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2節[第一章]

第五十三話『みっつでひとつ』

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空色のリボンのプレゼントを開けると、中には人が椅子に敷いて座るようのクッションが入っていた。

シーブン様は昔から普段使えるものをプレゼントしてくれた。

食器、ドレス、クッション、時計など、普段使えるものを必ずプレゼントに選ぶ。

一度理由を聞いたら、シー分様らしい答えが返ってきた。

「普段使えるやつの方が、相手に貢献できるやろ?」

うん、ごもっとも。

その時の私は理解できなかったけど、歳を重ねるごとにこの意味がわかるようになった。

シーブン様は、兄弟にも同じように使えるものをプレゼントする。

それを兄弟全員日頃から使い、大切にしている。

アハト様と遊んでいる時、ふと気になったペンを取ろうとしたら

「これはシーブンからのプレゼントだから、私しか使えないんだよ?」

と笑顔で言われたのを覚えている。

つまり、シーブン様が使えるものをプレゼントするのはその人に自分のあげたプレゼントを意識してもらうため。

普段は見せないシーブン様の思いだったりするのかも知れない。

アハト様いわく、シーブン様は人にあまり甘えない。

次男であるシーブン様は優秀な兄と比べられていると勝手に思い込んだ。

お父さんもお母さんも兄に付きっきりで、一緒に遊ぶ相手は誰もいなかった。

1人で本を読んだり、勉強したりと誰かに甘えることをしてこなかった。

だからプレゼントも基本普段使うものしかお願いしなかった。

それでも家族からプレゼントを貰えるのが嬉しかったシーブン様は、他の人にプレゼントを渡す時にもその記憶が出てきてしまう。

それもあってシーブン様は普段使えるものをプレゼントする人としてみんなから認識されているのだ。

けれど、くれるのはいつも寝るとき用のクッションなのだが…今回は椅子に敷くタイプのクッション。

何か意味があるのかな??

考えてみるが全く思いつかず、ゼクス様のくれたぬいぐるみをシーブン様から貰ったクッションに置く。

「あれ?」

何となく置いたぬいぐるみがクッションにピッタリとはまる。

まさかと思いぬいぐるみを詳しく見てみる。

するとぬいぐるみの手に引っ掛ける金具が付いていることに気づいた。

「これもしかして…!」

私は白色のリボンをほどき箱を開ける。

その中には宝石で象られた花が入った箱が入っていた。

「ネジがついてる。」

箱の横には回せるネジのような部分があった。

宝石の花は上に着いているだけで中は何か機械が入っているような感じだ。

私はゼクス様から貰ったぬいぐるみにアハト様からのプレゼントを置く。

ぬいぐるみに付いていた金具に箱はカチッとハマる。

そのぬいぐるみをシーブン様に貰ったクッションの上に置いてみる。

「やっぱりこれって、みっつ合わせてひとつだったんだ!」

アハト様から貰った箱、シーブン様からのクッション、ゼクス様からのぬいぐるみ。

全部を組み合わせるとひとつの置物になった。

そしてゼクス様から貰った箱。

これについているネジを回してみる。

カチカチカチという音がする。

ネジを巻き終わり離してみる。

すると、箱から綺麗な音色が流れ始める。

アハト様がくれた箱はただの箱ではなかった。

「綺麗な音…。」

箱は綺麗な音を奏でるオルゴールだった。

みっつ合わさってひとつのプレゼントになる。

オルゴールから流れる音色は、聞き覚えのある音だった。

昔、サマー家でよくリカルドと2人でアハト様と遊んでいた時によく聞いた音色。


























「ねぇアハトお兄ちゃん?アハトお兄ちゃんはいつもそのオルゴール聞いてるよね?」

「いい音色でしょ?」

「うん!レインその音色大好き!」

「そっか~じゃあレインがレディになったらこのオルゴールあげるよ。」

「いいの!?」

「いいよ、だって・・・」

あれ?この時のアハト様、なんて言ったんだっけ…?

思い出せず、悩んでいるといつの間にかオルゴールは止まっており部屋は静けさを放っていた。

「プレゼントも開けたし、そろそろ部屋に戻ろうかな…。」

プレゼントを持って自室へと向かう。

途中、ヤヌア様に声をかけられ後でお話することがあると言われた。

オルゴールを棚に置き、もう一度ネジを回す。

再び綺麗な音色が流れ始める。

聞いているだけで心が落ち着く。

この音はただの音じゃないのかもしれない。

人の心を癒す何かがあるのかも。

あんな子供の頃の約束を覚えていてくれたなんて、ちょっと嬉しい。

リカルドとはあんな形で別れてしまったけれど、リカルドだって辛かったんだと思う。

強い思いを隠し続けるのって、とっても苦しいもんね。

『萌!私ね・・・!』

「…。」

あぁ、嫌なことを思い出した。

あの子はもういないんだから、忘れてしまえばいいのに。

そういえばあの子もこのゲームやってたな…。

「いや、あの子はあっちで幸せに暮らしてるんだからそんなわけないって!気にしない気にしない!!」

オルゴールが止んだあと、私は一度自分を鏡で見て笑顔で笑った。

「よし、大丈夫!!」

笑顔の確認をして、私はヤヌア様の元へ向かった。

シオン君に渡した手紙、届いてるかな?
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