本気の悪役令嬢 another!

きゃる

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ライオネル編

ワイルドなお兄さんは好きですか?

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   私はブランカ、悪役令嬢!
   12歳で編入試験に合格し、秋からいよいよ本格的に学園での生活が始まった。

   編入した中等部のクラスは、何とマリエッタちゃんと一緒の『特進魔法科』! しかも、彼女の攻略者である同い年のライオネルまでいるという特典付き!
   でも、ゲームでは魔法を使えず『普通科』だった悪役令嬢ブランカ。この世界でも小さな頃は魔力だけで魔法が使えず、そのために小児麻痺にまでなってしまった。
 そんな私が、なんで魔法科なのかというと……

   あったの。魔法!

   まあ、マリエッタちゃんやイケメン攻略者達みたいにドバーッと派手なものでは無いけれど。しかも、普通は【地・水・火・風・光・闇】の6種類のほぼどれかの属性に当てはまるはずなのに、私のは無属性で使える魔法もたった一つだけ。

魅了チャーム

   ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさい。
   魅力が無いくせに本当スミマセン。
   ヒロインでも無いのに魅了って何? しかもどうせなら、転生前のOL時代に合コン限定で欲しかった。なのに、なぜ今ここで?

   まあ、ヒロインに意地悪するため手下達に言う事きかせたり、パシリにされそうになった時に逆にその子に買いに行かせたり、宿題忘れた時に先生にチョロっと……なんて考えてもみたけれど、残念ながら『使用禁止』。

   だからてっきり普通科に編入するのだと思っていたら、まさかの『魔法科』。まあ、愛らしいマリエッタちゃんや彼女に寄ってくる攻略者達を、結構良いポジションで見られる予定なのは良いんだけどね? 
   なのに、なぜかヒロインであるマリエッタになつかれまくっている私。



「ブーラーンーカーさまぁ!!」

   マリエッタちゃんが今日も元気に抱きついてくる。離れていた間に、なぜかずいぶんたくましくなってしまった彼女。ハキハキ喋ってズバっと自分の意見を言うようになってしまっていたから、学園で最初に会った時には驚いた。
   引っ込み思案でおとなしかった小さな頃の面影が、今ではどこにも見られない。一体誰の真似をしたんだか……

「おい、いくら何でもいきなり抱きつくのはビックリするぞ。負担がかかるし止めてやれ」

「もう、ライオネルったら。じゃましないでよね!」


   おお?!
   二人は今日も言葉を交わしながら、じゃれあっているわ!   同い年だし同じクラスだし、雰囲気も何だかとっても良い感じ。

   ふふふ、ブランカ姉さんはなんでもお見通しよ?
   ライオネルは本当は、

「抱きつくならブランカじゃなく俺にしとけよ」

って言いたいんでしょう?    そうでしょうそうでしょう?
   大丈夫よ!   
   いくら彼女が可愛くても、ガールズラブはあり得ないから。私の『国外追放』もかかっている事だし、『プリマリ』のシナリオ通りにしなくちゃいけないから、マリエッタちゃんに手は出しません!

「邪魔って、お前の方が邪魔してるだろう? 身動きが取れないと、次の教室までの移動が間に合わないぞ」

 そうだった。
   急がなければ薬学の授業に間に合わなくなってしまう。それに『悪役令嬢』として頑張ると決めているから、いくら好きでもマリエッタと仲良くなっている場合では無かった。

「そうね、マリエッタ。あなた邪魔よ! 馴れ馴れしくて非常に不愉快だわ」

 キツイ言い方してごめんよ~~。いじめたくっていじめているわけではないの。でも、こうでも言わないとマリエッタったら離れてくれないでしょう?   攻略者達からかばってももらえないし……。これは後であなたが輝くためなの。偉そうにしているけれど、本当はとても大好きよ!

「えぇ~~。ブランカ様ったら、照れ屋さん!   女同士だし、抱き着いたぐらいで恥ずかしがることなんてないのに」

 えぇっと、あれれ? 
   何で嫌味が通じないの?
 以前のマリエッタだったら、こんな場面ではうつむいて泣きそうになっているはずなのに……
 まあ、いいわ。
   どちらにしろグズグズしている時間はないし。
 マリエッタの腕を振り払うように身体をねじり、本を持ってカッコよく歩き出そうとした瞬間……こけた。



 …と思ったら、すぐ近くにいたライオネルが咄嗟に腕を出して身体を支えてくれていた。
 12歳で同い年だというのに、彼は日頃から鍛えているせいかひどくたくましい。腕一本で軽々と、転びそうになった私の身体を持ち上げてくれている。
   そういえば、上半身はだけた格好で時々素振りをしているから、わざわざ見に来た女生徒達がきゃあきゃあ騒いでいるんだった。

 私のひねり方が悪かったのか、それとも疲れが出て足がまた悪くなってしまったのか。マリエッタちゃんと攻略対象との仲を取り持つどころか、自分が女子に人気のライオネルの手をわずらわせてしまった。

「ごめんなさい。私ったら、焦ってしまってみっともないわね?   助けてくれてありがとう。私は後からゆっくり移動するから、二人は先に次の教室に向かって」

 せっかくだから、ライオネルとマリエッタが二人きりで行動する時間を増やしてあげないと。
 悪役令嬢のブランカが邪魔をして二人の仲を裂こうとするのは、もう少しお互いの気持ちが盛り上がってからだったから。
 そう言ってライオネルの胸を押し、彼の腕から逃れて床に足を着いた瞬間――

「痛っっ!」

 王都に戻って以来ずっと忙しくて疲れていたこともあって、やっぱり左足首にガタがきていたようだ。何もない所でつまずいて転んでしまいそうになったのも、きっとそのせい。可憐なマリエッタちゃんに悪態を吐いてしまったから、周りからはバチが当たってくじいたように見えるかもしれないけどね?

 仕方がない。
   ここには執事もいないし、医務室の場所を聞いて足を引き摺りながらでも、ゆっくり向かうことにしますか。

「大丈夫か?   ブランカ、無理をし過ぎたんじゃないのか?   マリエッタ、先に教室に行って俺とブランカは医務室に向かうから遅刻すると伝えてくれ」

「わかったわ。ブランカ様、お大事にね?   ライオネル、ブランカ様に何かあったら承知しないから!」

「ああ」


 
 いやいやいや、違うでしょう。そこは、

「可愛いマリエッタを邪険にするからだ。ざまあみろ」とか「自業自得だ」

   とか言って、私に冷たく接するところでしょう?   しかもマリエッタってば、私ではなくライオネルに対して警告するってどういうこと?   
   そこは、潤んだ瞳で心配そうにライオネルを見上げて「ライオネル様、彼女には気を付けて」とか「私はあなたの方が心配ですわ」とか言って引き止めなくちゃ。んもう、ここはきちんと悪役令嬢として、正しく?   意地悪しておかなくちゃ。

「何を言っているのかしら?   私はもちろん一人でも大丈夫よ。あなた達、本当に邪魔だわ!」

 なのに――



「無理すんなって……よっと」

 そう言うと、掛け声と共にライオネルが私の身体を持ち上げた。それを見たマリエッタは、にっこり笑うと駆け出して行く。
 
 こ、こ、これはいわゆる『お姫様抱っこ!?』
 彼は成長著しく、鍛えているしクラスの中でも一番背が高いから、女性を横抱きにしても様になる。それなりに人気もあるから、お姫様抱っこをされてみたいと望む女生徒は同いっぱいいるはずだ。美少女のマリエッタならまだしも、それが何で、悪役令嬢の私なの?

「ライオネル……降ろして!!」

「嫌だね。俺がお前を落っことすと思っているんなら大間違いだ。トレーニングにもなるし、さっさと医務室に向かうぞ!   ああ、俺の首に手を回してくれないと本当に落っことしてしまうかもな」


 そう言ってニカっと笑うライオネルは、スチルのようにカッコ良かった。
 
 ワイルドなお兄さんは好きですか? 
   私は好きかもしんない。




※一花八華様の豪華スチル付き。
無課金で良いそうです。ありがたや~~(≧∇≦)
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