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悪魔にもう一度願いを

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「日本人の宗教って神道だから、あんまり知らないのかな?

悪魔に願いを叶えてもらうのって、結局不幸になるんだってさ。

まあ、僕はいま神様だけど。」


悪魔が饒舌にペラペラと話しているのを、私は冷めた目で見ていた。


「こうするしか無いの。」

私がそう言うと、悪魔はふむ、とうなずいた。


「まあ、そう言うなら仕方ないよね。ところでさ、分かっているの?

願いを叶えたいのなら、代償がいるんだけど。」



「ええ。魂がいるのでしょう?」

「いいや。それはもうだから・・・。

そうだな、心が欲しい。」


「心?」


悪魔の申し出に私は首を傾げた。心を差し出すって、それってローラみたいに心臓を差し出すって事?

ローラの心臓だけでは足りないのだろうか。


「そう、心。

ヒロインの心臓を貰ったけど、所詮漫画の世界の心。

やっぱり、現実世界の人間からもらわないと、完全な力は手に入らないみたいでさ。」



「・・・分かった。」


私は承諾した。否、承諾するしかないのだ。


前世のわたしの存在で、この世界の物語をめちゃくちゃにしまったのだから
もう元に戻してあげたい。

ヒロインは、やっぱり王子様と一緒に幸せにならないと。


だから私は願った。


私が今居る、このその後の世界を消して、ローラが妖精になる前の元の世界に戻すことを。


「君はこの世界でもあっちの世界でも死ぬことになるんだけど、それでもいいのかな?」


悪魔が最終確認のように私に問いかける。

「分かった。いいよ。」



これで元に戻るなら。これでヒロインが救われるのなら。



「だめだ!ユリア、そいつの話を聞いてはいけない!」


レインの慌てるような声が聞こえたので振り返ると、こちらに向かって走ってくるレインの姿が見えた。



「大丈夫よ、レイン。私が全て元に戻すから。」


レインに向かってほほ笑んだ。


「あはは!君って本当に面白いよね。

君のおかげで色々楽しめたし、願いを叶えてあげるよ。」


悪魔の言葉に、私は目を閉じた。悪魔に心臓を差し出すためだ。



「ふふふ、契約成立だね。」

気味の悪い声で笑うのと同時に、悪魔が私の胸の中央に手を当てた。


「だめだ、ユリア!!ユリア!・・・・美優!」



それは、レインが知っているはずのない、私の本当の名前。


思わず目を開け、レインの方を見ようとした時、悪魔がそれを遮った。


「だーめ。もう、君の全ては僕の物だ。」



その声を聞いたのを最後に、私の意識は遠くなっていった。






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