地味に転生できました♪~少女は世界の危機を救う!

きゃる

文字の大きさ
上 下
6 / 72
地味顔に転生しました

天使現る

しおりを挟む
「アレキサンドラ、ちょっとこちらへおいで」

 王子様との決別宣言から半月後のある日、突然父に呼ばれた 。
 リオネル様とお別れしたこと、お父様には内緒にしていたけれどもしやバレた? でも婚約者でも何でもないし、そもそもお父様は子どもの付き合いに口を出す人ではないし。
 不思議に思って近づくと、お父様の背中に隠れていたのは、サラサラの金髪に青い瞳の小さな男の子。おどおどしている事を除けばまるで天使のよう。
『お父様にまたしても隠し子疑惑か……?』   
   そう思ったけれど、隣にいらっしゃるお母様はとても嬉しそう。

「紹介しよう。わけあってうちで預かる事になったレオンだ。アリィの1つ下だな。レオン、娘のアレキサンドラだ。上の兄のヴォルフは今、城にいる」

 え?
 小柄なのでもう少し下かと。
 9歳ってもっとヤンチャで態度がでかいのでは?

「救済院の前に置き去りだったそうよ。保護されていたのを聞いたお父様が連れて帰って下さったの。ヴォルフは家にいないし、アリィは最近甘えてくれないし。あんまり可愛いからうちでしばらく預かろうと思って」

 お母様! せっかくお父様が『わけあって』とおっしゃっているのに全てぶちこわしです!   それに、本人の前で辛い事を思い出させるのもどうかと思いますが。
 ちなみに救済院とは、郊外にある我が国の児童養護施設のようなもの。親と死に別れた子供や育てるのが難しい環境の子、捨てられた子が多くいる。町民や平民の子どもしかいなかったと記憶している。

 でも金髪ってことは、この世界ではほぼ貴族確定よね?   貴族にも育児放棄ってあるのかしら?
 お父様は「しばらく」って言っていたけどいつまで?   このまま親が見つからなければ、うちの子になってくれるのかしら? 前世ではひとりっ子だったし兄様は相手にしてくれないから、弟って憧れていたのよね~。
「お姉様」と呼ばれてどこへ行くにも付いて来たがったらどーしよう? 甘えられて放してくれなくなったら?
 思わずグフフと変な笑みが浮かんでしまう。

「アリィったら、お顔が面白い事になっているわよ?」

 お母様、そんなはっきりと。
 肝心のエンジェル……弟(勝手に認定)のレオン君もキレイな瞳を見開いてこちらをじーっと見ている。
 あれ? もしかして私、怪しまれてる?
 見た目地味だし茶髪だし両親のどちらにも似ていないから、何だこいつと思われてる?   そういえば、どちらかというとレオン君の方がうちの親に似ているかも。
 だからお父様もお母様も放っておけなかったのかしら? 

 私はこちらでも10年分の記憶、正確に言えば3歳ごろからの記憶がある。可愛がってもらったから、今まで親の愛情を疑った事は無い。けれどやっぱり自分に似た子の方が可愛いく感じるのかな、なんて年甲斐もなくちょっと拗ねてみたりなんかして……


「アリィ、レオン君をイジメちゃだめよ~」

 うふふ、と嬉しそうに笑うお母様。

「マリアンヌ、アリィがそんな事をするわけないだろう? だがアリィの方がお姉さんなんだからレオンを頼むな」

「お姉さん」いただきました~。
「ハイ、喜んで~」
 そう言いたいけれど。
 当のレオン君、今度はキョロキョロと私達や辺りを見回して落ち着かないようであります。

「お父様、天使……レオン君は疲れているのでは?   私がお部屋に案内してもよろしいかしら。私の隣でよろしくて?」

 張り切って聞くとお父様が頷いて下さった。お母様、チッて聞こえた気がしましたが。あからさまに残念そうなお顔はやめて下さい。美人が顔を歪めると迫力倍増でレオン君が怖がっちゃいますから。

「行こう!」と手を繋ごうとしたけれど、ビクッと引っ込められてしまった。まあ初日から上手くいくとは思っていないけどね。



「レオン君、ここが貴方のお部屋よ!」

「………」

 私は小さな天使を連れて二階へ上がり、部屋へ案内した。結局、天使は手を繋ぐどころか目も合わせてくれなかった。ずっとビクビク怯えていた。突然我が家に連れて来られたから戸惑っていたのかな?
 私は地味だけど、怖くはないよね?   まさか知らないうちにお母様と同じ能天気オーラとかお父様と同じどす黒オーラが出ていたとか?   そんな事無いと思うんだけどなぁ~。
 私より一つ下だというレオン君はずっと無言のまま。

 彼を案内した部屋は、青と白を基調とした少し先には海も見える眺めの良い部屋。ふかふかのベッドや高価なクローゼット、猫脚ソファ、繊細な作りのデスクや椅子、バスルームまで完備。
 海ビューのリゾートホテルみたいなもんかな?   冷蔵庫無いけど。
 だからレオン君、相変わらず周囲を警戒するのはやめて下さい。気に入らなかったら他の部屋でもいいから。ビクビクされたままだとお姉ちゃんは悲しいゾ!

 侍女を呼んで伝える。

「エルゼ、ここはお願いできるかしら? レオン君、夕食の時にまたお会いしましょうね」
 できるだけ優しくにっこり笑う。小さいとはいえレオン君は男の子。地味だけど女の子の私と一緒では恥ずかしいかもしれない。
 そう思って一旦退室することにした。
 はちべぇ、じゃなかったリリーちゃんだと心配だし、メリーちゃんだと子供の扱いがわからないかもしれない。けれど、ベテランのエルゼさんなら任せても大丈夫!
 その間に私は、お父様かお母様からレオン君の情報聞き出して来なくっちゃ。


 緊張しているのか、ちょっと涙目になってる可愛いレオン君。その姿に後ろ髪をひかれつつ、パタンと部屋の扉を閉めてパタパタと廊下をかけていく。
 お父様、まだ家にいらっしゃればいいけれど……
 書斎の扉をノックする。

   コン、コン

「入りなさい」

 良かった! 
   お父様まだ家にいらした!

「お仕事中申し訳ありません。お聞きしたいことがあってまいりました」

 書類から顔を上げるお父様。
 お仕事モードの厳しい目つきは、見慣れているとはいえちょっと緊張する。
 何かを察したお父様は、牽制するように先に私にこう言った。

「答えられる範囲のことしか答えない」

 私は頷き、可愛い弟(になる予定)のレオン君について詳しく聞いてみることにした。
しおりを挟む
『お妃選びは正直しんどい』発売中です♪(*´꒳`*)アルファポリス発行レジーナブックスより。
感想 12

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...