異世界転生チート勇者と“真の英雄”、そしてその物語について 〜本当に『最強』なのは、誰の命も奪わない事。そして赦し受け入れる事〜

Soulja-G

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第一章

第十六話 その刹那

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 平穏は突如として破られた。

 レイたち補充人員の到着前に出撃していた偵察隊が帰還してきたのだ。
 それによれば、ここから更に北に進んだ先に、中規模の魔族の基地があるとの報告であった。
 早速全員に出撃命令が下った。

「諸君らの活躍いかんで、戦況は変わる。期待しているぞ」
「「「はっ!」」」

 初陣となる戦いに、小隊のメンバーも緊張を隠せなかった。
 だが上司であるマリアからも激励を受け、引き下がるわけにはいかないという気概が、皆の心の中には満ち満ちていた。






 軍用車で移動する事およそ半日、遂に敵基地の目前までたどり着いた。
 廃棄された市街地の中にある大きな建物であり、隠れる場所は山ほどあった。
 半壊した壁の内側で、前衛部隊のメンバーが固まっていた。


「作戦内容を反復するわよ。レイとジャマールが突撃し、敵の中枢を制圧。
 私とエレナは後方援護。リナは後続の部隊に状況を知らせるのよ。必要に応じて、援護を要請して」

「みなさんには加護の魔法をかけておきました。明日の朝までは、各能力値が底上げされ、傷の回復は通常の10倍以上になり、銃弾を何発か受けた程度では死にはしません。ですが過信は禁物です」


 全員が頷いた。


「絶対に生き残るぞ」


 ジャマールが呟いた。
 全員に、そして自分自身に言い聞かせるように。





「開始‼︎」





 制圧作戦が始まった。

 基地である建物までは、約500メートルといったところだろう。
 レイ、ジャマール、ライリー、エレナが駆け出した。
 哨戒班たちも彼らに気付き発砲してきたが、ライリーの広範囲魔法攻撃やジャマールの銃撃で容易く仕留められた。
 レイは全身に防護魔法を展開しつつ、先陣を切った。
 あまりにも先走りすぎると全員を置き去りにしてしまうので、注意が必要だった。

 決して横を見なかった、見る事ができなかった。
 味方はおろか敵でさえも、銃弾に倒れていくのを見たくはなかったからである。




 建物前に到着したが、ドアがロックされていたため、無理やり破壊する以外になかった。しかし入り口を開け放っていては敵の後続部隊の侵入も容易になる。それはレイたち小隊へのリスクにもなり得た。

「俺が先行してここを制圧する。ジャマールとライリーはここを死守するんだ!」
「「了解!」」

 実際、拠点としては小規模で、兵の数も多くはないはずだった。
 敵の援軍をジャマール・ライリーが足止めしてくれさえすれば、そう難しい事は無いはずである。
 偵察隊からは、最上階に敵の将校の姿を透視出来たとの報告を受けている。

 「こっから先は死んでも通さねぇぞ!」

 ジャマールがマシンガンを構え、敵軍に向かって乱射した。

「絶対近付けさせないわよ!」

 ライリーは風魔法の術式で、敵を切り刻む。

「ぐあっ!」
「焦るな、敵は少人数だ!」

 少人数ながらも手練れ揃いの小隊に、敵も大いに戸惑っている。
 これを好機と見て、レイは単身建物の中へと飛び込んでいった。




 すぐさま横の部屋から兵士たちが飛び出してきた。
 肌の色はあまり変わらず、ツノや牙が生えていたり、獣のような耳があったりする人間だ。
 彼らはすぐさま銃を構え、レイに向かって発砲してきた。
 だがレイの防護魔法は、通常の銃撃ではビクともしなかった。


 全速力で駆け抜け、雑兵たちには目もくれずに最上階を目指した。
 そして最上階、両開きの幾ばくか豪奢なドアを、レイは蹴破った。

「動くなっ‼︎」
「!」

 そこには、情報通りの男の姿があった。
 爪が猛禽類のようの長く、肌にも羽毛のような部分がある。
 レイが初めて相対する敵”魔族”であった。

「大人しく投降しろ、そうすれば全員命は助けてやる!」
「…そう言われて引き下がるほど、我々が温厚だと思うか⁉︎」

 敵将校はすぐさま腰に構えたハンドガンを抜き発砲したが、即座にレイが展開した防護術式の前に、全て弾き飛ばされた。

「よせ、止めろ! その程度で俺は殺せないぞ‼︎」

 そう言い終わる前に、ハンドガンの弾が尽きた。すると今度は腰にあったサーベルを抜いた。
 それだけなら恐れることは無かったが、敵の将校の右手に術式が光っていたのをレイは見逃した。





 次の瞬間、光で空間が満ちた。





「なっ…‼︎」

 閃光弾と同じ原理だった。音響と光で相手を無力化させる魔法である。
 それにまんまとかかり、数秒の間レイは無力化した。

 何秒化ののち、腹に鋭い痛みが走った。



 徐々に戻ってきた視界が、レイの腹部に刺さったサーベルを捉えた。



「う、うわあああっ!」

 慌ててレイは後ずさった。
 敵将校もサーベルを抜き、構えなおした。

「チッ、頑丈な奴だ…まあいい、これで終わりにしてやる」

 敵将校はそう呟くと、サーベルを構えなおした。
 激痛と出血が止まらない。あまりの事態に、レイは完全に冷静さを忘れていた。



(殺される、のか?)




 相手の動きが、スローモーションに感じた。



 その刹那、感じた。



(嫌だ)



 レイは、自分のサーベルの柄に手を掛けた。








(死にたくない‼︎)







 サーベルを抜き、相手に向かって突いた。


「ぅ! …が…」


 サーベルは、敵将校の心臓を貫いていた。

 断末魔を上げる暇もなく、敵は事切れていた。

 レイの心臓は早鐘の様に鳴った。先ほどまでの痛みさえ忘れていた。


(…俺が)


 足元の感覚が無かった。何処か現実感がなく、浮ついた感覚である。


(殺した、のか)


 罪の意識を感じるといった感覚さえ無かった。ただ茫然と目の前の光景を眺めるだけだった。

(そうだ、ライリーたちに報告を)

 すぐさま通信用術式を展開した。

『聞こえるか、ライリー。敵将校は死亡、全員に降伏勧告するんだ』
『了解‼︎』

 すぐに通信は途切れた。
 下の方でまだ銃声が聞こえる。まだ抵抗を続ける気なのかもしれない。
 敵将校の遺体から、サーベルを引き抜いた。引き抜いた刀身には、血がこびり付いていた。


 身体中から汗が吹き出た。鳥肌が立つのがレイ自身にも感じられた。


 ただ目の前の現実を肌で感じながら、レイは仲間たちの元へ戻っていった。


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