輪廻のモモ姫

園田健人(MIFUMI24)

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第一章 神生みの時代

スサノオの野望

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「ご、500人の山賊を村から追い払っただと!?」
スサノオとその部下たちは、顎が外れんばかりに大きな口を開けて驚いて見せた。
「まあ運が良かったかもね~、通りすがりの巨大な猪たちが次々とあの連中を突き飛ばしたんだ」
「巨大な猪だと?そんなものが人助けをするのか」
「さあね……闘牛みたいに赤い布でもヒラヒラさせたんじゃないの」
スサノオは首を傾げるも、山賊を追い払ったのは事実なので素直にモモの実力を認めた。その後、部下たちを引き連れて王宮へと向かった。
(さぁて……どうやら王宮には行けるみたいだね)
モモは自然と表情が緩んだ。

スサノオとモモ、そしてチキは王宮へ着くと、中央広間へと案内された。理由はナギへの謁見である。モモは顔を隠すように布を口に巻き、中央広間へと向かった。

「その方たちがスサノオの部下になりたいと申した者か?」
玉座にいたナギは、モモとチキに問い掛ける。二人は軽く首を縦に振り、頷いて見せた。
「親父殿、ここにいるモモは強いぞ。なにせ500人の山賊たちを相手にして追い払ったのだからな。武勇に名を馳せたナミを思い出させるようだ」
スサノオが自慢気に語ると、呵々と大笑した。
「モモ……?はて、聞いたことがあるような」
ナギは玉座から立ち上がり、今一度、モモの顔を凝視した。
「娘よ、口に巻く布を解いてみせよ。顔を良く見たい」
モモはフルフルと顔を横に振った。
「どうした?親父殿に顔を見せれば良いではないか。チキは村の掟に従い仮面を付けているが、おまえはそうではないだろうに」
モモは軽くため息を吐くと、仕方ないという様子でナギに自分の顔を見せた。

「お……おおおおおおおおっ!」

ナギの顔は血の気を失い、表情は驚愕の色に染まる。
「う、瓜二つじゃ!ナミが生き返りおったぞ」
「な、なんですと!?」
ナギと同様にスサノオも慌て出す。
「その娘を捕らえよっ!二度と日の光が見れないよう地下の牢に永久に閉じ込めておけ」
ナギが周囲の護衛の兵にそう伝えると、モモの腕を掴んで広間から連れ出そうとした。
「おい、離さぬか!勝手な真似は許さんぞ」
「黙れスサノオっ!おまえは災いの火種をこの地に招き入れた、その罪たるや重いものと知れ。しばらく監視の下で行動を制限する。部屋から一歩でも出たら即座に切り捨てるから覚悟するが良い」
ナギの怒りの形相を見て、スサノオは押し黙ってしまう。モモは大人しくナギに従い、護衛の兵と共に広間を後にした。

――その夜。

寒々しい地下の牢でモモは膝を抱えながら座っていた。
(う~ん、もうそろそろ動いても良さそうだね)
モモは立ち上がると牢の格子を両手で掴み、力を入れて2本ほどバキリと折った。息を潜めながら牢を出て周囲の様子を伺うと、不思議なことに見張りの姿がなかった。
(おかしいな……用を足しにでも行ってるのかな?)
すると、目の前から体格の良い男がいきなり現れた。
「うおっ!」
「ひゃあああ!」
見ると、その男はスサノオだった。
「あんた、ここへなにしに来たの?」
「なにって……おまえを助けるためではないか」
「はあ?」
「ふん、おまえが捕まったのは俺にも責任があるからな」
「へえ~、意外と義理堅いんだね」
「意外の言葉は余計だ、それに聞きたいことがある」
「なにさ?」
「おまえはナミの娘なのだろ?」
モモの眉間に皴が寄り、困ったような表情を浮かべる。
「ナミの娘だったら……私を殺すとでも?」
「いや、そうではない。この地を訪れた目的を知りたいだけだ。今まで雲隠れしておいて、ここへ来たいと思ったのはワケがあるだろ」
「……ナギを倒すつもりで来た」
モモの言葉にスサノオが目を丸くして驚く。
「大した度胸だな、おまえは」
「だけどナギを見た時、そんなことどうでも良くなったよ。あれじゃ疲れたお爺ちゃんだし、私に一瞬で倒されるからね。だからもう帰るわ」
モモはその場を去ろうとすると、スサノオは手を掴んで行くのを止めようとする。
「ちょっと、離しなさいよ!」
「いいや、その話を聞いて益々おまえを逃したくないと思ったぞ」
「殺す気?」
「違う違う、利する目的が俺と一緒だからだ」
モモは首を傾げながら訝しそうにスサノオを見る。
「目的ってなにさ?」
「それはな……」
スサノオはモモの手を離し、得意気な表情を浮かべた。

「俺がナギに取って代わり、この国を治めたいと思っている」
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