元ゲームオタク転生悪役令嬢は推しを幸せにするためにあらゆる死亡フラグをチート機能で叩きおります!

蓮斗♀(活動停止/再開の予定なし)

文字の大きさ
上 下
75 / 77
2節[第二章]

第七十二話『まるで初心のよう』

しおりを挟む

「しかし私たちは既に婚約者同士だからな…。今更恋人のように付き合ったというのは不自然だな…。」

突然何かに気づいたように悩み始めたエイム様は、そんな事をいいだした。

確かに今更恋人というわけにもいかないし、かといって今の婚約者のままというのも気まづくなるのは見えている。

正直今から私とエイム様が恋人のようにイチャついても周りからすれば違和感はないのだろうけど…。

「式を挙げるちゃんとした夫婦になるか?」

「えっ!?///」

「君が私の妻として正式になれば、君を自動的にそばに置いても普通になると思ったのだが…」

「そんな事しなくても、エイム様の隣に私はいるつもりですよ?」

エイム様から告白された今、私はもうゲームのストーリーや悪役令嬢という言葉に縛られず、エイム様の隣で生きると決めたのだ。

悪役令嬢“レイン・ウィンター”ではなく、この世界に転生した“園田萌そのだもえとして。

私が好きになった人とずっと幸せに生きていく。これが今の私の真っ直ぐな気持ち。この人の傍にいたい、この人の笑顔を見ていたい。

「私はエイム様の傍で生きていたいと思っています。どんな記憶に阻まれても、エイム様の傍にいたいです。」

今の私は自然と顔が綻んでしまっているのかもしれない。当事者のエイム様は顔を紅くしてそっぽを向いてしまった。照れているエイム様はボソボソと何かを言っているが、よく聞こえない。

「エイム様?」

「君は…恥ずかしいことをスラスラと…。」

「それは…エイム様が一番言ってはいけないのでは??」

「いや…男性が女性を口説く時、あれくらいの謳い文句は言うものだろ?」

「では、あの言葉はその謳い文句で本心ではなかったと?」

「ッッ!?…そんな事はない!!」

そっぽを向いていたエイム様が勢いよくこちらを向いた。焦ったように振り向いたエイム様は、後になって自分が恥ずかしい事を言ってしまった事に気づいたようだ。

見たことがないエイム様の姿を見ると、ここがゲームの世界であると忘れてしまいそうになる。それが堪らなく嬉しい。

「俺を揶揄わんといてくれよ…。君に揶揄われると、満更でもない自分がいるのが分かって余計に恥ずかしい…///。」

また俺に戻ってる…しかも関西弁だ…。

「フフっ、エイム様?関西弁になってますよ?」

「あっ…いや!別に動揺しているわけでは…!」

凄い、全部自分で暴露してる。相当焦ってるんだろうな…。あぁ、駄目なのにもっとからかいたい自分がいる…。 

「普段大人なエイム様が、私に躍らされてる姿なんて、今の状況はかなりレアですね!ちょっと楽しい…。」

クスクスと笑っていると、隣にいたエイム様が私の上に覆い被さっていた。顔が急に近くなり、心拍数が上がる。

「あっ…あの///エイム…様?」

「あんまからかい過ぎてると、俺も我慢せぇへんで?」

「へぇっ!?///」

心臓の音が五月蝿すぎる、体が熱い。エイム様の顔が段々近づいてきておもわず目を瞑る。

その後きたのは柔らかい感触。額に感じたその感触は一体何なのか私には分からなかったが、余裕そうに笑うエイム様を見て、私の体はさらに熱くなった。

「君の許可なしに初めてを奪うわけにはいかないからな。今はここにしておく。」 

額に向かって指をさしながらクスリと笑うエイム様は、先程まで動揺していた姿すらかき消してしまう程、妖艶だ。

私にはそんなもの前世から無縁だったので、見ただけで精神的な限界が来てしまった。幸いかそのまま私は気を失って眠りについてしまった。

眠りについている間、優しい暖かさを持っている手が私の手を握ってくれていたのを感じていた。あれはきっとエイム様の手だと私は思う。

その温もりは私の記憶などかき消してしまう程にグッスリとした眠りに誘ってくれる。朧気ではあるけれど、とても幸せな夢を見ていた気がする。
































目が覚めると、部屋には私一人だった。辺りを見回していると、扉が開きシャツ姿のエイム様が二人分の紅茶を持ってきていた。

「おはよう、レイン。」

「おはようございます、エイム様!すみません…私、勝手に寝てしまって…!」

「疲れていたのに話に付き合わせてしまったのは私の方だからな。ほら、紅茶は私と同じ銘柄だが構わないか?」

「はっはい!ありがとうございます…!」

エイム様が淹れた紅茶を手に取り少し眺める。昨日の出来事がまだ夢のような気がしてならない。エイム様に全てを打ち明けて、互いの気持ちを知って本当の意味で互いに好きだと知る事が出来た。

かなり色んなことが一気に進んだ気もする。昨日エイム様にキスを落とされた額に再び熱が集まっている事に気づいた。

横目でエイム様の顔を見ると、笑顔で返され思わず紅茶を一口飲んだ。

「…美味しい。」

「それは良かった。」

モーニングティーとは思えないほど優しく爽やかな味と香りに驚いた。エイム様と同じものを飲んでいると気づいたのは寝惚けた頭が冴えてきてすぐだった。

「エイム様、今日はどうなさいますか?」

「そうだな…海は昨日遊んだから、買い物でもどうだ?この付近には珍しいアクセサリーを売っている店があるそうだ。」

珍しいアクセサリー??興味あるかも…それに、エイム様が提案してくれた所だから。

「行ってみたいです!」

「よし、決まりだな。早速準備しよう!レインも準備をしておいてくれ。」

「はい!」

こうして、私とエイム様のお出かけ2日目が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

処理中です...