44 / 58
第三章 偽の恋人
破滅の足音 1
しおりを挟む
*****
城の一室で悪びれないデリウス公爵と対峙しながら、俺、クラウスはイライラが頂点に達していた。
「ほう? 自分で指示を出しながら、公爵はここに書かれた全てに覚えがないと言うのか」
「はて、いったい何のことですか? 指示なんてとんでもない! 下の者が勝手にやったことでしょう。私のせいにされても、困るだけですな」
親子揃ってよく似ている。自分より弱い者に罪をなすりつけ、自分は知らん顔をするつもりなのか。
「よくもまあ、見え透いた嘘を吐く。文書には貴公のサインもあり、関わった者の言質も取っている。それでもまだ、シラを切ると?」
「そ、それは……」
「言い逃れはできない。もちろん気づかなかった弟にも責任を取らせよう。取り調べは以上だ、牢に連れて行け」
これ以上顔を見るのも嫌だと、俺は席を立つ。足を踏み出しかけたその時に、デリウス公爵が大声を上げた。
「待ってください、クラウス殿下! 実は今日、野良猫を捕まえる予定でして」
「……猫?」
俺は顔をしかめた。公爵はこの期に及んで、何を言い出すつもりだ? まさか先日の話の続きでもあるまいし。猫の話といえば……時々つらそうな視線を俺に向けるミレディアは、今日もアウロスと会っているのだろうか? 気にしたって仕方がない。彼女の心は、とっくに弟のものなのだ。
「ええ。高貴な二人に可愛がられて、大きな顔をしている猫です。生意気なので、躾け直そうかと思いまして」
公爵の言葉に気がつき、足を止める。目を合わせると、ふてぶてしい丸顔の中の小さな目が嬉しそうに輝いた。
「なあに、大事にしますよ。でも今は、少しだけ遠くにおりますがね」
俺は大股で近づくと、公爵の胸倉を掴んで激しく揺さぶる。
「貴様! まさか、白昼堂々人を攫ったのか?」
「い、いえ、とんでもない。私は猫の話をしておりまして」
ものすごく嫌な予感がする。
俺は周りに指示を飛ばした。
「ミレディア嬢は今、どこにいる? 至急アウロスを呼べ。ベルツ家にも遣いを出せ!」
「それでしたら今朝、こちらが届きました。業務に支障が出るので、後からお見せしようかと考えておりまして」
走り去る護衛をよそに、秘書官が持っていた手紙を渡す。ひったくるように手にしたそこには、『今日これから、依頼された一角獣の刺繍入り手巾と、総レースの女性用長手袋をお届けに上がります』と、ミレディア自身の筆跡で書かれてあった。
「今朝……と言ったな? 今は昼過ぎだが、まだ来ていないのか?」
「ええ、いらしてないようです」
「その後連絡は?」
「何も」
何かがおかしい。予定が変わるのであれば、真面目なディアなら連絡を入れてくるはずだ。
焦る俺を見て、公爵が声を立てて笑う。
「はっはっはー。猫は気まぐれですから今頃どこにいるのやら。もしそちらで飼われるのでしたら、お譲りしましょうか? まずは条件の話し合いですな」
俺は公爵を睨みつけた。挑発には乗らず、事実確認が先だ。間もなく走って来た弟が、青ざめた顔で俺に告げる。
「僕の所には来てないよ。今日ディアが来るという話も聞いていなかった。公爵……まだ観念していなかったのか」
「アウロス様! 私は貴方様のためを思えばこそ……く、苦しい。クラウス様、放して下さいっ」
俺は公爵の胸倉を再び掴むと、そのまま持ち上げた。もし猫がディアを指すのなら、早く助けないと大変なことになる。公爵だけならまだしも、彼の娘が関わっているとなると恐ろしい。
「どこにいるのか白状しろっ。お前の娘、エルゼはこのことを知っているのか!」
掴む手に力がこもる。公爵の太い首が服に絞めつけられて、顔が赤黒く変わっていく。
「ぐ……ぎ……」
「待て、クラウス。それ以上はさすがにマズいだろ。喋れなければ、居場所もわからない」
アウロスに止められ、俺は手を放した。床に落ちた公爵が、這うように両手をついて必死に空気を取り込んでいる。
「ぐへっごへっへっはっ」
「公爵も早く話した方がいい。僕もクラウスも、許せる気分じゃないから」
許す、だと? 罪を重ねたばかりかディアにまで手を出したのに?
「かはっ、王子が、手荒なことをして、た、ただで済むと?」
「犯罪者に言われたくない」
「なっ、そんな言い方で、私が話すとお思いですか? ここは一つ、冷静に取引を……」
「話さないなら、話したくなるように仕向けるまでだ。最初はどこがいい?」
「は? いったい何を……痛、いたたた」
公爵の手首を握り、ギリギリと力を込めた。優秀な部下達は、見て見ぬ振りを貫いている。早くしないとディアが危ない。
「そ、そんなことで私が屈すると、お、思うのか」
「ほう? 公爵は腕が要らないようだな」
「クラウスは軍隊上がりだから、加減を知らないよ?」
アウロスが横から口を挟む。のん気なことだ。元々はお前のせいで……
「お、王太子が……次期王太子がこんなことをしていいと、思っているのか!」
「王太子の地位などアウロスにくれてやる。それより、ディアに何かあればお前を生かしてはおかない!」
「ぐあっ、ま、待て待て待て。わかった、言うから離せ、離してくれ!」
公爵の悲鳴に近い声に、俺は腕を緩めた。睨みつけたまま先を促す。
「まったくもう、こんな男にエルゼは……痛いっ」
「時間がない。俺は答えを待っている」
さすがに我慢の限界だ。答えないなら次こそこいつを、思いっきり蹴飛ばそう。
「森だ! 東の『暗い森――ドゥンケルヴァルト』。なるべく遠くへ連れて行くよう命じた」
「誰に?」
「よく知らん。娘の側にいた女だ」
思わず舌打ちした。それなら、ディアの行方はエルゼの耳にも届いているだろう。しかも『深い森』は広大で、迷えば見つけるまでに時間がかかる。まあ公爵家の者と一緒なら、迷う心配はないのだが。
「公爵を牢に繋いでおけ。ミレディア嬢が見つかるまで、何も与えるな」
「な……食事抜きだと?」
「黙って。クラウスの邪魔をして、ぶっ飛ばされたいの?」
「アウロス、後を頼む。俺に何かあれば、お前が代わりを務めてくれ」
「クラウス、僕が行くよ。ディアは僕の恋人だ」
刺すような痛みは無視することにする。ディアがアウロスのことを好きでも、俺はまだ自分の気持ちを彼女に告げていない。
「森なら俺の方が慣れている。ベルツ家に寄り、そのまま向かう。お前は兵を連れて公爵家へ」
「……わかった。その代わり、見つけたらすぐに連絡をくれ」
「ああ、約束しよう」
信頼できる護衛を連れて、俺は城を飛び出した。速駆けなら得意だ。
王都にあるベルツの屋敷に到着したところ、大騒ぎになっていた。
「信じられない! ミレディアを引き渡すなんてどういうことだ!」
「お嬢を残して帰って来たって……。お前、それでも護衛か?」
「貴方は要りません。お嬢様を連れて帰って下さいっ」
玄関ホールの大声が、外にまで聞こえている。構わず中に入った俺は、跪いて泣く大きな男の姿を見た。ディアの兄によると、この護衛が自分の仲間と引き換えに、彼女を公爵の手の者に差し出したらしい。怒りが湧き起こるが、かろうじて抑えた。今は一刻も早くディアを助け出す必要がある。
「ああもう、だからアウロス王子に協力するのは反対だったんだ!」
ヨルクの言葉が引っかかり、俺はすかさず尋ねた。
「協力? どういうことだ?」
「あれ、クラウス王子は聞いてませんか? アウロス王子が王太子の座とエルゼを回避するため、ミレディアに恋人のフリを頼んだのですが」
「恋人の……フリ?」
聞き間違いだろうか。ディアは、アウロスのことが好きではないのか? 戸惑う俺にヨルクが続けた。
「はい。クラウス様が王太子になれば、安心できる世の中になると言って」
「オ……私も聞いた。ついでに何かいろいろ約束したんだって」
リーゼという名のディアの侍女も答えた。
思わず顔を片手で覆う。それなら俺は……彼女を諦めなくてもいいのか?
城の一室で悪びれないデリウス公爵と対峙しながら、俺、クラウスはイライラが頂点に達していた。
「ほう? 自分で指示を出しながら、公爵はここに書かれた全てに覚えがないと言うのか」
「はて、いったい何のことですか? 指示なんてとんでもない! 下の者が勝手にやったことでしょう。私のせいにされても、困るだけですな」
親子揃ってよく似ている。自分より弱い者に罪をなすりつけ、自分は知らん顔をするつもりなのか。
「よくもまあ、見え透いた嘘を吐く。文書には貴公のサインもあり、関わった者の言質も取っている。それでもまだ、シラを切ると?」
「そ、それは……」
「言い逃れはできない。もちろん気づかなかった弟にも責任を取らせよう。取り調べは以上だ、牢に連れて行け」
これ以上顔を見るのも嫌だと、俺は席を立つ。足を踏み出しかけたその時に、デリウス公爵が大声を上げた。
「待ってください、クラウス殿下! 実は今日、野良猫を捕まえる予定でして」
「……猫?」
俺は顔をしかめた。公爵はこの期に及んで、何を言い出すつもりだ? まさか先日の話の続きでもあるまいし。猫の話といえば……時々つらそうな視線を俺に向けるミレディアは、今日もアウロスと会っているのだろうか? 気にしたって仕方がない。彼女の心は、とっくに弟のものなのだ。
「ええ。高貴な二人に可愛がられて、大きな顔をしている猫です。生意気なので、躾け直そうかと思いまして」
公爵の言葉に気がつき、足を止める。目を合わせると、ふてぶてしい丸顔の中の小さな目が嬉しそうに輝いた。
「なあに、大事にしますよ。でも今は、少しだけ遠くにおりますがね」
俺は大股で近づくと、公爵の胸倉を掴んで激しく揺さぶる。
「貴様! まさか、白昼堂々人を攫ったのか?」
「い、いえ、とんでもない。私は猫の話をしておりまして」
ものすごく嫌な予感がする。
俺は周りに指示を飛ばした。
「ミレディア嬢は今、どこにいる? 至急アウロスを呼べ。ベルツ家にも遣いを出せ!」
「それでしたら今朝、こちらが届きました。業務に支障が出るので、後からお見せしようかと考えておりまして」
走り去る護衛をよそに、秘書官が持っていた手紙を渡す。ひったくるように手にしたそこには、『今日これから、依頼された一角獣の刺繍入り手巾と、総レースの女性用長手袋をお届けに上がります』と、ミレディア自身の筆跡で書かれてあった。
「今朝……と言ったな? 今は昼過ぎだが、まだ来ていないのか?」
「ええ、いらしてないようです」
「その後連絡は?」
「何も」
何かがおかしい。予定が変わるのであれば、真面目なディアなら連絡を入れてくるはずだ。
焦る俺を見て、公爵が声を立てて笑う。
「はっはっはー。猫は気まぐれですから今頃どこにいるのやら。もしそちらで飼われるのでしたら、お譲りしましょうか? まずは条件の話し合いですな」
俺は公爵を睨みつけた。挑発には乗らず、事実確認が先だ。間もなく走って来た弟が、青ざめた顔で俺に告げる。
「僕の所には来てないよ。今日ディアが来るという話も聞いていなかった。公爵……まだ観念していなかったのか」
「アウロス様! 私は貴方様のためを思えばこそ……く、苦しい。クラウス様、放して下さいっ」
俺は公爵の胸倉を再び掴むと、そのまま持ち上げた。もし猫がディアを指すのなら、早く助けないと大変なことになる。公爵だけならまだしも、彼の娘が関わっているとなると恐ろしい。
「どこにいるのか白状しろっ。お前の娘、エルゼはこのことを知っているのか!」
掴む手に力がこもる。公爵の太い首が服に絞めつけられて、顔が赤黒く変わっていく。
「ぐ……ぎ……」
「待て、クラウス。それ以上はさすがにマズいだろ。喋れなければ、居場所もわからない」
アウロスに止められ、俺は手を放した。床に落ちた公爵が、這うように両手をついて必死に空気を取り込んでいる。
「ぐへっごへっへっはっ」
「公爵も早く話した方がいい。僕もクラウスも、許せる気分じゃないから」
許す、だと? 罪を重ねたばかりかディアにまで手を出したのに?
「かはっ、王子が、手荒なことをして、た、ただで済むと?」
「犯罪者に言われたくない」
「なっ、そんな言い方で、私が話すとお思いですか? ここは一つ、冷静に取引を……」
「話さないなら、話したくなるように仕向けるまでだ。最初はどこがいい?」
「は? いったい何を……痛、いたたた」
公爵の手首を握り、ギリギリと力を込めた。優秀な部下達は、見て見ぬ振りを貫いている。早くしないとディアが危ない。
「そ、そんなことで私が屈すると、お、思うのか」
「ほう? 公爵は腕が要らないようだな」
「クラウスは軍隊上がりだから、加減を知らないよ?」
アウロスが横から口を挟む。のん気なことだ。元々はお前のせいで……
「お、王太子が……次期王太子がこんなことをしていいと、思っているのか!」
「王太子の地位などアウロスにくれてやる。それより、ディアに何かあればお前を生かしてはおかない!」
「ぐあっ、ま、待て待て待て。わかった、言うから離せ、離してくれ!」
公爵の悲鳴に近い声に、俺は腕を緩めた。睨みつけたまま先を促す。
「まったくもう、こんな男にエルゼは……痛いっ」
「時間がない。俺は答えを待っている」
さすがに我慢の限界だ。答えないなら次こそこいつを、思いっきり蹴飛ばそう。
「森だ! 東の『暗い森――ドゥンケルヴァルト』。なるべく遠くへ連れて行くよう命じた」
「誰に?」
「よく知らん。娘の側にいた女だ」
思わず舌打ちした。それなら、ディアの行方はエルゼの耳にも届いているだろう。しかも『深い森』は広大で、迷えば見つけるまでに時間がかかる。まあ公爵家の者と一緒なら、迷う心配はないのだが。
「公爵を牢に繋いでおけ。ミレディア嬢が見つかるまで、何も与えるな」
「な……食事抜きだと?」
「黙って。クラウスの邪魔をして、ぶっ飛ばされたいの?」
「アウロス、後を頼む。俺に何かあれば、お前が代わりを務めてくれ」
「クラウス、僕が行くよ。ディアは僕の恋人だ」
刺すような痛みは無視することにする。ディアがアウロスのことを好きでも、俺はまだ自分の気持ちを彼女に告げていない。
「森なら俺の方が慣れている。ベルツ家に寄り、そのまま向かう。お前は兵を連れて公爵家へ」
「……わかった。その代わり、見つけたらすぐに連絡をくれ」
「ああ、約束しよう」
信頼できる護衛を連れて、俺は城を飛び出した。速駆けなら得意だ。
王都にあるベルツの屋敷に到着したところ、大騒ぎになっていた。
「信じられない! ミレディアを引き渡すなんてどういうことだ!」
「お嬢を残して帰って来たって……。お前、それでも護衛か?」
「貴方は要りません。お嬢様を連れて帰って下さいっ」
玄関ホールの大声が、外にまで聞こえている。構わず中に入った俺は、跪いて泣く大きな男の姿を見た。ディアの兄によると、この護衛が自分の仲間と引き換えに、彼女を公爵の手の者に差し出したらしい。怒りが湧き起こるが、かろうじて抑えた。今は一刻も早くディアを助け出す必要がある。
「ああもう、だからアウロス王子に協力するのは反対だったんだ!」
ヨルクの言葉が引っかかり、俺はすかさず尋ねた。
「協力? どういうことだ?」
「あれ、クラウス王子は聞いてませんか? アウロス王子が王太子の座とエルゼを回避するため、ミレディアに恋人のフリを頼んだのですが」
「恋人の……フリ?」
聞き間違いだろうか。ディアは、アウロスのことが好きではないのか? 戸惑う俺にヨルクが続けた。
「はい。クラウス様が王太子になれば、安心できる世の中になると言って」
「オ……私も聞いた。ついでに何かいろいろ約束したんだって」
リーゼという名のディアの侍女も答えた。
思わず顔を片手で覆う。それなら俺は……彼女を諦めなくてもいいのか?
2
お気に入りに追加
2,786
あなたにおすすめの小説
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?
蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ!
ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。
エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。
ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。
しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。
「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」
するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。

政略結婚の指南書
編端みどり
恋愛
【完結しました。ありがとうございました】
貴族なのだから、政略結婚は当たり前。両親のように愛がなくても仕方ないと諦めて結婚式に臨んだマリア。母が持たせてくれたのは、政略結婚の指南書。夫に愛されなかった母は、指南書を頼りに自分の役目を果たし、マリア達を立派に育ててくれた。
母の背中を見て育ったマリアは、愛されなくても自分の役目を果たそうと覚悟を決めて嫁いだ。お相手は、女嫌いで有名な辺境伯。
愛されなくても良いと思っていたのに、マリアは結婚式で初めて会った夫に一目惚れしてしまう。
屈強な見た目で女性に怖がられる辺境伯も、小動物のようなマリアに一目惚れ。
惹かれ合うふたりを引き裂くように、結婚式直後に辺境伯は出陣する事になってしまう。
戻ってきた辺境伯は、上手く妻と距離を縮められない。みかねた使用人達の手配で、ふたりは視察という名のデートに赴く事に。そこで、事件に巻き込まれてしまい……
※R15は保険です
※別サイトにも掲載しています

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと
淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品)
※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。
原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。
よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。
王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。
どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。
家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。
1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる)
3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
5.お父様と弟の問題を解決する。
それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc.
リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。
ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう?
たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。
これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。
【注意点】
恋愛要素は弱め。
設定はかなりゆるめに作っています。
1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。
2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる