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マリエッタ編
後夜祭とマリエッタ
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「昨日はみんな、お疲れ様」
朝起きて自然とカフェテリアに集まるなり、カイル様がおっしゃった。昨日は学園の競技会で、ここにいない初等部のユーリスとジュリアンも含めたブランカ様以外の全員が競技に参加した。今朝もまだ心地良い達成感と疲労が残っている。
ブランカ様も競技会に出る私たちのために、いつの間にか用意していた応援グッズやランチの準備で本当はお疲れのはず。それなのに疲れた様子を全く見せない彼女は、今日もにこにこしていてとっても愛らしい。彼女の隣りに当然のように澄まして座るカイル様とリューク様がちょっと邪魔だけど。
中等部の競技会は、カイル王子の優勝、リューク様の準優勝で幕を閉じた。中等部や高等部の競技に思った以上に時間がかかってしまったために、後夜祭は今日に持ち越しとなってしまった。
後夜祭といっても、学内にあるホールでのダンスとちょっとしたパーティー、なんだけど……
後夜祭でパートナーとなった者同士は人前で堂々とダンスを踊れる。競技会前に私も何人かにさり気なく予定を聞かれたし、ブランカ様も同じように男子から声をかけられていた。
けれど、何かに気をとられていた彼女はわかっておらず、全員見事にスルーしていた。
成績優秀で侯爵家、『特進魔法科』の可愛い彼女は学園でも大人気! でも、本人はまったく意識していないようで、ご自分の魅力にも全く気がついていらっしゃらないみたい。もし私が男の子だったら、すぐにパートナーをお願いするのに。ブランカ様の一番近くにいて、彼女ともっともっと仲良くするのに。
「昨日の魔法はみんなとてもすごかったわ! ライオネルの炎の龍もそうだし、カイル様とリュークの最後の魔法には、私だけでなくジュリアンもとっても感激していたのよ」
何ですって、ジュリアン?
そういえばブランカ様、ジュリアンと仲良く話していらしたわ。カイル様とリューク様は涼しい顔をしているものの、決勝の魔法は絶対彼女のためだし、ライオネルは火で作った龍を褒められて照れて喜んでいる。
「ところで、今日に延期された後夜祭の事だけど……」
カイル様ったら。優勝したのは当然、ブランカ様と一番最初に踊りたかったからよね? 学園長の表彰式の後、初等部、中等部、高等部の各優勝者が前に進み出る。次に準優勝者が出てきて、それぞれがパートナーと踊る。こんな感じで彼女を堂々とお披露目できるから、頑張ったんでしょう?
「俺とブランカはもう約束しているから」
何ですって!
リューク様ったら抜け駆けだわ!
カイル様とライオネルの明らかにがっかりした様子が、見ていて痛々しい。リューク様はそんな彼らに気付いていながら、涼しい顔でお茶を飲んでいる。ブランカ様に至っては全く気付いていないのか、朝食に夢中のようだ。
これだけみんなに好意を寄せられてアピールされているのに、カイル様やライオネルの気持ちだけでなく、リューク様の想いにまで気がつかない彼女は、ある意味とっても大物だと思う。
まあ、だからこそ彼女と長く一緒にいたい私にとっては好都合なのだけれど。
でも、どうしよう?
ダンスのパートナーになって、このままブランカ様とリューク様の距離がどんどん縮まるってことはないかしら? 私と過ごす時間まで、リューク様にとられちゃったら困るけど、ブランカ様には幸せになって欲しいし……
思い悩んでいたところ、ちょうどカイル様と目が合った。彼の目も一瞬きらりと光ったので、同じような事を考えていらしたのだとわかる。『同志!』そんな言葉が思わず頭に浮かんだ。
結局、私はカイル様とパートナーを組むことになった。本当はブランカ様と踊りたかったけれど、それはできない。こんなことならちゃんと、男性パートも練習しておけば良かったわ!
それにしても、ブランカ様。
カイル様に『マリエッタと頑張ってね』というような期待を込めた視線を向けたから、却って彼が可哀想。ほら、リューク様だってそんなブランカ様をムッとしたご様子で見ている。まあ悔しいから、ブランカ様には絶対に教えてあげないけれど。
ねえブランカ様。後夜祭までの間、女の子は女の子同士仲良く準備をしましょうね? 考えるとほんの少し楽しみになってきた。だってこれからの時間は、準備と称してブランカ様とずっと一緒にいられるんですもの。
「じゃあブランカ様、魔法塔での用事が済んだら、部屋でドレスの選びっこをしたり髪飾りを選んだりしましょうね?」
ブランカ様はキラキラなお顔のまま、嬉しそうに頷いて下さる。
ブランカ様にはどんなドレスが似合うかしら? ああ、でも似合い過ぎてもダメね。男子生徒が喜ぶだけだもの。
いいでしょう。私、ブランカ様を独り占めできるのよ? 女の子で良かったと思うのは、こんな時。殿方たち、せいぜい羨ましがっていらしてね?
朝起きて自然とカフェテリアに集まるなり、カイル様がおっしゃった。昨日は学園の競技会で、ここにいない初等部のユーリスとジュリアンも含めたブランカ様以外の全員が競技に参加した。今朝もまだ心地良い達成感と疲労が残っている。
ブランカ様も競技会に出る私たちのために、いつの間にか用意していた応援グッズやランチの準備で本当はお疲れのはず。それなのに疲れた様子を全く見せない彼女は、今日もにこにこしていてとっても愛らしい。彼女の隣りに当然のように澄まして座るカイル様とリューク様がちょっと邪魔だけど。
中等部の競技会は、カイル王子の優勝、リューク様の準優勝で幕を閉じた。中等部や高等部の競技に思った以上に時間がかかってしまったために、後夜祭は今日に持ち越しとなってしまった。
後夜祭といっても、学内にあるホールでのダンスとちょっとしたパーティー、なんだけど……
後夜祭でパートナーとなった者同士は人前で堂々とダンスを踊れる。競技会前に私も何人かにさり気なく予定を聞かれたし、ブランカ様も同じように男子から声をかけられていた。
けれど、何かに気をとられていた彼女はわかっておらず、全員見事にスルーしていた。
成績優秀で侯爵家、『特進魔法科』の可愛い彼女は学園でも大人気! でも、本人はまったく意識していないようで、ご自分の魅力にも全く気がついていらっしゃらないみたい。もし私が男の子だったら、すぐにパートナーをお願いするのに。ブランカ様の一番近くにいて、彼女ともっともっと仲良くするのに。
「昨日の魔法はみんなとてもすごかったわ! ライオネルの炎の龍もそうだし、カイル様とリュークの最後の魔法には、私だけでなくジュリアンもとっても感激していたのよ」
何ですって、ジュリアン?
そういえばブランカ様、ジュリアンと仲良く話していらしたわ。カイル様とリューク様は涼しい顔をしているものの、決勝の魔法は絶対彼女のためだし、ライオネルは火で作った龍を褒められて照れて喜んでいる。
「ところで、今日に延期された後夜祭の事だけど……」
カイル様ったら。優勝したのは当然、ブランカ様と一番最初に踊りたかったからよね? 学園長の表彰式の後、初等部、中等部、高等部の各優勝者が前に進み出る。次に準優勝者が出てきて、それぞれがパートナーと踊る。こんな感じで彼女を堂々とお披露目できるから、頑張ったんでしょう?
「俺とブランカはもう約束しているから」
何ですって!
リューク様ったら抜け駆けだわ!
カイル様とライオネルの明らかにがっかりした様子が、見ていて痛々しい。リューク様はそんな彼らに気付いていながら、涼しい顔でお茶を飲んでいる。ブランカ様に至っては全く気付いていないのか、朝食に夢中のようだ。
これだけみんなに好意を寄せられてアピールされているのに、カイル様やライオネルの気持ちだけでなく、リューク様の想いにまで気がつかない彼女は、ある意味とっても大物だと思う。
まあ、だからこそ彼女と長く一緒にいたい私にとっては好都合なのだけれど。
でも、どうしよう?
ダンスのパートナーになって、このままブランカ様とリューク様の距離がどんどん縮まるってことはないかしら? 私と過ごす時間まで、リューク様にとられちゃったら困るけど、ブランカ様には幸せになって欲しいし……
思い悩んでいたところ、ちょうどカイル様と目が合った。彼の目も一瞬きらりと光ったので、同じような事を考えていらしたのだとわかる。『同志!』そんな言葉が思わず頭に浮かんだ。
結局、私はカイル様とパートナーを組むことになった。本当はブランカ様と踊りたかったけれど、それはできない。こんなことならちゃんと、男性パートも練習しておけば良かったわ!
それにしても、ブランカ様。
カイル様に『マリエッタと頑張ってね』というような期待を込めた視線を向けたから、却って彼が可哀想。ほら、リューク様だってそんなブランカ様をムッとしたご様子で見ている。まあ悔しいから、ブランカ様には絶対に教えてあげないけれど。
ねえブランカ様。後夜祭までの間、女の子は女の子同士仲良く準備をしましょうね? 考えるとほんの少し楽しみになってきた。だってこれからの時間は、準備と称してブランカ様とずっと一緒にいられるんですもの。
「じゃあブランカ様、魔法塔での用事が済んだら、部屋でドレスの選びっこをしたり髪飾りを選んだりしましょうね?」
ブランカ様はキラキラなお顔のまま、嬉しそうに頷いて下さる。
ブランカ様にはどんなドレスが似合うかしら? ああ、でも似合い過ぎてもダメね。男子生徒が喜ぶだけだもの。
いいでしょう。私、ブランカ様を独り占めできるのよ? 女の子で良かったと思うのは、こんな時。殿方たち、せいぜい羨ましがっていらしてね?
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