57 / 62
悪魔は平気でうそをつく
しおりを挟む
「ここは、美優の精神世界だよ。」
身体が動かない。声も出せない。
何も感じない。
私は今、真っ暗な場所に一人きりだった。
そんな暗闇の中で、声だけが聞こえてくる。
「魂も心も失ったんだから、当然だよね。」
悪魔の声だ。
悪魔の言葉に疑問が浮かぶ。
魂も?差し出したのは心だけじゃなかったの?
「ああ、魂は前世の君とした契約の代償なんだ。」
声に出さずとも悪魔とは会話が可能なようで、私が思ったことに悪魔は答えてくれた。
そういえば、前世で確かにそんな契約をしたんだった。
後悔さえできない私は、他人事のように昔の記憶をなぞった。
「そんなことよりさ、」
心を手に入れたはずの悪魔が、相変わらず冷めた口調で話を続ける。
「その後の世界は消すという約束だったから消したけど、
実は、残念ながらそれだけじゃローラは救われないんだよね。」
・・・どういうこと?
「だって元のお話に戻したら、この世界が消えちゃうだろう?
そんなの、僕に何の得もないじゃないか。
この世界を誕生させたことで、せっかく出世できたのに。
だから僕は、時間を巻き戻してあげたんだ。君がレイラに転生した直後にね。」
そ、そんな・・・・。
「でも、君の願いは、その後の世界を消す事だけだったよね?
消す方法は特に指定してなかったしね。あはは!」
悪魔が笑う。それはそれは、楽しそうに。
わたしは、また間違えてしまったの?
なぜまた悪魔を信用してしまったの?
ああ、でも、それを嘆くことすらできない。
私はもう、魂も心も悪魔にとらわれてしまっているから。
「美優。迎えに来たよ。」
全てを諦めた時、誰かの声が耳に届いた。
これは、幻?私がそうであって欲しいと願うあまり、幻覚を生み出しているの?
私の目の前には、レインが立っていた。
「さあ、おいで。美優。僕と一緒に現実世界へ帰ろう。」
レインが私に近づいて、私の手を優しく握った。
その瞬間、先ほどまで姿を見せなかった悪魔が突然現れ、私とレインを引きはがした。
「・・・どういうこと?人間がここに入って来れるわけないんだけど。」
悪魔が訝しげにレインをじろじろと見つめてから、ふいに納得の表情へ変わった。
「なあんだ、よく見たら君、堕天使のサリエルじゃないか。
噂で聞いたよ。僕に人間の魂をみすみす奪われてしまったから、怒った神から天界を追い出されたって。」
悪魔の言葉に耳を疑った。
堕天使・・・?今レインの事を堕天使と呼んだの?
レインは、あの世界の人間じゃないの?
「ていうかさ、今サリエルがしてることって、完全に異常だよね?
この人間は、2度も悪魔の誘いに堕ちてしまったんだよ。
この人間が原因で堕天使になったのに、そんな人間に何度も情をかけるなんて有り得ない。」
悪魔はレインを揺するかのように顔を覗き込んだ。
「なに?もしかして、この人間に惚れているの?」
それまで一切悪魔の方に見向きもせず、視線を落としていたレインが顔を上げて悪魔を見た。
「そうだ。僕は、美優が好きだ。だからなにがあっても彼女だけは守る。」
その言葉は、私にとって初めて誰かから向けられた好意だった。
身体が動かない。声も出せない。
何も感じない。
私は今、真っ暗な場所に一人きりだった。
そんな暗闇の中で、声だけが聞こえてくる。
「魂も心も失ったんだから、当然だよね。」
悪魔の声だ。
悪魔の言葉に疑問が浮かぶ。
魂も?差し出したのは心だけじゃなかったの?
「ああ、魂は前世の君とした契約の代償なんだ。」
声に出さずとも悪魔とは会話が可能なようで、私が思ったことに悪魔は答えてくれた。
そういえば、前世で確かにそんな契約をしたんだった。
後悔さえできない私は、他人事のように昔の記憶をなぞった。
「そんなことよりさ、」
心を手に入れたはずの悪魔が、相変わらず冷めた口調で話を続ける。
「その後の世界は消すという約束だったから消したけど、
実は、残念ながらそれだけじゃローラは救われないんだよね。」
・・・どういうこと?
「だって元のお話に戻したら、この世界が消えちゃうだろう?
そんなの、僕に何の得もないじゃないか。
この世界を誕生させたことで、せっかく出世できたのに。
だから僕は、時間を巻き戻してあげたんだ。君がレイラに転生した直後にね。」
そ、そんな・・・・。
「でも、君の願いは、その後の世界を消す事だけだったよね?
消す方法は特に指定してなかったしね。あはは!」
悪魔が笑う。それはそれは、楽しそうに。
わたしは、また間違えてしまったの?
なぜまた悪魔を信用してしまったの?
ああ、でも、それを嘆くことすらできない。
私はもう、魂も心も悪魔にとらわれてしまっているから。
「美優。迎えに来たよ。」
全てを諦めた時、誰かの声が耳に届いた。
これは、幻?私がそうであって欲しいと願うあまり、幻覚を生み出しているの?
私の目の前には、レインが立っていた。
「さあ、おいで。美優。僕と一緒に現実世界へ帰ろう。」
レインが私に近づいて、私の手を優しく握った。
その瞬間、先ほどまで姿を見せなかった悪魔が突然現れ、私とレインを引きはがした。
「・・・どういうこと?人間がここに入って来れるわけないんだけど。」
悪魔が訝しげにレインをじろじろと見つめてから、ふいに納得の表情へ変わった。
「なあんだ、よく見たら君、堕天使のサリエルじゃないか。
噂で聞いたよ。僕に人間の魂をみすみす奪われてしまったから、怒った神から天界を追い出されたって。」
悪魔の言葉に耳を疑った。
堕天使・・・?今レインの事を堕天使と呼んだの?
レインは、あの世界の人間じゃないの?
「ていうかさ、今サリエルがしてることって、完全に異常だよね?
この人間は、2度も悪魔の誘いに堕ちてしまったんだよ。
この人間が原因で堕天使になったのに、そんな人間に何度も情をかけるなんて有り得ない。」
悪魔はレインを揺するかのように顔を覗き込んだ。
「なに?もしかして、この人間に惚れているの?」
それまで一切悪魔の方に見向きもせず、視線を落としていたレインが顔を上げて悪魔を見た。
「そうだ。僕は、美優が好きだ。だからなにがあっても彼女だけは守る。」
その言葉は、私にとって初めて誰かから向けられた好意だった。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!
O.T.I
ファンタジー
★本編完結しました!
★150万字超の大長編!
何らかの理由により死んでしまったらしい【俺】は、不思議な世界で出会った女神に請われ、生前やり込んでいたゲームに酷似した世界へと転生することになった。
転生先はゲームで使っていたキャラに似た人物との事だったが、しかしそれは【俺】が思い浮かべていた人物ではなく……
結果として転生・転性してしまった彼…改め彼女は、人気旅芸人一座の歌姫、兼冒険者として新たな人生を歩み始めた。
しかし、その暮らしは平穏ばかりではなく……
彼女は自身が転生する原因となった事件をきっかけに、やがて世界中を巻き込む大きな事件に関わることになる。
これは彼女が多くの仲間たちと出会い、共に力を合わせて事件を解決し……やがて英雄に至るまでの物語。
王道展開の異世界TS転生ファンタジー長編!ここに開幕!!
※TS(性転換)転生ものです。精神的なBL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい
海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。
その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。
赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。
だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。
私のHPは限界です!!
なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。
しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ!
でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!!
そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ
だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような?
♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います!
この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)
優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11)
<内容紹介>
ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。
しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。
このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう!
「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。
しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。
意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。
だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。
さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。
しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。
そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。
一年以上かかりましたがようやく完結しました。
また番外編を書きたいと思ってます。
カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる