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第4話「お飾りの妻の未来は真っ暗」
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「ほんっとうに冗談じゃないわ・・・誰か嘘だって言ってよ。」
再びこの世界で目が覚めた私は、頭を掻きむしりながらつぶやいた。
私は、ほぼ間違いなくアレシアという女性に転生してしまっている。
アレシアは、【貪り合う欲望の薔薇】小説の第1章で出てくる使い捨てキャラクターだ。
そして、さっきまでいた長髪の偉そうな態度を取る男は、この小説の主人公ヘリオス。
隣にいた美少年はヘリオスの恋人のリチャード。
アレシアは、ヘリオスの恋人のリチャードを罵った事で全ての権利を奪われた後、リチャードとの生活を守るためにと意を決したヘリオスに身籠るまで強引に抱かれ、ようやく妊娠し出産した後は最終章に至るまで一度も小説には登場しない。
第2章からは少しづつ愛の形が歪んでいくヘリオスとリチャードの禁断の関係がメインで描かれるため、単に彼女の存在にはスポットライトが当たらないだけかもしれない。
だが、アレシアが出産したことで後継ぎ問題を解決したヘリオスにとっては、アレシアは完全に要らない存在の為、今まで通り別邸に閉じ込められているか、若しくは・・・いや、この先を想像するのは辞めておこう。
いずれにせよ、アレシアには暗い未来しか待っていない。
「・・・そんなのはごめんだわ。」
頭が痛くなる。いくら昔好きで読んでいた小説とは言え、勘弁してよ。
こっちはあなた達のような男に対してトラウマを抱えているって言うのに。
全く、過去の私はこの小説の何がそんなに良かったのか。
きっとまだ何も知らない子どもだったからこそ、この小説が好きになれたのね。
今の私がこの小説の内容を思い返すと、胸糞悪くて仕方がない。
アレシアの性格の悪さを差し引いても、ヘリオスはひどい男だ。
そんな男と、ここで生活していくのなんて、はっきり言って無理すぎる。
だけど、行く宛もないしどうしたら・・・。
ーコンコン。
悩む私の耳に、扉を叩く音が届いた。
「・・・入っていいわよ。」
扉に向かって声を掛けると、さっき傍にいてくれた赤毛のメイド服を着た女の子が入ってきた。
そういえば、さっきも今も、私の傍にメイドとしているのはこの女の子一人だけだ。
恐らくこのメイドが、ヘリオスが唯一アレシアに付けてくれた侍女なのだろう。
と言う事は、ヘリオスがアレシアをすでに本邸から追い出しているので、この世界は小説で言うところの第1章の中盤に差し掛かった辺りか。
アレシアは第1章の終盤には、ヘリオスに無理矢理抱かれて出産していたから・・・私もこのままここで過ごしていたらいずれそうなるって事!?
「奥様・・・。まだ体調が良くありませんか?」
顔色が悪くなる私を見て、メイドが心配そうに声を掛けた。
「い、いいえ。大丈夫よ。ところで何か用があったんじゃないの?」
メイドに心配させないように、無理に笑顔を作って見せる。
メイドがそれを見て少しだけ安心した顔をした。
「良かった・・・!実は旦那様が奥様の事をお呼びでして。本邸へ来てくれとの伝言を預かっていたのです。」
ああ、やっぱり体調が悪くなったと言っておこうかしら。
でも、そんな事をしたら、この子を困らせてしまうよね。
はあ、行くしかないのか。
心の中でこっそりため息を吐く。
「分かったわ。今から向かうと伝えてちょうだい。」
私の返事を聞いてさらに安心したのか、メイドが足取り軽く部屋を出て行った。
私も私で、のそのそとベッドから身を起こして立ち上がる。
メイドが一人しかいないんだし、別に身なりを整えなくてもいいよね?
気乗りしない私はそのままの姿で部屋を出て、メイドの後を追うことにした。
再びこの世界で目が覚めた私は、頭を掻きむしりながらつぶやいた。
私は、ほぼ間違いなくアレシアという女性に転生してしまっている。
アレシアは、【貪り合う欲望の薔薇】小説の第1章で出てくる使い捨てキャラクターだ。
そして、さっきまでいた長髪の偉そうな態度を取る男は、この小説の主人公ヘリオス。
隣にいた美少年はヘリオスの恋人のリチャード。
アレシアは、ヘリオスの恋人のリチャードを罵った事で全ての権利を奪われた後、リチャードとの生活を守るためにと意を決したヘリオスに身籠るまで強引に抱かれ、ようやく妊娠し出産した後は最終章に至るまで一度も小説には登場しない。
第2章からは少しづつ愛の形が歪んでいくヘリオスとリチャードの禁断の関係がメインで描かれるため、単に彼女の存在にはスポットライトが当たらないだけかもしれない。
だが、アレシアが出産したことで後継ぎ問題を解決したヘリオスにとっては、アレシアは完全に要らない存在の為、今まで通り別邸に閉じ込められているか、若しくは・・・いや、この先を想像するのは辞めておこう。
いずれにせよ、アレシアには暗い未来しか待っていない。
「・・・そんなのはごめんだわ。」
頭が痛くなる。いくら昔好きで読んでいた小説とは言え、勘弁してよ。
こっちはあなた達のような男に対してトラウマを抱えているって言うのに。
全く、過去の私はこの小説の何がそんなに良かったのか。
きっとまだ何も知らない子どもだったからこそ、この小説が好きになれたのね。
今の私がこの小説の内容を思い返すと、胸糞悪くて仕方がない。
アレシアの性格の悪さを差し引いても、ヘリオスはひどい男だ。
そんな男と、ここで生活していくのなんて、はっきり言って無理すぎる。
だけど、行く宛もないしどうしたら・・・。
ーコンコン。
悩む私の耳に、扉を叩く音が届いた。
「・・・入っていいわよ。」
扉に向かって声を掛けると、さっき傍にいてくれた赤毛のメイド服を着た女の子が入ってきた。
そういえば、さっきも今も、私の傍にメイドとしているのはこの女の子一人だけだ。
恐らくこのメイドが、ヘリオスが唯一アレシアに付けてくれた侍女なのだろう。
と言う事は、ヘリオスがアレシアをすでに本邸から追い出しているので、この世界は小説で言うところの第1章の中盤に差し掛かった辺りか。
アレシアは第1章の終盤には、ヘリオスに無理矢理抱かれて出産していたから・・・私もこのままここで過ごしていたらいずれそうなるって事!?
「奥様・・・。まだ体調が良くありませんか?」
顔色が悪くなる私を見て、メイドが心配そうに声を掛けた。
「い、いいえ。大丈夫よ。ところで何か用があったんじゃないの?」
メイドに心配させないように、無理に笑顔を作って見せる。
メイドがそれを見て少しだけ安心した顔をした。
「良かった・・・!実は旦那様が奥様の事をお呼びでして。本邸へ来てくれとの伝言を預かっていたのです。」
ああ、やっぱり体調が悪くなったと言っておこうかしら。
でも、そんな事をしたら、この子を困らせてしまうよね。
はあ、行くしかないのか。
心の中でこっそりため息を吐く。
「分かったわ。今から向かうと伝えてちょうだい。」
私の返事を聞いてさらに安心したのか、メイドが足取り軽く部屋を出て行った。
私も私で、のそのそとベッドから身を起こして立ち上がる。
メイドが一人しかいないんだし、別に身なりを整えなくてもいいよね?
気乗りしない私はそのままの姿で部屋を出て、メイドの後を追うことにした。
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