【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

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早速レインとデートです。1

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街に着いたレインが真っ先に私を連れて行ったのは仕立て屋だった。


「僕の隣を歩くんだから、まずはドレスアップしないとね。」

レインはそう言いながら、私に服を何着かあてがい、うーんと唸った。


「さすがユリアだ。どの服も似合うね。」


「・・・ありがとうございます。」


しばらく悩んでいたレインだが、ようやく決めたのか店員を呼んで私に服を手渡した。


「これを着ておいで。」


そう言われて試着室でレインから渡された服に着替えた。


鏡に映るのはいつものみすぼらしい服ではなく、品のある服を着た自分だった。



テオにドレスを着せてもらった時もそうだったが、やはり身に着ける物は大事だ。

それだけで、こんなにも自分が違って見える。


それに、レインはどうやらセンスがいいらしい。


服の色もデザインも、全て私の体形や髪色にあっている物だった。


試着室から出てきた私を見て、レインは顎に手を当てた。


「さすが僕だ、ユリアをいつもの何倍も完璧にしている。

とても可愛いよ、ユリア。」


「ありがとうございます。」



自分への称賛を交えながら私を褒めるレインに、思わず笑ってしまいそうになるのをこらえてお礼を言った。

レインは自信家なんだな、私にも少し分けてほしいほどだ。



「会計は済んでいるから、このまま店を出よう。」


い、いつの間に・・・!?

びっくりしている私をよそに、レインはさっさと店を出てしまった。

後ろで店員が頭を下げてお見送りしてくれている。

何となく、レインがどんな人なのか分かりかけてきたような・・・。

そんな風に思いながら、慌ててレインの後を追うようにして私も店を出た。



「さあ、やっと本当にデートの始まりだよ、ユリア。

お腹は減っていないかい?」



レインにそう言われて、お腹がぐうっと鳴った。

そういえば、伯爵家を出てきてからまともなご飯を食べていない。


昨日はイグニスが街で仕入れてきたパンを1つ食べたくらいだし、今日の朝も木の実を少し食べただけだ。

お金がないので仕方がない。早く、何か絵を描かないといけない。
伯爵家を出るとき、金目になりそうな物でも持ってくれば良かった、と後悔する。


「お腹を空かせているようだね。じゃあ、僕の行きつけのお店に行こう。この近くにあるんだ。」


まだ何も答えていないのにレインは見透かすようにそう言う。

お腹の音が聞こえたのだろうか?

もうしそうなら、少しだけ恥ずかしい。


レインが案内してくれたのは、一見すると酒場のような場所だった。

ここがレインの行きつけなの?

なんだかレインの雰囲気には不釣り合いのように見える。

店にはあまり人もいなく活気もないし、質素な作りの店構えだった。

私自身は、ご飯が食べれるのなら場所は何でもいいけど。


レインは店に入るなりカウンターへ行き、そこにだるそうに立っていた男に何やら耳打ちした。


そうすると、それまでだるそうに立っていた男が深々とレインに頭を下げた。


「お待ちしておりました、フォールスト様。奥へご案内いたします。」


男はそう言って、カウンターの奥にある扉を開けた。


レインは慣れた様子でカウンターの奥へ歩いていく。

何が何だか分からない私もとりあえずレインの後に続いた。



「この店は一体・・・?」

そう呟いた私に、レインが反応して振り返った。


「ああ、ここ?この店普段は酒場なんだけど、本当は違うんだ。特定の人しか入れないけどね。」

その中の一人が僕さ、と言って笑うレインに何となく察しがついた。

金持ちしか入れないってやつね。

一体どんな料理が食べられるんだろう。

想像が膨らむ私は、さらにお腹が鳴りそうになった。



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