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第二章 ラノベ化しません
ヒロインよりも 10
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ちなみに第一王子と会うことは、女官長やシモネッタにもその都度申告している。シモネッタは特に気にしてないようだけど、「一人で行かない方がいいわ」とのアドバイスをくれた。
用事自体は大したことはない。
リカルド王子はもらったお菓子を私に与え、ニコニコしながら見守る。彼は甘い物が苦手らしいが、これではただの餌付けだ。
初めて呼び出された日の夜、私は同室のカリーナに相談した。不思議そうな顔をした彼女が、私に問いかける。
『それって、シルヴィエラでなくても良いわよね?』
『ええ、私もそう思う。なんで頼まれたのか……そんなに食い意地が張っているように見える?』
『いいえ。でも、リカルド様が甘い物が苦手だなんて、誰も知らなかったと思うわ』
『そのまま下げると、作ってくれた人に悪いからっておっしゃるの。今まで無理に召し上がっていたみたい』
『そうなの? ローランド様は召し上がるわよ』
『ええ。ローランド殿下は、甘い物がお好きでしょう?』
『確かにそうだけど、どうして知っているの?』
いけない。幼い頃、ロディがうちに預けられていたことは、みんなには内緒だった。コネ採用がバレたら、後々面倒なことになる。そうでなくても、カリーナはローランド王子に憧れているのだ。
『な……なんとなく?』
『そう。てっきり貴女も、ローランド様が好きなのかと思ったわ』
いや、それはない。
可愛いとは思うけど、私の好きは家族としての好きだ。もし私がカリーナと同じように憧れの視線を向けたら、ロディだってビックリするだろう。もしくは呆れるか、大笑いされるかもしれない。
そのロディ――ローランド王子は国外から訪れた大使を案内するため、本日は城を留守にしているとのこと。彼は語学が堪能で、外交を担当しているらしい。これももちろん、カリーナからの情報だ。
そんなわけで、第一王子に呼ばれた私は、今日もカリーナを伴うことにした。ローランド王子派の彼女なら、リカルド王子にのぼせ上がることもないだろう。シモネッタの言う通り、婚約者のいる王子の所に一人で行くのはマズい。二人きりになった途端、私がラノベのように豹変し、リカルド王子を襲う危険だってあるかもしれないのだ。
私達二人は、リカルド王子が待つ部屋に通された。そこは、白に金の彫刻が施された丸いテーブルが置かれ、椅子は白に黄色の生地で、壁や窓にかかったカーテン、絨毯は緑色で統一されている。
テーブルの上には、紅茶と甘い香りのタルトが載っていた。果実をふんだんに使った贅沢なタルトを味わえるとあって、カリーナの目が輝く。
一方リカルド王子は、私が手にした物を見て首を傾げた。
「追加のお菓子を持ってくるとは思わなかったよ。もしかして、今まで足りなかったのかな?」
私は、持っていた焼き菓子をテーブルに置きながら答えた。
「いいえ、とんでもございません。リカルド殿下に召し上がっていただきたくて」
昨日ふと、思いついたのだ。甘い物が苦手なら、甘くないお菓子を作ればいい。それなら用事という名目で、第一王子に呼び出されることもなくなるだろう、と。
料理人の協力を得て、私は甘さを控えたお菓子を作ってみた――ジンジャークッキーやチーズの入ったドーナツ風の揚げ菓子、ケーク・サレと言われるパウンドケーキそっくりの焼き菓子を。王城の厨房には小麦粉や卵、バターや塩、香草などがたっぷりあったので、自分でも満足のいく出来映えだった。これなら甘い物が苦手でも、お茶の時間を楽しめるはずだ。
「まさか、君が作ったの?」
「はい。女官長と料理長の許可を得て、料理人の方々と。毒味は私がいたしますね」
「そう……か。わざわざありがとう」
リカルド王子が目を細めた。
彼も弟と同じ、金色の瞳だ。
第一王子の好みに合えば、私は晴れてお役御免となる。王子達に関わらず、見習い女官として真面目に勤めたい。まともに生きたい私としては、ラノベの登場人物に近づくのは、最小限に留めたかった。
用事自体は大したことはない。
リカルド王子はもらったお菓子を私に与え、ニコニコしながら見守る。彼は甘い物が苦手らしいが、これではただの餌付けだ。
初めて呼び出された日の夜、私は同室のカリーナに相談した。不思議そうな顔をした彼女が、私に問いかける。
『それって、シルヴィエラでなくても良いわよね?』
『ええ、私もそう思う。なんで頼まれたのか……そんなに食い意地が張っているように見える?』
『いいえ。でも、リカルド様が甘い物が苦手だなんて、誰も知らなかったと思うわ』
『そのまま下げると、作ってくれた人に悪いからっておっしゃるの。今まで無理に召し上がっていたみたい』
『そうなの? ローランド様は召し上がるわよ』
『ええ。ローランド殿下は、甘い物がお好きでしょう?』
『確かにそうだけど、どうして知っているの?』
いけない。幼い頃、ロディがうちに預けられていたことは、みんなには内緒だった。コネ採用がバレたら、後々面倒なことになる。そうでなくても、カリーナはローランド王子に憧れているのだ。
『な……なんとなく?』
『そう。てっきり貴女も、ローランド様が好きなのかと思ったわ』
いや、それはない。
可愛いとは思うけど、私の好きは家族としての好きだ。もし私がカリーナと同じように憧れの視線を向けたら、ロディだってビックリするだろう。もしくは呆れるか、大笑いされるかもしれない。
そのロディ――ローランド王子は国外から訪れた大使を案内するため、本日は城を留守にしているとのこと。彼は語学が堪能で、外交を担当しているらしい。これももちろん、カリーナからの情報だ。
そんなわけで、第一王子に呼ばれた私は、今日もカリーナを伴うことにした。ローランド王子派の彼女なら、リカルド王子にのぼせ上がることもないだろう。シモネッタの言う通り、婚約者のいる王子の所に一人で行くのはマズい。二人きりになった途端、私がラノベのように豹変し、リカルド王子を襲う危険だってあるかもしれないのだ。
私達二人は、リカルド王子が待つ部屋に通された。そこは、白に金の彫刻が施された丸いテーブルが置かれ、椅子は白に黄色の生地で、壁や窓にかかったカーテン、絨毯は緑色で統一されている。
テーブルの上には、紅茶と甘い香りのタルトが載っていた。果実をふんだんに使った贅沢なタルトを味わえるとあって、カリーナの目が輝く。
一方リカルド王子は、私が手にした物を見て首を傾げた。
「追加のお菓子を持ってくるとは思わなかったよ。もしかして、今まで足りなかったのかな?」
私は、持っていた焼き菓子をテーブルに置きながら答えた。
「いいえ、とんでもございません。リカルド殿下に召し上がっていただきたくて」
昨日ふと、思いついたのだ。甘い物が苦手なら、甘くないお菓子を作ればいい。それなら用事という名目で、第一王子に呼び出されることもなくなるだろう、と。
料理人の協力を得て、私は甘さを控えたお菓子を作ってみた――ジンジャークッキーやチーズの入ったドーナツ風の揚げ菓子、ケーク・サレと言われるパウンドケーキそっくりの焼き菓子を。王城の厨房には小麦粉や卵、バターや塩、香草などがたっぷりあったので、自分でも満足のいく出来映えだった。これなら甘い物が苦手でも、お茶の時間を楽しめるはずだ。
「まさか、君が作ったの?」
「はい。女官長と料理長の許可を得て、料理人の方々と。毒味は私がいたしますね」
「そう……か。わざわざありがとう」
リカルド王子が目を細めた。
彼も弟と同じ、金色の瞳だ。
第一王子の好みに合えば、私は晴れてお役御免となる。王子達に関わらず、見習い女官として真面目に勤めたい。まともに生きたい私としては、ラノベの登場人物に近づくのは、最小限に留めたかった。
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