42 / 50
マリエッタ編
ブランカとの1日デート~マリエッタ
しおりを挟む
「ブーラーンーカー様~!!」
私の1日は、大好きな彼女に抱きつくところから始まる。『魔封じ』をされている肩にさえ触らなければ大丈夫! 高い背の割には細い腰と白い肌、良い香りの髪に触れると幸せ~~って感じるの。
「マ、マリエッタちゃん、いい加減体当たりは腰に響くから……」
「んもう、ブランカ様ったら照れ屋さんっ!」
困った顔をしているけれど、本気で嫌がっているわけではないのよね? だってその証拠に、私の手を微笑みながらやんわり剥がそうとなさっているから。
最近ブランカ様はよく笑うようになったし、私に対して嫌味を言う事も無くなった。「私達は友達だから『様』は要らないわ」って言って下さって、私の事を『可愛い』って褒めて下さるようにもなった。
私の中ではブランカ様はブランカ『様』だから、いまさら名前でなんて呼べない。でも、キレイで優しい彼女に『可愛い』とか『大好きよ』って言われたら、それだけで私は1日中幸せで、満たされた気分で過ごせるの。
「ブランカ様、やっぱり大好き~~!」
「ぐえっ」
リューク様の留学が延びてくれたおかげで、私はまだ彼女の一番でいられる。彼女の隣で泣き、笑い、喜びを分かち合い、励まし合う事ができる。同じ景色を見て感動したり、美味しいと思うものを分け合ったり、何でもないような事で顔を見合わせたり……。
どんなにつまらない事だって、ブランカ様と一緒ならいつだって楽しい。彼女に喜んでもらいたくて、また私を見て欲しくて、癒しの『光』魔法による目の治療だって一生懸命頑張った。
だからもう、ブランカ様にメガネは要らない。彼女はその事で私にすごく感謝して下さっているから、私がベッタリくっついても最後は必ず笑って許して下さるの。
でも最近、他のみんなも『リューク様が戻って来ないうちに』って思っているらしくって、私がブランカ様から目を離した隙にすぐに彼女を連れ出してしまう。悔しいから私も! って思っているんだけどなかなか。私だってブランカ様と一緒にどこかにお出掛けしたいんだけど……。
薬学のレポートを仕上げて提出した帰り道、何かの掲示を見ながら話している男子学生達に目がいった。
「でも、休日が1日潰れるんだろ? 遠出するし美術選択生以外は意味無いんじゃないか?」
「だよな。今時郊外の景色とランチで釣れるわけねーのにな」
「ちょっと! 今の、何の話?」
私は話していた二人を捕まえて、直接聞いてみた。すると、『デッサンの大会』なるものに空きが出たから、一般の生徒を募集しているとのこと。当日は馬車で湖まで行けるし、画材は学園側が用意してくれて、何と豪華なピクニックランチまで付いているという。
「これだわ!!」
私は早速要項を確かめると、教務課まで二人分の申し込みをしに行った。一生懸命お願いすれば、ブランカ様はきっと了承して下さるはず!
「……でも、マリエッタ。私、絵心がないのだけれど」
「大丈夫です、ブランカ様。私も全くありませんから!」
「それならなぜ申し込んだの? ハッまさかランチ! 確かに、自然の中で食べると美味しいものね?」
なぜか納得されたブランカ様。
でもこれで、一日中心置き無く彼女を独占できるわ!
私は嬉しくってドキドキしながら、デッサン大会当日を待った。
スッキリと爽やかなよく晴れた日で山の風が心地よい。学園から馬車で2時間ほどの所だけれど、景色は随分違っていて鏡のような湖が周りの木々を映している。
「すごくキレイで気持ちの良いところね!」
ブランカ様は気に入って下さったようでニコニコしていらっしゃるから、お誘いした私まで嬉しくなってしまう。
全員に紙と木炭とパンのカケラが渡されたけど、何でパン? 食べながら絵を描けって事なのかしら? 早速かじろうとした所、ブランカ様に止められた。
「マリエッタちゃん、違~~う!!」
「え? だってせっかく配られたんですし……」
「違うのよ。パンは絵に深みを出したり消したりする時に使うの」
「そうなんですか? ブランカ様ったら物知り~。すご~~い!」
「お願い、マリエッタ。恥ずかしいから大声はやめて」
そうだった。結局、私達以外みんな美術選択の生徒だったから、知ってて当然なのかも。でもまあ私は、ブランカ様とのデートさえできれば満足だから、作品が仕上がろうとダメだろうと関係ないのだけれど。
暇なので適当にブラブラしてみる。
ブランカ様は真面目だからか、熱心に何かを描いていらっしゃるみたい。でも、別に授業じゃないし私達は成績にも関係ないから、さっさと諦めてしまえば良いのに……。
湖の周りを散歩するのにも飽きてきたので、戻ってブランカ様の描いている絵を覗き込んでみる。
「な、な、何じゃこりゃぁ~!!」
スゴイなんてもんじゃない。
いつものブランカ様からは、想像すら出来ない。
「もうっ。だから絵心が無いって最初に言ってたのに……」
ブランカ様ったらいつもの優秀な成績とは裏腹に、実は絵心が無いどころか全くダメダメだった。湖の周りのただの樹も、ブランカ様が描くとなぜかみんなお化けに見える。ただの線をたくさん引いただけの方が、まだきちんと木々に見えるかもしれない。
それにしても、こんなに一生懸命描いてらした割にはすごい事になっていて、それを照れて隠そうとなさるご様子がまた可愛い。ただの湖と木をここまで怖く描けるって、ある意味天才かもしれない。いつもは割と何でもできるブランカ様だけど、絵に関しては……ぶふっ!
「マリエッタったら! だからデッサンは嫌だったのに……」
「え? でも、ブランカ様も乗り気だったんじゃあ?」
「それは……」
「それは?」
「それは、マリエッタちゃんが嬉しそうにしているから、私もつい楽しみになってしまって……」
ああ、もう。ブランカ様ったら!
その言葉一つに私がどんなに感激しているかだなんて、貴女にはきっとわからない。ブランカ様のお茶目な姿を私だけが知っていて、それをどんなに嬉しく思っているかだなんて、絶対にわからないでしょう?
私はこれからもずっと、色々な表情を見せる貴女の側で過ごしたい。大好きな貴女と一緒に、毎日を楽しく笑い合って過ごしていきたい。
「合格した者からランチにするぞ~~!」
遠くで教授の声が響く……って、ええぇ?
合格しないとお昼食べられないの? 嘘でしょ?!
かくして私は自分のデッサンをさっさと仕上げ、珍しくブランカ様のを手伝った。まあ、最初のお化けよりかは少しはマシになったと思う。だって、私達の絵を見た先生は諦めたように溜め息をついたけれど、ちゃんとランチを食べても良いって言って下さったもの!
湖のほとりでブランカ様とのゆっくりした時間。
こんな時間がこれからも、何度か持てれば良いと思う。絵は散々だったけれど、お昼はなかなか美味しかったし。
ブランカ様、来年もまた参加しましょうね!
……ぶふっ!
私の1日は、大好きな彼女に抱きつくところから始まる。『魔封じ』をされている肩にさえ触らなければ大丈夫! 高い背の割には細い腰と白い肌、良い香りの髪に触れると幸せ~~って感じるの。
「マ、マリエッタちゃん、いい加減体当たりは腰に響くから……」
「んもう、ブランカ様ったら照れ屋さんっ!」
困った顔をしているけれど、本気で嫌がっているわけではないのよね? だってその証拠に、私の手を微笑みながらやんわり剥がそうとなさっているから。
最近ブランカ様はよく笑うようになったし、私に対して嫌味を言う事も無くなった。「私達は友達だから『様』は要らないわ」って言って下さって、私の事を『可愛い』って褒めて下さるようにもなった。
私の中ではブランカ様はブランカ『様』だから、いまさら名前でなんて呼べない。でも、キレイで優しい彼女に『可愛い』とか『大好きよ』って言われたら、それだけで私は1日中幸せで、満たされた気分で過ごせるの。
「ブランカ様、やっぱり大好き~~!」
「ぐえっ」
リューク様の留学が延びてくれたおかげで、私はまだ彼女の一番でいられる。彼女の隣で泣き、笑い、喜びを分かち合い、励まし合う事ができる。同じ景色を見て感動したり、美味しいと思うものを分け合ったり、何でもないような事で顔を見合わせたり……。
どんなにつまらない事だって、ブランカ様と一緒ならいつだって楽しい。彼女に喜んでもらいたくて、また私を見て欲しくて、癒しの『光』魔法による目の治療だって一生懸命頑張った。
だからもう、ブランカ様にメガネは要らない。彼女はその事で私にすごく感謝して下さっているから、私がベッタリくっついても最後は必ず笑って許して下さるの。
でも最近、他のみんなも『リューク様が戻って来ないうちに』って思っているらしくって、私がブランカ様から目を離した隙にすぐに彼女を連れ出してしまう。悔しいから私も! って思っているんだけどなかなか。私だってブランカ様と一緒にどこかにお出掛けしたいんだけど……。
薬学のレポートを仕上げて提出した帰り道、何かの掲示を見ながら話している男子学生達に目がいった。
「でも、休日が1日潰れるんだろ? 遠出するし美術選択生以外は意味無いんじゃないか?」
「だよな。今時郊外の景色とランチで釣れるわけねーのにな」
「ちょっと! 今の、何の話?」
私は話していた二人を捕まえて、直接聞いてみた。すると、『デッサンの大会』なるものに空きが出たから、一般の生徒を募集しているとのこと。当日は馬車で湖まで行けるし、画材は学園側が用意してくれて、何と豪華なピクニックランチまで付いているという。
「これだわ!!」
私は早速要項を確かめると、教務課まで二人分の申し込みをしに行った。一生懸命お願いすれば、ブランカ様はきっと了承して下さるはず!
「……でも、マリエッタ。私、絵心がないのだけれど」
「大丈夫です、ブランカ様。私も全くありませんから!」
「それならなぜ申し込んだの? ハッまさかランチ! 確かに、自然の中で食べると美味しいものね?」
なぜか納得されたブランカ様。
でもこれで、一日中心置き無く彼女を独占できるわ!
私は嬉しくってドキドキしながら、デッサン大会当日を待った。
スッキリと爽やかなよく晴れた日で山の風が心地よい。学園から馬車で2時間ほどの所だけれど、景色は随分違っていて鏡のような湖が周りの木々を映している。
「すごくキレイで気持ちの良いところね!」
ブランカ様は気に入って下さったようでニコニコしていらっしゃるから、お誘いした私まで嬉しくなってしまう。
全員に紙と木炭とパンのカケラが渡されたけど、何でパン? 食べながら絵を描けって事なのかしら? 早速かじろうとした所、ブランカ様に止められた。
「マリエッタちゃん、違~~う!!」
「え? だってせっかく配られたんですし……」
「違うのよ。パンは絵に深みを出したり消したりする時に使うの」
「そうなんですか? ブランカ様ったら物知り~。すご~~い!」
「お願い、マリエッタ。恥ずかしいから大声はやめて」
そうだった。結局、私達以外みんな美術選択の生徒だったから、知ってて当然なのかも。でもまあ私は、ブランカ様とのデートさえできれば満足だから、作品が仕上がろうとダメだろうと関係ないのだけれど。
暇なので適当にブラブラしてみる。
ブランカ様は真面目だからか、熱心に何かを描いていらっしゃるみたい。でも、別に授業じゃないし私達は成績にも関係ないから、さっさと諦めてしまえば良いのに……。
湖の周りを散歩するのにも飽きてきたので、戻ってブランカ様の描いている絵を覗き込んでみる。
「な、な、何じゃこりゃぁ~!!」
スゴイなんてもんじゃない。
いつものブランカ様からは、想像すら出来ない。
「もうっ。だから絵心が無いって最初に言ってたのに……」
ブランカ様ったらいつもの優秀な成績とは裏腹に、実は絵心が無いどころか全くダメダメだった。湖の周りのただの樹も、ブランカ様が描くとなぜかみんなお化けに見える。ただの線をたくさん引いただけの方が、まだきちんと木々に見えるかもしれない。
それにしても、こんなに一生懸命描いてらした割にはすごい事になっていて、それを照れて隠そうとなさるご様子がまた可愛い。ただの湖と木をここまで怖く描けるって、ある意味天才かもしれない。いつもは割と何でもできるブランカ様だけど、絵に関しては……ぶふっ!
「マリエッタったら! だからデッサンは嫌だったのに……」
「え? でも、ブランカ様も乗り気だったんじゃあ?」
「それは……」
「それは?」
「それは、マリエッタちゃんが嬉しそうにしているから、私もつい楽しみになってしまって……」
ああ、もう。ブランカ様ったら!
その言葉一つに私がどんなに感激しているかだなんて、貴女にはきっとわからない。ブランカ様のお茶目な姿を私だけが知っていて、それをどんなに嬉しく思っているかだなんて、絶対にわからないでしょう?
私はこれからもずっと、色々な表情を見せる貴女の側で過ごしたい。大好きな貴女と一緒に、毎日を楽しく笑い合って過ごしていきたい。
「合格した者からランチにするぞ~~!」
遠くで教授の声が響く……って、ええぇ?
合格しないとお昼食べられないの? 嘘でしょ?!
かくして私は自分のデッサンをさっさと仕上げ、珍しくブランカ様のを手伝った。まあ、最初のお化けよりかは少しはマシになったと思う。だって、私達の絵を見た先生は諦めたように溜め息をついたけれど、ちゃんとランチを食べても良いって言って下さったもの!
湖のほとりでブランカ様とのゆっくりした時間。
こんな時間がこれからも、何度か持てれば良いと思う。絵は散々だったけれど、お昼はなかなか美味しかったし。
ブランカ様、来年もまた参加しましょうね!
……ぶふっ!
0
『綺麗になるから見てなさいっ!』(*´꒳`*)アルファポリス発行レジーナブックス。書店、通販にて好評発売中です。
お気に入りに追加
1,432
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
本気の悪役令嬢!
きゃる
恋愛
自分に何ができるだろう?
そう考えたブランカは、旅に出ます。国境沿いのブランジュの村からまずは国外へ。「海が見たい」と言ったから。
優しくイケメンの旦那様に溺愛されてイチャイチャの旅になるはずが……?
いつもありがとうございますm(__)m
本編再開させます。更新は不定期ですが、よろしくお願いいたします。
書籍に該当しない部分と裏話、その他の攻略者の話、リューク視点は
『本気の悪役令嬢 another!』へ。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる