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ライオネル編
ラブレター
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最近気づいたことがある。
それは、同じクラスのライオネルが結構モテるということ。
あ、もちろん彼も『プリマリ』の攻略対象だから、人気があるのは当然なんだけど。カイルやリュークと肩を並べる彼は、彼らより一学年下で、マリエッタや私と同じ学年だけど確かに頼りになりそうだ。体育会系でクラスのリーダー的存在の彼は、男女問わず誰にでも優しい。
彼の横では最近、クラスの男子が同じように棒を持って素振りをしていることが多くなった。何も上半身裸になるところまで真似しなくても良いのに……
そんなライオネルが告白されている現場を、私は偶然目撃してしまった。色白で大人しい『普通科』の女子が校舎の陰で彼に手紙を渡していた。
「あの、これ。よかったら読んでお返事ください!」
「あ……。せっかく書いてもらったのに悪いんだけど、先に言っとくわ。俺、好きな子がいるんだよね。だからもし、俺が思っている通りの内容なら、ごめん」
「あの、私、その……」
「勘違いかもしれないけど。ごめんな」
「い、いえっ」
バタバタと走り去る女の子。
ライオネルは結局手紙を受け取らず、困ったようにガシガシ頭をかいている。
そっか! ライオネルには、やっぱり好きな子がいたのね? それって当然マリエッタよね? でも、女子同士の争いに巻き込まれないように、わざと好きな子の名前を伏せているのね! さすがモテ男、断り慣れているわ~。
相手の子も手紙を渡す前に言われたし、中身も読まれていないから、誰かに聞かれたとしても「ラブレターじゃない」って言い張れば告白したことにはならないと思うし。
何よりライオネル本人は、気にしないはずよね? いつもさっぱりしていて、とても優しいから。
私は感心しながら彼を見ていた。ライオネルに、こんな細やかな心遣いができるだなんて……
気づかれないうちに校舎へ戻ろうとしていたら、ちょうどこちらの方を向いたライオネルとバッチリ目が合ってしまった。
「あ……」
素早く隠れようとしたけれど、時すでに遅し。途端に彼の目が見開かれ、顔が真っ赤になる。
「ブランカ、まさか、今の見た?」
「いいえ、何かしら。私、貴方の行動など気にしていませんことよ?」
ライオネルは安心したように、ホッと息をついた。
「そっか、なら良かった。なあブランカ、俺、これから厩舎に行くんだ。一緒に遠乗りに行かないか?」
彼は優しい。リュークに冷たくされて元気のない私を心配して、再び誘ってくれたのだろう。だけど私は、悪役令嬢に戻ると決めたのだ。のん気に乗馬なんか楽しんでいる場合ではない。
「ああら、なぜ私が貴方と一緒に? 貴方の好きなマリエッタを誘えばいかが?」
ハッとした顔でこちらを向くライオネル。あ、しまった。見ていないって、今言ったばかりなのに。
「なあ、ブランカ。お前もしかして……」
「べ、べべ別にマリエッタに言うつもりはなくってよ。私、何も見ていないからー!」
喚きながら慌ててその場を離れた。
ライオネルは私を追いかけてこなかった。
彼が本気を出せばすぐに追いつかれて、マリエッタに言わないように硬く口止めをされていたことだろう。
危ない危ない!
もう少しで、シナリオを乱してしまうところだった。悪役令嬢はアドバイスや橋渡しをしてはいけない。あくまでもヒロインと攻略者が自発的にくっつくよう、二人の仲を邪魔しないといけないのだ!
そんな私が教室に戻ると、マリエッタが封筒のようなものを持っていた。
「あらマリエッタ。それは何? もしかして、また男子からもらったんじゃあ」
攻略者の誰かからのものだとしたら?
もしかして、ヒロイン攻略は順調に進んでいるの?
「ブランカ様! これは男子ではなく女子からです」
まあ、マリエッタったら。
その愛らしさで男子生徒はおろか女生徒まで虜にするなんて。『プリマリ』のヒロインはさすがだわ!
「そう。まあ、私には関係ないけどね」
今の私は悪役令嬢。
これ以上、マリエッタと親しく話してはいけない。
「私にも関係ありません。だってこれは、ライオネルに渡してくれって預かったものなんです~」
ええ?
マリエッタ、あなたそれでいいの?
女子からってことは、それって確実にラブレターじゃない! さっき校舎裏で本人が断っていたのに、また別の子からなの? ライオネルったらそんなにモテるの? というより、ライオネルも告白ばっかりされていないで、ちゃんとヒロインであるマリエッタを繋ぎ止めておかなきゃダメじゃない!
マリエッタもマリエッタで、攻略対象へ他人のラブレターを渡そうとしているなんてどうかしているわ! ってことは、マリエッタはライオネルのルートじゃないってことかしら?
それとも、他の女の子からの手紙をわざと渡して、ライオネルに嫉妬させようっていう作戦?
「だけどライオネルったらいっつも受け取らないんですよ? 彼の愛馬にでも食べてもらおうかしら」
ちょっと待って、マリエッタ!
紙を食べるのって馬じゃないから。
それって多分ヤギだから。
マリエッタが馬に噛まれる理由が、少しだけわかったような気がした。まさか、今までも馬に紙を食べさせようとしてたんじゃあ……
それよりも、預かった手紙を勝手に処分するのってダメだと思う。中にはその人の想いが詰まっているはずだから。
だけど、そうか。考えてみればマリエッタの持ってくる手紙を受け取らないってことは、ライオネルったらやっぱり。
さすがはマリエッタ!
本人にその気がなくても、ライオネルはヒロインに夢中。それなら私は張り切って、二人にガンガン意地悪しなくちゃね?
それは、同じクラスのライオネルが結構モテるということ。
あ、もちろん彼も『プリマリ』の攻略対象だから、人気があるのは当然なんだけど。カイルやリュークと肩を並べる彼は、彼らより一学年下で、マリエッタや私と同じ学年だけど確かに頼りになりそうだ。体育会系でクラスのリーダー的存在の彼は、男女問わず誰にでも優しい。
彼の横では最近、クラスの男子が同じように棒を持って素振りをしていることが多くなった。何も上半身裸になるところまで真似しなくても良いのに……
そんなライオネルが告白されている現場を、私は偶然目撃してしまった。色白で大人しい『普通科』の女子が校舎の陰で彼に手紙を渡していた。
「あの、これ。よかったら読んでお返事ください!」
「あ……。せっかく書いてもらったのに悪いんだけど、先に言っとくわ。俺、好きな子がいるんだよね。だからもし、俺が思っている通りの内容なら、ごめん」
「あの、私、その……」
「勘違いかもしれないけど。ごめんな」
「い、いえっ」
バタバタと走り去る女の子。
ライオネルは結局手紙を受け取らず、困ったようにガシガシ頭をかいている。
そっか! ライオネルには、やっぱり好きな子がいたのね? それって当然マリエッタよね? でも、女子同士の争いに巻き込まれないように、わざと好きな子の名前を伏せているのね! さすがモテ男、断り慣れているわ~。
相手の子も手紙を渡す前に言われたし、中身も読まれていないから、誰かに聞かれたとしても「ラブレターじゃない」って言い張れば告白したことにはならないと思うし。
何よりライオネル本人は、気にしないはずよね? いつもさっぱりしていて、とても優しいから。
私は感心しながら彼を見ていた。ライオネルに、こんな細やかな心遣いができるだなんて……
気づかれないうちに校舎へ戻ろうとしていたら、ちょうどこちらの方を向いたライオネルとバッチリ目が合ってしまった。
「あ……」
素早く隠れようとしたけれど、時すでに遅し。途端に彼の目が見開かれ、顔が真っ赤になる。
「ブランカ、まさか、今の見た?」
「いいえ、何かしら。私、貴方の行動など気にしていませんことよ?」
ライオネルは安心したように、ホッと息をついた。
「そっか、なら良かった。なあブランカ、俺、これから厩舎に行くんだ。一緒に遠乗りに行かないか?」
彼は優しい。リュークに冷たくされて元気のない私を心配して、再び誘ってくれたのだろう。だけど私は、悪役令嬢に戻ると決めたのだ。のん気に乗馬なんか楽しんでいる場合ではない。
「ああら、なぜ私が貴方と一緒に? 貴方の好きなマリエッタを誘えばいかが?」
ハッとした顔でこちらを向くライオネル。あ、しまった。見ていないって、今言ったばかりなのに。
「なあ、ブランカ。お前もしかして……」
「べ、べべ別にマリエッタに言うつもりはなくってよ。私、何も見ていないからー!」
喚きながら慌ててその場を離れた。
ライオネルは私を追いかけてこなかった。
彼が本気を出せばすぐに追いつかれて、マリエッタに言わないように硬く口止めをされていたことだろう。
危ない危ない!
もう少しで、シナリオを乱してしまうところだった。悪役令嬢はアドバイスや橋渡しをしてはいけない。あくまでもヒロインと攻略者が自発的にくっつくよう、二人の仲を邪魔しないといけないのだ!
そんな私が教室に戻ると、マリエッタが封筒のようなものを持っていた。
「あらマリエッタ。それは何? もしかして、また男子からもらったんじゃあ」
攻略者の誰かからのものだとしたら?
もしかして、ヒロイン攻略は順調に進んでいるの?
「ブランカ様! これは男子ではなく女子からです」
まあ、マリエッタったら。
その愛らしさで男子生徒はおろか女生徒まで虜にするなんて。『プリマリ』のヒロインはさすがだわ!
「そう。まあ、私には関係ないけどね」
今の私は悪役令嬢。
これ以上、マリエッタと親しく話してはいけない。
「私にも関係ありません。だってこれは、ライオネルに渡してくれって預かったものなんです~」
ええ?
マリエッタ、あなたそれでいいの?
女子からってことは、それって確実にラブレターじゃない! さっき校舎裏で本人が断っていたのに、また別の子からなの? ライオネルったらそんなにモテるの? というより、ライオネルも告白ばっかりされていないで、ちゃんとヒロインであるマリエッタを繋ぎ止めておかなきゃダメじゃない!
マリエッタもマリエッタで、攻略対象へ他人のラブレターを渡そうとしているなんてどうかしているわ! ってことは、マリエッタはライオネルのルートじゃないってことかしら?
それとも、他の女の子からの手紙をわざと渡して、ライオネルに嫉妬させようっていう作戦?
「だけどライオネルったらいっつも受け取らないんですよ? 彼の愛馬にでも食べてもらおうかしら」
ちょっと待って、マリエッタ!
紙を食べるのって馬じゃないから。
それって多分ヤギだから。
マリエッタが馬に噛まれる理由が、少しだけわかったような気がした。まさか、今までも馬に紙を食べさせようとしてたんじゃあ……
それよりも、預かった手紙を勝手に処分するのってダメだと思う。中にはその人の想いが詰まっているはずだから。
だけど、そうか。考えてみればマリエッタの持ってくる手紙を受け取らないってことは、ライオネルったらやっぱり。
さすがはマリエッタ!
本人にその気がなくても、ライオネルはヒロインに夢中。それなら私は張り切って、二人にガンガン意地悪しなくちゃね?
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