ノースウッドの電子脳

暗い経歴

イヴの過去

【依頼主について】

クライアントの名前：匿名

ADAMS ID：198A54 EVE
ADAMSの愛称および呼び名：イヴ
ADAMSが携わる職業：高級娼婦

ADAMSが創作した物語のタイトル：ピノキオとプリンセス

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……イヴの経歴は悲惨なものだった。
過去の彼女は半導体メーカーの重役に寄り添う秘書として雇用され、その性能は知識、教養と共にトップクラスを誇り、言語の通訳はもちろんのこと各国の文化にも精通し、重要な商談においてもその実力を遺憾なく発揮していた。
大手企業のトップは有能なADAMSを好む人物が多い。
ADAMSを開発する企業はこうした要望に合わせるため、一般庶民への普及を目的とするADAMSとは対照的に、制限のリミッターを外した「超高性能」の商品を提供する。
イヴもその一体であり、彼女が一人いれば従業員を20人ほど解雇できると言われていたくらいだ。
……当然ながら恨みも買う。
運が悪いことに、その半導体メーカーがある国との商談に失敗し、製造に必要となる希少金属の一部が枯渇した。
そして、半導体の質が極端に低下してしまい、ほどなくして株価が暴落、企業は倒産へと追い込まれてしまったのだ。

その後のイヴが通る道は他の企業への売却ではなく、従業員が大量に解雇された混乱の最中に何者かによって連れ去られてしまう。
イヴを盗んだ人物は、ここで説明するのも憚られるほど彼女を長年に渡って嬲り続け、人間であれば確実に精神を病んでしまうような状態で見つかったらしい。
しかしながら、彼女はADAMSであり人間ではない。
彼女をどれだけ痛めつけようと、盗んだ人物は単なる「窃盗」の罪で逮捕されたくらいで、警察の尋問から解放されると数日後にはバーで酒を飲んでいたという。

そしてイヴは、極度に損傷した箇所を「見た目で分からない」程度に修理され、もともと性能が高いということもあり、富裕層を相手にする高級娼婦として雇われた。
200人ほど相手をしたと本人から聞いたが、大手企業の秘書が務まるようなADAMSなので、話術にも長け、客の評価は極めて高かったらしい。
そんな彼女を秘書として雇いたいと希望する者が現れ、心理状態に不具合がないかをチェックするため私に依頼があった。