【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

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ヒロインの最期3(ローラ視点)

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(※ローラ視点です。)

「全く、公爵は本当に手加減の知らない人ね・・・。」

息をするのがやっとの中、ようやく出てきた言葉だった。

もうこれ以上は身体がもたない。それは、公爵にやられたからではない。

ただ単に、心臓を失った身体が、ついに終わりを迎えようとしているのだ。

悪魔に心臓を捧げたその日から、私に残された時間は限られていた。

だけど、あともう少し身体が持ち応えてくれたなら、復讐を遂げられただろうに。


朧げな意識の中、ローラはユリアを見上げた。


不安そうな、心配そうな表情を浮かべるユリアを見ていると、自然と前世での姉であるレイラの姿が重なった。

今でこそ大嫌いだが、当時は慕っていた姉の姿。

しかしそれも数秒の事で、目を凝らせば結局目の前にいるのはレイラではなく、何の思い入れもないユリアの姿だ。


魂が同じなら、生まれ変わっていたとしても同じようなものだと思っていた。

でも、目の前にいるユリアは、レイラとは全く違う。


見た目もそうだが、ふとした瞬間に見せる仕草や性格だって、細かく見ていけばいくほど、ユリアとレイラでは全然違う。

レイラは絵を描いたりなんかしなかったし、私が何をしても笑って後押ししてくれるような人だった。

それもそうか、前世とは違う環境で育ってきたのだろうし。

そんな女を。

魂だけが同じで、後はまるでちがうこの女に復讐できたとして、私は本当に報われたのだろうか。

力を振り絞って顔を横に向ける。

私の視線の先には、ユリアのように探して見つけた、前世ではアレクだった男が立っている。

ユリアにだけじゃない。

前世でアレクだったテオと結ばれて、本当に復讐したのだと思えるの?

私は満たされるの?


本当は薄々気付いていたけど、もう戻れなかった。

悪魔に心臓を捧げてしまった後だったから。



私が本当に望んでいることは何だったっけ。


涙が何粒も頬を伝って零れ落ちた。

おかしいな、まだ私に悲しいなんて感情が残っているなんて。


私の涙を小さな手が拭った。

視線を移すと、そこにはエリザがいた。

エリザ。もし出会った頃の私がもう少し貴女に心を開いていたなら、私たちは友達になれたのだろうか。


私に何度も忠告してくれたのに。


「・・・エリザ。ごめんなさい・・・。」


エリザは、私にそっと手をかざした。

暖かな光に包まれている気分だった。

春の暖かな日差しのような光は、眠ってしまいそうになる。


「もういいのよ、ローレライ。何もかも忘れて、ゆっくりと眠っても。」


その言葉通り、私は静かに目を閉じた。




「ローラ。起きて」

 なんだか、懐かしい声が聞こえる。
 
自分に向かって掛けられたその声に導かれるように、ゆっくりと目を開けた。

「え・・・?お姉様・・・?」


そこには、かつて私が慕っていた姉のレイラが立っていた。

「どうしてここにお姉様が……。」


狼狽える私の頭に、優しく手が乗せられた。

大きくて暖かい手は、大切な物を扱うように私の頭を撫でる。



「ローラは相変わらず朝が弱いな。」


振り返ると、私の頭を撫でていたのは、大好きだった王子様のアレクだった。


「アレク!?な、なんで・・・?」


どうして2人がここに。もう二度と会えるはずのない人達なのに。

これは・・・・夢・・・?


暖かな光が差し込む昼下がりの中、あの頃の3人がそこにいた。



「なんでって、俺はローラの夫になる男だからな。」

アレクが私に微笑んだ。


「そうよ、今日は貴女の結婚式でしょう?」


「…………えっ…………。」


呆気に取られている私の手をアレクが握った。


驚きながらアレクの方を見ると、アレクの着ている服が、いつ着替えたのか婚礼の衣装へと変わっていた。


私も、いつの間にかウエディングドレスを来ていた。

真っ白で清廉の純白のドレスが風にはためいた。


「本当におめでとう、ローラ。あなたの幸せを祈っているわ。 」


レイラがお祝いの言葉を私に向ける。

さっきまで3人だけの空間だった周囲には、今は人がたくさん集まっていて、変わるがわる私とアレクに祝福をしてくれた。


皆が私たちを笑顔で祝っている。



ああ、良かった

わたしやっと、安心していいのね。






(※ローラ視点おしまい。)

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