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地味顔に転生しました
黒い闇の記憶 1
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私は今、どこにいるんだろう?
気がつけば、黒一色の真っ暗闇。
ひとすじの灯りさえなく、何も見えない。
自分の身体さえ見えない。真っ暗闇にフヨフヨ浮かんでいる感じ。
誰かいるの?
声すら出せない。
ここに来てどれくらい経ったのだろう? 何でこんな所にいるんだっけ? 時間も空間もわからない闇の中で、私はただ漂っているだけ。
私はまた、嫌われてしまったの? それとも死んでしまったの? 私は、存在してはいけないの? それなら私って、何?
ゆっくり漂いながら、ただ考える。考えることさえ止めてしまえば、もっと楽になれるのだろうか。
最後に遠くに聞いた声、あれは誰の声だったか。
「まったく、ここはどこ? 私は誰? なんて、まるでどっかのヒロインみたい。ヒロインなんて、地味な私には似合わないのに」
おかしくなってクスッと笑う。
あ、でもなんかだんだん思い出してきた。何も無いけど時間だけはタップリありそう。だからこの際ゆっくり考えることにしよう!
私の名前は、アレキサンドラ=グリエール。地味でモブ顔の公爵令嬢。10歳の時に前世を思い出した。
前世って何だっけ?
あぁ、そうだった。
ずーっと前に私は、日本という国に暮らしていたんだ。
便利で豊かで幸せそうに見えるけど、どこか虚しく満たされない、不安をいっぱい抱えた国。
その国で、私は高校生だった。
名前を、高倉 愛梨という。
どうせ暇だし、せっかくだから思い出してみよう。
赤みがかった金色に近い髪と薄茶の瞳は光が当たると金色になる。色は白く唇は赤く、ほっそりした手足だった。
出るとこ出てて細い所は細いと言われたスタイル。ハーフやダブルと言われていたけど、詳しい事はわからない。母は父の事は何も教えてくれなかったから。
母子家庭で家はとても貧乏だった。
小学校の時に、家庭訪問に来た女の先生に「あなたのお部屋も見せて下さい」と言われた。
「玄関から見えてる部屋で全てです。先生、自分の部屋なんてありません」
そう言ったら、悲しそうな顔をされた。
10歳でバケツの水をかけられた時、担任は目を逸らしただけ。保健室の先生も話を聞いて「大変だけど、頑張って」と言ってくれただけ。どう頑張ればいいのか、わからなかった。
12歳で「キモイ」と、クラスのほとんどの子から殴られたり蹴られたり。ケガや傷は治っても心のキズは治らなかった。
中学生になったら「校則違反だ。髪を染めろ」と言われた。「地毛です」と言っても「それでも染めろ」と言われて悔しかった。
男子からは頻繁に携帯番号やラインを聞かれたけれど、お金がなくて携帯なんて持っていなかった。
告られるたび女子達から嫌がらせが増えるので、正直嫌だった。自慢でもなんでもなく、男子にすぐに囲まれたせいで、陰で「ビッチ」と呼ばれていたのを知っている。毎日違う所に上履きや体操服があったっけ。
高校生の時は、痴漢に合うのは当たり前。同級生や教員からも触られたり、同性からは罵られたり。化粧もしていないのに、派手だと何度も言われた。
「彼氏を取られた」と、体育館や空き教室に呼び出されたこともしばしば。呼び出すなら1人で来て欲しい。団体様はお断り。告白されてOKしたことは1度もないのに……
好きになってくれて嬉しい、と思うより放っておいてくれ、という感情の方が強かったあの頃。
生きていくのに精一杯。毎日必死で疲れていたから、できればそっとしておいて欲しかった。
私はずっと嫌われ者だった。
私は自分の派手な顔が、嫌いだった……
時間の感覚がわからない。
起きていたのか寝ていたのかも。
意識が浮上するけれど、相変わらずの真っ暗闇。
ただ一面の黒い世界。
ここに来てからどれくらいで、どこにいるのか何もわからない。
「匂いや明かりの無い世界でヒトが正気でいられるのって、どれくらいだったっけ? 確か1日ももたないんじゃなかったかな? あ、でもお腹も空かないから、もうヒトでは無いのかも」
ずーっとこのまま、ここで過ごすの? そう考えると、恐怖に囚われそうになる。
「そんなに悪いことした覚えは無いんだけどな。そういえばさっきも悪い方にばかり考えてた。いかん、いかん。ネガティブ反対。ノー・モア・ネガティブ。最初の人生も悪いことばかりじゃなかったんだよね」
今度は良い事を思い出そう!
幼い時に母に連れられて行った図書館は、きれいで本がたくさんあった。係の人もすごく優しかった。読み聞かせもしてくれたから、本を読むのが好きになった。
小学校低学年の時に本が好きで図書室に入り浸っていたからか、学校の授業は良くできた。そのせいでまた、いじめられたけど。
10歳の時、図書館の帰りに公民館に寄ったら同じくらいの子ども達が剣道の稽古をしていた。気になって見ていたら、おじいさん先生が来て「興味があるならいつでもおいで」と言ってくれた。
母に話すと喜んで竹刀を買ってくれた。新しい竹刀は竹の良い香りがして、持っただけでとても強くなれた気がした。
バケツ事件のせいで学校は嫌いだったけど、図書館や公民館に行くのは楽しかった。
12歳の時、全教科満点を取ってしまった。「キモイ」と言われて、クラスのほとんどから殴られたり蹴られたり。友達だと思っていた女の子からも叩かれた。でも、思い出した。私が「もういいよ」って合図したんだった。仲間外れにされるつらさを知っていたから。
「そんなくだらないこと止めろよ」と止めてくれた男子もいた。女子に人気の岡野君。そのせいで女子から余計に叩かれた気もするけど。あの後、どう切り抜けたんだっけ?
そうだ、わざと禁止されていたカッターを持って行ったんだ。イジメた奴らが見つけて騒ぐのは計算済み。当然理由を聞かれたから、「自分の身を守るためです」と全てぶちまけた。
刃物の持ち込みは危ない、と教育委員会からも言われたから、イジメも知られることとなった。『担任、ザマァ』って思っちゃった。
中学生の時、防具や剣道着が無いと無理だから剣道部には入れなかった。公民館は小学生までだから、帰りは図書館で勉強した。忙しい母の代わりに家事をしたから、料理が好きになった。スーパーのチラシを見て安い所に買いに行く。もやし最高!
成績が良く家庭的だと男子に人気が出たから、女子に囲まれてイジメられるようになったけど、体育館の裏に咲いていた花の名前を覚えた。
高校生の時、学年一のイケメンやバスケ部キャプテン、その他諸々から告白された。顔は派手だけど実は奥手。デートする時間も無いので全てお断りさせてもらったら、「彼氏を取られた」と女子に呼び出された。何で?
不登校気味の子を庇うため、その子の良い所ばかりをいつも言っていたら告白された……女の子だけど。
男女問わず恋愛には興味が無かったから、やっぱりお断りしたら離れていった。例え私の悪口言いに来るだけだったとしても、その子も学校には来るようになったから良かった。
それから、それから――
ああ、そうだ。
母は「愛梨は私の宝物。大好きよ」と言ってすぐに私のことを抱きしめてくれた。だから私は大人になったら、母のようになりたいといつも思っていたんだ。
私も誰かに同じように言ってあげたいと、ずっと思っていた。
誰かを抱き締めて「大好き」だと言っていたような気がする。名前を呼ぶだけで、その人が嬉しそうに笑ってくれたような。可愛く大切な存在が私にもいたような気がする。
あれはいったい、誰だったっけ?
気がつけば、黒一色の真っ暗闇。
ひとすじの灯りさえなく、何も見えない。
自分の身体さえ見えない。真っ暗闇にフヨフヨ浮かんでいる感じ。
誰かいるの?
声すら出せない。
ここに来てどれくらい経ったのだろう? 何でこんな所にいるんだっけ? 時間も空間もわからない闇の中で、私はただ漂っているだけ。
私はまた、嫌われてしまったの? それとも死んでしまったの? 私は、存在してはいけないの? それなら私って、何?
ゆっくり漂いながら、ただ考える。考えることさえ止めてしまえば、もっと楽になれるのだろうか。
最後に遠くに聞いた声、あれは誰の声だったか。
「まったく、ここはどこ? 私は誰? なんて、まるでどっかのヒロインみたい。ヒロインなんて、地味な私には似合わないのに」
おかしくなってクスッと笑う。
あ、でもなんかだんだん思い出してきた。何も無いけど時間だけはタップリありそう。だからこの際ゆっくり考えることにしよう!
私の名前は、アレキサンドラ=グリエール。地味でモブ顔の公爵令嬢。10歳の時に前世を思い出した。
前世って何だっけ?
あぁ、そうだった。
ずーっと前に私は、日本という国に暮らしていたんだ。
便利で豊かで幸せそうに見えるけど、どこか虚しく満たされない、不安をいっぱい抱えた国。
その国で、私は高校生だった。
名前を、高倉 愛梨という。
どうせ暇だし、せっかくだから思い出してみよう。
赤みがかった金色に近い髪と薄茶の瞳は光が当たると金色になる。色は白く唇は赤く、ほっそりした手足だった。
出るとこ出てて細い所は細いと言われたスタイル。ハーフやダブルと言われていたけど、詳しい事はわからない。母は父の事は何も教えてくれなかったから。
母子家庭で家はとても貧乏だった。
小学校の時に、家庭訪問に来た女の先生に「あなたのお部屋も見せて下さい」と言われた。
「玄関から見えてる部屋で全てです。先生、自分の部屋なんてありません」
そう言ったら、悲しそうな顔をされた。
10歳でバケツの水をかけられた時、担任は目を逸らしただけ。保健室の先生も話を聞いて「大変だけど、頑張って」と言ってくれただけ。どう頑張ればいいのか、わからなかった。
12歳で「キモイ」と、クラスのほとんどの子から殴られたり蹴られたり。ケガや傷は治っても心のキズは治らなかった。
中学生になったら「校則違反だ。髪を染めろ」と言われた。「地毛です」と言っても「それでも染めろ」と言われて悔しかった。
男子からは頻繁に携帯番号やラインを聞かれたけれど、お金がなくて携帯なんて持っていなかった。
告られるたび女子達から嫌がらせが増えるので、正直嫌だった。自慢でもなんでもなく、男子にすぐに囲まれたせいで、陰で「ビッチ」と呼ばれていたのを知っている。毎日違う所に上履きや体操服があったっけ。
高校生の時は、痴漢に合うのは当たり前。同級生や教員からも触られたり、同性からは罵られたり。化粧もしていないのに、派手だと何度も言われた。
「彼氏を取られた」と、体育館や空き教室に呼び出されたこともしばしば。呼び出すなら1人で来て欲しい。団体様はお断り。告白されてOKしたことは1度もないのに……
好きになってくれて嬉しい、と思うより放っておいてくれ、という感情の方が強かったあの頃。
生きていくのに精一杯。毎日必死で疲れていたから、できればそっとしておいて欲しかった。
私はずっと嫌われ者だった。
私は自分の派手な顔が、嫌いだった……
時間の感覚がわからない。
起きていたのか寝ていたのかも。
意識が浮上するけれど、相変わらずの真っ暗闇。
ただ一面の黒い世界。
ここに来てからどれくらいで、どこにいるのか何もわからない。
「匂いや明かりの無い世界でヒトが正気でいられるのって、どれくらいだったっけ? 確か1日ももたないんじゃなかったかな? あ、でもお腹も空かないから、もうヒトでは無いのかも」
ずーっとこのまま、ここで過ごすの? そう考えると、恐怖に囚われそうになる。
「そんなに悪いことした覚えは無いんだけどな。そういえばさっきも悪い方にばかり考えてた。いかん、いかん。ネガティブ反対。ノー・モア・ネガティブ。最初の人生も悪いことばかりじゃなかったんだよね」
今度は良い事を思い出そう!
幼い時に母に連れられて行った図書館は、きれいで本がたくさんあった。係の人もすごく優しかった。読み聞かせもしてくれたから、本を読むのが好きになった。
小学校低学年の時に本が好きで図書室に入り浸っていたからか、学校の授業は良くできた。そのせいでまた、いじめられたけど。
10歳の時、図書館の帰りに公民館に寄ったら同じくらいの子ども達が剣道の稽古をしていた。気になって見ていたら、おじいさん先生が来て「興味があるならいつでもおいで」と言ってくれた。
母に話すと喜んで竹刀を買ってくれた。新しい竹刀は竹の良い香りがして、持っただけでとても強くなれた気がした。
バケツ事件のせいで学校は嫌いだったけど、図書館や公民館に行くのは楽しかった。
12歳の時、全教科満点を取ってしまった。「キモイ」と言われて、クラスのほとんどから殴られたり蹴られたり。友達だと思っていた女の子からも叩かれた。でも、思い出した。私が「もういいよ」って合図したんだった。仲間外れにされるつらさを知っていたから。
「そんなくだらないこと止めろよ」と止めてくれた男子もいた。女子に人気の岡野君。そのせいで女子から余計に叩かれた気もするけど。あの後、どう切り抜けたんだっけ?
そうだ、わざと禁止されていたカッターを持って行ったんだ。イジメた奴らが見つけて騒ぐのは計算済み。当然理由を聞かれたから、「自分の身を守るためです」と全てぶちまけた。
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中学生の時、防具や剣道着が無いと無理だから剣道部には入れなかった。公民館は小学生までだから、帰りは図書館で勉強した。忙しい母の代わりに家事をしたから、料理が好きになった。スーパーのチラシを見て安い所に買いに行く。もやし最高!
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それから、それから――
ああ、そうだ。
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私も誰かに同じように言ってあげたいと、ずっと思っていた。
誰かを抱き締めて「大好き」だと言っていたような気がする。名前を呼ぶだけで、その人が嬉しそうに笑ってくれたような。可愛く大切な存在が私にもいたような気がする。
あれはいったい、誰だったっけ?
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