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2節[第一章]
第四十九話『真っ直ぐな思い』
しおりを挟む「なら…ハーベスト家の皆さんに会いたいです。」
シオン君の出身、四代家紋の秋を司るハーベスト家。
ハーベスト家の皆さんにはたくさんお礼を言いたいし、何よりあの人にまだあの時のお礼をちゃんと出来ていないから。
「分かった、ジィーブに話しておくね。」
「はい!」
それから3日後、ハーベスト家の人達がやって来た。
「いらっしゃいませ、ジィーブ様、エース様、ノイン様。」
「お久しぶりです。」
「元気になったみたいで安心したよ。」
「ホントに起きてて大丈夫なんか?」
「はい、もう大丈夫です!」
ハーベスト家の3人はそれぞれお見舞いの品を持ってきてくれていた。
私は客室に3人を案内して、シオン君の用意してくれたお茶を飲んでいた。
「レインさんは本当に私の知らないことを沢山知っていらっしゃいますね。」
「ジィーブ様に褒めて頂けるなんてとても嬉しいです。」
まぁ私の場合、別世界の記憶があるしチート能力を使ってかなり色々調べ回ったりしてるからね…。
普通じゃ知れないことも知れたりするから使ってて本当にこの力は凄いって分かるよね。
「ウィンター家の紅茶はとっても美味しいですね。」
「シオン君に少しあっさりした紅茶を用意してもらうようにお願いしたんです。」
今のような朝の時間帯はあっさりした紅茶の方が飲みやすいんだよね。
これは私の今までの体験談。シオン君に朝の紅茶を用意してもらった時に気づいたんだよね。
「レインさんは紅茶のセンスも素晴らしいのですね。」
「なっなんだか恥ずかしいです…。」
「…。」
ただ私が転生前にやっていた事とか知っていた事とかしか活用してないんだけど、この知識が役にたってるのは嬉しいかも。
そういえばノイン様がさっきから静かだな…。紅茶美味しくないのかな?一応ノイン様の紅茶だけ変えてはいるんだけど。
「ノイン様、どうかされたんですか?」
「へっ!?なっ何でもないで?」
怪しい。明らかに何かあるよね。
ノイン様一体何を隠してるんだろ。
しばらくノイン様を見つめていると、ジィーブ様とエース様が立ち上がった。
「レインさん、私とエースは少しフィブアさん達とお話してきますので、良ければノインと2人で話していて下さい。」
「えっ!?にっ兄さん!?」
フィブア様と?何か重要な話かな?
ノイン様と2人か…なら、お礼するのにもってこいじゃん!
パーティーの時のお礼を今しちゃお!
「分かりました、ノイン様と庭園をまろうと思います!」
「えっちょっ!」
ノイン様の制止を聞かずにジィーブ様とエース様は客室を出ていった。
部屋に残った私とノイン様は少しの静寂を過ごし、私が言っていた庭園に来ていた。
ノイン様と私は庭園で咲いている花を見ながらたわいもない話をしていた。
変に緊張していたノイン様も話している内にいつもの感じに戻っているようだった。
「そういえば前にもノイン様と庭園でお話ししましたね。」
「あぁせやな…あん時もここの庭園は綺麗やったな…。」
ノイン様は花を見つめながら優しい笑みで答えた。なんだか妙に輝いて見えて、少し顔があつくなってしまう。
何か別のことを考えないと…。
あっ!そうだ、あれを渡さなきゃ!
「ノイン様!少しこちらに…」
「えっ!まっ待って!?」
ノイン様に似合うと思ったこれを買っておいて良かった!
パーティーの時のお礼を気持ちだけじゃなくて形としても渡しておきたかったんだよね!
ノイン様の首に用意したプレゼントをかける。
私が選んだプレゼントは、
「これ…」
「ノイン様はハーベスト家の方ですから、これが必ず似合うと思いました。」
紅葉の型が付いた黄色のネックレス。
ノイン様のイメージカラーは黄色、それプラス秋の紅葉が付いたネックレス!
ノイン様のプレゼントにピッタリで見つけた時びっくりしたもんね…。
「パーティーの時に私を助けて下さった事のお礼を形として渡したくて…。」
「レインが選んでくれたんか?」
「はい!気に入ってくだされば嬉しいです!」
ノイン様は顔を手で覆い深呼吸して恥ずかしいのか少し横を向いてボソッと何かを言った。
なんと言ったのかは分からなかったけど、気に入ってくれたみたいだった。
「あっあのさ、あん時のパーティーって俺なんかしたか?」
えっ…まさか自覚なし!?
じゃあ私のことを庇おうとして言ったんじゃなくて、ホントにそう思ったから言ったって事?
それって…
めっちゃくちゃいい人しかしない事じゃん!!
ノイン様は表には出さないけど、シオン君の事とかお兄ちゃん達の事とか1番思ってるのはノイン様だもんね。
「ノイン様は気づかれていないかもしれませんが、あの時ノイン様が私は悪い人ではないと言ってくださった事が、私にとってはとても嬉しかったんです!」
最初は対立したけど、今はノイン様の考えとか大切にしてることがわかるから…。
「あの時ノイン様の秘めた優しさが分かるようになって、私とっても嬉しくて…」
ノイン様の笑顔も真っ直ぐな感情も全部好き。
ノイン・ハーベストが私は好きなんだ。
「私は、ノイン様が大好きです!」
庭園から抜けてくる風が吹き付ける。
この気持ちに嘘偽りはない。
真っ直ぐな気持ちを持つ彼に、私の真っ直ぐな感情を伝えたい。
ありがとう
大好きです
私はノイン様の額にキスをする。
珍しくしない事をして顔があつくなってしまい
隠すようにノイン様に背を向ける。
「じゃっじゃあ、あっちの方にも行きましょうか!」
私はそれから庭園をまわり切るまで、ノイン様の顔を見る事が出来なかった。
ハーベスト家の皆さんが帰る頃、日がてっぺんに昇っていた。
玄関に見送りに行った私は、ノイン様とまだ顔を合わせれずにいた。
「今日はありがとうございました。」
「こちらこそ来て頂いて嬉しかったです。」
「ぜひこちらにも来て下さいね。」
「はい!」
「…。」
「…。」
やっぱり気まづい…。
あんな事しなきゃ良かったかな!?
やらない事やったから恥ずかしいし
ノイン様ももしかしたら嫌だったかも…。
ずっと静かなノイン様の方をチラッと見ると、ノイン様が跪き私の右手をとった。
「今日はありがとうレイン、君からのプレゼント大切にするな!」
ノイン様は手にとっていた私の右手の甲にキスをしてニッコリと微笑んだ。
そうしてハーベスト家の3人は帰っていった。
私はしばらくその場から動けなかった。
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