56 / 62
悪魔にもう一度願いを
しおりを挟む
「日本人の宗教って神道だから、あんまり知らないのかな?
悪魔に願いを叶えてもらうのって、結局不幸になるんだってさ。
まあ、僕はいま神様だけど。」
悪魔が饒舌にペラペラと話しているのを、私は冷めた目で見ていた。
「こうするしか無いの。」
私がそう言うと、悪魔はふむ、とうなずいた。
「まあ、そう言うなら仕方ないよね。ところでさ、分かっているの?
願いを叶えたいのなら、代償がいるんだけど。」
「ええ。魂がいるのでしょう?」
「いいや。それはもうすでにもらってるも同然だから・・・。
そうだな、心が欲しい。」
「心?」
悪魔の申し出に私は首を傾げた。心を差し出すって、それってローラみたいに心臓を差し出すって事?
ローラの心臓だけでは足りないのだろうか。
「そう、心。
ヒロインの心臓を貰ったけど、所詮漫画の世界の心。
やっぱり、現実世界の人間からもらわないと、完全な力は手に入らないみたいでさ。」
「・・・分かった。」
私は承諾した。否、承諾するしかないのだ。
前世のわたしの存在で、この世界の物語をめちゃくちゃにしまったのだから
もう元に戻してあげたい。
ヒロインは、やっぱり王子様と一緒に幸せにならないと。
だから私は願った。
私が今居る、このその後の世界を消して、ローラが妖精になる前の元の世界に戻すことを。
「君はこの世界でもあっちの世界でも死ぬことになるんだけど、それでもいいのかな?」
悪魔が最終確認のように私に問いかける。
「分かった。いいよ。」
これで元に戻るなら。これでヒロインが救われるのなら。
「だめだ!ユリア、そいつの話を聞いてはいけない!」
レインの慌てるような声が聞こえたので振り返ると、こちらに向かって走ってくるレインの姿が見えた。
「大丈夫よ、レイン。私が全て元に戻すから。」
レインに向かってほほ笑んだ。
「あはは!君って本当に面白いよね。
君のおかげで色々楽しめたし、願いを叶えてあげるよ。」
悪魔の言葉に、私は目を閉じた。悪魔に心臓を差し出すためだ。
「ふふふ、契約成立だね。」
気味の悪い声で笑うのと同時に、悪魔が私の胸の中央に手を当てた。
「だめだ、ユリア!!ユリア!・・・・美優!」
それは、レインが知っているはずのない、私の本当の名前。
思わず目を開け、レインの方を見ようとした時、悪魔がそれを遮った。
「だーめ。もう、君の全ては僕の物だ。」
その声を聞いたのを最後に、私の意識は遠くなっていった。
悪魔に願いを叶えてもらうのって、結局不幸になるんだってさ。
まあ、僕はいま神様だけど。」
悪魔が饒舌にペラペラと話しているのを、私は冷めた目で見ていた。
「こうするしか無いの。」
私がそう言うと、悪魔はふむ、とうなずいた。
「まあ、そう言うなら仕方ないよね。ところでさ、分かっているの?
願いを叶えたいのなら、代償がいるんだけど。」
「ええ。魂がいるのでしょう?」
「いいや。それはもうすでにもらってるも同然だから・・・。
そうだな、心が欲しい。」
「心?」
悪魔の申し出に私は首を傾げた。心を差し出すって、それってローラみたいに心臓を差し出すって事?
ローラの心臓だけでは足りないのだろうか。
「そう、心。
ヒロインの心臓を貰ったけど、所詮漫画の世界の心。
やっぱり、現実世界の人間からもらわないと、完全な力は手に入らないみたいでさ。」
「・・・分かった。」
私は承諾した。否、承諾するしかないのだ。
前世のわたしの存在で、この世界の物語をめちゃくちゃにしまったのだから
もう元に戻してあげたい。
ヒロインは、やっぱり王子様と一緒に幸せにならないと。
だから私は願った。
私が今居る、このその後の世界を消して、ローラが妖精になる前の元の世界に戻すことを。
「君はこの世界でもあっちの世界でも死ぬことになるんだけど、それでもいいのかな?」
悪魔が最終確認のように私に問いかける。
「分かった。いいよ。」
これで元に戻るなら。これでヒロインが救われるのなら。
「だめだ!ユリア、そいつの話を聞いてはいけない!」
レインの慌てるような声が聞こえたので振り返ると、こちらに向かって走ってくるレインの姿が見えた。
「大丈夫よ、レイン。私が全て元に戻すから。」
レインに向かってほほ笑んだ。
「あはは!君って本当に面白いよね。
君のおかげで色々楽しめたし、願いを叶えてあげるよ。」
悪魔の言葉に、私は目を閉じた。悪魔に心臓を差し出すためだ。
「ふふふ、契約成立だね。」
気味の悪い声で笑うのと同時に、悪魔が私の胸の中央に手を当てた。
「だめだ、ユリア!!ユリア!・・・・美優!」
それは、レインが知っているはずのない、私の本当の名前。
思わず目を開け、レインの方を見ようとした時、悪魔がそれを遮った。
「だーめ。もう、君の全ては僕の物だ。」
その声を聞いたのを最後に、私の意識は遠くなっていった。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!
O.T.I
ファンタジー
★本編完結しました!
★150万字超の大長編!
何らかの理由により死んでしまったらしい【俺】は、不思議な世界で出会った女神に請われ、生前やり込んでいたゲームに酷似した世界へと転生することになった。
転生先はゲームで使っていたキャラに似た人物との事だったが、しかしそれは【俺】が思い浮かべていた人物ではなく……
結果として転生・転性してしまった彼…改め彼女は、人気旅芸人一座の歌姫、兼冒険者として新たな人生を歩み始めた。
しかし、その暮らしは平穏ばかりではなく……
彼女は自身が転生する原因となった事件をきっかけに、やがて世界中を巻き込む大きな事件に関わることになる。
これは彼女が多くの仲間たちと出会い、共に力を合わせて事件を解決し……やがて英雄に至るまでの物語。
王道展開の異世界TS転生ファンタジー長編!ここに開幕!!
※TS(性転換)転生ものです。精神的なBL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい
海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。
その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。
赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。
だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。
私のHPは限界です!!
なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。
しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ!
でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!!
そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ
だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような?
♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います!
この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)
優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11)
<内容紹介>
ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。
しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。
このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう!
「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。
しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。
意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。
だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。
さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。
しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。
そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。
一年以上かかりましたがようやく完結しました。
また番外編を書きたいと思ってます。
カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。
乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった
月
恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。
そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。
ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。
夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。
四話構成です。
※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです!
お気に入り登録していただけると嬉しいです。
暇つぶしにでもなれば……!
思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。
一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる