15 / 17
第一章 神生みの時代
スサノオの野望
しおりを挟む
「ご、500人の山賊を村から追い払っただと!?」
スサノオとその部下たちは、顎が外れんばかりに大きな口を開けて驚いて見せた。
「まあ運が良かったかもね~、通りすがりの巨大な猪たちが次々とあの連中を突き飛ばしたんだ」
「巨大な猪だと?そんなものが人助けをするのか」
「さあね……闘牛みたいに赤い布でもヒラヒラさせたんじゃないの」
スサノオは首を傾げるも、山賊を追い払ったのは事実なので素直にモモの実力を認めた。その後、部下たちを引き連れて王宮へと向かった。
(さぁて……どうやら王宮には行けるみたいだね)
モモは自然と表情が緩んだ。
スサノオとモモ、そしてチキは王宮へ着くと、中央広間へと案内された。理由はナギへの謁見である。モモは顔を隠すように布を口に巻き、中央広間へと向かった。
「その方たちがスサノオの部下になりたいと申した者か?」
玉座にいたナギは、モモとチキに問い掛ける。二人は軽く首を縦に振り、頷いて見せた。
「親父殿、ここにいるモモは強いぞ。なにせ500人の山賊たちを相手にして追い払ったのだからな。武勇に名を馳せたナミを思い出させるようだ」
スサノオが自慢気に語ると、呵々と大笑した。
「モモ……?はて、聞いたことがあるような」
ナギは玉座から立ち上がり、今一度、モモの顔を凝視した。
「娘よ、口に巻く布を解いてみせよ。顔を良く見たい」
モモはフルフルと顔を横に振った。
「どうした?親父殿に顔を見せれば良いではないか。チキは村の掟に従い仮面を付けているが、おまえはそうではないだろうに」
モモは軽くため息を吐くと、仕方ないという様子でナギに自分の顔を見せた。
「お……おおおおおおおおっ!」
ナギの顔は血の気を失い、表情は驚愕の色に染まる。
「う、瓜二つじゃ!ナミが生き返りおったぞ」
「な、なんですと!?」
ナギと同様にスサノオも慌て出す。
「その娘を捕らえよっ!二度と日の光が見れないよう地下の牢に永久に閉じ込めておけ」
ナギが周囲の護衛の兵にそう伝えると、モモの腕を掴んで広間から連れ出そうとした。
「おい、離さぬか!勝手な真似は許さんぞ」
「黙れスサノオっ!おまえは災いの火種をこの地に招き入れた、その罪たるや重いものと知れ。しばらく監視の下で行動を制限する。部屋から一歩でも出たら即座に切り捨てるから覚悟するが良い」
ナギの怒りの形相を見て、スサノオは押し黙ってしまう。モモは大人しくナギに従い、護衛の兵と共に広間を後にした。
――その夜。
寒々しい地下の牢でモモは膝を抱えながら座っていた。
(う~ん、もうそろそろ動いても良さそうだね)
モモは立ち上がると牢の格子を両手で掴み、力を入れて2本ほどバキリと折った。息を潜めながら牢を出て周囲の様子を伺うと、不思議なことに見張りの姿がなかった。
(おかしいな……用を足しにでも行ってるのかな?)
すると、目の前から体格の良い男がいきなり現れた。
「うおっ!」
「ひゃあああ!」
見ると、その男はスサノオだった。
「あんた、ここへなにしに来たの?」
「なにって……おまえを助けるためではないか」
「はあ?」
「ふん、おまえが捕まったのは俺にも責任があるからな」
「へえ~、意外と義理堅いんだね」
「意外の言葉は余計だ、それに聞きたいことがある」
「なにさ?」
「おまえはナミの娘なのだろ?」
モモの眉間に皴が寄り、困ったような表情を浮かべる。
「ナミの娘だったら……私を殺すとでも?」
「いや、そうではない。この地を訪れた目的を知りたいだけだ。今まで雲隠れしておいて、ここへ来たいと思ったのはワケがあるだろ」
「……ナギを倒すつもりで来た」
モモの言葉にスサノオが目を丸くして驚く。
「大した度胸だな、おまえは」
「だけどナギを見た時、そんなことどうでも良くなったよ。あれじゃ疲れたお爺ちゃんだし、私に一瞬で倒されるからね。だからもう帰るわ」
モモはその場を去ろうとすると、スサノオは手を掴んで行くのを止めようとする。
「ちょっと、離しなさいよ!」
「いいや、その話を聞いて益々おまえを逃したくないと思ったぞ」
「殺す気?」
「違う違う、利する目的が俺と一緒だからだ」
モモは首を傾げながら訝しそうにスサノオを見る。
「目的ってなにさ?」
「それはな……」
スサノオはモモの手を離し、得意気な表情を浮かべた。
「俺がナギに取って代わり、この国を治めたいと思っている」
スサノオとその部下たちは、顎が外れんばかりに大きな口を開けて驚いて見せた。
「まあ運が良かったかもね~、通りすがりの巨大な猪たちが次々とあの連中を突き飛ばしたんだ」
「巨大な猪だと?そんなものが人助けをするのか」
「さあね……闘牛みたいに赤い布でもヒラヒラさせたんじゃないの」
スサノオは首を傾げるも、山賊を追い払ったのは事実なので素直にモモの実力を認めた。その後、部下たちを引き連れて王宮へと向かった。
(さぁて……どうやら王宮には行けるみたいだね)
モモは自然と表情が緩んだ。
スサノオとモモ、そしてチキは王宮へ着くと、中央広間へと案内された。理由はナギへの謁見である。モモは顔を隠すように布を口に巻き、中央広間へと向かった。
「その方たちがスサノオの部下になりたいと申した者か?」
玉座にいたナギは、モモとチキに問い掛ける。二人は軽く首を縦に振り、頷いて見せた。
「親父殿、ここにいるモモは強いぞ。なにせ500人の山賊たちを相手にして追い払ったのだからな。武勇に名を馳せたナミを思い出させるようだ」
スサノオが自慢気に語ると、呵々と大笑した。
「モモ……?はて、聞いたことがあるような」
ナギは玉座から立ち上がり、今一度、モモの顔を凝視した。
「娘よ、口に巻く布を解いてみせよ。顔を良く見たい」
モモはフルフルと顔を横に振った。
「どうした?親父殿に顔を見せれば良いではないか。チキは村の掟に従い仮面を付けているが、おまえはそうではないだろうに」
モモは軽くため息を吐くと、仕方ないという様子でナギに自分の顔を見せた。
「お……おおおおおおおおっ!」
ナギの顔は血の気を失い、表情は驚愕の色に染まる。
「う、瓜二つじゃ!ナミが生き返りおったぞ」
「な、なんですと!?」
ナギと同様にスサノオも慌て出す。
「その娘を捕らえよっ!二度と日の光が見れないよう地下の牢に永久に閉じ込めておけ」
ナギが周囲の護衛の兵にそう伝えると、モモの腕を掴んで広間から連れ出そうとした。
「おい、離さぬか!勝手な真似は許さんぞ」
「黙れスサノオっ!おまえは災いの火種をこの地に招き入れた、その罪たるや重いものと知れ。しばらく監視の下で行動を制限する。部屋から一歩でも出たら即座に切り捨てるから覚悟するが良い」
ナギの怒りの形相を見て、スサノオは押し黙ってしまう。モモは大人しくナギに従い、護衛の兵と共に広間を後にした。
――その夜。
寒々しい地下の牢でモモは膝を抱えながら座っていた。
(う~ん、もうそろそろ動いても良さそうだね)
モモは立ち上がると牢の格子を両手で掴み、力を入れて2本ほどバキリと折った。息を潜めながら牢を出て周囲の様子を伺うと、不思議なことに見張りの姿がなかった。
(おかしいな……用を足しにでも行ってるのかな?)
すると、目の前から体格の良い男がいきなり現れた。
「うおっ!」
「ひゃあああ!」
見ると、その男はスサノオだった。
「あんた、ここへなにしに来たの?」
「なにって……おまえを助けるためではないか」
「はあ?」
「ふん、おまえが捕まったのは俺にも責任があるからな」
「へえ~、意外と義理堅いんだね」
「意外の言葉は余計だ、それに聞きたいことがある」
「なにさ?」
「おまえはナミの娘なのだろ?」
モモの眉間に皴が寄り、困ったような表情を浮かべる。
「ナミの娘だったら……私を殺すとでも?」
「いや、そうではない。この地を訪れた目的を知りたいだけだ。今まで雲隠れしておいて、ここへ来たいと思ったのはワケがあるだろ」
「……ナギを倒すつもりで来た」
モモの言葉にスサノオが目を丸くして驚く。
「大した度胸だな、おまえは」
「だけどナギを見た時、そんなことどうでも良くなったよ。あれじゃ疲れたお爺ちゃんだし、私に一瞬で倒されるからね。だからもう帰るわ」
モモはその場を去ろうとすると、スサノオは手を掴んで行くのを止めようとする。
「ちょっと、離しなさいよ!」
「いいや、その話を聞いて益々おまえを逃したくないと思ったぞ」
「殺す気?」
「違う違う、利する目的が俺と一緒だからだ」
モモは首を傾げながら訝しそうにスサノオを見る。
「目的ってなにさ?」
「それはな……」
スサノオはモモの手を離し、得意気な表情を浮かべた。
「俺がナギに取って代わり、この国を治めたいと思っている」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
東洲斎写楽の懊悩
橋本洋一
歴史・時代
時は寛政五年。長崎奉行に呼ばれ出島までやってきた江戸の版元、蔦屋重三郎は囚われの身の異国人、シャーロック・カーライルと出会う。奉行からシャーロックを江戸で世話をするように脅されて、渋々従う重三郎。その道中、シャーロックは非凡な絵の才能を明らかにしていく。そして江戸の手前、箱根の関所で詮議を受けることになった彼ら。シャーロックの名を訊ねられ、咄嗟に出たのは『写楽』という名だった――江戸を熱狂した写楽の絵。描かれた理由とは? そして金髪碧眼の写楽が江戸にやってきた目的とは?
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
楽将伝
九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語
織田信長の親衛隊は
気楽な稼業と
きたもんだ(嘘)
戦国史上、最もブラックな職場
「織田信長の親衛隊」
そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた
金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか)
天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!
すさまじきものは宮仕え~王都妖異聞
斑鳩陽菜
歴史・時代
ときは平安時代――、内裏内を護る、近衛府は左近衛府中将・藤原征之は、顔も血筋もいいのに和歌が苦手で、面倒なことが大嫌い。
子どもの頃から鬼や物の怪が視えるせいで、天から追放されたという鬼神・紅蓮に取り憑かれ、千匹鬼狩りをしないと還れないという。
そんな矢先、内裏で怪異が相次ぐ。なんとこの原因と解決を、帝が依頼してきた。
本来の職務も重なって、否応なく厄介事に振りまわさる征之。
更に内裏では、人々の思惑が複雑に絡み合い……。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる