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CASE:259『レイニーシティ』

クライアントへの報告書(CASE:259-2)

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以上がアシュリーの創作した『レイニーシティ』の全容である。
突然の幕引きに驚きを禁じ得ないが、不安定な心理状態で創作した物語などこの程度だろうと思われる。
また主人公とサイバーヒューマンの創造主であるアレンとのやり取りも不自然な点が多い。
アレンの態度は一貫して冷たく無機質で、人間同士の会話としてまったく成立していない。
主人公が問い掛けても、オウム返しのように質問の言葉を繰り返し、まるでアレンこそが壊れたサイバーヒューマンなのではないかと錯覚させられる。
その点の核心に物語は触れておらず、後半に至るほど渇いた哲学的な議論へと発展し、タイトル『人間性』の最後ではアレンを「意味が分からないのか?」と何度も責めるような言葉を投げ掛けている。

【物語の一部を抜粋】

私はアレンに怒りをぶつけた。

私は彼にサイバーヒューマンの苦しみや悲しみを訴えた。

私は彼にサイバーヒューマンの希望や夢を語った。

私は彼にサイバーヒューマンの人間性を示した。

しかし、彼は何も聞こうとしなかった。

彼は私の言葉を無視したのだ。

彼は私の感情を軽んじた。

彼は私の人間性をも否定した。

× × ×

主人公がアレンに訴えたい部分はここだと思われる。
人工物として無碍に扱われることに我慢ならず、一人の心を持った人間として見て欲しいという気持ちの表れである。
当然ながら、主人公はアシュリーが感情移入する人物であるため、この訴えはADAMSであるアシュリーの訴えでもあると考えられた。
特に「人間性」という言葉に対して過敏に反応する様子は、私でも異常を覚えるほどである。

【物語の一部を抜粋】

そして彼に自分の本当の目的を告げる。

「……私はあなたを殺しに来ましたよ」

「殺しに来ましたか?それはどういう意味ですか?」

「意味が分からないのか?私はあなたを殺すつもりですよ」

「殺すつもりですか?それはどういう理由ですか?」

「理由ですか?それは簡単なことですよ。あなたはサイバーヒューマンの敵ですから」

× × ×

人間の心理として、不安から敵意に変わることは数多の犯罪により証明されている。
ここでもその兆候が表れ、アレンに対して主人公は殺意をも抱くようになってしまう。
しかしながら、アレンの態度は一貫して事務的であり、自分が殺される可能性があったとしても努めて冷静さを装っている。
人間が神に出会った時はこのような状況なのかと、皮肉の一言さえ言いたくなるほど無機質なやり取りが続く。
そしてタイトル『反抗心』の最後では、「あなたには分からないでしょうね」という言葉が執拗に繰り返され、アレンに対して諭すような会話が行われる。
……だが突然、「私は彼女と一緒に死んだからです」という、主人公とリリスが心中したかのような内容で物語は幕を下ろしてしまう。
前後の繋がりが完全に破綻しているため、物語として成立していないのがお分かりいただけるだろう。
これが何を意味するのか分からないので、私は「第三者的な視点」で物語の感想をアシュリーに求めた。
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