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ユーリス編
少年の秘密
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白銀の月の24日、つまり12月24日の朝から、カルディアーノ学園名物『競技会』が行われる。通達を『風』の通信魔法で受け取って以来、生徒たちは皆どことなくそわそわしている。
なぜかというと競技会の結果によって、卒業予定の者は希望の職種に推薦されるし、在校生からは次年度の監督生が選ばれる。監督生になれば次の競技会のシード権がもらえる他、校内に『監督室』といわれる専用の部屋といろんな特権まで与えられる。要するに、優勝か準優勝、すくなくとも3位までに入っておけば、翌年はウハウハだということ!
競技種目は初等部は剣術と馬術で、中等部と高等部はそれぞれ魔法、剣術、馬術になっている。一種目から参加できるし、複数出場して総合優勝を目指しても良い。初等部、中等部、高等部はそれぞれの中でしか競わないから、危険もそんなに無いはずだ。
ちなみに中等部の昨年の優勝はリュークで、準優勝はカイル様だったそうだ。昨年の雪辱を晴らそうと、三年生の先輩方が張り切っているとも聞いた。
競技会は携帯ゲーム『プリマリ』の中にもイベントとしてちゃんとあって、優勝するのは大抵美少女ヒロイン、マリエッタの好感度が一番高い攻略者! こっちの世界のマリエッタちゃんはどんなに脅してもせっついても好きな人を言ってくれないので、未だに誰を攻略したいのかがわからない。でも、このイベントに勝ち残る人物が、すなわち現時点でマリエッタが一番好意を寄せている人物。だから、それさえわかれば、私はその人とマリエッタの仲を張り切って邪魔すれば良いだけ!
イベント効果なのか、この前もカイル様とリュークが魔法塔でどちらがマリエッタを射止めるかでにらみ合っていた。だから私は二人にちゃんと「競技会を頑張れば大好きな彼女から好きだと言ってもらえるはず」と、教えてあげたの。リュークは赤くなってたし、カイル様は困ったような考え込むような顔をしていたけど……
気前良く攻略法を伝授しちゃったかなって思ったけれど、マリエッタにやる気がないのなら、攻略者の方からグイグイ迫ってもらわないとね? マリエッタと攻略者とのいちゃラブ、見てみたいし。
なのに、なぜかマリエッタも競技会の『魔法』部門に参加するって! ヒロインなのに、攻略者の邪魔しちゃダメじゃない! こうなったら、参加しない私がマリエッタと攻略者をくっつける為に尽力するしか無いわね?
ああ、そうそう。競技会は特別なイベントなので、イベント用特別アイテムで好感度を上げることも可能だ。マリエッタが攻略者達に贈る競技会用アイテムは、確か『特製弁当』と『ときめきチョーカー』。
携帯の画面上ではガチャに当たると出てくる。でも、どんなに探してもこの世界にガチャはないらしく、マリエッタのために私が自分で用意するしかない。
私はそのために、実家との唯一の通信手段である『風』の魔道具を使って、今も通話をしていたところ。
自分が転生したとわかってから、私は日記のようなものをつけている。それが『ぶらんかメモ』。もう何冊目かに及ぶそれは、『プリマリ』に関して思い出した事柄を好きなように書き連ねている。私はその中に描いていた『ときめきチョーカー』のデザインを見ながら、我が家の執事に事細かく確認の指示を出していた。
その時、ユーリスに出会った。
彼も初等部の競技会に参加するけれど、剣術も馬術も自信がないとのこと。だけど彼はマリエッタちゃんの事を可愛いと思っていて、彼女のために勉強していると自分で言っていたの。
マリエッタが好きだってはっきり言ったのは、彼が初めてかも! 彼の恋を応援してあげたい!
馬術だったら得意なあの人に頼めば何とかしてくれるかも。聞いてみるだけならタダよね? 私はそう思って、明日の昼休みにまたユーリスとここで落ち合うことにした。
マリエッタを奪い合う攻略者達!
何て先が楽しみな展開なのっっ!!
「ねえ、ブランカ」
「なあに?」
「ブランカはどうして、ここまで僕に優しくしてくれるの?」
まさか、自分がマリエッタと攻略者とのいちゃラブを間近で見て、ウットリしたいからだなんて言えない。安定の『国外追放&商人のおかみさんルート』を狙っているからだとも……
「あらやだ、あなた私が親切心から申し出たとでも思っているの? そんなわけないじゃない。あのね、私、誰であっても無様な姿を見るのが嫌いなの。だから、あなたが馬術が苦手だと聞いて我慢ができなかっただけ。だからもちろん、お礼なんて言わなくていいのよ?」
それに、彼がユーリスの指導をしてくれるとは限らない。
マリエッタに夢中な攻略者達は、自分で良い成績を残そうとするだろう。ライバルに素直に手を貸してくれるとは思えない。ゲームの中のブランカなら『色仕掛け』という方法もあったのかもしれないけれど、残念ながら今の私の色気は皆無に等しい。
「ありがとう、ブランカ。僕が気を遣わないように言ってくれてるんだね? 何にせよ、明日また君にここで会うのが楽しみだ。でも僕の為に、無理はしないでね?」
……う。さすがは『プリマリ』攻略者。
地味だと思っていたユーリス。
ゲームでまだ登場していない初等部の彼は笑顔がとても魅力的。しかも優しい。これならマリエッタも彼にクラッときてしまうはず。カイルやリュークがだめでも、将来学者になって国を支えるユーリスなら、彼女の未来は安泰ね!
穏やかなだけだと思っていたユーリス。
でも彼はマリエッタのことが大好き!
上手くいきそうな予感に、私は頬が緩んで笑みが溢れるのをこらえきれなかった。
なぜかというと競技会の結果によって、卒業予定の者は希望の職種に推薦されるし、在校生からは次年度の監督生が選ばれる。監督生になれば次の競技会のシード権がもらえる他、校内に『監督室』といわれる専用の部屋といろんな特権まで与えられる。要するに、優勝か準優勝、すくなくとも3位までに入っておけば、翌年はウハウハだということ!
競技種目は初等部は剣術と馬術で、中等部と高等部はそれぞれ魔法、剣術、馬術になっている。一種目から参加できるし、複数出場して総合優勝を目指しても良い。初等部、中等部、高等部はそれぞれの中でしか競わないから、危険もそんなに無いはずだ。
ちなみに中等部の昨年の優勝はリュークで、準優勝はカイル様だったそうだ。昨年の雪辱を晴らそうと、三年生の先輩方が張り切っているとも聞いた。
競技会は携帯ゲーム『プリマリ』の中にもイベントとしてちゃんとあって、優勝するのは大抵美少女ヒロイン、マリエッタの好感度が一番高い攻略者! こっちの世界のマリエッタちゃんはどんなに脅してもせっついても好きな人を言ってくれないので、未だに誰を攻略したいのかがわからない。でも、このイベントに勝ち残る人物が、すなわち現時点でマリエッタが一番好意を寄せている人物。だから、それさえわかれば、私はその人とマリエッタの仲を張り切って邪魔すれば良いだけ!
イベント効果なのか、この前もカイル様とリュークが魔法塔でどちらがマリエッタを射止めるかでにらみ合っていた。だから私は二人にちゃんと「競技会を頑張れば大好きな彼女から好きだと言ってもらえるはず」と、教えてあげたの。リュークは赤くなってたし、カイル様は困ったような考え込むような顔をしていたけど……
気前良く攻略法を伝授しちゃったかなって思ったけれど、マリエッタにやる気がないのなら、攻略者の方からグイグイ迫ってもらわないとね? マリエッタと攻略者とのいちゃラブ、見てみたいし。
なのに、なぜかマリエッタも競技会の『魔法』部門に参加するって! ヒロインなのに、攻略者の邪魔しちゃダメじゃない! こうなったら、参加しない私がマリエッタと攻略者をくっつける為に尽力するしか無いわね?
ああ、そうそう。競技会は特別なイベントなので、イベント用特別アイテムで好感度を上げることも可能だ。マリエッタが攻略者達に贈る競技会用アイテムは、確か『特製弁当』と『ときめきチョーカー』。
携帯の画面上ではガチャに当たると出てくる。でも、どんなに探してもこの世界にガチャはないらしく、マリエッタのために私が自分で用意するしかない。
私はそのために、実家との唯一の通信手段である『風』の魔道具を使って、今も通話をしていたところ。
自分が転生したとわかってから、私は日記のようなものをつけている。それが『ぶらんかメモ』。もう何冊目かに及ぶそれは、『プリマリ』に関して思い出した事柄を好きなように書き連ねている。私はその中に描いていた『ときめきチョーカー』のデザインを見ながら、我が家の執事に事細かく確認の指示を出していた。
その時、ユーリスに出会った。
彼も初等部の競技会に参加するけれど、剣術も馬術も自信がないとのこと。だけど彼はマリエッタちゃんの事を可愛いと思っていて、彼女のために勉強していると自分で言っていたの。
マリエッタが好きだってはっきり言ったのは、彼が初めてかも! 彼の恋を応援してあげたい!
馬術だったら得意なあの人に頼めば何とかしてくれるかも。聞いてみるだけならタダよね? 私はそう思って、明日の昼休みにまたユーリスとここで落ち合うことにした。
マリエッタを奪い合う攻略者達!
何て先が楽しみな展開なのっっ!!
「ねえ、ブランカ」
「なあに?」
「ブランカはどうして、ここまで僕に優しくしてくれるの?」
まさか、自分がマリエッタと攻略者とのいちゃラブを間近で見て、ウットリしたいからだなんて言えない。安定の『国外追放&商人のおかみさんルート』を狙っているからだとも……
「あらやだ、あなた私が親切心から申し出たとでも思っているの? そんなわけないじゃない。あのね、私、誰であっても無様な姿を見るのが嫌いなの。だから、あなたが馬術が苦手だと聞いて我慢ができなかっただけ。だからもちろん、お礼なんて言わなくていいのよ?」
それに、彼がユーリスの指導をしてくれるとは限らない。
マリエッタに夢中な攻略者達は、自分で良い成績を残そうとするだろう。ライバルに素直に手を貸してくれるとは思えない。ゲームの中のブランカなら『色仕掛け』という方法もあったのかもしれないけれど、残念ながら今の私の色気は皆無に等しい。
「ありがとう、ブランカ。僕が気を遣わないように言ってくれてるんだね? 何にせよ、明日また君にここで会うのが楽しみだ。でも僕の為に、無理はしないでね?」
……う。さすがは『プリマリ』攻略者。
地味だと思っていたユーリス。
ゲームでまだ登場していない初等部の彼は笑顔がとても魅力的。しかも優しい。これならマリエッタも彼にクラッときてしまうはず。カイルやリュークがだめでも、将来学者になって国を支えるユーリスなら、彼女の未来は安泰ね!
穏やかなだけだと思っていたユーリス。
でも彼はマリエッタのことが大好き!
上手くいきそうな予感に、私は頬が緩んで笑みが溢れるのをこらえきれなかった。
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