39 / 58
第三章 偽の恋人
34
しおりを挟む
身分制度は無視できない。料理人の女性の汚れを払っていた私は、慌てて立ち上がると丁寧に挨拶をした。
「お初にお目にかかります、公爵夫人。私はミレディアと申します」
「公爵夫人? あら、違うわよ。でも当たらずとも遠からず、といったところかしら。やっぱり貴女なのね?」
淡い金色の髪に水色の瞳のその人は、謎めいた言葉を呟くとクスクス笑う。誰かに似ている……? 惜しい、ということは公爵の親戚なのかもしれない。だったら滅多なことは言えない。
「大変失礼いたしました」
「いいのよ、気にしないで。それよりそれ、どうするの?」
その女性は料理人が拾い上げた白い塊を見て、問いかけた。よく見ると……パン生地では?
目の細い料理人は、その目を一層細めて困ったような顔をする。
「埃がついてしまいました。外の石窯で焼き上げる予定でしたが、こうなった以上どうすることもできません」
「そう、もったいないわね」
料理人の答えに、そのご婦人は残念そうな顔をした。今度は私に目を向けると、同じことを聞いて来る。
「ねえ、貴女ならどうする?」
もしかして、私がぶつかったせいで生地を無駄にしてしまったと思っているのでは? 優し気な表情の奥の真実は読み取れない。かといって、エルゼのように悪意があるようにも見えなかった。単に問題を出して楽しんでいるようにも見受けられる。
「そうですね。やはり下に落とした以上、破棄するしかないのかと。洗うわけにもいきませんし……」
言いかけてふと気づく。
そうか、洗えばいいのよ!
「私なら洗います。洗った後に残った物を蒸せば生麩に、焼けば焼き麩ができるので。麩まんじゅうや麩菓子に活用できるかと」
思いついた考えに我ながら嬉しくなった。老後の楽しみがまた一つ、増えた気がする。本当はこねたての生地を洗う方がいい。水に溶けずに残った物がお麩になるのだ。遠い昔、調理実習の時に家庭科の先生が何気なく教えてくれたことが、まさかここで役立つなんて!
「焼き麩? まんじゅう? 全く知らない言葉だわ。物知りというのは本当のようね」
「物知り、ですか? あの……」
誰からそれを、と聞き返そうとしたところ、向こうから近寄って来た人物に遮られてしまう。
「ディア! なかなか来ないと思ったら、こんな所にいたんだ。なっ、まさか……」
アウロス王子が私の前に立つ女性を見て、珍しく目を丸くしている。女性の方は落ち着いた態度で、自分の唇に人差し指を押し当てた。それ以上何も言うなということらしい。
アウロス王子は首肯し、黙り込む。どうやら知り合いらしいけど……
「ごめんなさいね、お邪魔して。アウロス、後で話を聞かせてちょうだい。じゃあまたね」
そう言って、彼女は優雅に去って行く。
彼よりだいぶ年上だけど、アウロス王子を名前で呼ぶから親しい仲のようだ。私にも好意的だったので、王子は私が偽の恋人だと打ち明けているのかもしれない。先ほどの物知りというのも、アウロス王子から聞いたのだろう。
エルゼより上品で、優しく美しい人。そうか、だからアウロス王子は特定の恋人を作らないのかもしれない。既婚者である彼女が本命なのね? ベルツで聞いた「その先を期待されても困る」との言葉の裏には、そんな意味があったのか。
アウロス王子、ストライクゾーンが広いと思っていたけど、まさかの年上好きだとは!
「それより貴女、大丈夫? もしパン生地のことで文句を言われたら、私がダメにしたってことでいいわよ? お陰で楽しみが増えたし」
「いえ、あの……」
私がそう告げると、目が細くおとなしそうな料理人の女性は、意味も分からず困惑しているようだった。
城に通うようになって一ヶ月ほどが過ぎた今日、私はアウロス王子と東屋で絶賛いちゃつき中。冬でも緑の多い遊歩道の先に高台となっている場所があり、階段を上るとクッションが敷き詰められた東屋に至る。
城の窓からは人影がぼんやりと見える位置で、いつもどこかで見ているというエルゼのために、アウロス王子がこの場所を選んだ。ちなみに王子と私の護衛は、東屋の外に控えている。
「嫌ですわ。アウロスったらもう、恥ずかしい」
「ディア、寒いの? それならもっと近くにおいで。綺麗な君を片時も話したくないという僕の気持ち、わかってくれるだろう?」
アウロス王子が調子に乗って肩を抱き、顔を寄せてくる。私の腿に手を置こうとしたので、遠慮なくつねった。かなり痛いはずなのに、それでも彼は涼しい顔。涼しいといえば、真冬に東屋でデートって……
外に出るとは思わなかったので、今日の私はエメラルドグリーンの薄手のドレスを着ている。スクエアカットで胸元が開いているため、コートを着ても我慢大会に近いものがあるような。
「ディアが側にいないと何もする気が起きないんだ。庭園に咲く冬薔薇でさえ、君の美しさには敵わない」
「そんな、とんでもございませんわ。でも、アウロスにそう言っていただけたら私……私」
――寒さと羞恥に耐えられないので、そろそろ中に入ってもよろしいでしょうか?
甘ったるい言葉の数々はもちろん演技。公爵令嬢エルゼに自分を諦めさせ、私に溺れているように見せかけるため、アウロス王子はかなり気合が入っている。道ならぬ恋の年上女性を引っ張り出すわけにもいかないので、必死なのだろう。
最近では私も慣れてきて、そこまで固くならずに恋人のフリができるようになった。だけどいくら芝居でも、この恰好は寒いし過剰な接触もそろそろ勘弁してほしい。
「あの、そろそろ中に……」
「ああごめん。早く二人で温まりたいんだね? もちろん喜んで」
いえ、その言い方だと何か誤解を招くような……あ、演技だからそれでいいのか。
偽の恋人役を演じて良いことの一つに、終わったら誰からも求婚されないという安心感がある。婚約もせず、いちゃいちゃする姿を周囲に見せつけているため、今の私は身持ちが悪いと評されていた。兄は嘆くけれど、私は別に構わない。
役目を終えた後は、アウロス王子に無事棄てられる予定。いわくつきの行き遅れの女を妻に迎えようだなんて、そんな奇特な男性はいないだろう。良くて側室や愛人だけど、私は笑ってこう言うつもり。
「アウロス王子の相手だった私が、普通の男性で満足するとでも?」
これでみな、引き下ってくれるはず。王太子がクラウス王子に決まれば、私はのんびりした隠居生活に入ることができる。
寒さに耐えて演技をしていたところ、こちらに近づく足音が……もしかして! ドキドキしながら目を向ける。けれど、そこに立っていたのは残念ながらアウロス王子の秘書官だった。
――バカね、あの人が来るはずないじゃない。
「アウロス様、そろそろお戻りを。目を通していただく書類が滞っております」
「なんだ、気が利かないな。もう少し二人でいたかったのに」
いえ、私は寒さで限界です。
冷たくなった手をさすりながら秘書官に感謝の笑みを浮かべる。でも彼は、嫌そうに顔を背けただけだった。それもそうよね? 秘書官から見た私はアウロス王子をたぶらかし(演技だけど)、仕事を妨げている(厳密に言えば彼が自主的にサボっている)んだもの。
秘書官に近づき小声で話していた王子が、私の方を振り向いた。
「ごめんねディア、どうも急ぎの用事らしい。悪いけど先に行く。ドレスを整えたら、後からゆっくりおいで?」
整えるも何も、全く乱れておりませんが……
念には念を入れ、秘書官の前でもしっかり演技をしろということかしら? もしかして彼も、デリウス公爵の息がかかっているのかもしれない。
「ええ、そうさせていただくわ。お仕事頑張ってね」
「ありがとう、適当に終わらせるから」
いやいや、それだとダメでしょう。ほら、秘書官が軽蔑した目で私を見ている。
元々頭が良いからなのか、アウロス王子は遊んでいてもあまり悪口を言われない。恨まれるのは専ら私。それでは困ると本人は言っていたけれど、培ってきた人気は伊達ではないようだ。
不本意ではあるけれど、こうなることも予想していたから大丈夫。足を引っかけられたりわざとぶつかられても避けられるようになったし、なんてことはない。
「お初にお目にかかります、公爵夫人。私はミレディアと申します」
「公爵夫人? あら、違うわよ。でも当たらずとも遠からず、といったところかしら。やっぱり貴女なのね?」
淡い金色の髪に水色の瞳のその人は、謎めいた言葉を呟くとクスクス笑う。誰かに似ている……? 惜しい、ということは公爵の親戚なのかもしれない。だったら滅多なことは言えない。
「大変失礼いたしました」
「いいのよ、気にしないで。それよりそれ、どうするの?」
その女性は料理人が拾い上げた白い塊を見て、問いかけた。よく見ると……パン生地では?
目の細い料理人は、その目を一層細めて困ったような顔をする。
「埃がついてしまいました。外の石窯で焼き上げる予定でしたが、こうなった以上どうすることもできません」
「そう、もったいないわね」
料理人の答えに、そのご婦人は残念そうな顔をした。今度は私に目を向けると、同じことを聞いて来る。
「ねえ、貴女ならどうする?」
もしかして、私がぶつかったせいで生地を無駄にしてしまったと思っているのでは? 優し気な表情の奥の真実は読み取れない。かといって、エルゼのように悪意があるようにも見えなかった。単に問題を出して楽しんでいるようにも見受けられる。
「そうですね。やはり下に落とした以上、破棄するしかないのかと。洗うわけにもいきませんし……」
言いかけてふと気づく。
そうか、洗えばいいのよ!
「私なら洗います。洗った後に残った物を蒸せば生麩に、焼けば焼き麩ができるので。麩まんじゅうや麩菓子に活用できるかと」
思いついた考えに我ながら嬉しくなった。老後の楽しみがまた一つ、増えた気がする。本当はこねたての生地を洗う方がいい。水に溶けずに残った物がお麩になるのだ。遠い昔、調理実習の時に家庭科の先生が何気なく教えてくれたことが、まさかここで役立つなんて!
「焼き麩? まんじゅう? 全く知らない言葉だわ。物知りというのは本当のようね」
「物知り、ですか? あの……」
誰からそれを、と聞き返そうとしたところ、向こうから近寄って来た人物に遮られてしまう。
「ディア! なかなか来ないと思ったら、こんな所にいたんだ。なっ、まさか……」
アウロス王子が私の前に立つ女性を見て、珍しく目を丸くしている。女性の方は落ち着いた態度で、自分の唇に人差し指を押し当てた。それ以上何も言うなということらしい。
アウロス王子は首肯し、黙り込む。どうやら知り合いらしいけど……
「ごめんなさいね、お邪魔して。アウロス、後で話を聞かせてちょうだい。じゃあまたね」
そう言って、彼女は優雅に去って行く。
彼よりだいぶ年上だけど、アウロス王子を名前で呼ぶから親しい仲のようだ。私にも好意的だったので、王子は私が偽の恋人だと打ち明けているのかもしれない。先ほどの物知りというのも、アウロス王子から聞いたのだろう。
エルゼより上品で、優しく美しい人。そうか、だからアウロス王子は特定の恋人を作らないのかもしれない。既婚者である彼女が本命なのね? ベルツで聞いた「その先を期待されても困る」との言葉の裏には、そんな意味があったのか。
アウロス王子、ストライクゾーンが広いと思っていたけど、まさかの年上好きだとは!
「それより貴女、大丈夫? もしパン生地のことで文句を言われたら、私がダメにしたってことでいいわよ? お陰で楽しみが増えたし」
「いえ、あの……」
私がそう告げると、目が細くおとなしそうな料理人の女性は、意味も分からず困惑しているようだった。
城に通うようになって一ヶ月ほどが過ぎた今日、私はアウロス王子と東屋で絶賛いちゃつき中。冬でも緑の多い遊歩道の先に高台となっている場所があり、階段を上るとクッションが敷き詰められた東屋に至る。
城の窓からは人影がぼんやりと見える位置で、いつもどこかで見ているというエルゼのために、アウロス王子がこの場所を選んだ。ちなみに王子と私の護衛は、東屋の外に控えている。
「嫌ですわ。アウロスったらもう、恥ずかしい」
「ディア、寒いの? それならもっと近くにおいで。綺麗な君を片時も話したくないという僕の気持ち、わかってくれるだろう?」
アウロス王子が調子に乗って肩を抱き、顔を寄せてくる。私の腿に手を置こうとしたので、遠慮なくつねった。かなり痛いはずなのに、それでも彼は涼しい顔。涼しいといえば、真冬に東屋でデートって……
外に出るとは思わなかったので、今日の私はエメラルドグリーンの薄手のドレスを着ている。スクエアカットで胸元が開いているため、コートを着ても我慢大会に近いものがあるような。
「ディアが側にいないと何もする気が起きないんだ。庭園に咲く冬薔薇でさえ、君の美しさには敵わない」
「そんな、とんでもございませんわ。でも、アウロスにそう言っていただけたら私……私」
――寒さと羞恥に耐えられないので、そろそろ中に入ってもよろしいでしょうか?
甘ったるい言葉の数々はもちろん演技。公爵令嬢エルゼに自分を諦めさせ、私に溺れているように見せかけるため、アウロス王子はかなり気合が入っている。道ならぬ恋の年上女性を引っ張り出すわけにもいかないので、必死なのだろう。
最近では私も慣れてきて、そこまで固くならずに恋人のフリができるようになった。だけどいくら芝居でも、この恰好は寒いし過剰な接触もそろそろ勘弁してほしい。
「あの、そろそろ中に……」
「ああごめん。早く二人で温まりたいんだね? もちろん喜んで」
いえ、その言い方だと何か誤解を招くような……あ、演技だからそれでいいのか。
偽の恋人役を演じて良いことの一つに、終わったら誰からも求婚されないという安心感がある。婚約もせず、いちゃいちゃする姿を周囲に見せつけているため、今の私は身持ちが悪いと評されていた。兄は嘆くけれど、私は別に構わない。
役目を終えた後は、アウロス王子に無事棄てられる予定。いわくつきの行き遅れの女を妻に迎えようだなんて、そんな奇特な男性はいないだろう。良くて側室や愛人だけど、私は笑ってこう言うつもり。
「アウロス王子の相手だった私が、普通の男性で満足するとでも?」
これでみな、引き下ってくれるはず。王太子がクラウス王子に決まれば、私はのんびりした隠居生活に入ることができる。
寒さに耐えて演技をしていたところ、こちらに近づく足音が……もしかして! ドキドキしながら目を向ける。けれど、そこに立っていたのは残念ながらアウロス王子の秘書官だった。
――バカね、あの人が来るはずないじゃない。
「アウロス様、そろそろお戻りを。目を通していただく書類が滞っております」
「なんだ、気が利かないな。もう少し二人でいたかったのに」
いえ、私は寒さで限界です。
冷たくなった手をさすりながら秘書官に感謝の笑みを浮かべる。でも彼は、嫌そうに顔を背けただけだった。それもそうよね? 秘書官から見た私はアウロス王子をたぶらかし(演技だけど)、仕事を妨げている(厳密に言えば彼が自主的にサボっている)んだもの。
秘書官に近づき小声で話していた王子が、私の方を振り向いた。
「ごめんねディア、どうも急ぎの用事らしい。悪いけど先に行く。ドレスを整えたら、後からゆっくりおいで?」
整えるも何も、全く乱れておりませんが……
念には念を入れ、秘書官の前でもしっかり演技をしろということかしら? もしかして彼も、デリウス公爵の息がかかっているのかもしれない。
「ええ、そうさせていただくわ。お仕事頑張ってね」
「ありがとう、適当に終わらせるから」
いやいや、それだとダメでしょう。ほら、秘書官が軽蔑した目で私を見ている。
元々頭が良いからなのか、アウロス王子は遊んでいてもあまり悪口を言われない。恨まれるのは専ら私。それでは困ると本人は言っていたけれど、培ってきた人気は伊達ではないようだ。
不本意ではあるけれど、こうなることも予想していたから大丈夫。足を引っかけられたりわざとぶつかられても避けられるようになったし、なんてことはない。
1
『お妃選びは正直しんどい』(*´꒳`*)アルファポリス発行レジーナブックス。5月末刊行予定です。
お気に入りに追加
2,785
あなたにおすすめの小説
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
踏み台令嬢はへこたれない
IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~
甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。
その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。
そんな折、気がついた。
「悪役令嬢になればいいじゃない?」
悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。
貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。
よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。
これで万事解決。
……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの?
※全12話で完結です。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる