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第五章

第七話 なんだかんだ仲良し?

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「炭になっちまいな‼︎」

 辺り一面を焼き尽くさんばかりの炎の塊を、サリーはロボット兵たちに向けて投げ付けた。しかし超高温の魔法を食らっても怯むことなく、敵は突進してきた。

「マジかよ、効いてねぇ!」
「なるほど、この極限状況で稼働し続けられてただけはあるな。なら、これならどうだ?」

 サリーに代わってマリアが前に出たかと思うと、両手に術式を展開し、一気に魔法を解き放った。そこから放たれた絶対零度に近い冷気で作り出された巨大な氷柱は、ロボット兵たちの巨体に向かって次々と襲い掛かった。
 しかしそれも無駄であった。通常なら串刺しにされて終わりのはずが、その強固な装甲の前に次々と氷柱は砕け散っていった。

「なんだと⁉︎」

 複数のロボット兵がレイたち一向に襲い掛かろうとしていた。その両手はビーム兵器となっており、レイたちを目掛けて光線を発射した。当たった場所は地面が抉れ、人体に対しては相当なダメージを与えることが容易に想像できた。

「おいおい! 啖呵切ったは良いが、こいつらかなり素早い上に強いぞ!」

 サリーの言葉は事実だった。ロボット兵たちはその巨躯にも関わらず、素早いスピードと連携でサリーとマリアを翻弄した。これに殺傷力のある光線兵器まで備えているのだから、かなりの強敵とみなすのは不自然では無かった。

「なんだ、もう逃げ口上か?」
「うるせぇんだよ! 文句があるなら、こいつらの動きを止めて見せろ!」
「ほう、動きを止めれば、確実に倒せるのか?」
「当たり前だろうが!」
「なるほど…ならば、この戦法だな!」

 再びマリアは掌から術式を展開した。しかし発せられた冷気は敵の周りにではなく、その関節部分のみに纏わり付いた。しばらくするとその冷気は完全な氷の塊に変わり、関節部分の動きを完璧に封じた。ロボット兵達もなんとか動こうともがくが、ギリギリと耳障りな音を立てるのみであった。

「さて、動作は封じてやったぞ。ここからどう攻めに転ずる気だ?」
「へっ、任せておけよ!」

 そういうと、今度はサリーが両手に術式を展開し始めた。するとその二つの掌の前に、剣のような形をした光が現れた。それは相当な高熱を放っているようで、周りの大気が歪んで見えた。
 二つの光の剣を握りしめたサリーは、そのままロボット兵たちの顔面を目掛けて高く跳んだ。

「おらぁ!」

 ×を描くようにサリーが二刀流で斬りかかると、敵の巨体がそのまま両袈裟に切り裂かれた。そのままサリーは光の剣を次の敵の顔面に突き立て、瞬時に行動不能に陥らせた。そのまま続け様に最後の一体に向かって一刀両断に斬りかかり、そのままロボット兵の巨軀を真っ二つにした。

「へっ、どうだよ。こちとら伊達にルークスナイツの隊長はやってないぜ」
「なるほど。ただの玉砕主義者というわけでもないようだな」
「ったりめーだよ。てか、私にそんなイメージ持ってたのか!」
「仕方なかろうよ、今までの自分の言動を見直してみるといい」
「な、なんだと、この冷血女! んなんだからレイにフラれるんだろーが‼︎」
「き、貴様! 言ってはならない事を言ったな⁉︎」
「事実だろうが、二世の老け顔!」
「ああ、もう…二人とも落ち着いて」

 あまりの幼稚な言い合いに、たまらずエレナが止めに入った。歴戦の強者たちを束ねる女総長に、一国の王を支える側近が、子供じみた喧嘩を繰り広げているのは滑稽でもあり、またどこか羞恥心を沸き起こさせるものであった。最後には二人ともそっぽを向いてしまい、残されたレイとエレナは頭を抱えた。

「全く、喧嘩してる場合じゃないでしょうに。早くラムダ内部に侵入しますよ」
「お、そうだったな!」
「かなり巨大な氷の中だが…破壊できるのか?」
「ええ。魔法的な防御がなければ、簡単ですよ」

 そういうとレイは、重力魔法の術式を右手に浮かべた。そこから放たれた黒い線のようなものが、ラムダを飲み込んでいる巨大な氷塊に向かっていったかと思うと、次々に氷は粉々になっていった。ガラガラと大きな音を立ててラムダの船体は地面に落ち、周囲に細かな氷を残すだけとなっていた。

「これなら侵入も楽になるはずだ」
「うぉ…相変わらず凄ぇ」
「侵入口を探さなければな…レイ、ザイオンに侵入したときは、どこから中に入った?」
「確か東側の側面だったと思います…見た感じ、船体の形やデザインに違いは無い。なら、同じ東側面に扉があるとみていいでしょう」
「よし、なら行くだけですね」

 そして東側面に向かっていくと、レイの予測通りに扉があった。しかし強固にロックされており、手動で開けることは難しそうであった。

「まどろっこしい。力尽くで開けちまおうぜ」
「いや、それはまずい。ワープ施設の電力が生きているともなれば、艦内のセキュリティも生きている可能性が高い。無理矢理開ければ、さっきのロボット兵が襲ってくるばかりか、アルケーへの道筋自体が閉ざされてしまうかもしれない」
「素晴らしい。脳筋女とは違うようだな」
「んだとテメェ!」
「もう、姉さんも大佐も落ち着いてって言ってるのに…それで、どうするんですか?」
「…やったことはないが、セキュリティシステムを騙すことが出来れば、なんとかなるかもしれない」

 その大きな鉄扉の横には、ID認証用と思しきパネルがあった。レイはパネルの前に右手を置き、術式を展開した。

『ピピ…登録外、入艦を許可できませ…ザー、ピー、登ろ…ガガ、ガー………認証完了、お帰りなさいませ』

 機械音声がそう告げると、その大きな鉄の扉は両方に開かれていった。

「よし、これで中に入れるな」
「機械のハッキングまで出来るとは…つくづくお前は恐ろしいやつだな」
「別に悪用はしないから大丈夫ですよ」
「わかっているさ。その程度の事は、私がよく知っている……お前の彼女と同じくらいな」

 エレナが複雑な表情を浮かべたのを見て、マリアがそう付け足した。
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