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序章
1-3 これからのわたし
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「私の読みが正しいならね、おそらくこの後の集まりで正式に婚約破棄のことを伝えるんだと思う。大々的に発表するんだよ。問題は、その後どうするか。国外追放なんだっけ?どっちにせよこの国にはいられないからさ。おすすめは、ジークフリートのいるディースミルドに行くことだ。」
、、、何でここでジークフリート王太子が呼び捨てで登場するわけ?
「実は、さ。パウリーネと私は親が違う。パウリーネの母親のトゥーリッキ様はディースミルドの王女だったけれど、私の母親はこの国の王女だった。」
まるで霧が晴れていくように、アルフレートの言いたいことが分かった。
「パウリーネはあの王からすれば自分の姪だ。トゥーリッキ様を王はたいそう可愛がっていらっしゃったから、おそらく庇護してくれるだろうな。そして私も、あの王から何度も自分の文官にならないかと引き抜かれかけたからな。歓迎してくれるだろうよ。」
、、、この兄様がついてくる訳?考えるだけでお腹痛いんですが。
でも、こんなに見えても兄様も既婚者。相手の女性はどうなるのだろうか。
「それは心配ないから。すでに離縁してある。もとより政略結婚だったみたいだから、不快だったんじゃない?」
「あ、そうですか。」
「あの王子はパウリーネや私が壊そうといろいろ画策する必要がないくらいのただの小物だ。ある意味、我々が離れたほうがあっちとしては困るんだろうよ。」
自慢じゃあないけれど、このノルウィッセンはヴェンツィスの穀倉地帯だ。シュヴァルセン平野が全体に広がり、そこに満ちている魔力も高純度。その割に貴族や農民からも慕われている。冬は見事なくらいに凍るけれど、第二の都市で北方貿易の盛んなアインファーフェンの活気はすごいのだ。
、、、結論。兄様マジ優秀。
だから、収める税の額も多いのだ。そんな領地が消えたら、国がどうなるかはお楽しみだ。
「資料などは全て持っていくのでしょう?」
もしできる人がいればの話になるけれど、資料を置いていくと計画がぶっ潰れる可能性があるのでそうするはずだと思うけれど、一応聞いてみた。
「そりゃ持ってくさ。まあ、置いていって読めるかどうか分からないけど。」
「ああ、コンプマッツェですね。」
コンプマッツェ。
アルフレートが独自で編み出し、解読できる人間がアルフレートとわたし(と言ってもだいぶ忘れた)、それからジークフリート王太子しかいなくて、なおかつジークフリートとアルフレートが共同で作った消えるインクを使って書いているから、一見するとただの白紙である。魔力の光、それも一定以上の魔力量でなければ見えないので、そこらへんの貴族には見えないのだ。
「まあ安全を考えて持っていくけどね。」
それが良いとわたしも思うけど。
「準備はしてあるから安心していいよ。」
さすが。
そこで盗み聞き防止の魔術具を兄様はしまって、側近を呼んだ。
「久しぶりにお茶会でもしないか?」
「良いんじゃないんでしょうか?」
大好きなアプフェルクーヘンやアイアシェッケ、ビーネンシュティッヒとお茶を楽しみ、他愛ない話をする。この後大変なことが待っているというのに、随分のんびりした時間だった。
、、、何でここでジークフリート王太子が呼び捨てで登場するわけ?
「実は、さ。パウリーネと私は親が違う。パウリーネの母親のトゥーリッキ様はディースミルドの王女だったけれど、私の母親はこの国の王女だった。」
まるで霧が晴れていくように、アルフレートの言いたいことが分かった。
「パウリーネはあの王からすれば自分の姪だ。トゥーリッキ様を王はたいそう可愛がっていらっしゃったから、おそらく庇護してくれるだろうな。そして私も、あの王から何度も自分の文官にならないかと引き抜かれかけたからな。歓迎してくれるだろうよ。」
、、、この兄様がついてくる訳?考えるだけでお腹痛いんですが。
でも、こんなに見えても兄様も既婚者。相手の女性はどうなるのだろうか。
「それは心配ないから。すでに離縁してある。もとより政略結婚だったみたいだから、不快だったんじゃない?」
「あ、そうですか。」
「あの王子はパウリーネや私が壊そうといろいろ画策する必要がないくらいのただの小物だ。ある意味、我々が離れたほうがあっちとしては困るんだろうよ。」
自慢じゃあないけれど、このノルウィッセンはヴェンツィスの穀倉地帯だ。シュヴァルセン平野が全体に広がり、そこに満ちている魔力も高純度。その割に貴族や農民からも慕われている。冬は見事なくらいに凍るけれど、第二の都市で北方貿易の盛んなアインファーフェンの活気はすごいのだ。
、、、結論。兄様マジ優秀。
だから、収める税の額も多いのだ。そんな領地が消えたら、国がどうなるかはお楽しみだ。
「資料などは全て持っていくのでしょう?」
もしできる人がいればの話になるけれど、資料を置いていくと計画がぶっ潰れる可能性があるのでそうするはずだと思うけれど、一応聞いてみた。
「そりゃ持ってくさ。まあ、置いていって読めるかどうか分からないけど。」
「ああ、コンプマッツェですね。」
コンプマッツェ。
アルフレートが独自で編み出し、解読できる人間がアルフレートとわたし(と言ってもだいぶ忘れた)、それからジークフリート王太子しかいなくて、なおかつジークフリートとアルフレートが共同で作った消えるインクを使って書いているから、一見するとただの白紙である。魔力の光、それも一定以上の魔力量でなければ見えないので、そこらへんの貴族には見えないのだ。
「まあ安全を考えて持っていくけどね。」
それが良いとわたしも思うけど。
「準備はしてあるから安心していいよ。」
さすが。
そこで盗み聞き防止の魔術具を兄様はしまって、側近を呼んだ。
「久しぶりにお茶会でもしないか?」
「良いんじゃないんでしょうか?」
大好きなアプフェルクーヘンやアイアシェッケ、ビーネンシュティッヒとお茶を楽しみ、他愛ない話をする。この後大変なことが待っているというのに、随分のんびりした時間だった。
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