではどれくらいの距離があるのでしょう?」
「ラクダで五日。…いや、本気で急げば四日といったところですかな。」
「分かりました。出来ることはやりましょう。」
「引き受けて下さるか!有難い…!有難い!」
「ちょっと予定の調整が必要なので、一度ギルドを離れます。」
「承知した。他の討伐者の都合もあるので、今日の日が落ちる頃にまたギルドに来て頂けるか。必要な物資は全てこちらで用意してきます。」
明日からカーレッド記念探求院…通称、研究所で調べものの予定だったが、こうなっては延期だ。アレーナに伝えなければならないが、そもそも普段アレーナが何処にいるのか知らないことに気づいた。研究所にいる可能性が一番高いだろうか。もし居なくても伝言を頼めばいい。そう思って、イズマイルの町の東端にある研究所へ向かった。
研究所に入ってすぐのところ、大理石の机に顔を突っ伏して居眠りしている女性に声を掛ける。
「あのー、いいですか?」
「はっ!はい。御用はなんでしょう?」
女性が口元の涎を拭いて体裁を整えるのを待ってから用件を伝える。
「アレーナを探しているんだけど、今日は居るかな?」
「アレーナ様は…「アレーナは不在ダヨ。彼女の研究室に不在の札がカカッテいた。」
女性に被せるようにして私の問いに答えたのは、奥の扉からひょっこり現れたベンハミンだ。
「ソモソモ夜会の翌日に真面目に出勤スル人間は少ナイ。この国デハネ。彼らニハ勤勉さが足りナイ。そうは思ワナイカ?」
「ゆったりしていて良いじゃないんですかね。」
ベンハミンは首を振り手で大袈裟なジェスチャーをしながら呆れたように溜息をついた。
「君モ砂漠の大雑把な空気に染まっているノカ。やれやれ。」
彼は気に食わないようだが、私は最近砂漠の民のやり方が飲み込めてきた。厳しい環境に居るからこそ、休める時は休む。普段は大雑把だが、砂漠を渡る時の彼らには独自の緊張感がある。
取り敢えずベンハミンは無視して受付の女性に伝言をお願いする。
「すまないが緊急の用事で町を一時離れる。研究所の案内はまた今度頼む、と伝えてくれ。具体的なことは…討伐者ギルドで確認してもらいたい、と。」
「畏まりました。えーと、すみません。昨日の夜会であなたをお見かけしましたが…名前を存じなくて…。」
「おっと失敬!アキヒコ、だ。」
「アキヒコ様ですね。わかりました。こちらにいらっしゃった際に必ず伝えます。」
私と女性のやり取りを聞いていたベンハミンが、横から口を出してきた。
「討伐者ギルド、緊急の用件。もしかして硝石の件カナ。」
「知ってるんですか?」
「アア。私も討伐者登録はシテイルし、硝石は私ノ研究室デモ購入するからネ。情報ハ入ってくるサ。しかし…フウム…。」
ベンハミンは腕を組み、目を瞑って少し考える様子を見せた。動きが一々大きいというか芝居じみている奴だ。
「ヨシ!私も行こうじゃナイカ!」
「行くって…硝石掘削の人達の救助に?」
「ウン。硝石の供給に関してハ他人事じゃナイ。それに、異国人でありアレーナが目を掛ける君の実力ヲ見てミタイ。」
白い歯をみせて笑うベンハミンを、私はついてきたら面倒くさそうだなと思った。だが実力者が加わることをユーセフは喜ぶだろう。
まずは日本語、それから英語で簡単な文章を書く。更に中国語、ヒンドゥー語、スペイン語、フランス語にアラビア語などにも挑戦した。いずれも過去にそれらを主要言語として利用していた国に滞在したことがある。
すると、当たり前だが知っている単語しか書くことが出来なかった。自動翻訳のギフトは地球の言語には対応していないらしい。あるいは書けなくても読めるということはあるかもしれない。だが、それを確かめる術は無い。
次に、ベイルモンド砂漠の言葉で単語を書く。これは問題無く書けた。日本語で書くようにスルスルと。書けたのはいいが、改めて自分が書いた文字を読むと、それが砂漠の言葉なのか日本語なのか脳が混乱した。
先に書いてあった日本語の文章「一羽の燕が来ても夏にはならない。」と砂漠の言葉で書いた「一日で夏になることもない。」この二つは交互に見て違いを探す。意外なことに、違いは嗅覚で判別出来た。砂漠の言葉を認識しているときは焼けた砂の臭いがするのだ。非常に微かなもので今まで気づかなかったがこうして比較することで分かった。本当にそんな臭いが部屋に漂っている訳じゃない。あくまで、私が臭いがすると感じるだけ、だ。
借りている「グスタニカ王国記」を空間収納から取り出して読んでみる。焼けた砂の臭いがするはずだと思ったが、違う。これは…苔むした洞窟の中の臭いのようだ。この感覚は覚えがあるぞ。数分、記憶の海を泳いで思い出した。これは大図書館の壁に書かれた警句を見た時と同じ感覚だ。あの時は気のせいだと思ったが、間違いない。つまり、このグスタニカ王国記は警句同様、古い言葉で書かれているということだ。
さらっとこれを貸してくれたスースは私が古い文字を読めると分かっていたのか?あー、いや。最初に表題を私が読み上げたんだっけな。まあ、いいか。
自動翻訳のギフトに関して理解が深まったところで宿を出る。腹も減ったし、朝飯代わりにバザールで買い食いでもしよう。
バザールから宿に戻ったところで、宿のおばちゃんから声を掛けられた。
「あ!お客さん!戻ってきたね。さっきあんたを探して人が来ていたよ。」
「客?アレーナかな。」
「女じゃなかったね。若い男だった。で、伝言を預かってるんだ。可能な限り急いで討伐者ギルドに顔を出してくれってさ。」
ギルドから呼び出し?呼び出される理由に見当がつかない。とはいえ、今日は暇だからこのまま向かおう。おばちゃんに礼を言って、ギルドに向かう。
討伐者ギルドの建物に入ってすぐ目が合ったのは、アルサーヤの水売り貴族ユーセフだった。娘の結婚式に向かうということでイズマイルまでは一緒に来たが、まだアルサーヤに帰っていなかったようだ。
ユーセフは部下らしき小柄な男を連れて小走りで私の方に近づいてきた。その顔には安堵と緊張が見て取れる。
「アキヒコ殿!良かった、伝言は受け取られたようですな。」
「こんにちは、ユーセフさん。なにか急ぎの用のようですね?」
ユーセフは頷いた。
「そうなのだ。是非あなたにお願いしたいことがあるのです。娘婿の救助を依頼したい!」
部下に耳元で何か囁かれ、ユーセフは目元を揉んで言葉を繋げる。
「ああ。そうだな。いきなり救助と言われても何の事だか分からないな。最初から説明させてくれ…。」
私は頷き、ユーセフは説明を始める。
件の娘婿の名はナーデル。イズマイルで中規模の商店を経営している。扱っているのは、硝石。こちらの世界にきてから火薬の類は見ていないが、硝石はここで主に染料や肥料として使われている。その硝石が産出するのはベイルモンド砂漠の北西地域。イズマイルの町からは西南西方向にある。ナーデルと直接契約した掘削人達が硝石産出地近くに集落を作り、硝石をとってはイズマイルまで運んでいる。
ユーセフの娘とナーデルとの結婚式の少し前から、その集落との連絡が途絶えたらしい。居ても立っても居られなくなったナーデルは結婚式後すぐ、状況を確認するため部下数人と集落に向かった。そして彼と入れ違いにイズマイルに到着した集落からの使者。
使者の話では、集落は魔物の襲撃を受けて半壊。死んだ者は放置し、生存した者はイズマイル方向へ退避中。ただ負傷者が多く、移動速度は極めて遅く、更に魔物による追撃を受けているらしい。
「怪我人を抱えた集団は魔物の格好の獲物だ。そして、娘婿は恐らく彼らを見捨てられない。私はすぐギルドに討伐者の派遣を要請した。だが…。」
だが、タイミングが悪かった。スコールの近いこの時期は、殆どの討伐者が砂漠の西部~南西部へ移動してしまっているのだ。皆、スコール後に出現する希少な魔物を狙っている。
「なるほど。それで私にその人を助けに行って欲しいと…。」
「単純に戦力としてなら、アキヒコ殿より上級の討伐者を数人だが確保出来た。私がアキヒコ殿にお願いしたいのは戦力というより寧ろ負傷者の輸送役なのです。あなたが私の息子を助けてくれた時のように魔法で彼らを運んでほしいのです。」
少数で現場に急いで向かって負傷者を回収し土魔法で運んでくる。成程、ユーセフの言う通り私向きの案件のようだ。
「その現場まではどれくらいの距離があるのでしょう?」
「ラクダで五日。…いや、本気で急げば四日といったところですかな。」
「分かりました。出来ることはやりましょう。」
「引き受けて下さるか!有難い…!有難い!」
「ちょっと予定の調整が必要なので、一度ギルドを離れます。」
「承知した。他の討伐者の都合もあるので、今日の日が落ちる頃にまたギルドに来て頂けるか。必要な物資は全てこちらで用意してきます。」
明日からカーレッド記念探求院…通称、研究所で調べものの予定だったが、こうなっては延期だ。アレーナに伝えなければならないが、そもそも普段アレーナが何処にいるのか知らないことに気づいた。研究所にいる可能性が一番高いだろうか。もし居なくても伝言を頼めばいい。そう思って、イズマイルの町の東端にある研究所へ向かった。
研究所に入ってすぐのところ、大理石の机に顔を突っ伏して居眠りしている女性に声を掛ける。
「あのー、いいですか?」
「はっ!はい。御用はなんでしょう?」
女性が口元の涎を拭いて体裁を整えるのを待ってから用件を伝える。
「アレーナを探しているんだけど、今日は居るかな?」
「アレーナ様は…「アレーナは不在ダヨ。彼女の研究室に不在の札がカカッテいた。」
女性に被せるようにして私の問いに答えたのは、奥の扉からひょっこり現れたベンハミンだ。
「ソモソモ夜会の翌日に真面目に出勤スル人間は少ナイ。この国デハネ。彼らニハ勤勉さが足りナイ。そうは思ワナイカ?」
「ゆったりしていて良いじゃないんですかね。」
ベンハミンは首を振り手で大袈裟なジェスチャーをしながら呆れたように溜息をついた。
「君モ砂漠の大雑把な空気に染まっているノカ。やれやれ。」
彼は気に食わないようだが、私は最近砂漠の民のやり方が飲み込めてきた。厳しい環境に居るからこそ、休める時は休む。普段は大雑把だが、砂漠を渡る時の彼らには独自の緊張感がある。
取り敢えずベンハミンは無視して受付の女性に伝言をお願いする。
「すまないが緊急の用事で町を一時離れる。研究所の案内はまた今度頼む、と伝えてくれ。具体的なことは…討伐者ギルドで確認してもらいたい、と。」
「畏まりました。えーと、すみません。昨日の夜会であなたをお見かけしましたが…名前を存じなくて…。」
「おっと失敬!アキヒコ、だ。」
「アキヒコ様ですね。わかりました。こちらにいらっしゃった際に必ず伝えます。」
私と女性のやり取りを聞いていたベンハミンが、横から口を出してきた。
「討伐者ギルド、緊急の用件。もしかして硝石の件カナ。」
「知ってるんですか?」
「アア。私も討伐者登録はシテイルし、硝石は私ノ研究室デモ購入するからネ。情報ハ入ってくるサ。しかし…フウム…。」
ベンハミンは腕を組み、目を瞑って少し考える様子を見せた。動きが一々大きいというか芝居じみている奴だ。
「ヨシ!私も行こうじゃナイカ!」
「行くって…硝石掘削の人達の救助に?」
「ウン。硝石の供給に関してハ他人事じゃナイ。それに、異国人でありアレーナが目を掛ける君の実力ヲ見てミタイ。」
白い歯をみせて笑うベンハミンを、私はついてきたら面倒くさそうだなと思った。だが実力者が加わることをユーセフは喜ぶだろう。
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